「3Dグラフィックスのための · iii contents chapter1 復習:高校の数学から大学の数学まで 1 1.1 数の世界 1 数の拡張 1 /複素数 3 1.2 三角関数
2012年度数学I演習第 回 -...
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2012年度数学 I演習第 4回理 II・III 21 ~ 24組
6月 7日 清野和彦
問題 1. 次の関数の 0のまわりでの n 次の漸近展開を計算せよ。
(1) ex (2) sin x (3) cos x (4) log(1 + x)
問題 2. 次の関数の a のまわりでの n 次の漸近展開を計算せよ。ただし a は各関数の定義域に含まれる任意の実数である。
(0) 1 + 2x + 3x2 (1) ex (2) sin x (3) cos x (4) log x
問題 3. 以下の極限を漸近展開を使って計算せよ。
(1) limx→0
ex − 1 − x
x2 + x3(2) lim
x→0
x − tan x
x3
(3) limx→1
2ex − ex2 − e
(x − 1)2(4) lim
x→0
(1
x(1 + x)− log(1 + x)
x2
)
(5) limx→+∞
x logx − a
x + a(6) lim
x→0
(1
sin2 x− 1
x2
)
問題 4. 任意の自然数 n に対し、次の関数の 0 のまわりでの n 次の漸近展開を計算せよ。
(1)x
x2 − 3x + 2(2) log
4 + 4x + x2
1 − 2x + x2
(3)1
1 + x2(4) Arctan x
問題 5. 次の関数の 0のまわりでの 6次の漸近展開を計算せよ。
(1) Arctan(1 − cos x) (2) esin x cos x
問題 6. 極限
limx→0
(1 + x)1x − e(a + bx)
x2
が存在するための a, b の値と、そのときの極限値を求めよ。
2012年度数学 I演習第 5回前半理 II・III 21 ~ 24組
6月 21日 清野和彦
問題 7. e の値を小数点以下第 3位まで決定せよ。ただし 1 ≤ e ≤ 3 であることは使ってよい。(小数点以下第 4位を四捨五入するのではありません。)
問題 8. sin 1 の値を小数点以下第 3位まで決定せよ。(小数点以下第 4位を四捨五入するのではありません。)
問題 9. 3√
28 の値を小数点以下第 4位まで決定せよ。(小数点以下第 5位を四捨五入するのではありません。)
問題 10. e が無理数であることを証明せよ。
問題 11. 任意の正実数 x と a に対して
limx→+∞
xa
ex= 0
となることを証明せよ。
2012年度数学 I演習第 4回および第 5回前半解答理 II・III 21 ~ 24組
8月 7日 清野和彦
目 次
1 テイラー・ヤングの定理 1
1.1 テイラー近似多項式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11.2 漸近展開 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 21.3 テイラー・ヤングの定理 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 31.4 問題 1の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 31.5 問題 2の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 51.6 極限の計算への応用 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 71.7 問題 3の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 81.8 テイラー・ヤングの定理を使わずに漸近展開を求める . . . . . . . . . . . . . . . . 101.9 問題 4の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 111.10 漸近展開と積・合成 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 131.11 問題 5の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 141.12 問題 6の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 161.13 漸近展開の一意性:テイラー・ヤングの定理の逆 . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17
2 テイラー・ラグランジュの定理 18
2.1 問題 7:e の近似 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 182.2 問題 8:sinx の近似 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 202.3 問題 9:累乗根の近似 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 202.4 問題 10:e が無理数であること . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 222.5 問題 11:指数関数と多項式の「発散の速さ」比べ . . . . . . . . . . . . . . . . . . 22
1 テイラー・ヤングの定理
1.1 テイラー近似多項式
x = a で少なくとも n 回微分可能な関数 f(x) に対し、n 次以下の多項式
pa,n(x) = f(a) + f ′(a)(x − a) +f ′′(a)
2(x − a)2 + · · · + f (n)(a)
n!(x − a)n (1)
を f の a における「n 次のテイラー近似多項式」とか「n 次近似多項式」とか「n 次近似」とか
「n 次のテイラー展開」などと呼びます。(物理で「1次近似で考えると」とか「2次までとると」などというのは「1次のテイラー近似多項式で考える」とか「(1次ではなく)2次のテイラー近似多項式で考える」ということです。)
第 4 回および第 5 回前半 2
f の a における n 次のテイラー近似多項式は
pa,n(a) = f(a) p′a,n(a) = f ′(a) . . . p(n)a,n(a) = f (n)(a) p(n+1)
a,n (x) = 0(恒等的に 0)
という性質を持つ唯一の関数です。すなわち、この多項式は、標語的には
x = a における高次微分係数の列 f(a), f ′(a), . . . , f (n)(a) という目に見えない「無限小的」な情報だけを目に見える「大域的な」情報に置き換えてくれる関数
だと言ってよいでしょう1。
f の a における n 次のテイラー近似多項式が f , a, n という関数と場所と次数について特別な
存在であることは疑いないと感じてもらえるでしょうが、上の標語が「特別な存在」の意味だとい
われても納得できないというか「だからどうした」と思われるかもしれません。それに対する答が
テイラー・ヤングの定理です。
1.2 漸近展開
テイラー・ヤングの定理を述べるには漸近展開というものを定義しなければなりません。
x = a における微分係数は x → a という極限を使って定義されるものです。だから、テイラー
近似多項式と元の関数の間に(上の標語ではない)関係があるとすれば、それは x → a としたと
きの振る舞いに関することであろうと思えます。漸近展開とは x → a としたときの振る舞いに関
する次の性質です。� �定義 1. n 次以下の多項式 qa,n(x) が
limx→a
f(x) − qa,n(x)(x − a)n
= 0
という性質を持つとき、qa,n(x) は f の a のまわりでの n 次の漸近展開であると言う。� �ランダウの記号を使って書けば
f(a + h) − qa,n(a + h) ∈ o(hn)
を満たすということです。
qa,n が f の a のまわりでの n 次の漸近展開のとき、k < n を満たす 0以上の任意の自然数 k に
対して
limx→a
f(x) − qa,n(x)(x − a)k
= limx→a
f(x) − qa,n(x)(x − a)n
(x − a)n−k = limx→a
f(x) − qa,n(x)(x − a)n
limx→a
(x − a)n−k = 0
が成り立ちます。ここで qa,n(x) を具体的に
qa,n(x) = q0 + q1(x − a) + q2(x − a)2 + · · · + qn(x − a)n
というように x − a の多項式として書くと
f(x) − qa,n(x)(x − a)k
=f(x) − q0 − q1(x − a) − qk(x − a)k
(x − a)k+ qk+1(x − a) + · · · + qn(x − a)n−k
1あくまで標語です。この標語がピンと来ない人は深く考えず無視してください。
第 4 回および第 5 回前半 3
となります。x → a のときこれが 0に収束するのですから、特に
limx→a
f(x) − q0 − q1(x − a) − qk(x − a)k
(x − a)k= 0
が成り立つことになります。これは
q0 + q1(x − a) + q2(x − a)2 + · · · + qk(x − a)k
が f の a のまわりでの k 次の漸近展開であることを意味しています。すなわち、
f の aのまわりでの n次の漸近展開(を x−aの多項式として整理したもの)の k(< n)次以下の部分は f の a のまわりでの k 次の漸近展開である
となっているわけです。
なお、漸近展開は f の高次微分を使わずに定義されていることに注意してください。k = 1 のときの式
limx→a
f(x) − q0 − q1(x − a)x − a
= 0
は q0 = f(a) かつ q1 = f ′(a) を意味していますので、f は a で微分可能でなければ 1次以上の漸近展開は存在しませんが、f が a で 2回微分可能でなくても(それどころか f が a 以外では連続
でさえなくても)f の a のまわりでの 2次以上の漸近展開が存在することがあります。
1.3 テイラー・ヤングの定理
以上のように、テイラー近似多項式と漸近展開は全く別の概念です。それにもかかわらず次の定
理が成り立ちます。� �定理 1 (テイラー・ヤング). f が a で n 回微分可能なとき、f の a における n 次のテイラー
近似多項式は f の a のまわりでの n 次の漸近展開である。� �すなわち
f(a + h) − f(a) − f ′(a)h − f ′′(a)2
h2 − f ′′′(a)3!
