2019年度 ALL DOSHISHA€¦ · 産官学連携を中核とした...

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産官学連携を中核とした キャリア形成プログラムの策定 ALL DOSHISHA 教育推進プログラム 2019年度 Vol. 2 大学院という専門家集団の中での抽象的な議論は、「知」を深めていくためには不可欠なプロセスです。でも、 学術的なテーマも根本的には「現実」の中に問題を見出し、解決していくためにあるはず。とりわけ経済学は、 社会の課題にどう答えるかが問われる学問です。「産官学連携キャリア形成プログラム」では、企業や地域経済と いった実社会をケースとしたプログラムを実践することで、社会人基礎力や問題発見・解決能力を養うとともに、 研究活動のモチベーションを喚起するものです。

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Page 1: 2019年度 ALL DOSHISHA€¦ · 産官学連携を中核とした キャリア形成プログラムの策定 all doshisha 教育推進プログラム 2019年度 発行:同志社大学大学院

東 紗也華分析やリサーチは得意なのですが、なにかを発案する、ということに苦手意識がありました。プロジェクトではチームを通して自分の発想力の限界を超えていくことを経験。将来は企画職もいいかも、と思っています。

潘 順活動の中では“当事者意識”ということを何度も考えました。外国から日本に勉強しに来ている僕は、“お客さん”であってはならない。プロジェクトを通して、ずいぶん成長できたと思います。

産官学連携を中核としたキャリア形成プログラムの策定

ALL DOSHISHA 教育推進プログラム

2019年度

Vol.2発行:同志社大学大学院 経済学研究科

創立150周年を迎えるにあたり、本学は「同志社大学ビジョン2025」を掲げました。本学がこのビジョンを着実に進め、今後も社会で活躍する自治自立の人物を輩出し続けるためには、教育を提供する各学部及び研究科の教育研究のさらなる充実が不可欠であり、学部・研究科の改革と新たな挑戦を支援する教学マネジメントが求められています。

「ALL DOSHISHA教育推進プログラム」では、学部及び研究科から、本学がビジョンにおいて掲げたテーマに即した質の高い教育プログラムの提案を求め、大きな成果が期待できる取組に対して事業経費の一定額を大学が負担し、その事業の推進を支援します。そこで得られた様々な教育効果を改めて分析・共有し、本学の教育研究力の向上に役立て、次代の人物を養成するプログラムを新たに構築していきます。

大学院という専門家集団の中での抽象的な議論は、「知」を深めていくためには不可欠なプロセスです。でも、学術的なテーマも根本的には「現実」の中に問題を見出し、解決していくためにあるはず。とりわけ経済学は、社会の課題にどう答えるかが問われる学問です。「産官学連携キャリア形成プログラム」では、企業や地域経済といった実社会をケースとしたプログラムを実践することで、社会人基礎力や問題発見・解決能力を養うとともに、研究活動のモチベーションを喚起するものです。

パナソニックの技術を活用して、草津の地域経済を発展させるための提案をせよ2018年度はパナソニック株式会社の協力のもと、草津市の地域経済を発展させるための提案に学部生22名・大学院生8名の計30名が挑戦しました。草津市議会議員のレクチャーやパナソニックスタジアム吹田でのフィールドワーク等を通し、現状や問題点の分析、解決策の提案を行った結果、本プログラムに参加したとあるチームの学生たちが、プログラム内で考案したプランを自ら草津市に提案し、見事採用されました。

プログラムの概要質を担保した人物の育成

・グローバル化への対応・専門分野の知識習得

キャリア選択機会の増加・就職ミスマッチの解消・就「社」活動からの脱却

経済学研究科

学生

教員

外部評価

正規科目 課外講座

ALL DOSHISHA 教育推進プログラム

Vol.1 DIGEST 2018年度 実施

MISSION

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工場と営業の両拠点が1つとなっている台湾の鶴見製作所。かつては日系在台湾企業向けに水中ポンプをメインに事業を展開してきましたが、インフラ整備の進んだ台湾では、その更なる拡大は厳しい状況。そこで目を向けたのが、環境保護の観点から注目されていた「水処理機器(脱水器)」です。しかし、成熟した台湾市場では、当該事業も数年後には飽和状態になると予想されています。そこで、経済学研究科の大学院生6名が2チームに分かれ、今後の販売拡大方法について提案しました。

