2.7.3 情報公表用 案) 2005.10.7...2.7.3_情報公表用(案)_2005.10.7.doc 2.7 臨床概要...

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2.7 臨床概要 ③臨床的有効性の概要 277 2.7.3.1.2 海外で実施された試験(参考) 臨床において薬効を評価するのに必要とされる試験デザイン等に国内と欧米に違いがみられる ことから,アリピプラゾールの臨床開発において有効性をブリッジングすることを目的とした試 験は行わず,国内と欧米を中心とする海外の試験はそれぞれ独立に実施した。 国内ではいろいろな治療期を含めた形での実薬対照薬との有効性の比較が検証試験として求め られている。一方,欧米では,急性増悪期におけるプラセボを対照とした短期投与試験での有効 性の検証が承認に必須である。また,欧州では効果の維持を示す試験が必須とされている。開発 方法の違いは,統合失調症患者の置かれている医療環境やプラセボ使用への倫理観,対照薬の考 え方,有効性主要評価項目等の違いやガイドライン・ガイダンスの有無等を反映していると考え られる。 しかしながら,海外で実施された試験は有効性評価においてプラセボとの比較が可能であるこ と,固定用量を用いた試験が多く用量別の有効性に関する情報が得られること,急性増悪期に焦 点を当てた検討が可能であること,長期投与時の対照薬との比較が可能であることなどから,参 考資料として役立つものと考え,海外で実施された有効性に関する試験を提示することとした。 海外で実施されたアリピプラゾールの統合失調症患者に対する有効性を検討した 8 試験を図 2.7.3.1.2 に示した。 短期試験 5 試験と長期試験 3 試験で構成されている。 短期試験 5 試験はいずれもプラセボ対照試験であり,第 II 相試験 2 試験(31-93-202:漸増法, 31-94-202:固定用量:添付資料番号 5.3.5.1-065.3.5.1-07)において 368 例が,第 III 相試験 3 験(31-97-20131-97-202 及び CN138-001:添付資料番号 5.3.5.1-035.3.5.1-04 及び 5.3.5.1-05)に おいて 1203 例がそれぞれ有効性解析対象となった。第 III 相試験はピボタルなものと考える。 長期試験 3 試験では長期ハロペリドール対照試験 2 試験(31-98-21731-98-304-01 :添付資料番 5.3.5.1-09)及び長期プラセボ対照試験(CN138-047 試験:添付資料番号 5.3.5.1-08)において合 1580 例が有効性解析対象となった。これら統合失調症患者を対象とした 8 試験を合計して得ら れた有効性解析対象は 3151 例であり,そのうちアリピプラゾール投与例は 1886 例,プラセボ投 与例は 554 例,ハロペリドール投与例は 616 例,リスペリドン投与例は 95 例であった。 長期試験のうちハロペリドールを対照とした 31-98-217 試験と 31-98-304-01 試験はほぼ同じ試験 デザインであり,両者を併せて解析を行う旨が試験計画書上に明記されている試験である。

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    2.7 臨床概要 ③臨床的有効性の概要

    277

    2.7.3.1.2 海外で実施された試験(参考)