h3 − · · · − f (n)(a)n!
hn ∈ o(hn)
が成り立つということです。これが「テイラー近似多項式が f , a, n についてどう特別なのか」と
いう疑問に対する答です。
1.4 問題 1の解答
テイラー・ヤングの定理により、f(x) の 0のまわりでの n 次の漸近展開とは
f(0) + f ′(0)x +f ′′(0)
2x2 +
f ′′′(0)3!
x3 + · · · + f (n)(0)n!
xn
という n 次以下の多項式のことだということがわかりました。というわけで、f を n 回微分すれ
ば n 次の漸近展開が求められます。
第 4 回および第 5 回前半 4
(1) ex は何度微分しても ex のままですので、すべての k について f (k)(0) = 1 です。よって、ex
の 0のまわりでの n 次の漸近展開は
1 + x +12x2 +
13!
x3 +14!
x4 + · · · + 1n!
xn =n∑
k=0
1k!
xk
となります。 □
(2) sinx を何度も微分して行くと
sinx微分−−→ cos x
微分−−→ − sinx微分−−→ − cos x
微分−−→ sinx
と 4回で元に戻ります。つまり、f(x) = sin x とすると、
f (2m)(x) = (−1)m sinx f (2m+1)(x) = (−1)m cos x m = 0, 1, 2, . . .
となっており、x = 0 を代入すると
f (2m)(0) = 0 f (2m+1)(0) = (−1)m m = 0, 1, 2, . . .
となります。よって、sinx の 0 のまわりでの n 次の漸近展開は偶数次の項がすべて 0 になり、n = 2m + 1 のときと n = 2m + 2 のときで同じ多項式
x − 13!
x3 +15!
x5 − · · · + (−1)m
(2m + 1)!x2m+1 =
m∑k=1
(−1)k
(2k + 1)!x2k+1
となります。 □
(3) cos x は sinx の導関数ですので、cos x の k 階導関数は sin x の k + 1 階導関数です。つまり、f(x) = cos x とすると
f (2m)(x) = (−1)m cos x f (2m+1)(x) = (−1)m+1 sin x m = 0, 1, 2, . . .
となっており、x = 0 を代入すると
f (2m)(0) = (−1)m f (2m+1)(0) = 0 m = 0, 1, 2, . . .
となっています。よって、cos x の 0のまわりでの n 次の漸近展開は奇数次の項がすべて 0になり、n = 2m のときと n = 2m + 1 のときとで同じ多項式
1 − 12x2 +
14!
x4 − · · · + (−1)m
(2m)!x2m =
m∑k=0
(−1)k
(2k)!x2k
となります。 □
(4) log(1 + x) を微分して行くと
log(1 + x) 微分−−→ 11 + x
= (1 + x)−1 微分−−→ −(1 + x)−2 微分−−→ 2(1 + x)−3 微分−−→ · · ·
で、f(x) = log(1 + x) とすると
f (k)(x) = (−1)k−1(k − 1)!(1 + x)−k 特に f (k)(0) = (−1)k(k − 1)!
となります。よって、log(1 + x) の 0のまわりでの n 次の漸近展開は
x − 12x2 +
13x3 − · · · + (−1)n
nxn =
n∑k=1
(−1)k
kxk
です。 □
第 4 回および第 5 回前半 5
1.5 問題 2の解答
(1)から (4)については、問題 1と全く同様にして計算することもできますが、問題 1の結果を利用して求めることもできます。問題 1と同じ方法で計算した方が結果を利用するより手間がかからないのですが、下の解答はあえて問題 1の結果を利用する方法で書いておきます。
(0) f(x) = 1 + 2x + 3x2 とすると
f(a) = 1 + 2a + 3a2 f ′(a) = 2 + 6a f ′′(a) = 6 f (k)(a) = 0 (k ≥ 3)
ですので、1 + 2x + 3x2 の a のまわりでの n 次の漸近展開は n = 0 のときは 1 + 2a + 3a2、n = 1のときは
1 + 2a + 3a2 + (2 + 6a)(x − a)
n ≥ 2 のときは
1 + 2a + 3a2 + (2 + 6a)(x − a) + 3(x − a)2
となります。
なお、これは 1 + 2x + 3x2 を x − a の多項式として整理したものと一致しています。 □
(1) ex = eaex−a で、y = x− a とおくと、問題 1(1)より eaey の y = 0 のまわりでの n 次の漸近
展開は
ean∑
k=0
1k!
