平成25年度エネルギー⽩書概要 - Minister of …...平成25年度エネルギー...

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平成25年度エネルギー⽩書 概要 平成26 年6月 資源エネルギー庁 エネルギー白書は、エネルギー政策基本法第11条に基づき、前年度に講じたエネルギーに関 する施策の概況を国会に報告するもの。 今回の白書では、例年記載している、エネルギー動向、前年度においてエネルギー需給に関し て講じた施策の状況に加えて、平成26年4月11日に閣議決定されたエネルギー基本計画を踏 まえ、国民各層の理解を深めるべく、エネルギーに関する諸課題をデータや情報等を用いて説 明することとする。また、前回の白書に引き続き、東京電力福島第一原子力発電所事故への対 応、その後に講じたエネルギーに関する施策の動向を紹介する。 第1部 エネルギーを巡る状況と主な対策 第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢 第1節 我が国が抱える構造的課題 第2節 東京電力福島第一原子力発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題 第2章 東日本大震災と我が国エネルギー政策の見直し 第1節 東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故への対応 第2節 東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故後に講じたエネルギーに関する主な施策 第2部 エネルギー動向 (国内外のエネルギー需給の概要や一次エネルギー、二次エネルギーの動向に関する基本的なデータ集) 第3部 平成25年度においてエネルギーの需給に関して講じた施策の概況(個別の施策概要や予算額など)

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平成25年度エネルギー⽩書 概要平 成 2 6 年 6 月資源エネルギー庁

◇ エネルギー白書は、エネルギー政策基本法第11条に基づき、前年度に講じたエネルギーに関する施策の概況を国会に報告するもの。

◇ 今回の白書では、例年記載している、エネルギー動向、前年度においてエネルギー需給に関して講じた施策の状況に加えて、平成26年4月11日に閣議決定されたエネルギー基本計画を踏まえ、国民各層の理解を深めるべく、エネルギーに関する諸課題をデータや情報等を用いて説明することとする。また、前回の白書に引き続き、東京電力福島第一原子力発電所事故への対

応、その後に講じたエネルギーに関する施策の動向を紹介する。

第1部 エネルギーを巡る状況と主な対策第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

第1節 我が国が抱える構造的課題第2節 東京電力福島第一原子力発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題

第2章 東日本大震災と我が国エネルギー政策の見直し第1節 東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故への対応第2節 東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故後に講じたエネルギーに関する主な施策

第2部 エネルギー動向(国内外のエネルギー需給の概要や一次エネルギー、二次エネルギーの動向に関する基本的なデータ集)

第3部 平成25年度においてエネルギーの需給に関して講じた施策の概況(個別の施策概要や予算額など)

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1位 ノルウェー

2位 オーストラリア

3位 カナダ

8位 アメリカ

14位 イギリス

15位 フランス

20位 ドイツ

27位 スペイン

30位 韓国

33位 日本

34位 ルクセンブルク

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

677.4%

166.2%

85.0%

60.7%

52.9%

40.1%

25.8%

18.0%

6.0%

2.9%

235.4%

(1)海外の資源に大きく依存することによるエネルギー供給体制の根本的な脆弱性

○我が国の一次エネルギー自給率は、震災前(2010年:19.9%)に比べて大幅に低下し、2012年時

点で6.0%。これは、OECD34か国中、2番目に低い水準。

石炭

原油 天然ガス 水力

再生エネ等(地熱、太陽光など)

【日本の一次エネルギー自給率の近年の推移】

2010年 2011年 2012年

19.9 11.2 6.0

(29位) (33位) (33位)

 石炭 - - -

 原油 0.1 0.2 0.1

 天然ガス 0.6 0.7 0.7

 原子力 15.0 5.8 0.6

 水力 1.4 1.6 1.5

 再エネ等 2.7 3.1 3.1

エネルギー自給率

【出典】 IEA 「Energy Balance of OECD Countries 2013」(2012年のデータは推計値)を基に作成

※ IEAは原子力を一次エネルギー自給率に含めている。

OECD諸国の一次エネルギー自給率比較 (2012年)

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

第1節 我が国が抱える構造的課題

1表中の「-」:僅少

原子力

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(2)人口減少、技術革新等による中長期的なエネルギー需要構造の変化

○今後、我が国の人口は2050年には約9,700万人に減少し、また、高齢化が進むと予測されている。

○自動車の燃費向上、次世代自動車等の開発等エネルギー使用合理化や、エネルギー源の利用用途拡大等の技術革新が進む中で、中長期的なエネルギー需要構造の変化も継続。

我が国の人口と高齢化の推移ガソリン乗用自動車の改善例

燃費平均値の推移

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

人口

高齢化率

(万人) (%)

12,693 12,660

11,662

10,728

38.8

17.4

26.8 31.6

36.1

○高齢化率:65歳以上の人口割合【出典】内閣府資料を基に作成

9,708

2

第1節 我が国が抱える構造的課題(続き)

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

燃費(km/L)

○ガソリン乗用車の10・15モード燃費平均値の推移【出典】国土交通省資料を基に作成

《2012年》人口 : 1億2,752万人高齢化率 : 24.1%

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(3)新興国のエネルギー需要拡大等による資源価格の不安定化①

○世界のエネルギー需要は新興国を中心に拡大し、2035年には2011年比で1.3倍へ増加すると見込ま

れている(需要増の9割以上は中国・インド・中東諸国等の非OECD諸国)。

○新興国を中心としたエネルギー需要の拡大、地域における紛争、経済状況の変化による需要動向の変動

等に伴い、資源価格は長期的な価格の上昇傾向とともに、国際情勢の変化に敏感に反応するようになっ

ている。

新興国のエネルギー需要拡大

:非OECD国

3

第1節 我が国が抱える構造的課題(続き)

確認可採埋蔵量 可採年数

石 油 1.7兆バレル 53年

天然ガス 187兆立方メートル 56年

石 炭 8,609億トン 109年

石油・天然ガス・石炭の確認可採埋蔵量

(注) 確認可採埋蔵量:存在が確認され、経済的にも生産され得ると推定されるもの可採年数: 確認可採埋蔵量をその年の生産量で除したもの。

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

【出典】 IEA World Energy Outlook 2013

【出典】 BP統計を基に作成

【出典】 IEA 「World Energy Outlook 2013」を基に作成

(石油換算)

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0

20

40

60

80

100

120

140

160

70年01

71年07

73年01

74年07

76年01

77年07

79年01

80年07

82年01

83年07

85年01

86年07

88年01

89年07

91年01

92年07

94年01

95年07

97年01

98年07

00年01

01年07

03年01

04年07

06年01

07年07

09年01

10年07

12年01

13年07

アラビアンライトOSP

WTI先物期近

03.3 米国主導のイラク攻撃開始

第2次石油危機時

の 高値:34ドル

第1次石油危機時

の 高値:11.65ドル

湾岸戦争時の

高値:40.42ドル

(91.10.11).