    臨床において薬効を評価するのに必要とされる試験デザイン等に国内と欧米に違いがみられる

    ことから,アリピプラゾールの臨床開発において有効性をブリッジングすることを目的とした試

    験は行わず,国内と欧米を中心とする海外の試験はそれぞれ独立に実施した。

    国内ではいろいろな治療期を含めた形での実薬対照薬との有効性の比較が検証試験として求め

    られている。一方,欧米では,急性増悪期におけるプラセボを対照とした短期投与試験での有効

    性の検証が承認に必須である。また,欧州では効果の維持を示す試験が必須とされている。開発

    方法の違いは,統合失調症患者の置かれている医療環境やプラセボ使用への倫理観,対照薬の考

    え方,有効性主要評価項目等の違いやガイドライン・ガイダンスの有無等を反映していると考え

    られる。

    しかしながら,海外で実施された試験は有効性評価においてプラセボとの比較が可能であるこ

    と,固定用量を用いた試験が多く用量別の有効性に関する情報が得られること,急性増悪期に焦

    点を当てた検討が可能であること,長期投与時の対照薬との比較が可能であることなどから,参

    考資料として役立つものと考え,海外で実施された有効性に関する試験を提示することとした。

    海外で実施されたアリピプラゾールの統合失調症患者に対する有効性を検討した 8 試験を図

    2.7.3.1.2 に示した。

    短期試験 5 試験と長期試験 3 試験で構成されている。

    短期試験 5 試験はいずれもプラセボ対照試験であり,第 II 相試験 2 試験(31-93-202:漸増法,

    31-94-202:固定用量:添付資料番号 5.3.5.1-06,5.3.5.1-07)において 368 例が,第 III 相試験 3 試

    験(31-97-201,31-97-202 及び CN138-001:添付資料番号 5.3.5.1-03,5.3.5.1-04 及び 5.3.5.1-05)に

    おいて 1203 例がそれぞれ有効性解析対象となった。第 III 相試験はピボタルなものと考える。

    長期試験 3 試験では長期ハロペリドール対照試験 2 試験(31-98-217,31-98-304-01:添付資料番

    号 5.3.5.1-09)及び長期プラセボ対照試験(CN138-047 試験:添付資料番号 5.3.5.1-08)において合

    計 1580 例が有効性解析対象となった。これら統合失調症患者を対象とした 8 試験を合計して得ら

    れた有効性解析対象は 3151 例であり,そのうちアリピプラゾール投与例は 1886 例,プラセボ投

    与例は 554 例,ハロペリドール投与例は 616 例,リスペリドン投与例は 95 例であった。

    長期試験のうちハロペリドールを対照とした31-98-217試験と31-98-304-01試験はほぼ同じ試験

    デザインであり,両者を併せて解析を行う旨が試験計画書上に明記されている試験である。

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    2.7 臨床概要 ③臨床的有効性の概要

    278

    統合失調症

    N=3151

    短期試験 N=1571

    長期試験 N=1580

    第 II 相試験 N=368

    ピボタル第 III 相試験

    N=1203

    31-93-202

    (5.3.5.1-06) 31-97-201

    (5.3.5.1-03) 31-98-217a)

    (5.3.5.1-09)

    31-94-202

    (5.3.5.1-07) 31-97-202

    (5.3.5.1-04) 31-98-304-01a)

    (5.3.5.1-09)

    CN138-001

    (5.3.5.1-05) CN138-047 (5.3.5.1-08)

    N:有効性解析対象 a):ほぼ同じ試験デザインで事前に 1 試験として解析するとされていた。 ( ) 内は,添付資料番号を示す。

    図 2.7.3.1.2(海外)アリピプラゾールの統合失調症患者に対する有効性試験:有効性解析対象

    その他の長期試験として非盲検で認知機能を検討した 31-98-213 試験,主に体重への影響を検討した CN138-002

    試験及び対照薬が溶出の規格を満たしていないことから途中で中止された 31-97-301 試験がある。

    <MAA addendum-ISS/ISE(添付資料番号 5.3.5.4-29)Figure 1B より作成>

    短期プラセボ対照試験の試験デザインを表 2.7.3.1.2-1 に示し,長期試験の試験デザインを表

    2.7.3.1.2-2 に示した。

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    2.7 臨床概要 ③臨床的有効性の概要

    279

    表 2.7.3.1.2-1(海外)試験デザイン:有効性試験:短期プラセボ対照試験 第 II 相試験 ピボタル第 III 相試験 プロトコール

    31-93-202

    31-94-202

    31-97-201

    31-97-202

    CN138-001

    対象患者

    統合失調症 (急性増悪期)

    (DSM-III-R)

    統合失調症 (急性増悪期)

    (DSM-IV)

    統合失調症及び

    統合失調感情障害

    (急性増悪期)

    (DSM-IV)

    統合失調症及び 統合失調感情障害 (急性増悪期)

    (DSM-IV)

    統合失調症 (急性増悪期)

    (DSM-IV)

    地域 米国 米国 米国 米国 米国/カナダ

    投与期間 4 週 4 週 4 週 4 週 6 週

    対照薬群 プラセボ 経口投与

    プラセボ 経口投与

    プラセボ 経口投与

    プラセボ 経口投与

    プラセボ 経口投与

    実薬群

    ハロペリドール

    漸増 (5~20 mg/日)

    経口投与 1 日 1 回

    ハロペリドール

    10 mg/日

    経口投与 1 日 1 回

    ハロペリドール

    10 mg/日

    経口投与 1 日 1 回

    リスペリドン 6 mg/日

    経口投与 1 日 2 回

    なし

    アリピプラゾール群

    漸増 (5~30 mg/日)

    経口投与 1 日 1 回

    固定用量 (2,10,30 mg/日)

    経口投与 1 日 1 回

    固定用量 (15,30 mg/日)

    経口投与 1 日 1 回

    固定用量 (20,30 mg/日)

    経口投与 1 日 1 回

    固定用量 (10,15,20 mg/日)

