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I-1-92 1-3.被災状況 (1)被災の状況<人的被害> 1)死者・行方不明者数 石巻湾に位置する石巻市が最も多く、同湾の東松島市も被害が甚大である。宮古市から牡鹿半 島までの三陸リアス式海岸の南部(大槌町、陸前高田市、気仙沼市等)の被害も甚大だった。ま た、仙台湾から南相馬市までの地域の被害が大きかった。 図1-59 死者・行方不明者数 (出典:東日本大震災復興構想会議『復興への提言』)

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1-3.被災状況

(1)被災の状況<人的被害>

1)死者・行方不明者数

石巻湾に位置する石巻市が最も多く、同湾の東松島市も被害が甚大である。宮古市から牡鹿半

島までの三陸リアス式海岸の南部(大槌町、陸前高田市、気仙沼市等)の被害も甚大だった。ま

た、仙台湾から南相馬市までの地域の被害が大きかった。

図1-59 死者・行方不明者数

(出典:東日本大震災復興構想会議『復興への提言』)

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図1-60 死者・行方不明者数(市町村別) 平成 23 年 10 月 11 日時点

(出典:内閣府 EMT)

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東日本大震災による死者・行方不明者数は、死者(把握できた数)15,854 人、行方不明者(届出

のあった数)3,276 人、合計 19,130 人と発表(復興庁 平成 24 年 3 月 1日)されており、戦後の

自然災害と比べると、死者・行方不明者数が突出しており、未曾有の国難であると言える。

表 自然災害による死者・行方不明者数

(出典:内閣府『平成23年版 防災白書』)

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2)浸水範囲の土地利用広域図

三陸リアス式海岸地域では、入江に被害が集中しており、多くは建物用地・幹線道路用地であ

る。石巻湾では、浸水面積も広くかつ建物用地・幹線交通用地も多く、被害が甚大であった。仙

台市若林区から山元町に広がる平野部においては、浸水範囲は広いものの、その土地利用の多く

は水田をはじめとする農用地である。新地町からいわき市中部沿岸は、海岸線と丘陵地に挟まれ

た平野部が浸水しており、土地利用は農用地となっている。いわき市中部以南の沿岸では、主に

建物用地・幹線交通用地が浸水している。

図1-61 浸水範囲内の土地利用状況(青森県・岩手県)

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図1-62 浸水範囲内の土地利用状況(青森県・岩手県)

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図1-63 浸水範囲内の土地利用状況(詳細①)

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図1-64 浸水範囲内の土地利用状況(詳細②)

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図1-65 浸水範囲内の土地利用状況(詳細③)

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図1-66 浸水範囲内の土地利用状況(詳細④)

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図1-67 浸水範囲内の土地利用状況(詳細⑤)

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図1-68 浸水範囲内の土地利用状況(詳細⑥)

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図1-69 浸水範囲内の土地利用状況(詳細⑦)

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図1-70 浸水範囲内の土地利用状況(詳細⑧)

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図1-71 浸水範囲内の土地利用状況(詳細⑨)

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図1-72 浸水範囲内の土地利用状況(詳細⑩)

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図1-73 浸水範囲内の土地利用状況(詳細⑪)

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図1-74 浸水範囲内の土地利用状況(詳細⑫)

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図1-75 浸水範囲内の土地利用状況(詳細⑬)

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図1-76 浸水範囲内の土地利用状況(詳細⑭)

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図1-77 浸水範囲内の土地利用状況(詳細⑮)

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<参考1>陸前高田市

○沿岸部の土地利用の変遷について

岩手県陸前高田市高田松原地区では、大正2年時点での市街地は山際だけに分布していたが、

戦後は市街地が海岸部への拡大していることが伺える。

表1-16 津波被害を受ける地域への市街化の事例(高田松原)

<大正2年測量> <昭和8年頃>

<昭和26年頃> <昭和43年頃>

<津波前の航空写真> <津波後の航空写真>

(資料:国土地理院)

