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68 【2】高齢者福祉関連施設 1.介護施設の耐震化 (1)概要 市では平成 24 年度からの3年間を計画期間とする「大阪市高齢者保健福 祉計画・介護保険事業計画(第5期)」が策定され、実行に移されている。 これは、老人福祉法及び介護保険法の規定により、それぞれの市町村に策 定が義務付けられた老人福祉計画及び介護保険事業計画を一体として作成 しているものである。 本計画の中では、昭和 56 年に改正された建築基準法施行令の規定に基づ く耐震設計基準の適用以前に設計された市の高齢者施設に対して、順次、 耐震診断調査及び耐震基本調査を実施し、安全確保のための施設の耐震化 の取組みを進めることが掲げられており、市は施設の耐震化を進めるべく、 高齢者施設の運営事業者に耐震診断を促している。 (2)実施した手続 担当者へのヒアリング 関係する資料の閲覧 (3)監査の結果及び意見 耐震診断を受けていない施設の運営者に対し受診を促すべき(意見) 介護施設においては、入所者の安全の確保が求められるところであるが、 市内の特別養護老人ホーム 108 施設のうち2施設、養護老人ホーム 13 施設 のうち1施設が建築基準法における新耐震基準(昭和 56 年6月1日)導入 以前に建築され、かつ、耐震診断を受けておらず、新耐震基準を満たす施 設であるか否かが不明となっている。 阪神・淡路大震災後、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」が施行 され、昭和 56 年以前に建築された老人ホームを含む特定建築物について、 市に建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るため資金の融通やあっせ ん等の一定の努力義務が課されている。また同法で、市は必要な耐震診断 又は耐震改修に関する指示を建物の所有者にすることができるとされてい る。さらに平成 25 11 月の同法改正では、特定建築物のうち老人ホーム を含む不特定多数が利用する大規模施設や避難弱者が利用する建物などは 耐震診断が義務化され、平成 27 12 月末までにその結果の公表が求めら れることとなった。なお、前述の耐震診断を受けていない特別養護老人ホ

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【2】高齢者福祉関連施設

1.介護施設の耐震化

(1)概要

市では平成 24 年度からの3年間を計画期間とする「大阪市高齢者保健福

祉計画・介護保険事業計画(第5期)」が策定され、実行に移されている。

これは、老人福祉法及び介護保険法の規定により、それぞれの市町村に策

定が義務付けられた老人福祉計画及び介護保険事業計画を一体として作成

しているものである。

本計画の中では、昭和 56 年に改正された建築基準法施行令の規定に基づ

く耐震設計基準の適用以前に設計された市の高齢者施設に対して、順次、

耐震診断調査及び耐震基本調査を実施し、安全確保のための施設の耐震化

の取組みを進めることが掲げられており、市は施設の耐震化を進めるべく、

高齢者施設の運営事業者に耐震診断を促している。

(2)実施した手続

① 担当者へのヒアリング

② 関係する資料の閲覧

(3)監査の結果及び意見

① 耐震診断を受けていない施設の運営者に対し受診を促すべき(意見)

介護施設においては、入所者の安全の確保が求められるところであるが、

市内の特別養護老人ホーム 108 施設のうち2施設、養護老人ホーム 13 施設

のうち1施設が建築基準法における新耐震基準(昭和 56 年6月1日)導入

以前に建築され、かつ、耐震診断を受けておらず、新耐震基準を満たす施

設であるか否かが不明となっている。

阪神・淡路大震災後、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」が施行

され、昭和 56 年以前に建築された老人ホームを含む特定建築物について、

市に建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るため資金の融通やあっせ

ん等の一定の努力義務が課されている。また同法で、市は必要な耐震診断

又は耐震改修に関する指示を建物の所有者にすることができるとされてい

る。さらに平成 25 年 11 月の同法改正では、特定建築物のうち老人ホーム

を含む不特定多数が利用する大規模施設や避難弱者が利用する建物などは

耐震診断が義務化され、平成 27 年 12 月末までにその結果の公表が求めら

れることとなった。なお、前述の耐震診断を受けていない特別養護老人ホ

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ームのうち1施設は延床面積が 5,000 ㎡未満であり、平成 25 年 11 月の同