    経口投与 1 日 1 回

    主要評価項目

    第 4 週での BPRS total score の投与前からの平均変

    化量,CGI 重症度1 点以上改善した症例数/割合

    第 4 週での BPRS core score の投与前からの平均変

    化量,CGI 改善度

    第 4 週での PANSS全尺度合計点,

    PANSS 陽性尺度合計点,CGI 重症度の投与前からの平

    均変化量

    第 4 週での PANSS全尺度合計点,

    PANSS 陽性尺度合計点,CGI 重症度の投与前からの平

    均変化量

    第 6 週での PANSS全尺度合計点の投

    与前からの平均変

    化量

    計画した標本の大き

    さ 75 例 300 例 360 例 360 例 400 例

    割付例数 /有効性解析対象数

    103/101 例 272/267a)例 414/401 例 404/392 例 420/410 例

    割付比 (被験薬群:実薬対

    照群:プラセボ群) 1:1:1 1:1:1:1:1 1:1:1:1 1:1:1:1 1:1:1:1

    主要評価項目以外の

    有効性評価項目

    第 4 週での PANSS全尺度合計点,

    PANSS 陰性尺度合計点,BPRS core score,CGI 改善度,有効率,無効また

    は著明悪化による

    中止例数,

    CGI-Efficacy Index

    第 4 週での PANSS全尺度合計点,

    PANSS 陰性尺度合計点,BPRS total score,CGI 重症度,有効率,無効また

    は著明悪化による

    中止時期,

    CGI-Efficacy Index

    第 4 週での PANSS陰性尺度合計点,

    CGI 改善度,PANSS 由来 BPRS core score,有効率,治療への反応時

    期,無効による中

    止時期

    第 4 週での PANSS陰性尺度合計点,

    CGI 改善度,PANSS 由来 BPRS core score,有効率,治療への反応時

    期,無効による中

    止時期

    第 6 週での PANSS由来 BPRS core score, PANSS 陰性尺度合計点,

    PANSS 陽性尺度合計点,CGI 重症度,CGI 改善度,有効率,中止率

    a):31-94-202 試験での施設 003 の患者を含めていない

    <ISE(添付資料番号 5.3.5.4-24)Table 5A.より作成>

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    2.7 臨床概要 ③臨床的有効性の概要

    280

    表 2.7.3.1.2-2(海外)試験デザイン:有効性試験:長期試験 プロトコール

    31-98-217 及び 31-98-304-01 (長期ハロペリドール対照試験)

    CN138-047 (長期プラセボ対照試験)

    対象患者 統合失調症

    (急性増悪期) (DSM-IV)

    統合失調症 (慢性安定期) (DSM-IV)

    地域 米国及び世界各国 米国及び世界各国 投与期間 52 週 26 週

    対照薬群

    ハロペリドール 10 mg/日 (7 mg/日に減量可能)経口投与

    1 日 1 回

    プラセボ 経口投与

    アリピプラゾール群 30 mg/日(20 mg/日に減量可能)

    経口投与 1 日 1 回

    15 mg/日 経口投与 1 日 1 回

    主要評価項目 反応例における反応維持消失時間 無作為化から再発までの時間 反応維持に失敗した患者の割合で

    表した対照群と被験薬群との差 52 週時点で 12%(ハザード比=0.64)

    ――

    対照群と被験薬群の再発率 ―― 投与 6 箇月までにプラセボ群 55%,アリピプラゾール群 32%

    計画された標本の大きさ 1000 例 再発:86 事象,無作為化患者 212 例割付総数/有効性解析対象 1294/1283 例 310/297 例

    割付比(被験薬群:対照群) 2:1

    (アリピプラゾール:ハロペリドール)

    1:1 (アリピプラゾール:プラセボ)

    主要評価項目以外の有効性評価項目

    全割付け患者を対象とした反応維持消

    失時間(反応維持ができなくなくなるま

    での時間), 第 8 週,26 週及び 52 週で治療中かつ反応している患者の割合, 第 8 週,26 週,52 週での PANSS 全尺度合計点,PANSS 陽性尺度合計点,PANSS陰性尺度合計点,CGI 重症度,CGI 改善度及び MADRS 合計点,最初の反応時期,治験薬の無効又は有害事象による中

    止時期

    第 6 週,26 週での PANSS 全尺度合計点,PANSS 陽性尺度合計点,PANSS陰性尺度合計点,PANSS 由来 BPRS core score,CGI 重症度,CGI 改善度

    <ISE(添付資料番号5.3.5.4-24)Table 5B及びClinical Study Report(CN138-047試験:添付資料番号5.3.5.1-08)より作成>