市街地の形成

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<参考2>大槌町

○沿岸部の土地利用の変遷について

岩手県大槌町では、大正2年時点での市街地は二つの谷の入り口付近にのみ分布していたが、

戦後は市街地が拡大し、埋立地や谷の奥部にも分布が広がっていることが伺える。

表1-17 津波被害を受ける地域への市街化の事例(大槌町)

<大正5年測図> <昭和26年頃修正測図>

<昭和47年修正測量> <平成13年修正測量>

<津波前の航空写真> <津波後の航空写真>

(資料:国土地理院, Google earth)

市街地の形成

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3)市街地における浸水被害

浸水被害があった用途地域の面積をみると、石巻市が 2,310ha と突出して高く、次いで、仙台

市(990ha)、東松島市(550ha)が続いている。三陸リアス式海岸では、用途地域面積のうち被

害が見られる区域の割合が5割を超える市町村が多く、松島湾以南での平野部では、用途地域面

積の割合が比較的低かった。

図1-78 用途地域面積に対する浸水区域面積率

(参考資料:国土交通省「東北地方太平洋沖地震による市街地の津波被害状況について」(平成 23 年 4月 1日))

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4)建物被害

石巻市、気仙沼市、東松島市等の三陸リアス式海岸の南側および石巻湾周辺の被害が大きい。

(出典:内閣府 EMT) 図1-79 全壊・半壊家屋棟数(市町村別)

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表1-18 市町村別 全壊・半壊家屋棟数一覧

(出典:内閣府 EMT)

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5)警戒区域、計画的避難区域及び特定避難勧奨地点がある地域の概要図

平成 24 年 2 月 29 日現在で、警戒区域(20km 圏)、計画的避難区域、及び特定避難勧奨地点が

設定されており、これらの地域に居住する住民の多くは避難している。一方で、住民の帰還に向

けた取組が進められている。

図1-80 警戒区域・計画的避難区域及び特定避難緩衝地点がある地域の概要図 (平成 23 年 11 月 25 日時点)

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○原発被災地の状況

原発被災地は、警戒区域や計画的避難区域、特定避難勧奨地点において、また、9月 30 日

に解除された旧緊急時避難準備区域においても、多くの地域住民は避難生活を余儀なくされて

いるとともに、役場機能も移転しており、避難者および地域に残った人の双方への対応が求め

られている。

相馬エリア 双葉エリア

中通りエリア

図1-81 エリア別区域設定状況

(参考資料:福島県「福島県復興計画(第 1次)~未来につなげる、うつくしま~」(平成 23 年 12 月))