yk =n∑
k=0
ea
k!yk = ea + eay +
ea
2y2 +
ea
3!y3 + · · · + ea
n!yn
です。よって、ex の x = a のまわりでの n 次の漸近展開はn∑
k=0
ea
k!(x − a)k = ea + ea(x − a) +
ea
2(x − a)2 +
ea
3!(x − a)3 + · · · + ea
n!(x − a)n
となります。 □
(2) 加法定理より
sin x = sin(a + (x − a)) = sin a cos(x − a) + cos a sin(x − a)
と変形できます。y = x− a とおくと、問題 1の (2)と (3)により、sin a cos y + cos a sin y の y = 0のまわりでの n 次の漸近展開は、n = 2m (m ̸= 0) のとき
sin am∑
k=0
(−1)k
(2k)!y2k + cos a
m−1∑k=0
(−1)k
(2k + 1)!y2k+1
= sin a + (cos a)y − sin a
2y2 − cos a
3!y3 + · · · + (−1)m sin a
(2m)!y2m
n = 2m + 1 のときは
sin am∑
k=0
(−1)k
(2k)!y2k + cos a
m∑k=0
(−1)k
(2k + 1)!y2k+1
= sin a + (cos a)y − sin a
2y2 − cos a
3!y3 + · · · + (−1)m cos a
(2m + 1)!y2m+1
第 4 回および第 5 回前半 6
です。よって、sinx の x = a のまわりでの n 次の漸近展開は、n = 2m (m ̸= 0) のとき
sin a
m∑k=0
(−1)k
(2k)!(x − a)2k + cos a
m−1∑k=0
(−1)k
(2k + 1)!(x − a)2k+1
= sin a + (cos a)(x − a) − sin a
2(x − a)2 − cos a
3!(x − a)3 + · · · + (−1)m sin a
(2m)!(x − a)2m
n = 2m + 1 のときは
sin am∑
k=0
(−1)k
(2k)!(x − a)2k + cos a
m∑k=0
(−1)k
(2k + 1)!(x − a)2k+1
= sin a + (cos a)(x − a) − sin a
2(x − a)2 − cos a
3!(x − a)3 + · · · + (−1)m cos a
(2m + 1)!(x − a)2m+1
です。(0次の漸近展開は sin a です。) □
(3) 加法定理より
cos x = cos(a + (x − a)) = cos a cos(x − a) − sin a sin(x − a)
と変形できます。y = x− a とおくと、問題 1の (2)と (3)により、cos a cos y− sin a sin y の y = 0のまわりでの n 次の漸近展開は、n = 2m (m ̸= 0) のとき
cos am∑
k=0
(−1)k
(2k)!y2k − sin a
m−1∑k=0
(−1)k
(2k + 1)!y2k+1
= cos a − (sin a)y − cos a
2y2 +
sin a
3!y3 + · · · + (−1)m cos a
(2m)!y2m
n = 2m + 1 のときは
cos am∑
k=0
(−1)k
(2k)!y2k − sin a
m∑k=0
(−1)k
(2k + 1)!y2k+1
= cos a − (sin a)y − cos a
2y2 +
sin a
3!y3 + · · · − (−1)m sin a
(2m + 1)!y2m+1
です。よって、cos x の x = a のまわりでの n 次の漸近展開は、n = 2m (m ̸= 0) のとき
cos am∑
k=0
(−1)k
(2k)!(x − a)2k − sin a
m−1∑k=0
(−1)k
(2k + 1)!(x − a)2k+1
= cos a − (sin a)(x − a) − cos a
2(x − a)2 +
sin a
3!(x − a)3 + · · · + (−1)m cos a
(2m)!(x − a)2m
n = 2m + 1 のときは
cos am∑
k=0
(−1)k
(2k)!(x − a)2k − sin a
m∑k=0
(−1)k
(2k + 1)!(x − a)2k+1
= cos a − (sin a)(x − a) − cos a
2(x − a)2 +
sin a
3!(x − a)3 + · · · + (−1)m+1 sin a
(2m + 1)!(x − a)2m+1
です。(0次の漸近展開は cos a です。) □
第 4 回および第 5 回前半 7
(4) log x を
log x = log(a + (x − a)) = log a
(1 +
x − a
a
)= log a + log
(1 +
x − a
a
)と変形します。y = x−a
a とおくと、問題 1の (4)より log a + log(1 + y) の y = 0 のまわりでの n
次の漸近展開は
log a + y − 12y2 +
13y3 − · · · + (−1)n−1
nyn
です。よって、log x の x = a のまわりでの n 次の漸近展開は
log a +x − a
a− 1
2
(x − a
a
)2
+ · · · + (−1)n−1
n
(x − a
a
)n
= log a +n∑
k=1
(−1)k−1
kak(x − a)k
となります。 □
1.6 極限の計算への応用
漸近展開が x → a としたときの f(x) の振る舞いと関わりがあることと、テイラー・ヤングの定理から漸近展開を高次微分係数を使って計算できることから、x → a としたときの関数の値の
極限を高次微分係数を使って計算できることがあります。
その仕組みを一般的に書くと次のようになります。(面倒なので、以下では f も g も a のまわ
りで任意次の漸近展開を持つとしてしまいます。f と g がどちらも C∞ 級であれば OK です。)
limx→a
f(x)g(x)
を計算したいとします。
分母の関数 g(x) の a のまわりでの k − 1 次の漸近展開は 0だが k 次の漸近展開は 0でないという自然数 k がただ一つ存在します。つまり、n が k 以上の自然数のとき、g(x) の a のまわりで
の n 次の漸近展開が
ck(x − a)k + ck+1(x − a)k+1 + · · · + cn(x − a)n ck ̸= 0
となる k です。特に
g(x) = ck(x − a)k + λ(x − a) λ(h) ∈ o(hk) (2)
となっています。
この k について、分子の関数 f(x) を a のまわりで k 次まで漸近展開します。それは、
f(x) = b0 + b1(x − a) + b2(x − a)2 + · · · + bk(x − a)k + µ(x − a) µ(h) ∈ o(hk) (3)
と書けます。
極限をとりたい関数 f(x)/g(x) の分子分母にこれらの漸近展開を代入すると、
f(x)g(x)
=b0 + b1(x − a) + b2(x − a)2 + · · · + bk(x − a)k + µ(x − a)
ck(x − a)k + λ(x − a)
=b0
(x−a)k + b1(x−a)k−1 + · · · + bk−1
x−a + bk + µ(x−a)(x−a)k
ck + λ(x−a)(x−a)k
となります。x → a のとき λ(x − a)/(x − a)k と µ(x − a)/(x − a)k はどちらも 0に収束しますので、x → a としたとき f(x)/g(x) は
第 4 回および第 5 回前半 8
b0, b1, . . . , bk−1の中に一つでも 0でないものがあれば発散し、b0 = b1 = · · · = bk−1 = 0ならば bk/ck に収束する
ということになります。
ここでテイラー・ヤングの定理を思い出しましょう。テイラー・ヤングの定理によると、
bl =f (l)(a)
l!l = 0, 1, . . . , k ck =
g(k)(a)k!