    海外で実施された試験の試験デザインを概括した。

    1)対照薬の選択

    海外においては,短期試験ではいずれもプラセボを対照として有効性の検証を行った。

    短期試験でのハロペリドール群,リスペリドン群は,プラセボ群との比較により,試験が検

    証試験として十分なものであるかを確認するためのものである。これらの実薬群は,統合失調症

    に対し有効性が証明されており,かつ治療上汎用されている薬剤であることから選択した。

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    2.7 臨床概要 ③臨床的有効性の概要

    281

    2)対象患者の選択

    選択基準

    以下の特性を有する患者を試験に登録することとした。

    ・DSM-IV(31-93-202(添付資料番号 5.3.5.1-06)では DSM-III-R)で定義される統合失調

    症と診断された患者で,長期試験の CN138-047 試験(添付資料番号 5.3.5.1-08)では慢性

    安定期,それ以外の試験では急性増悪期の患者とした。なお,2 試験(31-97-201 及び

    31-97-202:添付資料番号 5.3.5.1-03 及び 5.3.5.1-04)においては統合失調感情障害患者を

    含めた。

    ・18 歳以上 65 歳未満(CN138-001(添付資料番号 5.3.5.1-05)では 18 歳以上)の男女とし

    た。妊娠能力のある女性については妊娠検査陰性でなければならず,許容できる避妊法

    をしなければならず,また妊娠も授乳もしてはいけないとした。

    ・抗精神病薬治療に以前に反応があったものを対象とした。

    無作為化(投与前測定来院時)に際しては追加の選択基準として,

    PANSS 全尺度合計点で最低 60(第 III 相試験,長期試験),BPRS total score で最低 30

    (31-93-202:添付資料番号 5.3.5.1-06),又は BPRS total score で最低 36(31-94-202:添付

    資料番号 5.3.5.1-07),かつ陽性症状を評価する項目のうち 2 項目以上が「中等度」とされ

    るものを加えた。

    除外基準

    下記の特性が一つでも認められる患者は試験に登録しないこととした。

    ・現在の診断が薬物治療を必要とする統合失調症又は統合失調感情障害ではないもの

    ・抗精神病薬治療が困難と思われるもの

    ・試験中に併用禁止薬剤が必要になりそうなもの

    ・過去 1 箇月以内(31-93-202 及び 31-94-202 では 2 箇月以内,CN138-001 及び CN138-047

    では 3 箇月以内)にいかなるものでも明らかな物質使用障害(向精神薬やアルコールな

    どの依存や乱用)としての DSM-IV(31-93-202 では DSM-III-R)基準に当てはまるもの

    ・明らかに自殺の危険を示すもの

    ・以前にアリピプラゾールの試験に参加したことのあるもの

    ・患者を重大な有害事象の過度の危険にさらすような,あるいは試験期間中の安全性や有

    効性の評価に影響してしまうような医学的状況の既往又は事実があったもの

    ・臨床検査(尿の薬物検査を含む)やバイタルサイン,心電図所見で臨床的に重要な異常

    があるもの

    無作為化(投与前測定来院時)に際しては追加の除外基準として

    ・持効性抗精神病薬の治療を最近受けた患者(効果が持続するとされる期間+1 週間以下)

    ・過去 1 箇月以内に治験薬の試験に参加した患者

    を設定した。

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    2.7 臨床概要 ③臨床的有効性の概要

    282

    3) Run-in 期間

    適格例について,プラセボ投与あるいは他の方法により前治療抗精神病薬を wash out し,精神

    症状の正確な投与前値をとるようにした。Wash out 後,患者は二重盲検試験の各薬剤群に無作為

    割付けされた。

    4)用法・用量

    短期試験のうち,31-93-202 試験(添付資料番号 5.3.5.1-06)では,1 日 5mg から開始し,30mg

    まで漸増することとし,それ以外の試験では 1 日 2mg,10mg,15mg,20mg,30mg のいずれか

    の固定用量を用いた複数の用量群を設けた。長期試験ではハロペリドール対照の 31-98-217 と

    31-98-304-01 試験(添付資料番号 5.3.5.1-09)では 1 日 30mg,プラセボ対照の CN138-047 試験(添

    付資料番号 5.3.5.1-08)では 1 日 15mg とした。

    アリピプラゾールの用法は全ての試験において 1 日 1 回とした。

    5)投与期間

    短期試験 5 試験のうち,CN138-001 試験(添付資料番号 5.3.5.1-05)のみ 6 週間投与であり,

    他の短期試験は 4 週間投与で行われた。長期試験ではハロペリドール対照の 31-98-217 と

    31-98-304-01 試験(添付資料番号 5.3.5.1-09)が 52 週間投与,プラセボ対照の CN138-047 試験(添

    付資料番号 5.3.5.1-08)は 26 週間投与で行われた。

    6)その他のエンリッチメント法

    31-98-217 試験/31-98-304-01 試験(添付資料番号 5.3.5.1-09)において,アリピプラゾール群

    とハロペリドール群を 2 対 1 に患者を割付けた以外にエンリッチメント法は用いていない。

    7) 採用した有効性の評価尺度

    有効性の評価尺度としては,国内で実施された試験と同様に BPRS 19,PANSS 20 が用いられ,

    さらに CGI 21,MADRS 22が海外で実施された試験で独自に用いられた。

    ①BPRS(簡易精神症状評価尺度)