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○エリア別の原子力災害状況

◎相馬エリア

・南相馬市は、警戒区域・計画的避難区域・区域設定のない地域の3つに分断され、142 の特

定避難勧奨地点が設定されている。なお、緊急時避難準備区域は、9月 30 日に解除され、

住民の帰還に向けた取組が進められている。

・飯館村は、4月 22 日に全村が計画的避難区域に設定され、村民は避難生活を余儀なくされ

ている。また、役場機能も移転しており、避難先での役場機能の維持、県内外に分散した住

民に対するサービス提供、原子力災害への対応等を同時に進めている。

◎双葉エリア

・4月 22 日に改めて、双葉町・大熊町・富岡町の全域と浪江町・葛尾村・川内村・楢葉町の

一部が警戒区域に、浪江町・葛尾村の一部が計画的避難区域に、そして広野町全域と川内村・

楢葉町の一部が緊急時避難準備区域に設定された。その後、川内村に 1箇所特定避難勧奨地

点が設定されている。緊急時避難準備区域は 9月 30 日に解除されたものの、今なお 8町村

の住民の多くが県内外での避難生活を余儀なくされている。

・県内外で多くの住民が避難生活を送っている。県外避難先は北海道から沖縄まで分散し、住

民は放射線被ばくの不安を抱えるとともに、家族の分断や慣れない避難先での孤立による精

神的苦痛や避難生活に伴う経済的負担の増加、生活不安などが生じており、県内外の避難先

における住民の支援ときずなの維持を図ることが課題となっている。

・役場機能も県内外に移転しており、避難先での役場機能の維持、県内外に分散した住民に対

するサービス提供、地震・津波被害と原子力災害への対応等を同時に進めている。

・緊急時避難準備区域の解除を受け、川内村では警戒区域の住民を含む全住民について平成

24 年 3 月までの帰還完了を、広野町では平成 24 年中の帰還完了を目指して、環境の整備を

進めている。楢葉町では、町のほとんどが警戒区域に設定されているため、現状においては

まだ住民の帰還は促さず南工業団地の操業再開を進めている。

・警戒区域及び計画的避難区域においては、インフラ調査など生活環境の復旧に向けた取組や

国による除染が開始されており、今後、放射線量等に応じた区域の見直しも予定されている。

◎いわきエリア

・原子力発電所事故発生当初は、一部地域が屋内退避区域に設定されたが、4月 22 日に解除

されている。

・住民は放射能の影響に対する不安を抱えた生活を強いられており、環境放射線等のモニタリ

ング、徹底した除染の実施、住民の健康の保持・増進に取り組む必要がある。

・農林水産業をはじめあらゆる産業が原子力災害と風評被害などの打撃を受け、これらを克服

する産業づくりが課題となっている。

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◎中通りエリア

・田村市の一部が警戒区域に、川俣町山木屋地区に計画的避難区域が設定されているほか、伊

達市に 117 の特定避難勧奨地点が設定されている。なお、田村市に設定されていた緊急時避

難準備区域は、9月 30 日に解除されている。

・住民は放射能の影響に対する不安を抱えた生活を強いられており、子どもの屋外活動を制限

するなどの影響が生じており、環境放射線等のモニタリング、徹底した除染の実施、住民の

健康の保持・増進に取り組む必要がある。

・健康への影響を心配した県内外への避難者が多く、家族の分断、慣れない避難先での孤立に

よる精神的苦痛や避難生活に伴う経済的負担の増大、生活不安などが生じており、避難先に

おける住民の支援ときずなの維持を図ること等が課題となっている。

・原子力災害による出荷制限等や風評被害により、水稲、野菜、モモなどの果樹、畜産等の農

林水産業はもとより、商工業においても観光客の激減や企業の転出など、あらゆる産業が打

撃を受けており、原子力災害を克服する取組が求められている。

・福島空港では、国際定期路線(上海便、ソウル便)の運休が続いている。

○役場機能移転状況

表1-19 役場移転状況

(参考資料:福島県「福島県復興計画(第 1 次)~未来につなげる、うつくしま~」(平成 23 年 12 月))

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6)避難動態

① 災前後の人口増減

岩手県、宮城県、福島県の人口について、各県が公表している震災以前(H23.3.1)の人口

と 10 か月後(H24.1.1)の人口増減をみると、全般的に減少傾向にあり、特に沿岸部で甚大な

被害を受けた地域の人口減少が大きい。

表1-20 震災前後の人口増減

(黄色の網掛けは沿岸部の自治体)

岩手県 宮城県 福島県H23.3.1 H24.1.1 増減 H23.3.1 H24.1.1 増減 H23.3.1 H24.1.1 増減

県全体 1,326,643 1,311,173 -15,470 県全体 2,346,853 2,324,211 -22,642 県全体 2,024,401 1,982,991 -41,410