です。このことと上の段落の結果を合わせると、x → a としたとき f(x)/g(x) は
k を g(k)(a) ̸= 0 となるいちばん小さい整数とするとき、k より小さい l で f (l)(a) ̸= 0となるものがあれば発散し、すべての l = 0, 1, . . . , k − 1 で f (l)(a) = 0 ならばf (k)(a)/g(k)(a) に収束する
という結論が得られます。
もちろん、上の結果を憶えましょうと言っているのではありません。テイラー近似多項式が漸近
展開であるということから、x → a という極限についての情報が a における高次微分係数によっ
て表されるのだということを強調したいのです。
具体的には次のように計算することになります。例えば、
limx→0
6ex + a + bx + cx2
x3
が存在するための a, b, c の値と、そのときの極限値を求めようと思ったら、
ex = 1 + x +x2
2+
x3
6+ λ(x) λ(x) ∈ o(x3)
を代入して、
limx→0
(6 + a) + (6 + b)x + (3 + c)x2 + x3 + λ(x)x3
としてしまえば、答が「a = b = −6, c = −3、極限値は 1」であることが一遍にわかるという仕組みになっているのです。
1.7 問題 3の解答
前節で説明した極限の計算法を具体的に適用する問題です。すべて同じ方法で計算できますので、
(1)だけ計算の根拠まで説明し、(2)以降は計算過程だけ記します。
(1) x → 0 での極限を計算したいので、分子と分母の関数を 0のまわりで漸近展開しましょう。とはいえ、分母はそのままで 0のまわりでの漸近展開になっています。分母の漸近展開の最低次数の項は 2次なので、分子を 2次まで漸近展開します。すると、
ex − 1 − x =(
1 + x +x2
2+ λ(x)
)− 1 − x =
x2
2+ λ(x) λ(x) ∈ o(x2)
となります。よって、
limx→0
ex − 1 − x
x2 + x3= lim
x→0
x2
2 + λ(x)x2 + x3
= limx→0
12 + λ(x)
x2
1 + x=
12 + 01 + 0
=12
第 4 回および第 5 回前半 9
と計算できます。 □
(1) tanx を微分していくと
tan′ x = 1 + tan2 x
tan′′ x =(1 + tan2 x
)′= 2 tanx
(1 + tan2 x
)tan′′′ x =
(2 tan x
(1 + tan2 x
))′= 2
(1 + tan2 x
)2+ 4 tan2 x
(1 + tan2 x
)となりますので、
tanx = x +x3
3+ λ(x) λ(x) ∈ o(x3)
となります。これを代入して極限をとると
limx→0
x − tanx
x3= lim
x→0
−x3
3 − λ(x)x3
= −13
となります。 □
(3) x → 1 の極限を考えるので、ex を 1のまわりで漸近展開しましょう。
ex = e + e(x − 1) +e
2(x − 1)2 + λ(x − 1) λ(h) ∈ o(h2)
です。これを代入すると、
2ex − ex2 − e
(x − 1)2=
2(e + e(x − 1) + e
2 (x − 1)2 + λ(x − 1))− e
(1 + 2(x − 1) + (x − 1)2
)− e
(x − 1)2
=2λ(x − 1)(x − 1)2
x→1−−−→ 0
となります。 □
x → 0 以外の場合でも適用できる方法であることを強調するために、わざと x のまま計算して
おきましたが、実際には y = x − 1 と置き換えて y → 0 の極限として計算した方が見た目がすっきりします。
(4) log(1 + x) を 2回微分することにより
log(1 + x) = x − x2
2+ λ(x) λ(x) ∈ o(x2)
が分かります。よって
limx→0
(1
x(1 + x)− log(1 + x)
x2
)= lim
x→0
(1x− 1
1 + x− 1
x+
12− λ(x)
x2
)= −1
2
となります。 □
(5) y = 1x と置き換えて y の関数として 0のまわりで 1次まで漸近展開すると、
logx − a
x + a= log
1 − ay
1 + ay= log(1 − ay) − log(1 + ay) = (−ay + λ(y)) − (ay + µ(y))
= −2ay + ν(y) λ(y) ∈ o(y) µ(y) ∈ o(y) ν(y) = λ(y) − µ(y)
第 4 回および第 5 回前半 10
となります。よって、
limx→∞
x logx − a
x + a= lim
y→0
(−2a +
ν(y)y
)= −2a
となります。 □
(6) sin2 x を微分して行くと(sin2 x
)′= sin 2x
(sin2 x
)′′= 2 cos 2x
(sin2 x
)′′′= −4 sin 2x
(sin2 x
)′′′′= −8 cos 2x
となります。よって、
sin2 x = x2 − x4
3+ λ(x) λ(x) ∈ o(x4)
ですので
limx→0
(1
sin2 x− 1
x2
)= lim
x→0
x2 − sin2 x
x2 sin2 x= lim
x→0
x4
3 − λ(x)
x4 − x6
3 + x2λ(x)= lim
x→0
13 − λ(x)
x4
1 − x2
3 + λ(x)x2
=13
となります。 □
1.8 テイラー・ヤングの定理を使わずに漸近展開を求める
ここまでは漸近展開を求める必要がある場合、テイラー近似多項式を計算することで間接的に
(つまり、テイラー・ヤングの定理を通じて)漸近展開を求めました。ここでは漸近展開の定義を
満たす多項式を直接求めてみましょう。
まず、典型的な例として、 11−x の 0のまわりでの n 次の漸近展開が
1 + x + x2 + · · · + xn
であることを微分を使わずに示してみます。
まず
(1 + x + x2 + · · · + xn)(1 − x) = 1 − xn+1
という関係式に注目します。両辺を 1 − x で割ると
1 + x + x2 + · · · + xn =1
1 − x− xn+1
1 − x
すなわち
11 − x
− (1 + x + x2 + · · · + xn) = − xn+1
1 − x(4)
となります。右辺を xn で割って x → 0 とすると 0になりますので、
− xn+1
1 − x∈ o(xn)
です。これで 1 + x + x2 + · · ·+ xn が 11−x の 0のまわりでの n 次の漸近展開であることが示せま
した。
第 4 回および第 5 回前半 11
また、式(4)を −1 倍したものを 0から x(ただし x < 1)まで積分すると、
log(1 − x) −(−x − x2
2− x3
3− · · · − xn+1
n + 1
)=∫ x
0
tn+1
1 − tdt
が得られます。x → 0 の極限を考えたいので |x| < 1 としてしまいましょう。そうすると、右辺の積分の絶対値は ∣∣∣∣∫ x
0
tn+1
1 − tdt
∣∣∣∣ ≤ ∫ |x|
0
|t|n+1
1 − |t|dt ≤ |x|n+1
1 − |x|
∫ |x|
0
dt =|x|n+2
1 − |x|
となります。これを xn+1 で割って x → 0 とすると 0になりますので、log(1 − x) の 0のまわりでの n + 1 次の漸近展開が
−x − x2
2− x3
3− · · · − xn+1
n + 1
であることが分かります。
問題 4はこれらの例の応用です。
1.9 問題 4の解答
(1) x2 − 3x + 2 = (1 − x)(2 − x) なので、
x
x2 − 3x + 2=
x
(1 − x)(2 − x)=
11 − x
− 22 − x
と部分分数分解できます。 11−x の 0のまわりでの n 次の漸近展開は、上で求めたように
1 + x + x2 + x3 + · · · + xn
です。また、 22−x は分子分母を 2で割ることにより、
22 − x
=1
1 − x2
となりますので、 22−x の 0のまわりでの n 次の漸近展開は、 1
1−x の 0のまわりでの n 次の漸近展
開の x を x2 に置き換えたもの、すなわち
1 +x
2+(x
2
)2
+(x
2
)3
+ · · · +(x
2
)n
です。なぜなら、
11 − x
= 1 + x + x2 + · · · + xn + λ(x) λ(x) ∈ o(xn)
なので、
11 − x
2
= 1 +x
2+(x
2
)2
+ · · · +(x
2
)n
+ µ(x) µ(x) := λ(x
2
)となり、
limx→0
µ(x)xn
= limx→0
λ(
x2
)xn
= limx→0
λ(
x2
)2n(
x2
)n =12n
limy→0
λ(y)yn
= 0
第 4 回および第 5 回前半 12
となるからです。以上より、この二つの多項式を足したもの
12x +
34x2 +
78x3 + · · · + 2n − 1
2nxn
が求める n 次の漸近展開です。 □