    海外では臨床開発初期の試験において用いられ,31-93-202 と 31-94-202 試験(添付資料番号

    5.3.5.1-06 と 5.3.5.1-07)で用いられている。その後の海外での試験では使われていない。

    なお,BPRS を用いた試験では BPRS core score も用いて分析した。

    ②PANSS(陽性・陰性症状評価尺度)

    海外で実施された全ての有効性試験で用いられた。

    なお,PANSS を用い BPRS を用いなかった試験では,PANSS 由来 BPRS core score が分析さ

    れた試験もある。PANSS 由来 BPRS core score とは,PANSS の項目から取り出した陽性尺度 4

    項目(妄想,概念の統合障害,幻覚による行動,猜疑心)の重症度合計である。

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    2.7 臨床概要 ③臨床的有効性の概要

    283

    ③CGI(Clinical Global Impression)

    CGI は患者の状態全般についての熟練した観察者の印象を反映する。 CGI-I

    (CGI-Improvement:CGI 改善度) は,週ごとに評価された。改善度 0 は「評価なし」,1 は「著

    明改善」,2 は「中等度改善」,3 は「軽度改善」,4 は「不変」,5 は「軽度悪化」,6 は「中等

    度悪化」,7 は「著明悪化」である。0 は欠測値用として準備されている。CGI 改善例は著明改

    善か中等度改善のいずれかと定義されている。

    CGI-S (CGI-Severity of Illness:CGI 重症度) は,前値と週ごとに評価された。重症度 0:「評

    価なし」から,1:「正常,全く病気ではない」,2:「境界」,3:「軽症」,4:「中等症」,5:「や

    や重症」,6:「重症」,7:「最も重症」までの 7 段階で評価される。0 は欠測値用として準備さ

    れている。

    ④MADRS(Montgomery Asberg Depression Rating Scale)

    MADRSは,抑うつ性の症状を評価する尺度である。10項目(外観悲哀,悲哀の訴え,精神

    的緊張,睡眠減少,食欲減退,集中困難,無気力,思考不能,悲観的思考及び自殺思考)から

    なり,全項目が,0:「症状なし,正常」から6:「最悪」までの7段階で評価される。MADRS

    合計点数は全10項目の合計で0点から60点の範囲である。

    8)統計的手法

    統合失調症患者に対するアリピプラゾールの有効性を検討する上で行った統計的手法につい

    て概括する。統計解析手法の詳細については各試験の総括報告書で示されている。

    海外で実施された試験の結果については,第 II 相試験(31-93-202 と 31-94-202:添付資料番号

    5.3.5.1-06と5.3.5.1-07),第 III相試験(31-97-201,31-97-202及びCN138-001:添付資料番号5.3.5.1-03,

    5.3.5.1-04 及び 5.3.5.1-05),長期ハロペリドール対照試験(31-98-217 と 31-98-304-01:添付資料

    番号 5.3.5.1-09)及び長期プラセボ対照試験(CN138-047:添付資料番号 5.3.5.1-08)の 4 つの患

    者集団ごとに表示した。

    全ての解析において,5%の水準,両側検定をもって有意とした。多重性の調整は,試験計画

    書で規定されているように主要評価項目でのみ行った。

    ①症例数設定と検出力について

    第 II 相試験(31-93-202 と 31-94-202:添付資料番号 5.3.5.1-06 と 5.3.5.1-07)での標本の大きさ

    は,文献上報告されているハロペリドールの効果と予想される治療効果を基にした。第 III 相試

    験(31-97-201,31-97-202 及び CN138-001:添付資料番号 5.3.5.1-03,5.3.5.1-04 及び 5.3.5.1-05)