法改正による耐震診断義務化の対象となってはいない。

市においては「大阪市耐震改修促進計画」(平成 20 年3月)を策定し、

昭和 56 年以前に建築された特定建築物について、民間建築物は平成 27 年

度における耐震化率 90%を目標とし、また、市設建築物については市営住

宅の耐震化を平成 27 年度までに図ることが示されているが、老人ホームに

ついては当計画においては言及されていない。

しかし、老人ホームは入所者の生活の拠点であり、耐震化は重要な問題

となる。耐震診断の結果や耐震化の状況が公表されている状況で、入所者

の判断で自由に入所施設を選ぶことができるならば、耐震化が図られた施

設に入所するか否かは入所者個人の判断に委ねられる。しかし、現状は施

設の耐震化状況は公表されておらず、入所時期に猶予のない状態におかれ

た入所待機者は自由に入所先を選べないこととなる。

したがって、施設入居者が安心して生活を送ることができるよう、市は、

支援方法等を検討し、未実施の施設に対して耐震診断を受けるように促す

べきである。

2.大畑山苑(特別養護老人ホーム)

(1)概要

施設の目的 寝たきりや認知症で、在宅での介護が困難な高齢者に対して、介護職員等が、食

事・入浴・介護・機能訓練等の介助を行うために設立された施設。

施設の概要

本施設は昭和 63 年、大阪府八尾市に設置した。当時は大阪市内の地価が高く、

大阪市内での特別養護老人ホームの設置が困難であったことによる。

本施設は広域型特別養護老人ホーム1として運営されており、所在地の八尾市か

らだけでなく、設置主体である大阪市、その他隣接県からも入所している。

入所者は要介護度1から5であることが入所条件であり、入所希望者は施設に

直接申込を行う。入所定員は 70 人、別途ショートステイの受入を行っており、シ

ョートステイ定員は5人。

平成 18 年度から指定管理制度が導入され、社会福祉法人四天王寺福祉事業団が

施設の管理・運営を行っている。

開設年度 昭和 63年度(平成 18年度から指定管理) 所管課 高齢施設課

根拠法令等 老人福祉法、大阪市立特別養護老人ホーム条例

入所利用率の推移

指標 平成 21年度 平成 22年度 平成 23年度 平成 24年度

入所利用率(%) 90.8 93.0 94.0 95.6

1 広域型特別養護老人ホームとは、30 床以上の特別養護老人ホームであり、所在地の住民だけでなく、

隣接市町村の住民も利用することのできる特別養護老人ホームのことである。一方、地域密着型特別養護

老人ホームは、29 床以下の特別養護老人ホームであり、基本的に所在地の住民の利用に限られる。

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(2)実施した監査手続

① 担当者へのヒアリング

② 指定管理にかかる協定書等の関係資料の閲覧

③ 現地視察

(3)監査の結果及び意見

① 指定管理者負担金額の見直しを検討すべき(意見)

市は、大畑山苑の基幹的な施設・機器等の修繕費用(建物の減価償却費

相当額及び建物・機器等の修繕費相当額)や地代相当額を、大畑山苑の指

定管理者から負担金として徴収している。平成 24 年度の負担金の額は

6,000千円である。

徴収する指定管理者負担金の金額は、市で定められた次の方法により決

定されている。

減 価 償却 費相 当額

(A)

社会福祉法人が高齢者福祉施設を整備する場合、補助金の基

本的な負担は整備に要する費用の4分の3となっており、4

分の1は各法人が負担することとなる。既存の建物にかかる

費用負担を他の事業者と公平に求めるため、既存建物の標準

的な減価償却費相当額の4分の1の負担を指定管理者に求め

る。

(積算)