市町村名 H23.3.1 H24.1.1 増減 市町村名 H23.3.1 H24.1.1 増減 市町村名 H23.3.1 H24.1.1 増減盛岡市 298,349 299,713 1,364 仙台市 1,046,737 1,052,476 5,739 福島市 291,992 286,785 -5,207 宮古市 59,229 57,898 -1,331 (若林区) 132,159 131,414 -745 二本松市 59,665 58,470 -1,195 大船渡市 40,579 39,068 -1,511 石巻市 160,394 150,177 -10,217 伊達市 65,749 64,603 -1,146 花巻市 101,067 100,712 -355 塩竃市 56,221 55,674 -547 本宮市 31,507 31,137 -370 北上市 93,163 93,686 523 気仙沼市 73,154 68,875 -4,279 桑折町 12,784 12,558 -226 久慈市 36,789 36,499 -290 白石市 37,273 36,872 -401 国見町 10,029 9,947 -82 遠野市 29,114 28,900 -214 名取市 73,603 72,140 -1,463 川俣町 15,505 15,125 -380 一関市 118,115 126,542 8,427 角田市 31,188 31,154 -34 大玉村 8,636 8,613 -23 陸前高田市 23,221 20,080 -3,141 多賀城市 62,990 61,576 -1,414 郡山市 338,882 331,509 -7,373 釜石市 39,399 37,200 -2,199 岩沼市 44,160 43,738 -422 須賀川市 79,109 78,110 -999 二戸市 29,609 29,271 -338 登米市 83,691 83,666 -25 田村市 40,234 39,490 -744 八幡平市 28,569 28,159 -410 栗原市 74,474 73,780 -694 鏡石町 12,811 12,737 -74 奥州市 124,307 123,470 -837 東松島市 42,840 40,365 -2,475 天栄村 6,247 6,124 -123 雫石町 17,945 17,791 -154 大崎市 134,950 135,214 264 石川町 17,717 17,580 -137 葛巻町 7,225 7,108 -117 蔵王町 12,847 12,763 -84 玉川村 7,231 7,134 -97 岩手町 14,869 14,637 -232 七ヶ宿町 1,664 1,619 -45 平田村 6,888 6,781 -107 滝沢村 53,948 54,339 391 大河原町 23,465 23,686 221 浅川町 6,839 6,788 -51 紫波町 33,290 33,263 -27 村田町 11,939 11,853 -86 古殿町 5,981 5,873 -108 矢巾町 27,174 26,999 -175 柴田町 39,243 39,403 160 三春町 18,089 17,903 -186 西和賀町 6,524 6,397 -127 川崎町 9,919 9,755 -164 小野町 11,141 10,946 -195 金ケ崎町 16,277 16,290 13 丸森町 15,362 15,121 -241 白河市 64,602 63,957 -645 平泉町 8,283 8,156 -127 亘理町 34,795 33,482 -1,313 西郷村 19,729 19,647 -82 住田町 6,146 6,172 26 山元町 16,608 14,358 -2,250 泉崎村 6,771 6,672 -99 大槌町 15,222 12,510 -2,712 松島町 15,014 14,964 -50 中島村 5,121 5,096 -25 山田町 18,506 16,792 -1,714 七ヶ浜町 20,353 19,766 -587 矢吹町 18,365 18,131 -234 岩泉町 10,708 10,534 -174 利府町 34,279 34,768 489 棚倉町 15,011 14,869 -142 田野畑村 3,838 3,737 -101 大和町 25,366 26,070 704 矢祭町 6,318 6,234 -84 普代村 3,065 3,014 -51 大郷町 8,871 8,767 -104 塙町 9,811 9,672 -139 軽米町 10,142 10,019 -123 富谷町 47,501 48,455 954 鮫川村 3,966 3,875 -91 野田村 4,606 4,450 -156 大衡村 5,361 5,444 83 会津若松市 125,872 125,472 -400 九戸村 6,464 6,378 -86 色麻町 7,406 7,376 -30 喜多方市 52,180 51,653 -527 洋野町 17,775 17,504 -271 加美町 25,421 25,276 -145 北塩原村 3,193 3,131 -62 一戸町 14,104 13,885 -219 涌谷町 17,399 17,384 -15 西会津町 7,283 7,171 -112

美里町 25,055 24,857 -198 磐梯町 3,734 3,732 -2 女川町 9,932 8,196 -1,736 猪苗代町 15,734 15,616 -118 南三陸町 17,378 15,141 -2,237 会津坂下町 17,266 17,166 -100

