20201206 愛知県予防接種基礎講座2 01
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2020/12/06 令和2年度 第2回 愛知県予防接種基礎講座
アナフィラキシー/血管迷走神経反射への対応
安城更生病院 小児科鈴木 道雄
アナフィラキシー
アレルゲン等の侵入により複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され生命に危機を与え得る過敏反応
アナフィラキシーショック
アナフィラキシー
血圧低下 や意識障害を伴う場合
日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン 2014
診断基準
3つのうちいずれかに該当
アナフィラキシーと診断
日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン 2014
アナフィラキシーでみられる症状皮膚・粘膜 紅潮、そう痒感、蕁麻疹、血管浮腫、麻疹様発疹、立毛、眼結膜充血、流涙、口腔内
腫脹
呼吸器鼻そう痒感、鼻閉、鼻汁、くしゃみ、咽頭そう痒感、咽喉絞扼感、発声障害、嗄声、上気道性喘鳴、断続的な乾性咳嗽、呼吸数増加、息切れ、胸部絞扼感、激しい咳嗽、喘鳴、気管支攣縮、チアノーゼ、呼吸停止
循環器 胸痛、頻脈、徐脈(稀)、不整脈、動悸、血圧低下、失神、失禁、ショック、心停止
消化器 腹痛、嘔気、嘔吐、下痢、嚥下障害
中枢神経系 切迫した破滅感、不安、拍動性頭痛、不穏状態、浮動性めまい、トンネル状視野日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン 2014
アナフィラキシーでみられる症状
0 20 40 60 80 100
中枢神経系
消化器
循環器
呼吸器
皮膚・粘膜
日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン 2014(%)
アナフィラキシーの鑑別疾患鑑別困難な疾患 喘息発作、失神、不安発作/パニック障害、急性全身性蕁麻疹、異物誤飲、
心血管疾患、神経学的疾患
食事関連 ヒスタミン中毒、グルタミン酸ナトリウム過敏反応、亜硫酸塩過敏反応、食中毒
内因性ヒスタミン過剰 マスト細胞症、クローン性マスト細胞異常、好塩基球性白血病
皮膚紅潮症候群 閉経周辺期、カルチノイド症候群、自律神経性てんかん、甲状腺髄様癌
非器質性疾患 声帯機能不全、過換気、心身症
ショック 循環血液量減少性、心原性、血液分布異常症、敗血症性
その他 非アレルギー性血管浮腫、全身性毛細管漏出症候群、レッドマン症候群、褐色細胞腫
日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン 2014
アナフィラキシーの危険因子
日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン 2014
アナフィラキシーの疫学•アナフィラキシー既往のある児童生徒
•生涯に1度おこる可能性は0.05~2%
小学生0.6%
中学生0.4%
高校生0.3%
平成25年度文部科学省:学校生活における健康管理に関する調査
Ann Allergy Asthma Immunol 2006;97:596
アナフィラキシーの誘引食物 鶏卵、牛乳、小麦、甲殻類など
昆虫 蜂、アリなど
医薬品 抗菌薬、NSAIDs、生物学的製剤、造影剤など
その他 ラテックス、職業アレルゲンなど
身体的要因 運動、低温、高温、日光など日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン 2014
ワクチンの構成物
2020/11/22 予防接種基礎講座 ワクチンの種類と構成物 小川英輝
アレルギー関連の報告がある成分
•ワクチン主成分•培養成分:鶏卵成分、抗菌薬•安定剤:ゼラチン•保存剤:チメロサール
鶏卵
2020/11/22 予防接種基礎講座 ワクチンの種類と構成物 小川英輝
ゼラチン•麻しん、風しん、水痘、おたふくかぜワクチン接種後にアナフィラキシーの報告•現在は黄熱、狂犬病ワクチン以外は非含有•例)水痘ワクチン接種後の副反応報告数
ゼラチン含有 ゼラチン非含有重症 軽症 重症 軽症
アナフィラキシー 28 4 0 1全身蕁麻疹 0 118 0 2
Ozaki T et al: Vaccine 2005;23:1205
ワクチンとアナフィラキシー•米国の成人・小児含め2500万doseでのアナフィラキシー頻度
2517万回33回
(=0.00013%)
J Allergy Clin Immunol 2016;137:868-78
予防接種後のアナフィラキシー2019年度 アナフィラキシー反応 アナフィラキシーショック アナフィラキシー様反応B型肝炎 14 3 1肺炎球菌 13 2 2ヒブ 16 2 2
4種混合(セービン/ソーク) 5/4 0/2 0/1ロタウイルス(1価/5価) 7/3 0 0
MR 1 0 0水痘 1 0 0ムンプス 0 0 0日本脳炎 3 1 0
インフルエンザ 12 8 0HPV(2価/4価) 0/0 0/0 0/0
PMDA 副作用が疑われる症例報告に関する情報 https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/adr-info/suspected-adr/0005.html