▼前提

構造=鉄筋コンクリート造、延べ床面積=2,486 ㎡、法定耐用

年数 50年、残存価額=取得原価×10%、建物単価=187,000円

/㎡(国土交通省、「建設着工統計調査」による平成 18 年時点

の建物物価単価)、指定管理者負担割合=1/4

▼負担金年額(減価償却費相当分)

187,000円/㎡×2,486㎡×0.9÷50年×1/4=2,091,969円/年

修繕費積立金相当額

(B)

建物、設備等の機能を長期間にわたって維持するための費用

は一般的に建物取得原価の 0.5%~0.7%の年間負担額が必要。

近畿圏のマンション維持費の年間負担額の調査結果を参考

に、建物取得原価の 0.55%を適用する。

(積算)

▼負担金年額(修繕費積立金相当分)

187,000円/㎡×2,486㎡×0.0055=2,556,851円/年

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地代相当額(C)

収益還元法に基づいた不動産鑑定により、定員1人あたり 1

ヶ月の収益は 3,500 円と算定し、公益性の高い社会福祉事業

目的に使用することから 50%減して地代を算出している。

(積算)

▼地代相当年額

3,500円/月・人×定員 75人×12ヶ月×50%=1,575,000/年 負担金額

(A+B+C) A+B+C=6,223,820円/年≒600万円/年

このうち、地代相当額(C)について、市の普通財産貸付料算定基準に

よると、土地の1ヶ月の貸付料は土地の時価に 1,000 分の5を乗じた額と

されている。

大畑山苑は大畑山の中腹にあり、施設へのアクセス道路の平成 25 年度の

路線価は1㎡あたり 65 千円となっている。路線価は時価(公示価格)の概ね

8割程度であることを加味して、市の普通財産貸付料を試算すると年間お

よそ 55,355 千円(=(65 千円÷0.8×11,355 ㎡)×5/1000×12 ヶ月)と

なる。

市は、財産条例に基づいて指定管理者負担金を算定しているが、現在の

指定管理者負担金の算定基礎となる地代相当額(年間 1,575 千円)は低廉

な金額となっている。施設の敷地のうち一部が山林であることから、敷地

面積 11,355 ㎡のうち、使用料を請求する範囲については検討の余地があり、

また公益目的に使用するという一定の減免措置を考慮のうえ、指定管理者

に適切な負担を求めることを検討すべきである。

3.おとしよりすこやかセンター(介護老人保健施設)

(1)概要

施設の目的

寝たきり等で、看護や介護を必要とする高齢者及び認知症の方に対して、リハビ

リテーション等の医療ケアと生活サービスを一体的に提供し、在宅の生活への復

帰を支援するために設立された施設。

施設の概要

おとしよりすこやかセンターは市内に5館設置されている。

施設の対象者は、病状が安定し、家庭に戻れるように機能回復訓練や看護・介

護を必要とする方で、要介護1から5に認定された方であり、入所申込みは、直

接施設に行う。入所期間は通常3ヶ月であるが、延長も可能である。

平成 19 年度から指定管理制度が導入され、公募により選定された事業者が運営

を行っている。

所管課 高齢施設課

根拠法令等 介護保険法、大阪市立介護老人保健施設条例

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【おとしよりすこやかセンター各館の指定管理者と定員数】

施設名 指定管理者 入所者定員(人) 通所者定員(人)