01.9.11米国同時多発テロ事件

90.8.2 イラクのクウェート侵攻

73.10 第4次

中東戦争

79.2イラン暫定革命政府樹立

80.9イラン・イラク戦争勃発

(単位 ドル/バレル)

08.9 リーマンショック発生

史上 高値(08.7)

終値 145.29ドル(7/3)

瞬間値 147.27ドル(7/11)

04年~中国需要急増

(3)新興国のエネルギー需要拡大等による資源価格の不安定化②

○新興国を中心としたエネルギー需要の拡大、地域における紛争、経済状況の変化による需要動向の変動

等に伴い、資源価格は長期的な価格の上昇傾向とともに、国際情勢の変化に敏感に反応するようになっ

ている。

原油価格の変動

【出典】 WTI(West Texas Intermediate)先物価格はCME Group HPを基に、アラビアンライトOSP(Official Selling Prices)はサウジアラムコ発表を基に作成 4

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

第1節 我が国が抱える構造的課題(続き)

10.12ジャスミン革命

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0

2

4

6

8

10

12

2001.01

2001.07

2002.01

2002.07

2003.01

2003.07

2004.01

2004.07

2005.01

2005.07

2006.01

2006.07

2007.01

2007.07

2008.01

2008.07

2009.01

2009.07

2010.01

2010.07

2011.01

2011.07

2012.01

2012.07

2013.01

2013.07

2014.01

原油 一般炭 LNG

0

20

40

60

80

100

'2000/01

'2000/08

'2001/03

'2001/10

'2002/05

'2002/12

'2003/07

'2004/02

'2004/09

'2005/04

'2005/11

'2006/06

'2007/01

'2007/08

'2008/03

'2008/10

'2009/05

'2009/12

'2010/07

'2011/02

'2011/09

'2012/04

'2012/11

'2013/06

2014/01

原油

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

2001

/01

2001

/07

2001

/01

2001

/07

2002

/01

2002

/07

2003

/01

2003

/07

2004

/01

2004

/07

2005

/01

2005

/07

2006

/01

2006

/07

2007

/01

2007

/07

2008

/01

2008

/07

2009

/01

2009

/07

2010

/01

2010

/07

2011

/01

2011

/07

2012

/01

2012

/07

2013

/01

2013

/07

2014

/01

円/t

円/t

円/l 92円/l(2008/8)

17円/l(2000/1)

各燃料の熱量当たりの価格推移円/千kcal

天然ガス(LNG)

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

2000

/01

2000

/07

2001

/01

2001

/07

2002

/01

2002

/07

2003

/01

2003

/07

2004

/01

2004

/07

2005

/01

2005

/07

2006

/01

2006

/07

2007

/01

2007

/07

2008

/01

2008

/07

2009

/01

2009

/07

2010

/01

2010

/07

2011

/01

2011

/07

2012

/01

2012

/07

2013

/01

2013

/07

2014

/01

一般炭

3,641円/t(2000/1)

15,983円/t(2008/8)

10,810円/t(2014/3)

10,634円/t(2011/3)

+176円/t

88,098円/t(2014/3)

81,089円/t(2008/9)

70円/l(2014/3)

史上 高値( CIF価格)

90,048円/t(2014/1))

53円/l(2011/3)

+17円/l 53,809円/t(2011/3)

+34,289円/t

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

第1節 我が国が抱える構造的課題(続き)

【出典】 財務省「貿易統計」、エネルギー経済研究所資料を基に作成 5

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世界のエネルギー起源CO2排出量の実績と予測

(4)世界の温室効果ガス排出量の増大

○新興国の旺盛なエネルギー需要により、2011年から2035年にかけて、インドが2.2倍、中国が1.3

倍になること等により、世界のエネルギー起源二酸化炭素排出量は、約2割(300億t→357億t)増加す

ると予測されている。

6

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

第1節 我が国が抱える構造的課題(続き)

49  53  45 

11  12 9 

40  37 29 

12  20 19 

22  16 18 

23 

80 102 

17 39 

16 

24 

10 

14 

11 

16 

25 

28 

43 

0

50

100

150

200

250

300

350

400

1990年 2011年 2035年

その他(非OECD)

中南米(非OECD)

アフリカ

中東

インド

中国

ロシア

OECD(日米欧除く)

欧州(OECD)

日本

米国

(億トン)

203億t 300億t 357億t

日本1.1倍

日本0.8倍

中国3.5倍

中国1.3倍

インド3.0倍

インド2.2倍

世界1.5倍

世界1.2倍

非OECD国

【出典】 IEA 「World Energy Outlook 2013」を基に作成

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(1)東京電力福島第一原子力発電所事故による深刻な被害と原子力発電の安全性に対する懸念

○東日本大震災は、全電源を喪失して原子炉冷却機能を失った東京電力福島第一原子力発電所の深刻な

事故を引き起こし、周辺地域の住民は、未だ約13.5万人が避難生活を余儀なくされる状態となっている。

【福島県全体の避難者数】約15.7万人 約13.5万人(2012年12月) (2014年3月)

福島第一原発4号機の現状

2011年3月

2013年11月

福島の現状等

【出典】 環境省、復興庁、福島県作成資料を基に作成

【避難指示区域等からの避難者数】約11万人 約10.2万人(2012年12月) (2014年3月)

【仮設住宅整備状況】16,800戸 [充足率 99.5%](2014年3月)

【国直轄による災害廃棄物等処理の状況】実施中 対策地域内廃棄物処理計画(2013年12月

に一部改定)に基づき、災害廃棄物等の処理を実施中。

2014年3月末 大熊町、楢葉町、川内村(帰還困難地区を除く)で、帰還の妨げとなる廃棄物の仮置場への搬入を目標どおり一通り完了。南相馬市でも、目標どおり一部を除き搬入を一通り完了。

4号機原子炉建屋では、建屋上部のガレキを撤去し、燃料取扱機等を取り付けたカバーを設置。2013年11月からは使用済燃料プールからの燃料取出しを開始。

2014年内の作業完了に向けて作業中。

7

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

第2節 東京電力福島第一原子力発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題

移送済み燃料:924体/1533体

(2014年5月26日現在)

【資料提供:東京電力】

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(2)化石燃料への依存の増大とそれによる国富の流出、供給不安の拡大①

○電力の化石燃料依存度は88%と、第一次オイルショック時(80%)より高い水準。○原発停止、燃料価格の上昇、為替変動の影響から、鉱物性燃料の輸入額は2013年で27兆円と、震災