(2) 4 + 4x + x2 = (2 + x)2, 1 − 2x + x2 = (1 − x)2 なので、
log4 + 4x + x2
1 − 2x + x2= 2 log(2 + x) − 2 log(1 − x)
となります。(0のまわりでの漸近展開を考えるということは、0に近い x しか相手にしないとい
うことですので、log の中身に絶対値記号を付けませんでした。)log(1 + x) の導関数である 1
1+x の 0のまわりでの n − 1 次の漸近展開は、 11−x の 0のまわりで
の n − 1 次の漸近展開で x を −x に置き換えたものですので、
1 − x + x2 − x3 + · · · + (−1)n−1xn−1
です。よって、log(1 + x) の 0のまわりでの n 次の漸近展開は、これを積分することにより
x − x2
2+
x3
3− x4
4+ · · · + (−1)n−1 xn
n
となります。(もちろん、直接微分しても求められます。)
log(2 + x) = log(1 + x2 ) + log 2 ですので、log(2 + x) の 0 のまわりでの n 次の漸近展開は、
log(1+x) の 0のまわりでの n 次の漸近展開の x を x2 で置き換えて log 2 を足したもの、すなわち
log 2 +x
2−
(x2 )2
2+
(x2 )3
3− · · · + (−1)n−1 (x
2 )n
n(5)
です。一方、log(1 − x) の 0のまわりでの n 次の漸近展開は、log(1 + x) の 0のまわりでの n 次
の漸近展開の x を −x に置き換えたもの、すなわち
−x − x2
2− x3
3− x4
4− · · · − xn
n(6)
です。以上より、求める n 次の漸近展開は(5)の 2倍から(6)の 2倍を引いた
log 4 + 3x +34x2 +
34x3 +
1532
x4 + · · · + 2n + (−1)n−1
2n−1nxn
です。 □
(3) 11+x2 は 1
1−y に y = −x2 を代入したものですので、 11+x2 の 0のまわりでの 2m 次と 2m + 1
次の漸近展開は、 11−y の 0のまわりでの m 次の漸近展開に y = −x2 を代入したものです。よっ
て、それは
1 − x2 + x4 − x6 + · · · + (−1)mx2m
となります。なぜなら λ(x) ∈ o(xn) なら λ(x2) ∈ o(x2n) となるからです。 □
(4) Arctan 0 = 0 と Arctan x の導関数が 11+x2 であることから、Arctanx の 0のまわりでの n 次
の漸近近似は 11+x2 の 0のまわりでの n − 1 次の漸近近似を 0から x まで積分したもの(すなわ
ち定数項が 0の不定積分)です。すなわち、n = 2m + 1 と n = 2m + 2 で同じ多項式
x − x3
3+
x5
5− · · · + (−1)m x2m+1
2m + 1
です。(0次の漸近展開は 0です。) □
第 4 回および第 5 回前半 13
1.10 漸近展開と積・合成
漸近展開がわかっている関数たちの積や合成の漸近展開を知りたいことがよくあります。この場
合もテイラー・ヤングの定理を使わずに漸近展開を求めることができます。
まず積の場合を説明しましょう。二つの関数 f と g が
f(x) = b0 + b1(x − a) + b2(x − a)2 + · · · + bn(x − a)n + λ(x − a) λ(h) ∈ o(hn)
g(x) = c0 + c1(x − a) + c2(x − a)2 + · · · + cn(x − a)n + µ(x − a) µ(h) ∈ o(hn)
であるとします。この二つを辺々掛けて整理すると
f(x)g(x) =b0c0 + (b0c1 + b1c0)(x − a) + (b0c2 + b1c1 + b2c0)(x − a)2
+ · · · + (b0cn + b1cn−1 + · · · + bnc0)(x − a)n
+ (b1cn + b2cn−1 + · · · + bnc1)(x − a)n+1 + · · · + bncn(x − a)2n (7)
+ λ(x − a)(c0 + c1(x − a) + · · · + cn(x − a)n) (8)
+ µ(x − a)(b0 + b1(x − a) + · · · + bn(x − a)n) (9)
+ λ(x − a)µ(x − a) (10)
となり、四つの式(7), (8), (9), (10)は、h = x − a の関数と見たときすべて o(hn)に属していま
す。よって、h(x) = f(x)g(x) と定義すると、h の a のまわりでの n 次の漸近展開は
b0c0 + (b0c1 + b1c0)(x − a) + (b0c2 + b1c1 + b2c0)(x − a)2 (11)
+ · · · + (b0cn + b1cn−1 + · · · + bnc0)(x − a)n
=n∑
k=0
(k∑
i=0
bick−i
)(x − a)k (12)
であることがわかりました。このように、f と g の漸近展開から h = fg の漸近展開が計算でき
るのです。
合成の場合も同様です。g(y) に y = f(x) を合成した関数 g ◦ f の漸近展開について考えます。
f が a のまわりで
f(x) = b0 + b1(x − a) + b2(x − a)2 + · · · + bn(x − a)n + λ(x − a) λ(h) ∈ o(hn)
となっており、g(y) が y = b0 = f(a) のまわりで
g(y) = c0 + c1(y − b0) + c2(y − b0)2 + · · · + cn(y − b0)n + µ(y − b0) µ(h) ∈ o(hn)
となっているとします。合成して整理すると
g(f(x)) =c0 + c1(f(x) − b0) + c2(f(x) − b0)2 + · · · + cn(f(x) − b0)n + µ(f(x) − b0)
=c0 + c1 (b1(x − a) + · · · + bn(x − a)n + λ(x − a))
+ · · · + cn (b1(x − a) + · · · + bn(x − a)n + λ(x − a))n + µ(f(x) − b0)
=c0 + b1c1(x − a) + (b2c1 + b21c2)(x − a)2 + · · · + (bnc1 + · · · + bn
1 cn)(x − a)n (13)
+ (x − a)n+1α(x) + λ(x − a)β(x) (14)
+ µ(f(x) − b0) (15)
第 4 回および第 5 回前半 14
となります。ただし式(14)の α(x) と β(x) は多項式です。式(14)は o((x − a)n
)に属しているの
で、式(15)も o((x − a)n
)に属していることが示せれば、式(13)が g ◦ f の a のまわりでの n 次
の漸近展開であることがわかります。
式(15)を (x − a)n で割って変形すると、
µ(f(x) − b0)(x − a)n
=µ(f(x) − b0)(f(x) − b0)n
(f(x) − b0
x − a
)n
となります。f は a で連続、すなわち x → a のとき f(x) → b0 ですので、h = f(x)− b0 と置くと
limx→a
µ(f(x) − b0)(f(x) − b0)n
= limh→0
µ(h)hn
= 0
となります。一方、f は a で微分可能ですので、
limx→a
f(x) − b0
x − a= f ′(a) = b1
となっています。この二つを合わせると
limx→a
µ(f(x) − b0)(f(x) − b0)n
= limx→a
µ(f(x) − b0)(f(x) − b0)n
(limx→a
f(x) − b0
x − a
)n
= 0 × bn1 = 0
となります。これで(13)が g ◦ f の a のまわりでの n 次の漸近展開であることが示せました。
以上のように一般的に書くと(特に合成の方は)難しく感じるかもしれませんが、理屈はどうあ
れやっていることは単純です。上記があまり良くわからなくても以下の問題の解答で具体的な使い
方に触れてもらった方がよいと思います。
1.11 問題 5の解答
(1) まず、Arctan y の 1 − cos 0 = 0 のまわりでの 6次の漸近展開を計算しましょう。(問題 4の(4)で求めてありますが、この解答だけ読んでも分かるように、あえてもう一度書いておきます。)
(Arctan y)′ =1
1 + y2
であり、 11+y2 は 1
1−x に x = −y2 を代入したものなので、 11+y2 の 0のまわりでの 5次の漸近展
開は
1 − y2 + y4
となります。(5次の項は 0なので 4次多項式になります。)これを不定積分し、Arctan 0 = 0 によって積分定数を決めると、Arctan y の 0のまわりでの 6次の漸近展開が
p6(y) = y − y3
3+
y5
5
であることが分かります。
一方、1 − cos x の 0のまわりでの 6次の漸近展開は
q6(x) =x2
2− x4
4!+
x6
6!