西部館 社会福祉法人大阪暁明館 70 35

東部館 医療法人公道会 100 20

北部館 医療法人清翠会 100 38

南部館 医療法人仁悠会 100 65

南部花園館 医療法人ダイワ会 100 40

【各館の開設時期と指定管理者制度導入時期】

施設名 開設年月 指定管理開始年月

西部館 平成 12年 5月 平成 19年 6月

東部館 平成 10年 5月 平成 19年 6月

北部館 平成 14年 5月 平成 19年 6月

南部館 平成 8年 5月 平成 19年 6月

南部花園館 平成 10年 5月 平成 19年 6月

【各館の入所利用率の推移(単位:%)】

平成 20年度 平成 21年度 平成 22年度 平成 23年度 平成 24年度

西部館 89.4 94.3 97.6 97.3 93.0

東部館 (※1)70.7 88.1 92.4 90.6 90.5

北部館 97.2 97.3 98.0 97.8 95.6

南部館 98.9 99.8 99.7 99.8 99.4

南部花園館 95.4 96.2 95.3 93.0 90.9

(※1)入所利用率が低迷したのは、指定管理制度の導入時期であり、職員の配置等が決まらず、

業務運営が円滑に行うことができなかったためである。

(2)実施した監査手続

① 担当者へのヒアリング

② 指定管理にかかる協定書等の関係資料の閲覧

③ おとしよりすこやかセンター南部花園館の現地視察

(3)監査の結果及び意見

① 使用しない据置型車椅子式入浴装置の撤去を検討すべき(意見)

おとしよりすこやかセンター南部花園館を視察した際、専用車椅子で座

位のまま入浴できる据置型車椅子入浴装置が故障して未利用のままとなっ

ていた。市によると、故障した入浴装置の隣に、車椅子に乗ったままスロ

ープを下って入浴できる浴槽があるため、修繕の必要性がなく利用者の処

遇に影響を与えることもないことから、撤去していないとのことであった。

施設を有効に利用するため、費用対効果を考慮のうえ、故障した据置型

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車椅子入浴装置の撤去を検討すべきである。

② 指定管理者評価シートの評価基準の見直しを検討すべき(意見)

施設の指定管理者運営状況については年に1度、外部の評価委員が施設

を訪問し、施設の管理運営状況やサービス向上・利用促進策の実施状況、収

支状況について評価を行い、その評価結果を市のホームページで公表して

いる。

評価委員が評価を行う際の評価の視点と評価基準は、次のとおり定めら

れている。

評価の視点

①利用者(市民)サービスの向上

②市費の縮減効果

③総合評価

評価基準

A:事業計画で想定した以上の効果が得られている。

B:おおむね事業計画どおりの効果が得られている。

C:事業計画で想定した効果が得られていない。

平成 24 年度のおとしよりすこやかセンター5館の評価結果を閲覧したと

ころ、上記3つの評価は全館B評価であった。所管局にとって施設ごとの

入所利用率は重要な指標と考えられるが、入所利用率 99.4%の北部館も

90.5%の東部館も同じB評価で評価結果に差はみられない。

市のガイドラインに基づいた評価を行ったとの説明を受けたものの、何

をもって「おおむね事業計画どおりの効果が得られているとしている」の

かの基準が不明確である。

各館が施設運営に関する目標を定め、その達成度合いを評価して次の指

定管理者負担金の額に反映するなど、市のガイドライン改定への働きかけ

も視野に入れ、また、ガイドライン改定のきっかけとすべく、指定管理者

の評価制度をより効果のあるものに見直すことを検討すべきである。

③ 入所利用率向上の取組みを強化すべき(意見)

介護老人保健施設の経営分析参考指標(独立行政法人福祉医療機構)に

よると、平成 24 年度における介護老人保健施設の入所利用率の全国平均は

95.0%であった。

これに対し、平成 24 年度の西部館、東部館及び南部花園館の入所利用率

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は、いずれも 90%から 93%程度に留まっており、全国平均値を下回ってい

る状況である。入所利用率を向上させるべく、さらに取組みを強化すべき

である。

4.養護老人ホーム(老人保護措置費)