前と比べ、10兆円も増加し、2013年には過去 大となる11.5兆円の貿易赤字を記録した。

電力の化石燃料の依存度の推移

日本の電源構成

【出典】 貿易収支(総輸出額-総輸入額)、鉱物性燃料輸入額:財務省 貿易統計 経常収支:日本銀行 国際収支統計等 8

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

第2節 東京電⼒福島第⼀原⼦⼒発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題(続き)

※鉱物性燃料とは、原油、LNG、石炭、石油製品、LPG等。

注)「石油等」の「等」には、LPGやその他ガスが含まれる。「その他ガス」:一般電気事業者において都市ガス、天然ガス、コークス炉ガスが混焼用として使用されているものが中心。

【出典】 「電源開発の概要」等より作成

8.7 7.9 10.8 2.1 2.7 6.6▲ 2.6

▲ 6.9

18.7 20.324.9

14.9

13.6

19.1

10.14.7

3.2

1519 20

28

14 17

2224

27

▲ 15.0▲ 10.0▲ 5.0

0.05.010.015.020.025.030.0 (兆円)

貿易収支

経常収支

経常収支・貿易収支・鉱物性燃料輸入額の推移

▲ 11.5

燃料輸入額の増加10兆円

2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年

30.3%

25.0%

4.7%

14.9%

7.5%

73.2%

43.2%

29.3%

2.4%

1%

28.6%

2.6%

8.5%

8.5%

17.2%

2.2%

1.1%

0.03%

88%

鉱物性燃料輸入額

2010年度

2013年度

電力の化石燃料依存度

石炭

76%

62%

88%

海外からの化石燃料に対する依存度(参考)

80%62%

石油等

原子力

水力

再エネ等

天然ガス

1973年度

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(2)化石燃料への依存の増大とそれによる国富の流出、供給不安の拡大②

○震災後の原発停止分の発電電力量を火力発電の焚き増しにより代替していると試算すると、2013年度に

おける燃料費増加の影響は約3.6兆円と試算される。

【出典】 資源エネルギー庁試算 9

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

第2節 東京電力福島第一原子力発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題(続き)

原発停止に伴う燃料増加分の試算

震災前の発電電力量(2008~2010年度平均)

②2013年度に震災前並(08~10年度平均)にベースロード電源として原子力を利用した場合

原子力2,748億kWh

火力

再エネ等

原子力

火力

火力

再エネ等

原子力93億kWh 2,655億kWh

①2013年度の稼働状況

原発停止に伴う燃料費の増加分

2013年度:3.6兆円〔内訳〕

LNG +1.9兆円石油 +1.8兆円石炭 +0.1兆円ウラン ▲0.3兆円

再エネ等

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(2)化石燃料への依存の増大とそれによる国富の流出、供給不安の拡大③

○鉱物性燃料の輸入額のGDP比の推移をみると、2013年で5.7%と、資源価格が高騰していた2008年を上回り、第一次石油危機時と同程度の水準となっている。特に液化天然ガスの輸入金額の対GDP比は過去 高となっている。

【出典】内閣府「国民経済計算」、財務省「貿易統計」を基に作成

(%)

2013年

2008年

1980年

1974年 鉱物性燃料

原油

石炭

液化天然ガス

鉱物性燃料の輸入額の推移(対GDP比)

5.75.5

6.6

5.4

10

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

第2節 東京電⼒福島第⼀原⼦⼒発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題(続き)

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(3)電源構成の変化による電気料金上昇とエネルギーコストの国際的地域間格差によるマクロ経済・産業・家

計(国民生活)への影響①

○東日本大震災以降、高騰する燃料価格等を背景に、一般家庭部門等における電気料金(電灯料金)の平

均単価は約2割上昇、工場、オフィス等の産業用に係る電気料金(電力料金)の平均単価は約3割上昇。

12

14

16

18

20

22

24

26(円/kWh)

電灯 電力

24.33

17.53

22.33

20.3721.26

15.73

14.59

13.65

電気料金の推移

19.4%上昇

28.4%上昇

【出典】電力需要実績確報(電気事業連合会)、各電力会社決算資料等を基に作成 11

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

第2節 東京電⼒福島第⼀原⼦⼒発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題(続き)

1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 年度

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(3)電源構成の変化による電気料金上昇とエネルギーコストの国際的地域間格差によるマクロ経済・産業・家計(国民生活)への影響②○日本のLNG輸入価格は16.6ドルと、米国(ヘンリーハブ価格)の4.5ドル、欧州(NBP価格)の9.4ド

ルに比べ割高になっている。(日本のLNG輸入価格は、米国の国内天然ガス価格と異なり、輸入原油価格との連動性が高い。また、液化コスト・輸送コストを含む(注)。)

(注)液化コストは3~4ドル、米国からの輸送コストは3ドルと想定される。

○こうしたエネルギー価格の国際的な地域間格差がエネルギー分野のみならず、各業種の産業活動に大きな変化をもたらし、経済成長と産業構造に大きな影響。

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

第2節 東京電⼒福島第⼀原⼦⼒発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題(続き)

0.00

2.00

4.00

6.00

8.00

10.00

12.00

14.00

16.00

18.00

20.00

1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月

2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

東日本大震災(2011.3)

【出典】貿易統計、NYMEX、ICE等を基に作成

LNG輸入価格(日本)

NBP※ ※ (欧州)

ヘンリーハブ(米国)

16.6

9.4

4.5

(ドル/MMBTU※)

※MMBTU:英国熱量単位

天然ガス価格の推移

12※※NBP: National Balancing Point(英国市場価格)

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1,261 1,281 1,206  1,256  1,307  1,343

600

700

800

900

1,000

1,100

1,200

1,300

1,400

1990年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度

400

300

0

(百万t‐CO2)

エネルギー起源CO2以外の温室効果ガス

(5.5ガス)排出量

エネルギー起源CO2排出量

一般電気事業者

によるCO2排出量

(2010年度比)

+65(2010年度比)

+112

(90年度比+6.5%)

※「電力分」は、一般電気事業者による排出量

36.2%

(90年度比+1.6%) (90年度比▲4.4%) (90年度比▲0.4%) (90年度比+3.6%)

