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「図表でみる教育:OECD インディケータ」 (OECD, 2019[1]) は、世界の教育の現状に関する適正かつ確かな情報源であり、
OECD 及びパートナー諸国における教育制度の構造、財政及び成果に関するデータを提供している。
日本 日本は高等教育が十分に普及している。2018 年時点で、25~64 歳人口の半数以上が高等教育を修了しており、
これは OECD 平均を 13 ポイント上回っている。しかしながら OECD 諸国と比較すると、日本は、全学生に占める成
人及び留学生の割合が低く、学生の均質性がかなり高い。
2016年時点で、一般政府総支出に占める初等から高等教育に対する支出の割合は 7.8%であり、これはOECD平
均を下回っている。2010年から 2016年の間に一般政府総支出は増加しているにも関わらず、公財政教育支出は減
少した。
日本は、教育分野を含め、依然として男女間の雇用が不平等である。中等及び高等教育における女性教員の割合
は OECD諸国で最も低い。
3歳未満の幼児のの早期幼児教育・保育の在籍率は、2010 年の 19%から 2017 年の 30%まで上昇した。しかし、
この割合は OECD 平均の 36%を依然として下回っている。それに対して、3~5 歳児の在籍率は 2017 年時点で
91%であり、これは OECD平均の 87%を上回っている。
図 1 教育段階別初回入学者の平均年齢(2017年)
注:修士課程の長期の第一学位については標本サイズが小さい場合がある。
1 短期高等教育のデータはフラマン語圏のみ。
左から順に、学士課程初回入学者の平均年齢が高い国(2017年時)。
資料:OECD / UIS / Eurostat (2019)。表 B4.1。詳細は「資料」を参照。付録 3の注を参照 (https://doi.org/10.1787/f8d7880d-en)。
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短期高等教育プログラム 学士課程プログラム 6年制課程プログラム年齢
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日本は高等教育が十分に普及しており高等教育修了率も高いが、成人及び留学生の割合が低い
2018 年時点で、日本の 25~64 歳人口の半数以上が高等教育を修了しており、これは OECD 平均の 39%を 13
ポイント上回っている。現在の入学パターンが続くと、日本では、若年層の 80%近くが生涯で一度は高等教育段階に
進むことになる。これは、OECD 諸国の中で高等教育進学率が最も高い国の一つということである。日本の高等教育
修了率の高さは、短期高等教育課程によるところが大きい。2017年時点で、高等教育初回入学者の 3分の 1以上
が短期高等教育課程に入学したが、これは OECD平均 17%を 18ポイント上回っている。約 3分の 2は学士課程に
入学したが、これは OECD平均を 13ポイント下回っている。
日本では、短期高等教育修了者と後期中等教育修了者の就業率が等しく、いずれも 81%である。それに対し、
OECD諸国の就業率の平均は、短期高等教育修了者が 82%、後期中等教育修了者が 76%である。
日本の場合、高等教育の学習機会に最も恵まれているのは若年齢層である。短期高等教育課程及び学士課程へ
の新入学者の平均年齢は 18 歳、6 年制課程(医学、歯学、薬学、獣医学)では 19 歳であり、いずれも OECD
諸国の中で最も低い(図 1)。日本では生涯学習が他国に比べて普及していない。25~64 歳人口で学校教育や
学校教育以外の教育に参加した者の割合は、2012 年時点で日本は約 40%であったが、近隣国である韓国では
50%、米国では 59%だった。「人生 100年時代」の到来で、従来のように生涯を教育・仕事・老後の 3区分で捉える
ことは現実的ではなくなり (Gratton and Scott, 2016[2]) 、生涯学習の重要性も高まると考えられる。日本で生涯学
習への参加が低調である背景には、時間的・経済的な制約、労働市場との妥当性の低さ、生涯学習への意欲や関
心の低さなど、複数の要因がある (OECD, 2018[3]) 。成人教育推進に向けた政策的取組みとして、経済的支援とと
もに、産業界やその他の関係者との連携によって、より柔軟で実践的な高等教育を提供することが挙げられる
(Central Council for Education, 2018[4]) 。
高等教育段階の全学生に占める留学生の割合は、2013年の 3%から 2017年の 4%に上昇した。依然としてOECD
平均の 6%を 2 ポイント下回ってはいるものの、OECD 及びパートナー諸国の非英語圏の国々の中では、日本の留学
生受け入れ数は、ロシア、ドイツ、フランスに次いで 4 番目に多かった。日本で学ぶ留学生の 90%以上はアジア出身で