(1)概要

養護老人ホームとは、環境上の理由及び経済的理由により自宅での養護

を受けることが困難な者を受入れる施設である。

市(区保健福祉センター長)は、原則として 65 歳以上で環境上の理由及

び経済的理由により居宅で養護を受けることが困難な者について養護老人

ホームへの入所措置を行っている。また、やむを得ない事由により事業者

と契約をして介護サービスを利用することなどが期待しがたい場合、その

事由が解消し、介護保険法に基づくサービスが受けられるようになるまで

の間、特別養護老人ホーム等への入所措置を行っている。

養護老人ホームは介護保険施設ではないため、原則として介護保険から

の給付が受けられないことから、市はこれらの措置に要する費用を老人保

護措置費として、被措置者が入所している施設に支弁している。

老人保護措置費の事業概要等は次のとおりである。

事業概要

入所することによって生じた事務費(人件費や施設維持管理等)及び入所者の

生活費等を市が措置費として支弁する。各施設への支払は各月ごとに概算払いに

より行い、各月単位で実績に応じて精算を行っている。

市内の養護老人ホームは 13 箇所であり、その他、市外の養護老人ホームに入所

しているケースもあるため、平成 24年度の措置費支弁先は計 80施設である。

根拠法令等

老人福祉法

老人福祉法第 10 条の4第1項及び第 11 条第1項第2号の規定に基づく措置にか

かる要綱

大阪市老人福祉施設小遣金支給要綱

歳出額

(千円)

平成 22年度 平成 23年度 平成 24年度 平成 25年度

当初予算額 3,088,134 3,041,277 3,068,731

決算額 2,861,328 2,764,599 2,709,346

本事業の主な指標の推移

指標 平成 20年度 平成 21年度 平成 22年度 平成 23年度 平成 24年度

被措置者各月延

べ人数(人) 17,966 17,478 16,995 16,234 15,708

被措置者年度末

人数(人) 1,465 1,437 1,390 1,307 1,297

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(2)実施した手続

① 担当者へのヒアリング

② 平成 24年度の被措置者 14名の決定手続に関係する資料の閲覧

(3)監査の結果及び意見

① 小遣金の受給確認方法を強化すべき(意見)