30.8% 29.2% 29.8% 33.6%

〔基準年〕

21.8%

(4)我が国の温室効果ガス排出量の急増

○原発が停止した結果、電力分野の温室効果ガス排出量は2010年度に比べ、112百万トン増加。

これは日本の温室効果ガス排出総量の約1割に相当する水準。一方、電力分以外の温室効果ガ

ス排出量は2010年度に比べ、27百万トン減少。

温室効果ガス排出量の推移

2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度

エネ起CO2排出量 1,138 1,075 1,123 1,173 1,208

うち電力分※ 395 353 374 439 486

うち電力分以外 743 722 749 734 722▲27

+112

▲15

+65

+85+50

【出典】日本の温室効果ガス排出実績(環境省)、電気事業連合会「電気事業における環境行動計画」(2009年度版から2013年度版)を基に作成13

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

第2節 東京電力福島第一原子力発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題(続き)

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(5)東西間の電力融通、緊急時供給など、供給体制に関する欠陥の露呈①

○東日本大震災では、太平洋側の多くの発電所が停止し、広域的な系統運用が十分にできなかったことか

ら、不足する電力供給を手当てすることができず、東京電力管内において計画停電を実施。

震災直後(2011年3月14日)の需給状況

東日本大震災直後の2011年3月14日は、周波数変換装置(FC、設備容量:100万kW)を通じ、中部及び西日本から東京電力に電力融通をしても、供給力が▲1,000万kW不足する見通しだったため、初めて計画停電を実施(中部及び西日本は、東京電力へFCを通じた電力融通を行っても実績ベースで+1,428万kWの余力)。

3月14日以降、東京電力管内において計10日間で延べ32回計画停電を実施。

(万kW) 東京(3/14見通し)

供給力 3,100

需要(注)

4,100

供給‐需要等(予備力)

▲1,000(FC融通後)

予備率 ▲24.4%

中部及び西日本(3/14実績) 中部 関西 北陸 中国 四国 九州

8,095 2,191 2,445 506 1,128 470 1,355

6,667 1,836 2,037 400 836 398 1,160

1,428 355 408 106 292 72 195

21.4% 19.4% 20.0% 26.5% 34.9% 18.1% 16.8%

【出典】 経済産業省調べ 14

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

第2節 東京電力福島第一原子力発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題(続き)

(注)計画停電等により3月14日の東電管内の電力需要実績値は2,914万kWとなり、予備力186万kW、予備率は6.4%となった。

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震災時の石油・LPガス供給【輸送体制】

・被災地からの燃料供給要請に対応する石油会社・LPガス会社を調整するスキームや共同して利用する油槽所等について事前の取決めがなかった。

・被災状況、在庫情報、設備稼働状況について把握が困難。【供給設備】

・地震や津波による製油所、SS等の損壊・機能停止。◇東北の1製油所、関東の2製油所において、桟橋、配管、タンク、タン

クローリー出荷場等に大きな損害。◇SSにおいては大規模な停電による給油機等の停止、供給網の途絶

による在庫切れの発生。被災地を始めとして燃料供給に支障が生じた。

◇LPガスにおいては輸入基地等の多くが被害を受け、被災地への出荷が困難。

・停電する中でも出荷・給油するための自家発電機等の不足。・製油所から石油をドラム缶に充填して出荷する設備が不十分。

【備蓄】・石油備蓄法上、国内災害による供給不足時の①国家備蓄放出や②(事業者の申請を待たずに行う)国の発意による民間備蓄放出を行い得る規定がなかった。

・国家備蓄石油のほとんどが原油であり、災害による石油製品の生産能力低下や、長距離物流網が被災する事態への備えとして不十分。

(5)東西間の電力融通、緊急時供給など、供給体制に関する欠陥の露呈②

○東日本大震災により、都市ガスの供給が滞り、石油やLPガスで補完することとなったが、被災地への円滑

な供給には課題が存在。

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

第2節 東京電力福島第一原子力発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題(続き)

【被災地及び関東圏でのガソリン・軽油等の供給確保例】-緊急の供給確保措置と拡大輸送ルートの設定-

15(資源エネルギー庁作成)

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(6)エネルギーに関わる行政、事業者に対する信頼の低下

○東京電力福島第一原子力発電所事故以前から、原子力政策をめぐる多くのトラブルやスケジュールの遅

延が国民の不信を招いてきた。

○さらに、東京電力福島第一原子力発電所事故とその後の対応を進める中で、行政と事業者は、情報共

有の在り方、地元とのコミュニケーションに関する問題意識の不足など多くの批判を受け、国民からの信

頼を著しく低下させる事態に。

・今回の事故の責任者である、国、経産省、資源エネルギー庁の恣意的な操作が行われ得る、という

構造がある限り、どんな文言も空しいです。

・エネルギーに関する「広報」という活動は、情報の透明性と、フェアな第三者機関が確保されなければ

プロパガンダにすぎない、と見えます。

・起きるはずのない事故が起きてしまった上、その収束や後処理に不手際が連続している事実をみる

と、立地自治体の住民に対して原発への理解を求める広報を繰り広げても到底受け入れられないの

ではないか。

新しい「エネルギー基本計画」策定に向けたパブリックコメントの結果について(パブリックコメントに寄せられた御意見の例)

16

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

第2節 東京電力福島第一原子力発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題(続き)

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(7)需要動向の変化-コージェネレーションの導入増や節電行動の変化①

○東日本大震災後、我が国では経済が成長したにもかかわらず、我が国の電力消費量は2010年から

2012年にかけて8.0%減少した。

○東日本大震災後、節電の定着が進み、 2013年度夏季の定着節電量は2010年度比で約1,667万kW

( 2010年度夏季 大電力需要比で9.3%)。

我が国の電力消費量の推移

17

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

第2節 東京電⼒福島第⼀原⼦⼒発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題(続き)

夏季(7~9月)の定着節電量の推移

1,515 

1,655  1,667 

1,400

1,450

1,500

1,550

1,600

1,650

1,700

2011年度 2012年度 2013年度

(9.2%) (9.3%)

【出典】総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 第5回電力需給検証小委員会(H26.4.17)資料を基に作成

※定着節電:ストレスが小さく、かつ、コストが少ない、もしくは投資回収ができる節電※()内の数値は定着節電量を2010年度夏季 大電力需要量(17,987万kW)で除した値

512 514  518

200

250

300

350

400

450

500

550

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

2010 2011 2012

(兆円、2005年価格)

6.2%減

(注)部門別 終エネルギー消費のうち、業務部門及び産業部門の一部(非製造業、食料品製造業、他業種・中小製造業)については、産業連関表及び国民経済計算等から推計した推計値を用いており、統計の技術的な要因から、業務部門における震災以降の短期的な消費の減少は十分に反映されていない。

【出典】総合エネルギー統計( 終エネルギー消費のうちの電力)、国民経済計算年報を基に作成

運輸部門

業務部門

家庭部門

産業部門

(年度)

実質GDP(右軸)

996TWh

(18TWh)

(359TWh)

(287TWh)

(252TWh)

934TWh 916TWh

0.66%増0.34%増

(8.4%)