湯川村 3,343 3,295 -48 柳津町 3,986 3,888 -98 三島町 1,907 1,862 -45 金山町 2,437 2,386 -51 昭和村 1,487 1,467 -20 会津美里町 22,612 22,362 -250 下郷町 6,413 6,331 -82 檜枝岐村 630 626 -4 只見町 4,896 4,824 -72 南会津町 17,773 17,517 -256 相馬市 37,721 36,465 -1,256 南相馬市 70,752 66,173 -4,579 広野町 5,386 5,168 -218 楢葉町 7,676 7,361 -315 富岡町 15,959 14,809 -1,150 川内村 2,819 2,701 -118 大熊町 11,570 11,020 -550 双葉町 6,891 6,398 -493 浪江町 20,854 19,360 -1,494 葛尾村 1,524 1,483 -41 新地町 8,178 7,875 -303 飯舘村 6,132 5,977 -155 いわき市 341,463 333,336 -8,127

※本調査では、各県で公表されている数値を用いたが、次ページの住民

の移転意向や避難人数と比較すると人数の減少が少ないことから、移

転申請を出さずに移転している人がおり、実際には本調査の結果より

多くの人口が移転していると想定される。

○参考資料

・岩手県 HP 岩手県毎月人口推計

・宮城県 HP 宮城県市町村別推計人口(月報)

・福島県 HP 福島県の推計人口

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②避難人数

県別に避難状況をみると、自県外へ避難している避難者数は福島県が最も多く、6万人以上

が避難している。

表1-21 避難者等の数

調査 内容

東日本復興対策本部 全国の

避難者等の数(岩手県、宮城

県、福島県)の避難状況

(2 月 1 日現在)※

○全国の避難者の数は、約 341,000 人

○住宅等へ入居済みの避難者は、全国で約 323,000 人

○避難者は、全国 47 都道府県・1200 以上の市区町村に所在

○岩手県へ避難している避難者数は 43,167 人で、宮城県が 125,013 人、福

島県が 97,285 人

○自県外に避難している避難者数

・福島県からは 60,932 人

・宮城県からは 8,619 人

・岩手県からは 1,572 人

全国避難者情報システム※※

○岩手県が平成 23 年 11 月 29 日のデータを集計している。

○集計当時、岩手県からの避難者数は 13,617 人で、そのうち県内に避難し

ているのは 10,624 名だった。

○避難元市町村のうち、避難者数が多い自治体は、大槌町の 3,732 人が最

も多く、次いで釜石市の 2,645 人、陸前高田市の 2,489 人、山田町の

1,753 人、大船渡市の 1,429 人、宮古市の 1,155 人であった。

※ 東日本復興対策本部 全国の避難者等の数(2 月 1日更新)