措置を受けている施設入所者のうち、年金を受給していない者などは毎

月 2,000 円の小遣金を受け取ることができる。小遣金の支給は、市が支給

対象者から受領委任を受けた施設長へ小遣金を支給し、各施設長が小遣金

を被措置者へ支給する方法によって行なわれる。一旦、各施設長を経由し

て小遣金が支給されるため、小遣金を受け取るべき被措置者へ現金が実際

に渡されていることを市が確認することが重要となる。

この点、市は大阪市老人福祉施設小遣金支給要綱の定めのとおり、各施

設長から小遣金受給台帳の提出を受け、当該小遣金受給台帳に小遣金受給

者の受領印が押されていることを確認し、さらに市担当者は小遣金受給台

帳と小遣金受領者の小遣帳と照合すること等、様々な角度から小遣金が被

措置者に渡されたかどうかの確認に努めている。

養護老人ホーム全 13 施設のうち、任意に抽出した2施設にかかる小遣金

受給台帳を閲覧したところ、受給年月日は施設の担当者により記載されて

いるか、もしくは受給者の氏名があらかじめ印字された様式となっていた。

受領者は押印するのみであり、職員が代理で押印してもその事実は確認で

きず、本人が受領した証拠としては必ずしも十分とはいえない。

小遣金受給台帳の「小遣金の受領日」及び「氏名」を原則として本人に

自筆で記載させること、また、やむなく養護老人ホームの担当者が代筆し

た場合には代筆であることを明記させることで、市は被措置者本人が小遣

金を受領したことを確認すべきである。

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5.老人憩の家及び老人福祉センター

(1)概要

高齢者のいきがい作りを支援する施設として、市内には老人憩の家と老

人福祉センターが設置されている。両施設の概要は次のとおりである。

老人憩の家 老人福祉センター

所管課 いきがい課 いきがい課

根拠法令等 老人憩の家設置運営要綱

(厚生労働省社会局長通知) 老人福祉法

施設の

設置目的

地域において高齢者に対し、教養の

向上、レクリエーションなどのための

場を提供することにより、高齢者の心

身の健康の増進を図る。

地域の高齢者が、健康で明るい生活

を営むために必要な生活相談や健康相

談などの各種の相談を行うほか、教養

の向上およびレクリエーションの機会

の提供、老人クラブの援助等を通じて

老人の社会的活動の促進を図る。

施設で行わ

れる主な事

・民謡、日本舞踊、体操等の趣味の会

・介護等の講習会や研修会

・軽食を提供するふれあい喫茶活動

・バザー

・もちつき

・生活相談、健康相談

・高齢者健康体操

・パソコン、書道、園芸、俳句、詩

吟、民謡、卓球、手芸、コーラス、陶

芸、太極拳などの各種教養講座

設置数 384箇所(うち、133箇所は市有建物) 26箇所(原則各区 1箇所)

設置単位 小学校下 各区1箇所(北区、中央区は2箇所)

特徴

町会・地域社協が設置することによっ

て、より地域に根ざした施設としてい

る。

各区に置ける高齢者の生きがいづくり

の拠点施設である。

北区堀川老人憩の家(2F)・集会所(1F) 北区北老人福祉センター

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佃会館 西淀川老人福祉センター

次の写真の3棟のうち、中央と右の建物が西淀川区老人福祉センター、左の

建物が佃会館である。

【西淀川区老人福祉センターと老人憩の家佃会館】

(2)実施した手続

① 担当者へのヒアリング

② 関係資料の閲覧

③ 北区、東成区、西成区、西淀川区の老人福祉センターの現地視察

④ 北区 堀川老人憩の家の現地視察

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(3)監査の結果及び意見

① 老人憩の家と老人福祉センターの役割を再編すべき(意見)

(1)概要に記載したとおり、老人憩の家と老人福祉センターとでは設

立の経緯が異なるものの、高齢者のいきがい作りを支援するという意味で

の設置目的や趣味の会・教養講座等、実施されている事業の大半が重複し

ている。

また、老人憩の家は小学校区ごとに概ね 1 箇所設置されていることから、

市内に 384 箇所あり、老人福祉センターの周辺に老人憩の家が設置されて

いるケースも多い。実際、視察した西淀川区の老人福祉センターの隣には、

佃会館老人憩の家が設置されていた。

このように狭い範囲で機能面が重複する施設が多数存在することで、そ

れぞれに管理運営コストが必要となり、非効率であるといえる

また、各老人福祉センターの 1 日平均利用人数は次のとおりであり、中

央区南の 56.8 人から西成区の 279.4 人までおよそ5倍の開きがあることか

ら、老人福祉センターの活用度にも差があるといえる。

【老人福祉センター1日平均利用人員】

(単位:人)

所在地 利用人員 所在地 利用人員 所在地 利用人員 所在地 利用人員

北区北 92.5 西区 98.0 東淀川区 135.2 阿倍野区 85.0

北区大淀 86.1 港区 108.7 東成区 131.4 住之江区 94.9

都島区 106.5 大正区 112.1 生野区 181.7 住吉区 138.3

福島区 91.7 天王寺区 92.2 旭区 128.5 東住吉区 124.7

此花区 102.3 浪速区 61.4 城東区 121.4 平野区 127.4

中央区東 72.2 西淀川区 118.5 鶴見区 190.8 西成区 279.4

中央区南 56.8 淀川区 88.8

他都市における老人福祉センター及び老人憩の家等の設置状況は、次の

とおりである。

大阪市 横浜市 名古屋市 神戸市 京都市

老人福祉

センター

26箇所 18箇所 16箇所 なし 17箇所

老人憩の家 384箇所 4箇所 1箇所 24箇所 5箇所

類似施設

地域ケア

プラザ

128箇所

地域福祉

センター

189箇所

老人クラ

ブハウス

120箇所

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このような現状に鑑み、老人福祉センターで実施されている事業を周辺