予防接種後アナフィラキシー出現時間
0 5 10 15 20 25 30 35
不明
4~20時間
2~4時間
30~120分
<30分
(%)J Allergy Clin Immunol 2016;137:868-78
アナフィラキシーへの対処
準備と治療が重要
準備アナフィラキシーがおこる可能性について
事前説明する
1. バイタルサインの確認
循環、気道、呼吸、意識状態、皮膚、体重を評価する
日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン 2014Simons FE, et al. WAO journal 2011; 4: 13-37を改変
2. 助けを呼ぶ
可能なら蘇生チーム(院内)または救急車(院外)
日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン 2014Simons FE, et al. WAO journal 2011; 4: 13-37を改変
3. アドレナリン投与
0.1%アドレナリン 0.01mg/kg最大量:成人 0.5mg、小児0.3mg大腿部中央の前外側に接種
日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン 2014Simons FE, et al. WAO journal 2011; 4: 13-37を改変
4. 患者を仰臥位にする•仰向けにして30cm程度足を高くする•呼吸が苦しいときは少し状態を起こす•嘔吐しているときは顔を横向きにする•突然立ち上がったり座ったりした場合、数秒で急変することがある
日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン 2014Simons FE, et al. WAO journal 2011; 4: 13-37を改変
5. 酸素投与
フェイスマスクや経鼻エアウェイで高流量(6~8L/分)の酸素投与を行う
日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン 2014Simons FE, et al. WAO journal 2011; 4: 13-37を改変
6. 静脈ルートの確保
成人 5~10ml/kg、小児 10ml/kgの生理食塩水を5~10分で投与
日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン 2014Simons FE, et al. WAO journal 2011; 4: 13-37を改変
0.9%NaCl
7. 心肺蘇生必要ならば胸部圧迫法による心肺蘇生
日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン 2014Simons FE, et al. WAO journal 2011; 4: 13-37を改変
8. バイタル測定頻回、定期的に患者の血圧、脈拍、呼吸状態、酸素化を評価する
日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン 2014Simons FE, et al. WAO journal 2011; 4: 13-37を改変
血管迷走神経反射
様々な要因により交感神経抑制による血管拡張と迷走神経緊張による徐脈が様々なバランスをもって生じる結果失神に至るもの
失神の診断・治療ガイドライン(2012年改訂版)
血管迷走神経反射の要因
•長時間の立位あるいは坐位姿勢•痛み刺激,不眠・疲労・恐怖等の精神的・肉体的ストレス•人混みの中や閉鎖空間等の環境要因
失神の診断・治療ガイドライン(2012年改訂版)
血管迷走神経反射の要因
失神の診断・治療ガイドライン(2012年改訂版)
•立位あるいは坐位で同一姿勢を維持しているときに発生しやすい•日中,特に午前中に発生することが多い•持続時間は比較的短い(1分以内)•転倒による外傷以外には後遺症を残さず,生命予後は良好
血管迷走神経反射の対処前兆を自覚した場合その場でしゃがんだり横になる前兆とは頭重感、頭痛、複視、嘔気、嘔吐、腹痛、眼前暗黒感など
ワクチン後の血管迷走神経反射米国での2002~2007年の報告
Syncope after vaccination. MMWR 2008 May 2;57(17):457-60
2002-2004 (n=203) 2005-2007 (n=463)報告数 % 報告数 %
性別 女性 124 61% 359 78%
年齢
5~10歳 24 12% 32 7%11~18歳 96 47% 287 62%19~49歳 59 29% 114 25%50~64歳 13 6% 12 2%>65歳 11 4% 18 4%
血管迷走神経反射の予防•接種後15分は椅子に腰掛けるか、体を横たえる•接種に際し、出来る限り不安の除去や疼痛対策を行う•あらかじめベッドに臥床の上で接種する•接種後30分は座って体調の変化を観察してから帰宅することが望ましい
日本小児科学会予防接種感染対策委員会声明:予防接種後の失神に対する注意点ついて(登録:2010.9.27)http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/saisin_100927.pdf
まとめ
•予防接種後のアナフィラキシー/血管迷走神経反射は稀だがいつでも起こり得る
•普段から準備をすることが重要