ある。より多くの留学生を受け入れることは政府の優先事項の一つであるが、これは多様性を高めるというだけでなく、
2040年までに 18 歳人口が 30%減少すると予測される中、日本の高等教育の安定性を維持することも目的としたも
のである (Central Council for Education, 2018[4]) 。政府は、2013年から 2023年の間に留学生受け入れ数を 2
倍にすることを目標に、複数の政策を展開している (Ministry of Education, Culture, Sports, Science and
Technology, 2019[5]) 。例えば、英語で授業を行うプログラム数の拡大、留学生に対する日本語教育や卒業後の就
職支援等である。政府はまた、日本の高等教育プログラムの国際通用性を確保することを目指し、大学の海外校設
置についても検討している (Central Council for Education, 2018[4]) 。
OECD 諸国に比べ、日本は入学制度の選抜性が高いといえる。OECD 諸国の約半数が、進学に必要な教育段階
を修了した志願者すべてに入学を許可するというオープン・アドミッション制度を採用する教育機関をいくつか有している
。しかし日本の場合、志願者は通常、全国共通入学試験と各教育機関が実施する個別試験のいずれか、または双
方の成績に基づいて評価される。また、志願者の後期中等教育機関における成績が考慮される場合もあり、その際は
、面接、内申書、その他の方法で適性が評価される。しかし、選抜の度合いは各機関の規模、所在地、設置形態や
学部学科等で異なる。私立大学数の増加及び若年人口の減少により、2018 年時点で、私立大学及び短期大学
の約 40%が入学定員に満たなかった (The Promotion and Mutual Aid Corporation for Private Schools of
Japan, 2018[6]) 。
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一般政府総支出の増加にも関わらず、公財政教育支出は 2010年から 2016年の間に減少した
図 2 一般政府総支出に占める公財政教育支出の割合の変化指数(2010年から 2016年)
初等教育から高等教育(2010年=100、実質価格)
注:
1 調査年は 2017年。
2 初等教育に就学前教育が含まれる。
左から順に、一般政府総支出に占める公財政教育支出の割合の変化が大きい国。
資料:OECD/UIS/Eurostat (2019)。 表 C4.3。詳細は「資料」を参照。付録 3の注を参照 (https://doi.org/10.1787/f8d7880d-en)。
2016年時点で、日本の初等から高等教育機関に対する支出は、対GDP比 4%だったが、これはOECD平均を 0.9
ポイント下回っている。しかしながら、日本は世界第 3位の経済大国であり、初等から高等教育機関に対する生徒・学
生一人当たりの年間支出は 12,100米ドル1と、OECD平均を上回っている。
日本政府は、2016年に公財政支出の 7.8%を初等から高等教育に支出しており、この割合は OECD平均を 3ポイ
ント下回っている。この割合は、公財政教育支出が一般政府総支出の 8.4%を占めていた 2010年と比べると、0.6ポ
イント低いことになる。この背景には、2010 年よりも公財政教育支出が減ったこと(-3.3%)に加え、一般政府総支
出において特に社会保障等、他の分野への配分が増えたこと(+4.4%)がある(図 2)。
2016 年時点で、初等、中等、高等教育以外の中等後教育における教育支出の 90%以上は公的資金によるもので
あり、これは OECD 平均に近い。しかし、高等教育段階の教育支出については、53%が家計負担、17%がその他私
的部門によって賄われ、公財政支出が占める割合はわずか 31%で、OECD諸国の中で最低水準の国の一つである。
日本では、高等教育の授業料の高さが懸念事項になって久しい。国公立大学の学士課程の平均年間授業料は、
2017~2018 年度は 5,200 米ドル、私立大学では 8,800 米ドルに上る。多くの学生が卒業時に多額の負債を抱え
、平均負債額は 28,300 米ドルである。これに対し政府は、2020 年より授業料減免、また給付型奨学金の拡充を行
い、低所得者世帯の学生に対する経済的支援を強化する方針である (Ministry of Education, Culture, Sports,
Science and Technology, 2018[7]) 。
1 GDP購買力平価(PPP)による米ドル換算額。
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公財政教育支出の変化 一般政府総支出の変化 一般政府総支出に占める公財政教育支出の割合の変化指数
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日本は OECD諸国で中等及び高等教育における女性教員の割合が最も低い