の老人憩いの家などに機能移転するなど、両施設の役割を再編すべきであ

る。また、市が設置した老人憩の家の建物を地域自治会等へ移譲すること

なども、合わせて検討すべきである。

老人憩の家は地域集会施設(地域ごとの小規模な公民館)と併設されて

いる所も多く、老人憩の家の利用を高齢者に限定せず、地域集会施設と合

わせて「地域福祉活動の拠点」として再編することや、市政改革プランに

記載されている事項も踏まえて再編の検討をすすめるべきである。

なお、市政改革プランでは、老人福祉センターに関して次の記載がある。

【存置施設の検討】

・大規模修繕や建替の時期を見据え、維持管理に係る経費の他の施策・事

業に係る経費への活用の必要性も考慮しながら、ブロックごとに存置する

施設を検討する。

・新しい基礎自治体を見据えた施設の適正配置。

【機能の再編等】

・高齢者いきがい支援機能の集約。

老人憩の家、区保健福祉センター等への機能移転の検討が必要。

施設がないと機能維持できないのか検証する必要がある。

区施設としての機能を、老人憩の家、区保健福祉センター等で代替する

ことを検討する必要がある。

・施設の多目的化の検討

市民学習センター等の機能移転の受け皿など他施設の機能を集約するこ

とにより、施設の付加価値を高め、日常的な利用拡大を目指す必要があ

る。

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6.軽費老人ホームサービス提供費補助金

(1)概要

事業名 軽費老人ホームサービス提供費補助金 所管課 高齢施設課

根拠法令等 老人福祉法、大阪市軽費老人ホームのサービスの提

供に要する費用補助金交付要綱 開始年度

事業目的

老人福祉法第 20 条の6に規定する軽費老人ホーム(「軽費老人ホームの設備及

び運営に関する基準」(厚生労働省令第 107 号)に定める軽費老人ホーム及び附則

第2条第1項第1号に定める軽費老人ホームA型に限る。)を大阪市内に設置し、

かつ運営する社会福祉法人に対し、サービスの提供に要する費用に充当する経費

を補助することにより、利用者の処遇向上を図ることを目的とする。

事業概要

施設利用者の処遇向上を図るため、市はホームを運営する事業者にサービス提

供にかかる費用を補助する。補助対象軽費は、人件費、修繕費、購入費等の事務

経費。

各施設が支出した対象軽費のうち実際に補助される金額は、施設ごとのサービ

ス提供費実支出額とサービス提供費基準額とを比較し、いずれか少ない方の額か

ら当該年度に施設で徴収した利用者からの利用料を控除した額となる。

平成 24 年度は全 20 施設(軽費老人ホーム 19、経過的軽費老人ホーム 1)に対

して補助を行っている。

歳出額

(千円)

平成 22年度 平成 23年度 平成 24年度 平成 25年度

当初予算額 591,143 525,958 587,289

決算額 513,277 511,887 512,923

(2)実施した手続

① 担当者へのヒアリング

② 平成 24年度の補助金交付先 20箇所のうち2箇所の実績報告書等の閲覧

(3)監査の結果及び意見

特に記載すべき事項はなかった。

7.生活支援ハウス運営事業

(1)概要

事業名 大阪市生活支援ハウス運営事業 所管課 高齢施設課

根拠法令等 大阪市生活支援ハウス運営事業実施要領 開始年度

事業目的

大阪市内に住所を有する 60 歳以上の単身もしくは夫婦のみの世帯であって、独

居に不安のある高齢者を対象に介護支援機能、居住機能及び交流機能を総合的に

提供することにより、高齢者が安心して健康で明るい生活を送れるように支援

し、もって高齢者の福祉の増進を図る。

事業概要

市は生活支援ハウスの運営を民間事業者に委託し、要綱に定められた金額から

利用者負担額(所得に応じて決まる額)を差し引いた残額を委託料として事業者

へ支払う。

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基準額は利用人員に応じて次に掲げる額である。

利用人員 5人以下の施設 6,496,000円

利用人員 6人以上 10人以下の施設 8,361,000円

利用人員 11人以上の施設 13,197,000円

平成 24年度は、全 4箇所の運営を委託している。

歳出額

(千円)