(万kw)(TWh=10億kWh)

2.0%減

8.0%減

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(8)中東・北アフリカ地域の不安定化等資源供給地域の地政学的構造変化

○近年、「アラブの春」をはじめ、中東・アフリカ地域の政治・社会構造が不安定化し、原油の供給不足へ

の不安から原油市場も不安定化。

60

70

80

90

100

110

120

130

10年1月 10年7月 11年1月 11年7月 12年1月 12年7月 13年1月 13年7月 14年1月

(ドル/バレル)

【終値 高値】 140.60ドル(2008年7月4日)

2012年1月EUがイラン原油の原則禁輸合意

2013年1月アルジェリア人質事件(1/16)エジプト反政府デモ(1/25)イスラエルがシリア空爆(1/30)

2013年7月エジプトの情勢不安(7/1~)2013年8月シリアへの米欧の軍事介入懸念(8/27)

2012年7月シリアの内戦激化

イラン核問題、さらにはシリア情勢の緊迫化など、中東地域の情勢が不安定化

「アラブの春」※リビアでは実際に供給途絶

2011年3月リビア産原油の供給途絶

2010月12月チュニジア・ジャスミン革命を契機に、中東・北アフリカで反政府運動発生

中東の主な出来事と原油価格の推移

【出典】日経ドバイを基に作成

<参考>

世界の原油貿易量に占める中東・北アフリカ産原油の輸出の割合(2012年)

【出典】 BP統計2013 を基に作成

全世界貿易量 3,860 [万バレル/日]

中東 1,765 (45.7%)

北アフリカ 214 (5.5%)

中東・北アフリカ総計 1,979 (51.3%)

18

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

第2節 東京電力福島第一原子力発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題(続き)

中東:サウジアラビア、イラン、イラク、クウェート、UAE、カタール、オマーン北アフリカ:アルジェリア、エジプト、リビア

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【北米(米国・カナダ)】• 天然ガス供給量増加• 余剰石炭の欧州への輸出• ガス純輸出国に転換

【ヨーロッパ】• 石炭増などによるガス需要減少

• 中東からのガス輸入拡大、ロシアからの輸入減少

• 様々な価格決定方式の導入

• エネルギーセキュリティの向上の取組

【モザンビーク】供給先の開拓

【豪州】供給先開拓・価格交渉に直面

【中国】

• トルクメニスタンからの天然ガス輸入拡大

• 北米の上流権益確保

【ロシア】

• 欧州向け天然ガスの価格引き下げ圧力、供給の低迷

• 日本・中韓マーケットの開拓

【日本】• 天然ガス調達先の多角化• 石炭等他の選択肢の確保

欧州への石炭輸出

北米からの石炭輸入

• すでに発生している事象• 今後発生・本格化しうる事象

【南米】

• アルゼンチン(シェールオイル)やベネズエラ(超重質)等の開発による増産・輸出可能性

【アフリカ】• シェールオイル革命により

米国への輸出減(1.1mbd→0.3mbd)

• アル ジェリア、ナイジェリア

産原油(軽質油)の欧州やインド市場への流入の可能性

• 石油生産の増加• 中東依存度の低減

(2.7mbd→1.7mbd)

• 在来型、非在来型の原油開発による輸出拡大の可能性

• 中東からの原油輸入増

【中東(カタール等)】

• ヨーロッパ、アジアマーケットの更なる開拓

今後検討が進むと見込まれるガスの輸出

今後検討が進むと見込まれる原油の輸出

ガスの動き

原油の動きカッコ内は、2012~2018にかけての原油輸出変化見通し(million barrels per day)※IEA 「Medium-Term Market Report 2013」より引用)

• 米国への原油輸出減少(2.7mbd→1.7mbd)

• アジア(中国・インド中心)への輸出のさらなる拡大(中国向け2.6mbd→ 2.9mbd)

(9)北米におけるシェール革命の進展による国際エネルギー需給構造の変化の兆し

○シェール革命により米国は中東地域を中心とした化石燃料の供給体制から自立し、その結果、中東はエ

ネルギー需要が増大するアジアへの供給を拡大する等国際的なエネルギー供給構造に大きな変化。

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

第2節 東京電力福島第一原子力発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題(続き)

シェール革命による世界のエネルギー需給構造の変化

【出典】 IEA「Midium-term Market Report 2013」を基に作成

【G7エネルギー大臣会合 : 2014年5月5日、6日】仕向地条項の緩和や、生産者と消費者の対話等を通じた、柔軟なガス

市場を更に促進していくことの重要性を含む共同声明を発出。 19

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2030年(低位予測):4.35億kW (1.2倍)

2030年(高位予測):7.22億kW (1.9倍)(注) 原子力発電容量は、IAEAの予測(2013年8月)

中東・南アジア(600万kW → 2700万kW (4.5倍)/5400万kW (9倍))

東欧(0.49億kW → 0.79億kW (1.6倍)/1.04億kW (2.1倍))

アフリカ(200万kW → 500万kW (2.5倍)/1000万kW (5倍))

南米(400万kW → 700万kW (1.8倍)/1500万kW (3.8倍))

北米(1.16億kW → 1.01億kW (0.87倍)/1.43億kW (1.2倍))

2012年現在 : 3.73億kW

世界の原子力発電容量(図中、「現在→低位予測/高位予測」で表記)

東アジア(0.83億kW → 1.47億kW(1.8倍)/ 2.68億kW (3.2倍))

西欧(1.14億kW → 0.68億kW (0.6倍)/1.24億kW (1.1倍))

東南アジア・太平洋地域(0kW → 0 kW/400万kW)

(10)新興国を中心とした世界的な原子力の導入拡大

○エネルギー需要の伸びが見込まれるアジアを中心とした地域は、エネルギー安全保障の観点から、今

後、原子力の利用の拡大が見込まれる。

2030年における世界各国の原子力発電の見通し(IAEA試算)

20

第1部第1章 エネルギー基本計画の背景にある諸情勢

第2節 東京電力福島第一原子力発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題(続き)

【出典】 IAEA 「Energy, Electricity and Nuclear Power Estimates for the Period up to 2050, 2013 Edition」を基に作成

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第1部第2章 東日本大震災と我が国エネルギー政策の見直し

第1節 東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故への対応

(1)東京電力福島第一原子力発電所1~4号機の廃炉に向 けた取組

①ロードマップの改訂・使用済み燃料プールからの燃料取出しや燃料デブリ取出しを可能な限り早く行うべく、スケジュール前倒し等を含む中

長期ロードマップの改訂を2013 年6月に実施。②汚染水対策

・2013年9月、汚染水対策のため、原子力災害対策本部において、「東京電力(株)福島第一原子力発電所における汚染水問題に関する基本方針」を決定。同月には「廃炉・汚染水対策チーム」を設置。