です。
よって、Arctan(1 − cos x) の 0のまわりでの 6次の漸近展開は、
第 4 回および第 5 回前半 15
p6(q6(x)) の 6次までの部分
すなわち、 (x2
2− x4
4!+
x6
6!
)− 1
3
(x2
2− x4
4!+
x6
6!
)3
+15
(x2
2− x4
4!+
x6
6!
)5
の 6次までの部分なので、
x2
2− x4
4!+
x6
6!− 1
3x6
8=
x2
2− x4
24− 29x6
720
となります。 □
(2) sinx の 0のまわりでの 6次の漸近展開を p6(x) とすると、
p6(x) = x − 13!
x3 +15!
x5
です。sin 0 = 0 なので、ey の 0のまわりでの 6次の漸近展開を考えます。それを q6(y) とすると、
q6(y) = 1 + y +12y2 +
13!
y3 +14!
y4 +15!
y5 +16!
y6
です。また、cos x の 0のまわりでの 6次の漸近展開を r6(x) とすると、
r6(x) = 1 − 12x2 +
14!
x4 − 16!
x6
です。esin x cos x の 0のまわりでの 6次の漸近展開は
q6(p6(x)) × r6(x)
という多項式の 6次までの項を集めたものです。それを計算するために、まず q6(p6(x)) の 6次の項までを計算しましょう。
q6(p6(x)) = 1 +(
x − 13!
x3 +15!
x5
)+
12
(x − 1
3!x3 +
15!
x5
)2
+13!
(x − 1
3!x3 +
15!
x5
)3
+14!
(x − 1
3!x3 +
15!
x5
)4
+15!
(x − 1
3!x3 +
15!
x5
)5
+16!
(x − 1
3!x3 +
15!
x5
)6
です。これを見るとものすごく大変そうに感じるかも知れません。しかし、必要なのは 6次の項までなので、7次以上の項は計算する必要はありません。そうすると、それほど大変な計算でもなく
1 + x +12x2 − 1
8x4 − 1
15x5 − 1
240x6
とわかります。これに r6(x) を掛けて 6次の項までをとると、
1 + x − 12x3 − 1
3x4 − 1
40x5 +
790
x6
となります。これが esin x cos x の 0のまわりでの 6次の漸近展開です。 □
他にも自分でいろいろ例を考えて計算してみると漸近展開の計算にも慣れるし、この方法の強
力さも実感できると思います。例えば tanx の漸近展開はどのようになるでしょうか。sinx の漸
第 4 回および第 5 回前半 16
近展開を cos x の漸近展開で割っても、多項式分の多項式は多項式にならないのでうまくいきませ
ん。この場合は
tanx =sinx
cos x=
sinx
1 + (cos x − 1)
と見て、 11+y に y = cos x − 1 を合成してから sinx を掛けたと見れば問題 5とまったく同様に計
算できます。あるいは、cos x tanx = sin x であることから「cos x の漸近展開を掛けると sinx の
漸近展開になる多項式」として求めることもできます。是非、直接微分する方法とこれらの方法の
両方で計算してみて下さい。
1.12 問題 6の解答
この問題は問題 3と同じ種類の問題ですが、分子の漸近展開を計算するときに合成関数の漸近展開の考えを使うとよい問題です。
分母が x2 なので、分子の 2次の漸近展開が求まれば極限を計算できます。まず
(1 + x)1x = e
1x log(1+x)
と変形します。log(1 + x) を x = 0 のまわりで 3次まで漸近展開すると、
log(1 + x) = x − x2
2+
x3
3+ λ(x) λ(x) ∈ o(x3)
となりますので、両辺を x で割って
1x
log(1 + x) = 1 − x
2+
x2
3+ µ(x) µ(x) =
λ(x)x
∈ o(x2)
が得られます。これは x = 0 のときの値が 1ですので、ey を y = 1 で 2次まで近似しましょう。しかし、ey = e × ey−1 ですので、求める展開は eY の Y = 0 での 2次までの近似に e を掛けて
Y = y − 1 としたものです。よって、
ey = e
(1 + (y − 1) +
(y − 1)2
2+ ν(y − 1)
)ν(h) ∈ o(h2)
となります。以上より、(1 + x)1/x の 0のまわりでの 2次の漸近展開は
e
(1 + (y − 1) +
(y − 1)2
2
)の y に 1 − x
2+
x2
3を代入して 2次以下の項を集めたもの、
すなわち、
e
(1 − x
2+
1124
x2
)です。これを (1 + x)1/x に使って極限を計算してよいわけですから、
limx→0
(1 + x)1x − e(a + bx)
x2= lim
x→0e
(1 − a
x2−
12 + b
x+
1124
)となります。よって、極限が存在するための a と b の値と極限値はそれぞれ
a = 1 b = −12
1124
e
です。 □
第 4 回および第 5 回前半 17
1.13 漸近展開の一意性:テイラー・ヤングの定理の逆
ここまでの問題で「漸近展開を求めよ」といわれたら漸近展開を一つしか求めませんでした。つ
まり、漸近展開はあるとしてもただ一つであるということを証明なしで使ってしまっていました。
ここで改めてそれが正しいということを説明しておきましょう。
テイラー・ヤングの定理は「テイラー近似多項式は漸近展開である」という主張です。実は、こ
れは逆も成り立ちます。正確には
f が a で n 回微分可能ならば、f の a のまわりでの n 次の漸近展開は f の a におけ
る n 次のテイラー近似多項式である
が成り立つのです。
証明. 概略は以下です。細かいことは各自で完成させてみて下さい。
qa,n(x) が f の a のまわりでの漸近展開なら、n 次のテイラー近似多項式 pa,n(x) も同様の漸近展開であることから
limx→a
qa,n(x) − pa,n(x)(x − a)k
= 0
が 0以上 n以下のすべての整数 kに対して成り立ちます。この式を k = 0で使うと qa,n(a) = pa,n(a)が、すなわち qa,n(x) と pa,n(x) を x− a の多項式として整理したときに定数項が等しいことが分
かります。
その上で k = 1 の場合を使うと x − a の係数が等しいことが分かります。
さらに、その上で k = 2 の場合を使うと (x − a)2 の係数が等しいことが分かります。というように、次数の低い係数から帰納的に等しいことが証明できます。 □
テイラー・ヤングの定理とその逆をあわせると、� �f が a で n 回微分可能なとき、f の a のまわりでの n 次の漸近展開がただ一つ存在し、そ
れは f の a における n 次のテイラー近似多項式である� �となります。
すなわち、普通に微分できる関数を考えている限り、漸近展開とテイラー近似多項式は同じもの
だと思って良いのです。問題 1, 2, 3などではもっぱら漸近展開をテイラー近似多項式として求めましたが、逆にテイラー近似多項式を漸近展開として求めることで得られる御利益もあります。た
とえば、積の漸近展開が漸近展開の積であることから、h(x) = f(x)g(x) としたとき
h(n)(a) = n!n∑
k=0
f (k)(a)k!