平成 22年度 平成 23年度 平成 24年度 平成 25年度

当初予算額 47,604 48,084 47,940

決算額 46,714 46,463 45,249

(2)実施した手続

① 担当者へのヒアリング

② 2施設の平成 24年度精算報告書等関係資料の閲覧

(3)監査の結果及び意見

特に記載すべき事項はなかった。

8.特別養護老人ホーム建設・緊急整備促進助成事業等

(1)概要

事業名

特別養護老人ホーム建設助成事業

特別養護老人ホーム緊急整備促進助成事業

養護老人ホーム建設助成事業

所管課 高齢施設課

根拠法令等 大阪市民間老人福祉施設等整備費補助要綱

大阪市施設開設準備経費補助金交付要綱 開始年度

事業目的 社会福祉法人が行う特別養護老人ホーム建設経費に対して助成することによ

り、整備促進を図り、高齢者の福祉の向上に資することを目的とする。

事業概要

特別養護老人ホーム、養護老人ホームの建設及び開設準備経費のうち、次の金額

を上限に補助金を交付する。

建設費(特別養護老人ホーム建設助成事業)

総定員 1 名あたり 3,712,000 円

建設費(養護老人ホーム建設助成事業)

総定員 1 名あたり 4,083,000 円

開設準備経費(特別養護老人ホーム緊急整備促進助成事業)

入所定員 1 名あたり 600,000 円

事業費

(千円)

平成 22 年度 平成 23 年度 平成 24 年度 平成 25 年度

当初予算額 1,285,889 2,311,664 1,861,046

決算額 1,227,963 2,170,015 1,820,654

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(2)実施した手続

① 担当者へのヒアリング

② 平成 24年度補助金交付決定先のうち、下記の実績報告書等の閲覧

・特別養護老人ホーム 1箇所

・養護老人ホーム 1箇所

(3)監査の結果及び意見

特に記載すべき事項はなかった。

9.高齢者福祉関連施設の改修工事

(1)概要

平成 24 年度における高齢者福祉関連施設の改修工事の契約方法は、市が

直接入札等の契約事務を行う場合と、財団法人大阪市建築技術協会(以下、

協会という)が「市設建築物の整備保全業務にかかる業務委託」に基づき

契約事務を行う場合とに分けられる。

協会が契約事務を行う場合には、高齢者福祉関連施設を所管する福祉局

から都市整備局へ依頼し、都市整備局から協会へ業務実施の指示を行う。

協会は、市と同様の方法で、発注・入札を行い、契約を締結しているとの

市の説明であった。

なお、平成 25年度からは全て直接市が入札等の契約事務を行っている。

平成 24 年度における高齢者福祉関連施設の主な改修工事は次のとおりで

ある。

【高齢者福祉関連施設の主な改修工事】

事業名 予算額 決算額

老人福祉センターリフレッシュ

・平野区老人福祉センター空調設備改修工事

(市の直接契約) など

30,449千円 20,439千円

市立介護老人保健施設の整備

・おとしよりすこやかセンター南部花園館

電気錠システム改修(協会委託) など

49,077千円 25,348千円

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(2)実施した手続

① 担当者へのヒアリング

② 平野区老人福祉センター空調設備改修工事の契約書等の閲覧

③ おとしよりすこやかセンター南部花園館電気錠システム改修工事の契約

書等の閲覧

(3)監査の結果及び意見

特に記載すべき事項はなかった。