・同年12月「東京電力(株)福島第一原子力発電所における廃炉・汚染水問題に対する追加措置対策」を原子力災害対策本部で決定。溶接型タンク設置の加速化、浄化技術の検証等、汚染水問題に対する予防的・重層的な対策等をとりまとめた。

・関係閣僚等会議に東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議とを統合し、廃炉・汚染水対策に係る司令塔機能の一本化。

③原子力損害賠償支援機構法の一部改正原子力損害賠償・廃炉等支援機構に「事故炉の廃炉支援業務」を追加させるべく、「原子力損害賠償支援機構法の一

部を改正する法律案」を2014年2月、通常国会に提出。④4号機使用済み燃料プールからの燃料取り出し

2014年内の作業完了に向け、 2013年11月から取り出しを開始。

(2)原子力損害賠償①原子力損害賠償紛争審査会における原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針等

避難指示が長期化した場合の住宅の賠償や精神的損害の対象範囲を示した中間指針第四次追補が2013 年12月に策定された。

②新・総合特別事業計画の一部変更の認定政府は、2014年1月に、東電グループ全体としての原子力損害の賠償、 「10万人派遣プロジェクト」等を通じた福島復興

に向けた取組の実施、事故炉の安定収束・廃炉対策について盛り込まれた新・総合特別事業計画の認定を行った。2014年5月現在、東京電力は約3.8兆円の賠償を実施済み。

21

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(3)原子力被災者支援

①帰還に向けた安全・安心対策2013年12月に閣議決定された「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」において、住民の自発的な活動を支援

するための総合的・重層的な措置を講じた。

②除染の実施除染の実施は特別地域内除染実施計画に基づき、10市町村中、4市町村が除染を終了( 2014年3月現在)。市町村

中心となって除染する除染実施区域では8県94市町村で除染実施計画が策定され、除染を実施(2014年3月現在) 等

③福島・国際研究産業都市構想研究会(イノベーション・コースト構想研究会)「浜通り」の産業集積・産業基盤の再構築に向け、地域経済の将来性、廃炉に必要な研究開発、新産業・雇用の創出

等を目指すための検討を行うため、福島・国際研究産業都市構想研究会を設立。

第1部第2章 東日本大震災と我が国エネルギー政策の見直し

第1節 東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故への対応

(4)原子力規制

①原子力規制行政に対する信頼の確保に向けた取組原子力規制委員会の専門性を高めるため、2014年3月に原子力安全基盤機構が原子力規制委員会に統合。定員数

は473名 (2013年3月)から1,025名(2014年3月)に増員された。

②原子炉等規制法に基づく規制基準等の見直しと適合性審査発電用原子炉について、2013年7月に重大事故(シビアアクシデント)対策の強化や 新の技術的知見を取り入れた

既設の施設にも新規制基準への適合を義務づける制度(バックフィット制度)の導入等と併せて新たな基準を策定・施行した。発電用原子炉に係る新規性基準に基づき、適合性審査を開始しているが、これまで10原子力発電所(17プラント)について申請が行われている(※)。※2014年5月20日に日本原子力発電より原子力規制委員会へ東海第二原発について新規制基準への適合性確認申請が行われたため、

5月21日現在、11原発(18プラント)が申請中。

③危機管理対応(緊急時対応への取組)2013年10月、国、原子力事業者、自治体等が一体となって、川内原子力発電所を対象に原子力総合防災訓練を実施。

22

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(2)徹底的した省エネルギー社会の実現

第1部第2章 東日本大震災と我が国エネルギー政策の見直し

第2節 東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故後に講じたエネルギーに関する主な施策

23

東日本大震災以降の電力需給の状況に鑑み、今後は電力ピーク対策等の電力需給バランスを意識した省エネ対策、エネルギー消費量の増加が著しい民生部門(業務・家庭)のより一層の省エネ対策が重要である。こうした背景から、エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)を2013年5月に改正し、以下の事項を新たに追加。①建築材料等に係るトップランナー制度の導入

高い省エネ効果が期待される建築物・住宅分野での省エネ推進を図るため、建築物等の省エネ性能の向上に寄与する建築材料等(断熱材、窓等)を新たにトップランナー制度の対象に追加。

②需要家側における電力ピーク対策の円滑化に関する措置の導入需要家が、従来の省エネルギー対策に加え、蓄電池やBEMS(ビルエネルギー管理システム)などの活用等の電力ピー

ク対策を実施した場合、これを省エネ法で適正に評価できる体系とした。

(1)安定的な資源確保のための総合的な施策

①資源供給国との関係強化と上流進出の推進・燃料調達費の引下げが急務であることを踏まえ、2013年4月に「燃料調達コスト引き下げに向けた当面のアクションプラン」をとりまとめた。

・LNGについては、総理を筆頭とする資源外交の結果、米国政府から日本企業が関与する4件全てのLNGプロジェクトの輸出承認を獲得。

・2013年5月、6月に開催した「日アフリカ資源大臣会合」、「TICAD V」を通じてアフリカ資源国との関係を強化した。・カナダのシェールガス案件等、JOGMECを通じたリスクマネー供給支援を実施。

②国内資源開発の推進・「海洋基本計画」(2013年4月閣議決定)に基づき、2013年12月に「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」を改定。・砂層型メタンハイドレートについては、2013年3月に実施した海洋産出試験結果の分析を行い、長期安定生産などの技術的課題に取り組んだ。表層型メタンハイドレートについては、2013年度から本格的な資源量調査を開始し、上越沖と能登西方沖では資源が存在する可能性のある構造を225か所確認した。

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第1部第2章 東日本大震災と我が国エネルギー政策の見直し

第2節 東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故後に講じたエネルギーに関する主な施策

(3)再生可能エネルギーの導入加速

①2013年度の導入状況2012年に導入された固定価格買取制度を受けて、再生可能エネルギーは順調に導入が進み、2013年度は、2014年2月

末までに 638.1万kW(前年度比29%増)での設備が運転を開始。固定価格買取制度に基づく賦課金は、2013年度は0.40円/kWh、総額3,500億円。

②調達価格等算定委員会における2014年度調達価格の検討経過と結論2014年度調達価格を、太陽光発電については、システム費用(太陽光パネル、パワコン等)の下落を反映し、非住宅用

では36円/kWh→32円/kWhに引下げ。また、住宅用も1円引き下げ、37円/kWhとした。洋上風力発電は、陸上風力発電と比較して高いコスト、固有のリスクを反映し、36円/kWh(税抜)として買取区分価格を新規決定。