<http://www.reconstruction.go.jp/topics/20120201zenkoku-hinansyasu.pdf>

※※全国避難者情報システム

(岩手県)<http://www.pref.iwate.jp/~bousai/index.html>

【参考】 全国避難者情報システム

避難者から、避難先の市町村へ情報を提供してもらい、その情報を避難元の県や市町村に提供し、

当該情報に基づき、避難元の市町村や県が避難者への情報提供等を行うものであり、すべての避難

者の情報ではないことに留意する必要がある。

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7)被災タイプの分類

被害状況は、地形や浸水地域内の土地利用により大きく異なり、被災タイプを以下のように分

けることができる。

○被災タイプ分類

【三陸リアス式海岸型】

三陸リアス式海岸地域において、津波エネルギーが増幅しやすい比較的小さな湾に市街地が

海辺に近接していることから、津波により、浸水面積に比して極めて甚大な被害を受けた地域。

【仙台湾平地型】

仙台市宮城野区から相馬市までの海沿いに、市街地が比較的少ない平地が続き、その平地の

内陸部まで極めて広大な面積の津波被害を受けた地域。

【福島浜通り平地・段丘型】

南相馬市以南でみられる海岸線と段丘に挟まれた平地で、田・その他の農用地等が広く分布

しており、その平野が被害を受けた地域。

【市街地大規模被災型】

前述した仙台湾平地型に位置する北端部に、石巻港の背後に発達した中心市街地が壊滅的被

害を受けた石巻市、東松島市を市街地大規模被災型とした。

○被災タイプを代表する甚大な人的被害地域

・三 陸リアス 式海岸型…三陸リアスの南側地域。

中でも陸前高田市の人的被害はもっとも甚大だった。

・仙 台 湾 平 地 型…仙台市宮城野区から相馬市までの地域(ほぼ一様な被害)。

・福島浜通り平地・段丘型…原発警戒区域以外では南相馬市等の北側地域。

・市 街地大規 模被災型…石巻市。

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図1-82 被災タイプ分類

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(2)被災の状況<自然環境等>

自然環境等は、地域の気候や地形、人の営みによってこれまで形成されてきたものであり、郷

土の美しい景観や歴史・文化を象徴するものであると同時に、観光資源や地域振興にとっても重

要な地域の資産である。

被災状況の調査対象としたものは、ⅰ)文化財(天然記念物〈国指定〉、名勝〈国指定〉、重要

文化財〈有形〉〈国指定・県指定〉、および日本百景)、ⅱ)海岸林、ⅲ)自然公園、ⅳ)その他

(日和山)である。これらのうち、津波浸水範囲内のものを抽出し、その分布と主な被災状況を

整理した。

①文化財

・文化財は、浸水区域内にあることから、被害報告がなくとも浸水被害を受けていることが想

定される。

・被害状況が分かっているもののうち、壊滅している事例として高田松原が挙げられる。

表1-22 主な自然環境等の被害状況(名勝)

市区町村名 指定状況 名称 被害状況

松島市近辺 特別名勝 松島 各所で地震及び津波による甚大な被害が出ているが、全体を

みればその風景の多くは保たれている。

陸前高田市 名勝 高田松原

大津波で、長さ2キロにわたって広がる約7万本の松が根こそぎ

流された。津波に耐えて残った1本の松の保存運動が高まってい

る。文化庁は名勝指定を継続する考えを示している。

大船渡市 名勝 碁石海岸 碁石浜には、破壊された防波堤のブロックやがれきが散乱。奇

石「穴通磯」の周囲は重油で黒ずんでいる。

大船渡市 名勝 珊琥島 大船渡港珊琥島南灯台:施設の損傷

参考資料:

・文部科学省「東日本大震災による被害情報について」(第 178 報) ・岩手日報「高田松原名勝継続の考え 文化庁調査官が視察」2011.04.21

<www.iwate-np.co.jp/311shinsai/sh201104_2/sh1104215.html>

・東京新聞 TOKYO Web 「浄土が浜 碁石海岸 三陸の景勝地 無惨」 2011.03.26

<www.tokyo-np.co.jp/article/feature/tohokujisin/list/CK201103

2602100010.html>

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表1-23 主な自然環境等の被害状況(天然記念物)

市区町村名 名称 被害状況

気仙沼市

十八鳴き浜

および

九九鳴き浜

十八鳴き浜は、津波に洗われたものの、鳴り砂に被害はなく、砂の量や面積、

質感などが震災前と比べてほとんど変化がない。樹木やがれきの漂流物が打ち

上げられている。

宮古市 日出島 局所的に津波により浸水した箇所、崩落箇所が確認されたが、繁殖地、植生

等への影響はほとんど見られなかった。

釜石市 三貫島 局所的に津波により浸水した箇所、崩落箇所が確認されたが、繁殖地、植生

等への影響はほとんど見られなかった。

参考資料:

・河北新報ニュース 「鳴り砂は被害なし 気仙沼・大島の「十八鳴浜」

2011.05.10 <www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1062/20110510_05.htm>)