日本を含むOECD諸国の多くで、女性は男性より高等教育就学率が高い傾向にある一方、就業率は低い傾向にあ
る。2018年時点で、25~34歳人口の高等教育修了率は、男性 58%に対し女性は 64%であった。日本の場合、高
等教育修了率における男女差は 6ポイントであるが、これは OECD平均 12ポイントを下回っている(OECD平均は
男性 38%、女性 51%)。日本では、高等教育を修了した女性の就業率が男性を下回る傾向にあるが、これは
OECD 諸国全体に見られる傾向である。2018 年時点で、日本では、高等教育を修了した男性の就業率が 94%で
あったのに対し、女性は 81%であった。これに対し、OECD 諸国平均は男性 89%、女性 81%であった。また日本では
、すべての年齢層で、女性の方が期限付き雇用や非常勤といった、正規雇用よりも賃金の低い非正規雇用で働く傾
向がより強い (OECD, 2019[8]) 。
図 3 高等教育における教員の男女構成(2017年)
国公立及び私立教育機関における女性教員の割合
注:
1 高等教育段階以外のプログラムも含む。
2 国公立教育機関のみ。
左から順に、学士・修士・博士課程プログラムに占める女性教員の割合の高い国。
資料:OECD/UIS/Eurostat (2019)。 Education at a Glance Database, http://stats.oecd.org。詳細は「資料」を参照。付録 3の注
を参照 (https://doi.org/10.1787/f8d7880d-en)。
日本では、女性は下位の高等教育で優勢であり、上位になると劣勢である。2017 年時点で、学士課程への初回入
学者に占める女性の割合は 45%であったのに対し、短期高等教育課程ではほぼ 3 分の 2 が女性であった。また、博
士課程における女性修了者の割合は全体の 3分の 1以下であり、これは OECD諸国の中で最も低い割合である(
OECD平均 47%に対し、日本は 31%)。このような博士課程での男女間格差は学界にも引き継がれる。全高等教
育を通しての女性教員の割合は、2010 年の 19%から 2017 年には 28%にまで上昇したにもかかわらず、依然として
OECD 諸国の中で最も低い。2017 年時点で、学士・修士・博士課程における女性教員の割合は 23%であり、
OECD 平均を 20 ポイント下回った。短期高等教育課程においては、教員の半数が女性であり、これはデータがある
OECD諸国の平均とほぼ同等であった(図 3)。
日本では、学校教育に占める女性教員の割合が少ない。初等教育では教員の 64%を女性が占めるのに対し、前期
中等教育段階では 43%、後期中等教育段階では 31%であり、いずれも OECD 諸国平均を下回る(OECD平均
はそれぞれ 69%、60%)。同様に日本では、女性が学校長の職に就く傾向も低い。2018年時点で、初等教育段階
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の学校長に占める女性の割合は 23%に過ぎなかった。前期中等教育段階ではわずか 7%であり、これはOECD諸国
の中で最も低い割合である (OECD, 2019[9]) 。
3歳未満児の早期幼児教育・保育へのアクセスに依然課題が残る
日本の早期幼児教育・保育に対する支出の対 GDP比は、2016年時点で 0.2%であり、これは OECD諸国の中で
最も低い割合であった。また、子ども一人当たり年間教育支出は約 7,500米ドルであり、OECD諸国平均 8,600米
ドルを下回った。2016 年時点、幼児教育に関する支出の約半分は私費負担によって賄われ、これは OECD 諸国の
中でも英国に次ぎ 2 番目に高い割合であった。また、2017 年時点で、私立教育機関に在学する子どもの割合は
OECD 諸国平均では全体の 3 分の 1 であるのに対し、日本では 4 分の 3 の子どもが私立教育機関に在学した。政
府は、2019年 10月より、3~5歳児及び低所得者世帯の 3歳未満の幼児に対する幼児教育無償化を開始し、公
財政支出を拡大する予定である (Cabinet Office, Government of Japan, 2019[10]) 。
私費負担の割合が比較的高いにもかかわらず、2017年時点、3~5歳児の在学率は91%であり、OECD平均87%
を上回った。一方で、3歳未満児の在学率は 30%と、OECD平均 36%を下回った。しかしながら、2010年から 2017
年の間、3歳未満児の在学率は 11ポイント増加しており、これは OECD諸国の中でも最も大きな上昇率の一つとな
っている。政府は 2014 年から 2018 年の間に保育の受け入れ枠を 40%引き上げた。これにより保育の受け皿が拡大
したことが在学率上昇の要因の一部といえるだろう。しかしながら、働く女性の数は急速に上昇しており、依然約 2 万
人の待機児童がいる (Ministry of Health, Labour and Welfare, 2018[11]) 。幼児教育及び保育へのアクセスを保