g(n−k)(a)(n − k)!
=n∑
k=0
nCkf (k)(a)g(n−k)(a)
であることがわかります。h の漸近展開(12)が h のテイラー近似多項式でもあることから得られ
るわけです。
他にも、問題 5の結果から Arctan(1 − cos x) の 0での 6次微分の値が − 29720
× 6! = −29 であることが Arctan(1 − cos x) を直接微分することなく得られます。なお、問題 5の (2)は
(esin x
)′ = esin x cos x であることを使うともっと楽に計算できます。なぜ
なら、g(x) = esin x とすると g′(x) = f(x) なので、g(x) の 0 のまわりでの 7次の漸近展開
g(0) + g′(0)x +g′′(0)
2x2 +
g′′′(0)3!
x3 + · · · + g(6)(0)6!
x6 +g(7)(0)
7!x7
第 4 回および第 5 回前半 18
を微分すると、
g′(0) + g′′(0)x +g′′′(0)
2x2 + · · · + g(6)(0)
5!x5 +
g(7)(0)6!
x6
= f(0) + f ′(0)x +f ′′(0)
2x2 + · · · + f (5)(0)
5!x5 +
f (6)(0)6!
x6
となって、f(x) の 0 のまわりでの 6次の漸近展開が得られる一方、g(x) は ey に y = sinx を合
成しただけなので、f(x) の漸近展開よりだいぶ楽に計算できるからです。是非この方法でも計算して答が一致することを確かめてみてください。
2 テイラー・ラグランジュの定理
テイラー・ヤングの定理は、x を近似の中心 a に近づけたときの元の関数 f とテイラー近似多
項式 pa,n との関係についての定理です。(結論は「漸近展開である」ということでした。) しかし、多項式の一番分かりやすい特徴は「値が簡単に計算できる」ということなので、x を a に近づけ
ずに a とは違う値 b に留めたときのテイラー近似多項式の値 pa,n(b) が元の関数の値 f(b) とどのくらい違っているかを知りたいところです。「f(b) の値は分からないが pa,n(b) の値は計算できる」ということを利用して f(b) の値をある程度決定しようというわけです。そのためにしなければならないのは f(b) − pa,n(b) がどの程度の値になるかを見積もることです。つまり、x = b のときの
剰余の値 λ(b) の大きさを調べることが唯一の「しなければならないこと」です。ところが、f(b) がわからない上に pa,n(b) は n + 1 個の項の和ですから、λ(b) = f(b) − pa,n(b)はわからない値を含む n + 2 個の値の和 (差)です。これでは手も足も出ません。ここでテイラー・ラグランジュの定理の登場です。� �定理 2 (テイラー・ラグランジュ). f が n + 1 回微分可能な関数のとき、
f(x) − pa,n(x) =fn+1(c)(n + 1)!
(x − a)n+1
となる c が a と x の間に存在する。� �この定理のおかげで剰余 λ(b) を f (n+1)(x) を使った「一つの式」で表され、大きさを見積もりやすいというわけです。(いつでも絶対に見積もれるというわけではありませんが。)その見積もり
方の実例がこの後の三問です。
以下、これまで λ(x) と書いていたものを、次数がわかるようにするために
λn+1(x) = f(x) − pa,n(x)
と添え字を付けて書くことにします。
2.1 問題 7:e の近似
ex に x = 0 でテイラー・ラグランジュの定理を適用して e の値を小数点以下第 3位まで決定してみましょう。(ただし 1 ≤ e ≤ 3 は分かっているものとします。)何次まで近似すべきであるかという試行錯誤の部分はとばして、いきなり答を書きます。
第 4 回および第 5 回前半 19
解答. x = 0 のまわりで ex を 6次まで漸近展開すると、テイラー・ラグランジュの定理により
ex = 1 + x +x2
2+
x3
3!+ · · · + x6
6!+
ecx7
7!0 < ∃c < x or x < ∃c < 0
となります。これに x = 1 を入れて e の値を近似してみます。1 ≤ e ≤ 3 はわかっているとしているのですから、0 < c < 1 から剰余項 λ7(1) は
17!
=e0 · 17
7!< R7(1) <
e1 · 17
7!≤ 3
7!
と評価できます。つまり、
1 + 1 +12
+13!
+ · · · + 16!
+17!
< e < 1 + 1 +12
+13!
+ · · · + 16!
+37!
が成り立ちます。左辺と右辺を具体的に計算すると、この不等式は
2.718253 · · · · · · < e < 2.718652 · · ·
となります。これで e = 2.718 · · · であることが示せました。 □
� �
O
log y
xO
y
x
n = 0
n = 123
ex
1
1
ex
76543
2
1
n = 01
log e = 1
図 1: ex の漸近展開。� �計算してみる前から「6次近似+ 7次の剰余」で小数点以下第 3位が決定できることが分かるということはありえません。1/6! = 0.0013 · · · なので、上の解答の方針では 7次以上の剰余でなければならないということは分かります。そこで、試しに 6次近似+ 7次の剰余で計算してみたら決定できた、ということです。
ちなみに、
e = limn→∞
(1 +
1n
)n
第 4 回および第 5 回前半 20
でもあるので、各 n に対する (1 + 1/n)n の値を計算してみましょう。すると、
n = 1 2 8 2.5657845139 · · ·2 2.25 9 2.5811747917 · · ·3 2.3703703703 · · · 10 2.59374246014 2.44140625 20 2.6532977051 · · ·5 2.48832 30 2.6743187758 · · ·6 2.5216263717 · · · 50 2.6915880290 · · ·7 2.5464996970 · · · 100 2.7048138294 · · ·
で、小数点以下第 3位まで決定することなど電卓での計算ではとてもできません。テイラー近似多項式の方がずっと近似の精度がよいのです。
2.2 問題 8:sin x の近似
問題 7で e に対して行ったのと同じことを sin 1 に対して行うのが問題 8です。
解答. sin x に 0のまわりで 2n 次でテイラー・ラグランジュの定理を使うと
sinx = x − x3
3!+
x5
5!− · · · + (−1)n−1 x2n−1
(2n − 1)!+ (−1)n cos c
(2n + 1)!x2n+1
となります。これに x = 1 を代入すると、
sin 1 = 1 − 13!