    での標本の大きさは,アリピプラゾール群とプラセボ群との間の PANSS 全尺度合計点の予測さ

    れる差及び第 II 相試験のデータからの推定を基にした。

    3 つの第 III 相試験ではともに,最終評価時における PANSS 全尺度合計点の投与前からの平均

  • 2.7.3_情報公表用(案)_2005.10.7.doc

    2.7 臨床概要 ③臨床的有効性の概要

    284

    変化量についてプラセボとアリピプラゾールとの間に 12 の差を検出することとし,検出力を

    90%以上とした。推定標準偏差は 23 とした。31-97-201 試験,31-97-202 試験(添付資料番号

    5.3.5.1-03,5.3.5.1-04)では,対象に統合失調感情障害の患者を含めることにしたため統合失調症

    患者のみを基にした解析を行うための十分な検出力を得る目的で標本の大きさを 400 例に増加

    させた。

    長期試験のうち 31-98-217 試験のデータと,それと並行して行った 31-98-304-01 試験のデータ

    は試験計画書の規定に従い,それらを併せて有効性,安全性の解析を行った(添付資料番号

    5.3.5.1-09)。これらの試験の主要評価項目は「反応維持が消失するまでの時間」であり,168 事

    象(反応維持の消失:再発)を得るにはアリピプラゾール群とハロペリドール群を 2:1 の割合

    で割付けた場合,標本の大きさは 1000 例(31-98-217 で 300 例,31-98-304-01 で 700 例)が必要

    と予測された。この事象の数では,ハザード比を 0.64(52 週時点でのアリピプラゾール群再発

    率を 72%,ハロペリドール群再発率を 60%と仮定)とし,有意水準 0.05 で両側検定とすると,

    再発率における統計的有意差の検出力は 80%になる。そのため標本の大きさを合計 1300 例とな

    るように修正した(31-98-304-01 試験で 300 例を追加)。データベース固定及び盲検解除前の修

    正により,主要評価項目である「反応維持が消失するまでの時間」についての解析を「ITT(Intent

    to Treat)解析」から「反応例における解析」に変更した。最終的な標本の大きさには,908 例の

    反応例を含み,そのうち 183 例において反応維持の消失がみられた。

    長期試験の CN138-047 試験(添付資料番号 5.3.5.1-08)では主要評価項目を無作為化から再発

    までの時間とし,プラセボ群とアリピプラゾール群の間の再発例の割合に 90%の検出力で有意差

    を得るためには 86 事象(再発)が必要とされた。86 事象を得るには 212 例(各群 106 例)を無

    作為割付する必要があると予想した。6 箇月間の再発率をプラセボ群 55%,アリピプラゾール群

    32%,再発以外の理由による脱落率を 25%,1 箇月の登録期間,登録期間終了後 6 箇月間の試験

    期間,再発及び脱落時間の指数分布ならびに両側検定 0.05 水準が仮定された。

    ②解析対象とデータの取扱い

    海外において「無作為化標本」は,薬剤群に無作為に割付けられた全ての患者と定義した。

    全ての有効性解析は「有効性解析対象」を基にしており,それは投与前値があり,少なくとも

    1 つ以上の投与後の有効性/結果の評価(例えば PANSS 又は CGI)がある無作為割付患者から

    なっている。(注:CN138-001 試験の患者では,さらに治験薬を 1 回以上投与されていなければ

    ならないものとした。)

    欠測値を補填するために標準的な LOCF 手順(最終観測値をそれ以降の値に外挿する方法)を

    用いた。CN138-001 試験(添付資料番号 5.3.5.1-05)では,投与 3 週以降で CGI にて効果がみら

    れない患者は,4 週から 6 週の間は非盲検試験に移行しアリピプラゾールの投与を受ける選択権

    があった。これに該当する患者の場合,二重盲検試験時の最終評価時の評価を LOCF データとし

    て使った。

  • 2.7.3_情報公表用(案)_2005.10.7.doc

    2.7 臨床概要 ③臨床的有効性の概要

    285

    ③有効性評価としての解析

    短期プラセボ対照試験

    主要評価項目は,短期プラセボ対照試験間で様々である。

    第 II 相漸増用量試験(31-93-202 試験:添付資料番号 5.3.5.1-06)

    ・最終評価時における BPRS total score の投与前からの平均変化量

    ・最終評価時において CGI 重症度が少なくとも 1 点以上改善した患者の割合

    第 II 相固定用量試験(31-94-202 試験:添付資料番号 5.3.5.1-07)

    ・最終評価時における BPRS core score の投与前からの平均変化量

    ・最終評価時における CGI 改善度の平均値

    PANSS はこれらの試験双方とも評価されている。

    第 III 相試験(31-97-201 及び 31-97-202 試験:添付資料番号 5.3.5.1-03 及び 5.3.5.1-04)

    ・最終評価時における PANSS 全尺度合計点の投与前からの平均変化量

    ・最終評価時における PANSS 陽性尺度合計点の投与前からの平均変化量

    ・最終評価時における CGI 重症度の投与前からの平均変化量

    第 III 相試験(CN138-001 試験:添付資料番号 5.3.5.1-05)