MISSION 1成熟した台湾市場でツルミの今後の展開を創造せよ

先端技術と日本文化が共存する地、京都。その経済は、未だ無限の発展の可能性を秘めています。今回は、パナソニック株式会社・京セラ株式会社・川崎重工業株式会社・ヤンマー株式会社の協力のもと、各社の持つ技術・アセットを組み合わせた新たなビジネスモデルの提案に、経済学部の学部生20名が挑戦しました。京都府や各企業からの情報提供だけでなく、企業訪問や経済学部専任教員からのフィードバック等を通し、「産官学連携」を体験できるプログラムです。

MISSION 2“4社”の技術・アセットを組み合わせて、“京都府”の地域経済を発展させるための提案をせよ

TEAM A TEAM 奇想10外

TEAM YYY

TEAM Victory Road

TEAM こだわりパズル

留学生3名で構成されたチームAは、現状の台湾鶴見製作所の課題点を徹底的に洗い出し、その解決によって今後の販売が拡大される方法を提案しました。チームAが提示した課題点は4つ。その中でも目を引いたのは、他社製品と比べ価格の高い鶴見製のポンプを「セカンドブランド化」するというもの。従来のステンレス製を鋳鉄製に変えることで、質は保ったまま低コストで製品を提供することができます。高い技術力を誇る鶴見製作所であるからこそ、実現可能性の高い提案です。

チーム奇想10外は、京都市内とそれ以外の市町村との間に存在する「経済格差」に注目しました。その格差を是正するため、奇想10外のメンバーが提案したのは、「子ども」を中心に京都府南丹地域の農業を活性化するビジネスモデル

「Ko do-mo!~つくって、うって、Let’s ベジ活~」です。4社の技術を組み合わせ、産地直送の野菜がより手軽に食べられるシステム(ヤンマー)や設備(京セラ・川崎重工業)、販売経路(パナソニック)を提案しました。

京都府の一人あたりの老人医療費が全国平均と比べ高水準であることに注目したチームYYYは、京都府民の健康増進のための都市アレンジ計画「“Walkable City”~自然と歩きたくなる都市アレンジ~」を提案しました。交通規制、ライトアップ、パークレット、オープンカフェの4つのキーワードから各社の技術を応用し、長期的な視点での医療費減少と、それに伴う地域経済の活性化の可能性を提案しました。

京都府の合計特殊出生率の低さに注目し、「居住地としての京都」の可能性を提案したのが、チームVictory Roadです。学生の多い京都において「子育て世代」を増やすため、サブスクリプションと最先端住宅をかけあわせたビジネスモデル「Kyoto Okoshiyasu Promotion(KOP)」を提案しました。各社の技術が詰まった最先端住宅をサブスクリプション方式で利用することで、京都に定住する人を増やすことが狙いです。

京都市東山区の高齢化率の高さと空き家問題に注目したチームこだわりパズルは、東山区の空き家をシニア世代と企業との協働でリノベーションし、全世代の憩いの場を提供するプロジェクトを提案しました。リノベーションした空き家では、各社の技術を応用した様 な々事業(「みんなでいってらこや

『温故知新』」「東山に恋」等)が展開されます。シニア世代の活躍の場と、子供たちの憩いの場を同時に提供し、人と人との繋がりによる活性化が期待できる提案です。

10月10日場所:同志社大学

課題解決に向けてのインプット10月30日場所:鶴見製作所

最終提案&

フィードバック11月29日場所:鶴見製作所

フィードバック①11月14日場所:同志社大学

フィードバック②11月21日場所:同志社大学

参加者6名が2チームに分かれ、事前に伝えられていた課題をもとに質問を行い、提案に不可欠な「論理的思考」についての情報をインプットしました。

鶴見製作所にて、会社概要の説明や工場見学が実施されました。また、社員座談会を通し、より詳細で現実的な提案を行うために必要な情報をインプットしました。

鶴見製作所にて、学生からの最終提案及び担当者からの審査講評・フィードバックが行われました。約2か月をかけ提案を完成させた経験は、将来のキャリアについて考えるきっかけとなることが期待されます。