+15!
− · · · + (−1)n−1
(2n − 1)!+ (−1)n cos c
(2n + 1)!
となります。もちろん「これの成り立つ c が (0, 1) に存在する」という意味です。(0, 1) において0 < cos c < 1 ですので、
−0.0002 < − 17!
< (−1)3cos c
7!< 0
です。一方、
1 − 13!
+15!
= 0.8416666 · · ·
なので、
0.841 < 0.8416 · · · − 0.0002 < sin 1 < 0.8416 · · · + 0 < 0.842
となって、sin 1 = 0.841 · · · とわかります。 □
問題 7と同様に、計算してみる前から「6次近似+ 7次の剰余」で小数点以下第 3位が決定できることが分かるということはありえません。1/6! = 0.0013 · · · なので、上の解答の方針では 7次以上の剰余でなければならないということは分かります。そこで、試しに 6次近似+ 7次の剰余で計算してみたら決定できた、という問題 7の場合とまったく同じ考え方です。
2.3 問題 9:累乗根の近似
問題 7や問題 8のように、n 次微分の値をある程度評価できるような関数の値ならテイラーの定
理で近似することができます。e や sin のほかに cos や log が考えられます。ここではそれ以外の
第 4 回および第 5 回前半 21
例として (1 + x)r を利用してみます。 3√
28 = (1 + 27)1/3 と見るわけです。しかし、このままでテ
イラー・ラグランジュの定理を適用したのでは x = 28 が大きすぎて、なかなか良い近似は得られません。もう一工夫する必要があります。
解答. 33 = 27 ですので、
3√
28 = 3 3
√2827
= 3 3
√1 +
127
= 3(
1 +127
) 13
です。そこで、3(1 + x)1/3 に 0においてテイラーの定理を適用し、x = 1/27 を代入しましょう。f(x) = 3(1 + x)1/3 を微分して行くと、
f ′(x) = (1 + x)−23 f ′′(x) = −2
3(1 + x)−
53 f ′′′(x) =
23
53(1 + x)−
83
となります。よって、テイラー・ラグランジュの定理により、
3(1 + x)13 = f(0) + f ′(0)x +
f ′′(0)2
x2 +f ′′′(c)
3!x3 = 3 + x − x2
3+
5x3
27(1 + c)8/3
となる c が 0と x の間に存在することが分かります。これに x = 1/27 を代入すると、
3√
28 = 3 +133
− 137
+5
312(1 + c)8/3
となります。右辺の第 3項までの和は
3 +133
− 137
= 3.03657 · · ·
です。一方、0 < c < 1/27 ですので、右辺の最後の項は
5312(1 + 1/27)8/3
<5
312(1 + c)8/3<
5312
(16)
という不等式を満たします。左辺は正であり、右辺は
5312
< 0.00001
という不等式を満たします。これらを合わせると、
3.03657 <3√
28 < 3.03658 + 0.00001 = 3.03659 (17)
という不等式が得られます。よって、
3√
28 = 3.0365 · · ·
です。 □
問題 7や 8でも注意したように、2次近似+ 3次の剰余項でテイラー・ラグランジュの定理を適用すると小数点以下第 4位を決定できるということは計算前からわかることではありません。もちろん、(1/27)2 = 0.0013 · · · だが (1/27)3 = 0.00005 · · · である、ということを調べて 2次近似+ 3次の剰余項を使ってみることに決めましたが、それでうまく評価ができる保証が事前に得られてい
たわけではありません。
第 4 回および第 5 回前半 22
なお、上の計算では剰余項の評価(16)の下からの不等式を全く捨てて「0より大きい」に取り換えてしまいました。これはいかにももったいないことです。頑張ってそこをもう少し詳しく調べれ
ば、小数点以下第 5位まで決定できるかもしれません。例えば、上の結果(17)から 3√
28 < 3.1 が分かっているのですから、
5312(1 + c)8/3
>5
312(1 + 1/27)8/3=
5
81 3√
288 >
581 · 282 · 3.12
> 0.000008
が分かります。よって、
3√
28 > 3.036579 + 0.000008 = 3.036587
となり、不等式(17)と合わせて
3√
28 = 3.03658 · · ·
となります。小数点以下第 5位まで決定できました。
2.4 問題 10:e が無理数であること
これはテイラー・ラグランジュの定理の使い方としてはかなり特殊な例で一般性はありません
が、状況と工夫次第ではこのような使い方もできる、ということと、e が無理数であるということ
は一度はキチンと証明しておいた方がよいと思ったので出題しました。
解答. 背理法で示します。
e = pq となる自然数 p と q があったとします。必要なら分子分母に同じ自然数をかけることに
よって q > e としておきます。
テイラー・ラグランジュの定理を f(x) = ex, a = 0, n = q + 1 で適用し x = 1 を代入すると
e = 1 + 1 +12
+13!
+ · · · + 1q!
+ec
(q + 1)!(0 < ∃c < 1)
が得られます。両辺に q! をかけると
q!e = q! + q! + q(q − 1) · · · 5 · 4 · 3 + q(q − 1) · · · 5 · 4 + · · · + 1 +ec
q + 1
となりますが、 ec
q+1 以外はすべて整数ですので、ec
q+1 も整数でなければなりません。しかし、0 < c < 1なので 0 < ec < e < q + 1 となり、0 < ec
q+1 < 1 となってしまうので、整数ではあり得ません。これは矛盾です。 □
2.5 問題 11:指数関数と多項式の「発散の速さ」比べ
剰余 λn(x) は元々は x → a のときの振る舞いを問題にするために考えたものですが、その具体
的な表示は x が a に近い必要はなく、任意の x で成り立ちます。もちろん x が a から離れれば
離れるほどテイラー・ラグランジュの定理の中の c の居場所が曖昧になるので、表示自体の精度
は落ちます。けれども成り立つことは成り立つのです。だから、テイラー・ラグランジュの定理を
うまく使うことで x が a から遠いときの f(x) の情報、例えば x → ∞ のときの振る舞いが分か
る場合があります。そのような例として問題 11
第 4 回および第 5 回前半 23
任意の正実数 x と a に対して
limx→+∞
xa
ex= 0
が成り立つ。
を出題しました。この事実は
指数関数はどのような多項式よりも速く無限大に発散する
という言い方でよく使われるものです。
解答. a より大きな自然数 n を一つ決め、ex に 0において n 次でテイラー・ラグランジュの定理
を適用します。すると
ex = 1 + x +x2
2+
x3
3!+ · · · + xn
n!+
ecxn+1
(n + 1)!
となります。x > 0 のとき右辺のすべての項が正ですので、
ex >xn
n!
が成り立ちます。よって、
0 <xa
ex<
xa
xn/n!=
n!xn−a
となります。n は a より大きく選んであるので、x → ∞ のとき xn−a → ∞ です。よって
limx→+∞
n!xn−a
= 0
です。よって、はさみうちの原理により示せました。 □