証することが雇用における男女格差を縮める一つの手立てであることはこれまでも議論されている (OECD, 2019[8]) 。
政府は、2020 年までに保育の受け皿を更に拡大し、待機児童リストの解消を計画している (Ministry of Health,
Labour and Welfare, 2018[11]) 。
参考文献
Cabinet Office, Government of Japan (2019), Youjikyouiku hoiku no mushouka [Free Early Childhood
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[4]
Gratton, L. and A. Scott (2016), The 100-Year Life: Living and Working in an Age of Longevity,
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http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/index.htm (accessed on 10 July 2019).
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© OECD 2019
https://dx.doi.org/10.1787/fd63f374-en.
OECD (2019), TALIS 2018 Results (Volume I): Teachers and School Leaders as Lifelong Learners,
TALIS, OECD Publishing, Paris, https://dx.doi.org/10.1787/1d0bc92a-en.
[9]
OECD (2018), Education Policy in Japan: Building Bridges towards 2030, Reviews of National Policies
for Education, OECD Publishing, Paris, https://dx.doi.org/10.1787/9789264302402-en.
[3]
The Promotion and Mutual Aid Corporation for Private Schools of Japan (2018), Heisei 30 nendo
shiritudaigaku tankidaigaku tou nyugakushigan doukou [Enrolment Trends in Private Tertiary
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Japan, Tokyo, https://www.shigaku.go.jp/files/shigandoukouH30.pdf (accessed on 10 July 2019).
[6]
「図表でみる教育 2019 年版」についての詳しい情報及び全インディケータは www.oecd.org/education/education-at-a-glance-
19991487.htm にアクセスしてご覧ください。
最新のデータは http://dx.doi.org/10.1787/eag-data-en また当ノート各図下にある で確認いただけます。
データ及び結果・解説をさらに調べる、比較する、視覚化するには:
http://gpseducation.oecd.org/CountryProfile?primaryCountry=JPN&treshold=10&topic=EO.
問い合わせ先:
Marie-Helene Doumet
Directorate for Education and Skills
カントリーノート著者:
加藤静香
Directorate for Education and Skills
本書は、OECD 事務総長の責任のもとで発行されている。本書で表明されている意見や主張は、必ずしも OECD 諸国の公式見解を反映
するものではない。
本書に掲載する文書及び地図は、あらゆる領土の地位や主権、国際的な協会設定や国境を、また、あらゆる領土や都市、地域の名称を害
するものではない。
2018年 5月 25日、OECD理事会はコロンビアに加盟を招請した。当カントリーノートのOECD平均にはコロンビアのデータを含むが、編集時
点でコロンビアは批准のための国内手続きの途中であり、OECD条約批准は未確定であった。
イスラエルのデータに関する注記
イスラエルの統計データは、イスラエル政府関係当局により、その責任の下で提供されている。OECD における当該データの使用は、ゴラン高原
、東エルサレム、及びヨルダン川西岸地区のイスラエル入植地の国際法上の地位を害するものではない。
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