③ 「再生可能エネルギー等関係閣僚会議」の設置政府の司令塔機能強化、関係省庁間の連携促進の観点から、「再生可能エネルギー等関係閣僚会議」を設置し、 2014

年4月11日に第1回会合を開催。

(4)原子力政策の再構築

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① 終処分・高レベル放射性廃棄物の 終処分に向けた取組の在り方等を検討するため放射性廃棄物WGを2013年5月に、地層処

分の技術的信頼性について確認・再評価するため地層処分技術WGを同年10月にそれぞれ設置。また、同年12月に終処分関係閣僚会議を開催。高レベル放射性廃棄物の処分事業の進展に向けて、国が前面に立って取組を促進。

・高レベル放射性廃棄物の 終処分の問題について、将来世代に負担を先送りしないよう、この解決に向け、国が前面に立って取り組む。そのために、地層処分を前提に取組を進めつつ、可逆性・回収可能性を担保し、今後より良い処分方法が実用化された場合に将来世代が 良の処分方法を選択できるようにする。また、国は、科学的により適性が高いと考えられる地域(科学的有望地)を示す等を通じ、立地への理解を求める。

②原子力の自主的・継続的な安全性向上に向けて2013年7月から2014年3月にかけて、「原子力の自主的安全性向上に関するWG」において、原子力の自主的かつ継続的

な安全性向上について議論。原子力事業において、事故リスクの把握と必要な対応策の実施は経営トップイシューでなければならず、これを実現するリスクマネジメントの確立は原子力事業の大前提となるべきである旨の提言案をとりまとめた。

※)原子力政策の再構築のその他の項目については、第1部第2章第1節[p21~p22]を参照

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第1部第2章 東日本大震災と我が国エネルギー政策の見直し

第2節 東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故後に講じたエネルギーに関する主な施策

(5)化石燃料の効率的・安定的な利用のための環境の整備

①発電効率の向上環境にも配慮した世界 高水準の発電効率を目指した技術開発(先進超々臨界圧火力発電技術、石炭ガス化複合発

電等)を推進。

②電源の新増設・リプレースの原則入札2012年に設置された「火力電源入札ワーキンググループ」での議論を踏まえ、入札における効率性・透明性の向上に

係る取組を行うため、「新しい火力電源入札の運用に関する指針」の改訂を実施。

③環境アセスメントの迅速化・明確化環境アセスメントの手続き期間を、リプレースについては1年強程度まで短縮し、新増設についても短縮する方針で審

査を実施。

(6)供給構造改革の推進

①電力システム改革電力の安定供給の確保、電気料金の 大限の抑制、需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大の3つの目的を達成

するため、3段階のスケジュールに沿って電力システム改革を推進。改革の第1段階である「広域系統運用の拡大」等を実施するために必要な措置、2020年までに実現すべき電力システム

改革の工程等を定めた電気事業法改正案が、第185回臨時国会で成立。改革の第2段階である「電気の小売業への参入の全面自由化」等を実施するために必要な措置等を定めた「電気事業

法等の一部を改正する法律案」を、第186回通常国会に提出。

②ガスシステム改革低廉・安全かつ安定的に供給され、消費者に新たなサービスなど多様な選択肢が示されるガスシステムの構築のため、

2013年11月に、総合エネルギー調査会基本政策分科会の下に「ガスシステム改革小委員会」が設置された。同小委員会は、2014年3月までに6回開催され、小売の自由化範囲の拡大、供給インフラのアクセス向上と整備促進等

の論点について、ガス事業者から意見聴取を行った。

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第1部第2章 東日本大震災と我が国エネルギー政策の見直し

第2節 東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故後に講じたエネルギーに関する主な施策

(7)国内エネルギー供給網の強靱化

(8)その他

①電気料金の値上げ審査電力会社からの規制部門の値上げ申請については、 大限の経営効率化を踏まえた申請であるか、電気料金審査専

門小委員会における中立的・客観的な検討を踏まえ、厳正に審査を実施。<各電力会社の値上げ申請状況(2013年度)>

東北電(2013年2月申請(11.41%)、2013年8月認可(8.94%)、同9月1日実施)、四国電(2013年2月申請(10.94%)、2013年8月認可(7.80%)、同9月1日実施)北海道電(2013年4月申請(10.20%)、2013年8月認可(7.73%)、同9月1日実施)、中部電(2013年10月申請(4.95%)、2014年4月認可(3.77%)、同5月1日実施)

②電力需給対策2013年度夏季の電力需給はいずれの電力管内でも予備率3%以上を確保できる見通しであったが、大規模な電源脱落

等による電力需給逼迫に備え、沖縄電力を除く9電力管内についての数値目標を伴わない一般的な節電要請などの電力需給対策を実施。

2013年度冬季の電力需給はいずれの電力管内でも予備率3% 以上確保できる見通しであったが、計画外停電の可能性、電力融通の制約等のリスクが存在したことから、万一の電力需給ひっ迫に備え、沖縄電力を除く9 電力管内における、数値目標を伴わない一般的な節電要請、北海道電力管内における、 2010度比▲ 6%以上の数値目標付きの節電要請を含む電力需給対策を実施。 26

大規模災害が発生した場合、被害を 小化し、石油・LPガスの供給を早期に回復させるためのハード・ソフト両面からの対策に取組を実施。①ハード面の強化に関する取組

・石油供給拠点の災害対応能力強化に対する支援及び国家石油製品備蓄の増強(製油所・中核SS等における非常用発電機等の導入、石油製品の入出荷設備の耐震強化・津波対策等)

・LPガスについて、輸入基地や二次基地への移動式電源車の配備、中核充填所の整備等(災害時の地域のLPガス供給用)を実施

②ソフト面の取組・「災害時石油供給連携計画」(石油備蓄法に基づき石油会社が作成)の訓練を内閣府や石油業界等と共同実施(2013年6月)。

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燃料電池自動車の“世界 速の普及”に向けた取組

2015年に市場投入が予定されている燃料電池自動車は、航続距離が長く、燃料の充填時間も短いなど、既存のガソリン車と同程度の性能を持つことに加え、エネルギーセキュリティの向上や環境負荷の低減に資する有力な次世代自動車。

各社が発表したコンセプトカー(左からトヨタ、ホンダ、⽇産)

燃料電池バス

○燃料電池自動車の市場投入と水素ステーションの整備

2015年の市場投入に向けて、日本の自動車メーカー各社がコンセ

プトカーを披露するなど準備が加速化。また、燃料となる水素を供給するための水素ステーションの先行整備も2013年度より開始。

○用途の広がり

燃料電池自動車に用いられる燃料電池技術などを活用した、燃料電池バスや燃料電池フォークリフトの開発も進められている。2020年の東京オリンピック・パラリンピックは水素エネルギーの可能性を世界に発信する好機であり、それも見据えつつ着実に取り組みを進めていく。