    ・最終評価時における PANSS 全尺度合計点の投与前からの平均変化量

    本資料概要中で示されている,海外で実施されたアリピプラゾールの有効性を裏付ける結果

    は以下の通りである。

    a. 最終評価時における PANSS 全尺度合計点の投与前からの平均変化量

    b. 最終評価時における PANSS 陽性尺度合計点の投与前からの平均変化量

    c. 最終評価時における PANSS 陰性尺度合計点の投与前からの平均変化量

    d. 最終評価時における PANSS 由来 BPRS core score の投与前からの平均変化量

    e. 最終評価時における CGI 重症度の投与前からの平均変化量

    f. 最終評価時における CGI 改善度平均値

    g. 最終評価時における反応例の割合

    h. 週ごとの PANSS 全尺度合計点及び PANSS 陽性尺度合計点の投与前からの平均変化量

    本資料概要で定義する反応例とは,PANSS 全尺度合計点が投与前から 30%以上減少するか,CGI

    改善度が 1(著明改善)又は 2(中等度改善)である患者をいう。h.については短期プラセボ対照

    試験 5 試験のうち固定用量で実施した 4 試験(31-94-202,31-97-201,31-97-202,CN138-001:添

    付資料番号 5.3.5.1-07,5.3.5.1-03,5.3.5.1-04,5.3.5.1-05)のプールしたデータを用いて事後解析し

    た結果を示した。

    長期ハロペリドール対照試験(添付資料番号 5.3.5.1-09)

    31-98-217 及び 31-98-304-01 試験は長期(52 週まで)投与でのアリピプラゾールとハロペリドー

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    2.7 臨床概要 ③臨床的有効性の概要

    286

    ルの有効性の差を明らかにするデザインとした。試験計画書に規定されているように,これらの

    試験の結果は解析の目的のために併合した。

    主要評価項目は反応例における「反応維持が消失するまでの時間」である。反応とは,PANSS

    全尺度合計点の投与前からの 20%以上の減少,CGI 改善度が 5 以下,統合失調症悪化の有害事象

    がないこと,PANSS の精神病関連 4 項目(妄想,概念の統合障害,幻覚による行動,猜疑心)の

    スコアが全て 4 以下であることを指す。反応維持消失とは,(1)3 から 5 日以上あいた 2 回の連

    続した評価において CGI 改善度が 6(中等度悪化)又は 7(著明悪化),(2)統合失調症悪化の有

    害事象,又は(3)3 から 5 日以上あいた 2 回の連続した評価において PANSS の精神病関連 4 項

    目のうち少なくとも 1 項目において 5(やや重度),6(重度),7(最重度)を示したものと定義

    される。「反応維持が消失するまでの時間」算定の時間起点は,割付日とした。

    反応維持消失時間データは Kaplan-Meier 曲線により図を描き,投与前の PANSS 全尺度合計点を

    共変量とし,プロトコールを層別因子とする Cox の比例ハザード回帰モデルを当てはめて解析し

    た(Wald Chi-Square)。反応維持消失に合致しないにもかかわらず試験を中止した反応例,あるい

    は試験を完了して最終評価時に反応維持消失に相当していなかった患者は中止日で打ち切りとし

    て取り扱った。

    「裏付け解析#1」は,反応例及び不反応例を含んだ全割付け患者を基にしている。反応した患

    者については,主要解析と同じように消失と打ち切りが定義された。全く反応しない患者は消失

    者として数え,その消失時期は試験中止終了日付とした。消失時間は割付け日から算定した。

    「裏付け解析#2」は,8 週,26 週及び 52 週において各薬剤群に割付けられた全患者のうち未

    だ治療を受けている患者の割合及び割付け全患者のうち反応例の割合について Fisher の直接検定

    に基づき 2 薬剤群間での比較を行った。

    長期プラセボ対照試験(添付資料番号 5.3.5.1-08)

    CN138-047 試験は慢性安定期の統合失調症患者を対象としたプラセボ対照の長期投与試験であ

    る。短期試験の結果に基づき統合失調症治療に有効な推奨用量とされたアリピプラゾール 1 日 15

    mg における維持効果を証明すべく計画された。

    有効性評価項目は,PANSS,CGI 重症度及び改善度であり,PANSS 由来 BPRS core score も計算

    された。主要有効性評価項目は無作為化から再発までの時間とした。再発とは次の 1 つ以上に当

    てはまる場合と定義された。CGI 改善度の評点 5(軽度悪化)以上,連続する 2 日間に PANSS の

    「敵意」もしくは「非協調性」の項目が評点 5 以上(やや重度),又は PANSS 全尺度合計点の 20%

    以上増加。副次的有効性評価項目は,(1)再発件数,(2)無効による再発又は中止までの時間,(3)