・環境省 「東日本大震災による国指定鳥獣保護区の被害状況について」

<www.env.go.jp/council/13wild/y130-19/ref02.pdf>)

表1-24 主な自然環境等の被害状況(有形文化財)

市区町村名 指定等機関 名称 建築年代・確認結果

釜石市 県指定に準ずる 星座石と陸奥州気仙郡唐丹村

測量之碑

当該文化財そのものに被害はないが、説明

版、鳥居、看板等は全壊・流出

釜石市 国指定 三貫島オオミズナギドリ及びヒメ

クロウミツバメ繁殖地 被災なし

気仙沼市 国登録 武山米店店舗及び主屋 -

気仙沼市 国登録 角星店舗 -

気仙沼市 国登録 角星旧酒造工場 -

気仙沼市 国登録 男山本店店舗

気仙沼市 国登録 小野健商店土蔵 -

気仙沼市 国登録 佐藤家住宅板倉 -

気仙沼市 国登録 三事堂ささ木店舗及び住宅 -

気仙沼市 国登録 三事堂ささ木土蔵 -

石巻市 国指定 石盤葺 -

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石巻市 国指定 岩版 被害なし。文化財レスキューで東北歴史博

物館へ寄託。

石巻市 国登録 旧北上町役場 -

大船渡市 県指定 大船渡の三面椿 被災なし

田野畑村 県指定 館石野Ⅰ遺跡 被災なし

東松島市 国指定 史跡里浜貝塚 寺下~西畑地区に若干の亀裂。4.7 の余震

で亀裂が拡大。やや危険な状態。

南三陸町 県指定 紺紙金泥大般若経 津波により水損。東北歴史博物館にて乾燥

処理。

名取市 国指定 洞口家住宅 母屋・表門・厩ともに壁面亀裂・崩落などによ

る損壊。

陸前高田市 国指定 高田松原

1 本の松を残し全壊、流失する。 10 月 21 日

高田松原で新たな松の苗木 1 本が育ってい

ることが確認された。 苗木は 1 本松から約

500 メートル離れた場所にあり 5cm の高さ。

昨年秋に地面に落ちた松かさの種子が津波

に流されず、今年 5 月ころ発芽した模様。

陸前高田市 県指定 漁具類聚 被害はなし(宮古市教育委員会より 10/20 に

聴取)

陸前高田市 県指定 臥竜梅

・庭から約2m の高さの津波が襲来、臥竜梅

はほぼ全体が津波にのまれてしまった。

・漂流物がぶつかり、枝の一部が折れた。

・枝におびただしい量のゴミが付着、家族総

出で除去作業を行った。

・4 月に樹木医の指導により、消石灰を散布

し土壌を消毒した。

※国指定有形文化財:有形文化財のうち重要なもの。重要文化財がこれにあたる。

※国登録有形文化財:保存及び活用についての措置が特に必要とするもの。届出制と指導・助言等を基本とす

る緩やかな保護措置を講じるもので、従来の指定制度を補完するもの。

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②海岸林

・海岸林は、三陸リアス式海岸では崖上部に多く、入江に分布しているものは少ない。このた

め三陸リアス式海岸における海岸林の全体の浸水面積は少ないものの、入江に分布していた

海岸林の被害は甚大であった。

・東松島市以南から山元町まで海岸沿いに海岸林が線状に分布し、海と樹林の景観を形成して

いたが、それらの多くが甚大な被害にあった。

表1-25 海岸林の被害状況

県名 海岸林※の

浸水面積 被害内容※※

青森県 613ha ほとんどが軽微な被害である。

岩手県 164ha 浸水面積のうち約7割が甚大な被害となっている(甚大な被害の

多くがリアス式海岸入江河口部の海岸林)。

宮城県 1,753ha 浸水面積のうち約4割が甚大な被害となっている。

福島県 295ha 浸水面積のうち約7割が甚大な被害となっている。

茨城県 470ha ほとんどが軽微な被害である。

千葉県 364ha ほとんどが軽微な被害である。

※林野庁では、調査対象を海岸林としており、保安林に特化した被災前後の面積を把握していない。

また海岸林の全体面積も把握していない。

※※ 『今後における海岸防災林の再生について』(平成 23 年 7月)および、林野庁へのヒアリングより加筆。

図1-83 防潮林の被害状況(名取市、岩沼市)