燃料電池フォークリフト

水素社会の実現に向けた取組(1) 水素社会の実現に向けた取組(2)

コラムで取り上げるトピック(例)

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定置用燃料電池の導入拡大

都市ガスやLPガスから取り出した水素を用いて発電し、その際に発生する熱を給湯や暖房にも活用する定置用燃料電池は、エネルギー効率が高く、省エネ・省CO2につながる優れた分散型エネルギーシステムの一つ。

家庭⽤燃料電池(エネファーム)

○家庭用燃料電池(エネファーム)

2009年に世界に先駆けて市場投入され

た家庭用燃料電池(エネファーム)は発電の際に発生する電気と熱を有効に活用することで、90%を超える高いエネルギー効率を持つ。2030年に530万台を普及させる

という目標の達成に向けて様々な取組が進められているほか、2014年4月には海外展開も開始された。

○業務・産業用燃料電池

家庭用燃料電池で培われた技術も活用しつつ、事業所などで使用される大型の業務・産業用燃料電池の開発も進められている。

数年以内の市場投入が見込まれており、実用化に向けた実証が進められている

業務⽤燃料電池(三菱⽇⽴パワーシステムズ(株))

開発実証

開発実証

開発実証

普及性能向上~ 普及性能向上

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水素社会の実現に向けた取組(3)

水素発電への期待

水素エネルギーは、2009年に世界に先駆けて市場投入された家庭用燃料電池や、2015年に市場投入予定の燃料電池自動車にとどまらず、水素発電にまで拡がっていくことが期待されている。

このため、水素を安価で大量に供給するため、様々な技術開発が進められている。

洋上風力発電

有機ハイドライド法実証プラント

液化⽔素輸送船のイメージ

福島県沖の浮体式洋上風力発電

○これまでの進捗2013年11月に、第1期工事と

して、2MW浮体式洋上風力発電設備1基と浮体式洋上サブステーション(変電設備)を設置し、実証運転を開始(福島県沖約20km地点)。

○今後の予定今後は、第2期工事として世

界 大級の直径160メートルの7MW浮体式洋上風力発電設備等2基を2015年度までに設置予定。

コラムで取り上げるトピック(例)

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○水素の貯蔵・輸送技術の開発有機ハイドライド法

水素とトルエンを反応させることにより、常温・常圧の液体状態で水素の貯蔵・輸送を行えるようにする技術。

液化水素法

水素を極低温で液化させ、液体状態で貯蔵・輸送を行えるようにする技術。

現在、福島県の沖合において、浮体式洋上風力発電の実証研究事業を実施中。これは、我が国特有の気象・海象条件に適した安全性・信頼性・経済性の高い浮体式洋上風力発電システムを確立するとともに、漁業との共生策を見出し、世界初の浮体式洋上ウィンドファームの実現を目指すもの。

浮体式洋上サブステーション(変電設備)

2MW浮体式洋上⾵⼒発電設備

応用研究

開発実証

開発実証応用研究 ~

~ 開発実証

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バイオマスを用いた燃料の開発

○藻類由来燃料の生産技術の開発

食料生産と競合しない新たな原料として、藻類を活用した液体燃料の工業生産が期待されている。

屋外太陽光下での大規模培養のため、全面曝気方式による培養試験を実施しているが、今後、より少ないエネルギーと低廉なコストで藻類由来燃料を大規模生産することを目指す。

廃油を活用した地域の取組

培養プール

バイオジェット燃料製造装置

廃油を活用したバイオディーゼル燃料の開発と普及拡大

○北海道帯広市の取組

北海道帯広市では、国の支

援を受けて、バイオディーゼル製造事業や、原料(廃油)、製品(バイオディーゼル)の流通インフラの整備、流通経路の確保に関する取組を実施。

バイオディーゼル混合軽油(B5軽油)の流通量目標として以下を設定。

-2012年実績: 約800kL-2015年目標: 5,000kL-2020年目標: 20,000kL

これまでに、廃油回収のため

の大型回収車両の導入や小口回収拠点の分散設置等の取組により回収量の増加を図ってきている。

廃油回収拠点

バイオディーゼル(B5軽油)専⽤給油設備(左)

コラムで取り上げるトピック(例)

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○木質系バイオマスによるバイオジェット燃料の製造

バイオマスを原料とした液体

燃料製造の技術開発を実施。バイオマス燃焼のためのガス化炉とジェット燃料合成に適した触媒を組み合わせて開発することにより、低コストでのバイオジェット燃料の製造プロセスの構築を進めている。

廃油やナタネ等幅広い原料から製造が可能なバイオディーゼル燃料は、地産地消の循環型エネルギーとして利用の促進が期待されている。

開発実証

基礎研究

応用研究

応用研究~

開発実証~

~ 普及性能向上

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革新型蓄電池の開発

革新型蓄電池の開発

リチウムイオン電池は、スマートフォンやタブレット、電気自動車等に用いられているが、エネルギー密度や耐久性の面などで性能限界がある。このため、従来技術の延長線上にない新しい蓄電池技術の開発を行い、将来的には、ガソリン自動車並みの航続距離を持つ電気自動車への応用等を目指す。

○ 『SPring-8』や『J-PARC』における実験研究

蓄電地内の基礎的な電気化学反応原理の解明のため、世界高性能の放射光施設である『SPring-8』と大強度陽子加速器施設である『J-PARC』にて実験を進め、電極材料の結晶構造の変化の観察に世界で初めて成功。

これらの知見を活用して、2030年に向けて革新型蓄電池の実現を目指す。

大型蓄電池の系統運用への活用

北海道、東北地域における変電所に設置する大型蓄電池による実証事業

北海道地域における変電所に設置する⼤型蓄電池(イメージ)

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コラムで取り上げるトピック(例)

我が国は、世界 先端の大型蓄電池の技術を有しており、この技術を戦略的に活かすことにより、太陽光発電や風力発電の出力変動を吸収することが可能となる。電力会社の基幹系統の変電所に、世界 大級の大型蓄電池を設置・活用することで、どこまで再生可能エネルギーの導入可能量を拡大できるか徹底検証を行う実証事業を2013年度から開始。

○北海道地域においては、南早来変電所に6万kWh規模の大型蓄電池(レドックスフロー電池)を設置

○東北地域においては、西仙台変電所に2万kWh規模の大型蓄電池(リチウムイオン電池)を設置

セルスタック

電解液タンク

放射光ビームライン (SPring-8)

中性⼦ビームライン (J-PARC)

基礎研究

開発実証