    無効による再発もしくは中止,又は有害事象発現までの時間,(4) PANSS 全尺度合計点,PANSS

    陽性尺度合計点,PANSS 陰性尺度合計点及び PANSS 由来 BPRS core score の観察期からの平均変

    化量,(5)平均 CGI 改善度,ならびに(6)CGI 重症度の観察期からの平均変化量とした。

    再発件数の解析では,試験実施施設ごとに調整した Cochran-Mantel-Haenszel General Association

  • 2.7.3_情報公表用(案)_2005.10.7.doc

    2.7 臨床概要 ③臨床的有効性の概要

    287

    test を用い,プラセボと比較した再発率の比及び 95%信頼区間を示した。副次的評価項目である

    事象発現までの時間の解析では,主たる評価項目と同じ方法を用いた。PANSS 全尺度合計点,陰

    性・陽性尺度合計点及び PANSS 由来 BPRS core score の観察期からの変化については,共分散分

    析(ANCOVA)を用いて評価し,観察期評点,投与薬剤及び試験実施施設ごとに調整した。観察

    期については,投与薬剤及び試験実施施設を主要効果とした分散分析(ANOVA)を用いて評価し

    た。平均 CGI 改善度は,Row Means Scores test による一般 Cochran-Mantel-Haenszel 法の枠内で解

    析し,試験実施施設毎に調整した。CGI 重症度の平均変化量は,ANCOVA を用いて解析した。こ

    れら副次的転帰の解析は,有効性解析対象に対し,最終時及び他の指定時点における LOCF 及び

    OC データセットを用いて実施した。OC データセットの解析では,モデルに試験実施施設を含ま

    なかった。

  • 2.7.3_情報公表用(案)_2005.10.7.doc

    2.7 臨床概要 ③臨床的有効性の概要

    288

    2.7.3.2 個々の試験結果の要約

    国内及び海外で実施された個々の試験について以下に要約した。

    なお,国内で実施された試験の一覧表を 2.7.3 項付録の「表 2.7.3.1-1 臨床的有効性及び安全性試

    験の要約」に,海外で実施された試験の一覧表を 2.7.3 項付録の「表 2.7.3.1-2(海外)臨床的有効

    性及び安全性試験の要約」に示した。

    2.7.3.2.1 国内で実施された試験

    2.7.3.2.1.1 短期試験

    統合失調症の治療に広く用いられているハロペリドールあるいは塩酸モサプラミンを対照薬と

    し,アリピプラゾールの 8 週間投与における有効性と安全性を検討する多施設共同二重盲検群間

    比較試験を実施した。また投与期間が 8 週間以内の試験として初期第 II 相試験と後期第 II 相試験

    を実施した。

    2.7.3.2.1.1.1 第 III 相実薬対照比較試験 2.7.3.2.1.1.1.1 ハロペリドール対照試験

    添付資料番号 5.3.5.1-01

    031-95-002(漸増漸減法,8 週間)

    試験デザイン:

    統合失調症患者を対象に,アリピプラゾールの有効性と安全性をハロペリドールを対照薬とし

    た二重盲検群間比較法にて検討した。Wash out 期間はおかず,抗精神病薬がない状態で投与を開

    始し,症状に合わせ適宜増減した。アリピプラゾールは 1 日用量として 6 mg から開始し,最高

    24 mg まで 1 日 1 回又は 2 回で 8 週間経口投与した。ハロペリドールは,1 日用量として 3 mg か

    ら開始し,最高 12 mg まで 1 日 1 回又は 2 回で 8 週間経口投与した。

    主要な目的は,同種同効薬の試験 1,2,3,4においても有効性の主要評価項目として用いられている

    最終全般改善度において,アリピプラゾール群の「中等度改善」以上の改善率がハロペリドール

    の改善率を 10%より多く下回らないことを示し,さらに BPRS の「情動の平板化」の最終評価に

    おいてアリピプラゾールのハロペリドールに対する優越性を検証すること,この両者を検証する

    ことである。副次的評価項目としては BPRS と PANSS の各尺度及び項目を検討することとした。

    またその他に全般改善度についても検討することとした。

    安全性の評価項目としては有害事象,DIEPSS,臨床検査,血清プロラクチン濃度などを評価し

    た。

    用量については,後期第 II 相試験の結果(GCP 実地調査を受けての完全除外例を除く前の成績

    で記述)に基づいて設定した。

    136 例の統合失調症患者が有効性解析対象となった後期第 II 相試験において治験担当医師によ

    り至適用量が判定された 103 例の至適用量は 4~30 mg/日の間にあり,そのうち 88 例(85.4%)が