チームビルディング&

スキルインプット

チームビルディング&

スキルインプット11月7日

場所:同志社大学

課題提供11月14日

場所:京都経済センター

最終提案 & 振り返り12月8日

場所:京都経済センター

フィードバック①11月21日場所:同志社大学

テクノロジーインプット11月29日場所:各社

フィードバック②12月5日

場所:同志社大学

参加者は5名×4チームに分かれ、アクションラーニング形式で、提案に不可欠な「論理的思考」についての情報をインプットしました。

京都府の担当者から、京都府の現状や課題についての情報提供がありました。提供された情報をもとに学生は自ら仮説を立て、疑問点について積極的に質問を行いました。

前回までに得た情報や自らの仮説を持って、チームごとに4社の企業訪問を行いました。施設の見学や事例説明、質疑応答等を通して、学生は自らが立てた仮説が本当に実態に即したものであるか再検討しました。

京都経済センターにて、学生からの最終提案と企業の担当者によるフィードバックが行われました。頂戴した意見をもとに、今回得た知識や経験を今後どのように活かしていくことができるか、各自で目標を設定しました。

TEAM BチームBは、台湾のポンプ市場が既に成熟していることから、台湾をメイン拠点とした海外マーケットへの進出の可能性に注目しました。既存のネットワークから潜在的なターゲットを絞りこんだ結果、チームBが注目したのは「インド」と「フィリピン」です。世界2位の人口を誇るものの干ばつや冠水の被害に悩まされるインドと、台風や地震等の災害が頻発するフィリピン。その両国においてそれぞれどのようなアプローチが可能か、短・中・長期的な目線で解決策(戦略)を提案しました。

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東 紗也華分析やリサーチは得意なのですが、なにかを発案する、ということに苦手意識がありました。プロジェクトではチームを通して自分の発想力の限界を超えていくことを経験。将来は企画職もいいかも、と思っています。

潘 順活動の中では“当事者意識”ということを何度も考えました。外国から日本に勉強しに来ている僕は、“お客さん”であってはならない。プロジェクトを通して、ずいぶん成長できたと思います。

産官学連携を中核としたキャリア形成プログラムの策定

ALL DOSHISHA 教育推進プログラム

2019年度

Vol.2発行:同志社大学大学院 経済学研究科

創立150周年を迎えるにあたり、本学は「同志社大学ビジョン2025」を掲げました。本学がこのビジョンを着実に進め、今後も社会で活躍する自治自立の人物を輩出し続けるためには、教育を提供する各学部及び研究科の教育研究のさらなる充実が不可欠であり、学部・研究科の改革と新たな挑戦を支援する教学マネジメントが求められています。

「ALL DOSHISHA教育推進プログラム」では、学部及び研究科から、本学がビジョンにおいて掲げたテーマに即した質の高い教育プログラムの提案を求め、大きな成果が期待できる取組に対して事業経費の一定額を大学が負担し、その事業の推進を支援します。そこで得られた様々な教育効果を改めて分析・共有し、本学の教育研究力の向上に役立て、次代の人物を養成するプログラムを新たに構築していきます。

大学院という専門家集団の中での抽象的な議論は、「知」を深めていくためには不可欠なプロセスです。でも、学術的なテーマも根本的には「現実」の中に問題を見出し、解決していくためにあるはず。とりわけ経済学は、社会の課題にどう答えるかが問われる学問です。「産官学連携キャリア形成プログラム」では、企業や地域経済といった実社会をケースとしたプログラムを実践することで、社会人基礎力や問題発見・解決能力を養うとともに、研究活動のモチベーションを喚起するものです。

パナソニックの技術を活用して、草津の地域経済を発展させるための提案をせよ2018年度はパナソニック株式会社の協力のもと、草津市の地域経済を発展させるための提案に学部生22名・大学院生8名の計30名が挑戦しました。草津市議会議員のレクチャーやパナソニックスタジアム吹田でのフィールドワーク等を通し、現状や問題点の分析、解決策の提案を行った結果、本プログラムに参加したとあるチームの学生たちが、プログラム内で考案したプランを自ら草津市に提案し、見事採用されました。

プログラムの概要質を担保した人物の育成

・グローバル化への対応・専門分野の知識習得

キャリア選択機会の増加・就職ミスマッチの解消・就「社」活動からの脱却

経済学研究科

学生

教員

外部評価

正規科目 課外講座

ALL DOSHISHA 教育推進プログラム

Vol.1 DIGEST 2018年度 実施

MISSION