仙台湾平地部の名取市から新地町あたりまでは、図のような海岸林が連続しており、それらの海岸林の多くは倒木・

流木した。

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③自然公園

・沿岸部における自然公園の分布をみると、陸中海岸国立公園や南三陸金華山国定公園

が指定されており、三陸リアス式海岸の多くはこの区域内に含まれている。また、松

島湾は、松島県立自然公園と一部に仙台海浜鳥獣保護地区に位置づけられている。こ

のほか、松川浦県立自然公園などが位置づけられている。

・自然公園内の植生被害状況は、海岸平野部を含む県立自然公園松島、松川浦県立自然

公園等では、区域面積に対する浸水面積の割合は高く、リアス式海岸の崖上部に位置

する陸中海岸国立公園や南三陸金華山国定公園等では、区域面積に対する浸水面積の

割合は低かった。

表1-26 自然公園における植生の被害状況

公園等の名称 区域面積

(ha)

浸水面積

(ha)

区域面積に

対する割合(%)

陸中海岸国立公園 12,212 430 3.5

南三陸金華山国定公園 13,902 955 6.9

種差海岸階上岳県立自然公園 2,406 130 5.4

県立自然公園気仙沼 21,079 778 3.7

硯上山万石浦県立自然公園 9,933 147 1.5

県立自然公園松島 5,410 2,144 39.6

松川浦県立自然公園 979 333 34.0

勿来県立自然公園 1,396 97 7.0

磐城海岸県立自然公園 710 217 30.6

仙台海浜国指定鳥獣保護区 7,596 1,755 23.1

※本表は、環境省 中央環境審議会自然環境部会(懇談会:平成 23 年9月5日(月))資料より作成。数値は、

青森県から福島県の沿岸市町村において、植生図と津波の浸水範囲等との重複状況を GIS により分析し、植

生区分(大区分)ごとに整理したもの。

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④その他(日和山)

・漁師が出漁の際に天候を推測するため(日和るため)に登った山は日本各地の港町にあり、

日和山と呼ばれた。石巻市の日和山公園(標高:56.4m)のように自然地形である場合もあ

るが、人工の山も多い。特に起伏の少ない被災地では、近年でも海を臨む築山として造られ

てきたことから、生活や生産と密接に関連するかたちで、海を眺めることができる日和山を

大事にしてきた地域であると考えられる。一方、仙台市では高さ 6.05m の日和山が今回の津

波により消失している箇所もあり、これらの復旧と合わせて海とのかかわりの修復が必要で

ある。

表1-27 日和山の被害状況

所在地 名称 種別 標高 確認結果

石巻市※ 日和山公園 自然地形 56.4m 公園内はほぼ無傷の状態。

東松島市※ 山神社 自然地形 約 15m 山神社の樹木等は残っていた。

仙台市

宮城野区蒲生※ 日和山

人工

(明治42年) 6.05m※※※ 消滅(地盤沈下、津波の直撃による)。

仙台市

若林区井土※

仙台市海岸公

園冒険広場 人工 築山 約 15.5m 築山の一部に浸水跡があるが、波は敷地

の両側を流れて築山には被害が無い。

仙台市

宮城野区※※

仙台港中央公

園展望台 人工 築山 約 20m

丘に津波が遡上した痕跡が見られた。

丘の下端部に敷き詰められた石張りが散

乱するも、丘自体は残っている。

名取市

閖上※ 日和山公園

人工

(明治年代詳細

不明)

約 6.3m

地形は、ほぼそのままで、樹木(松)は残っ

ている。鳥居、階段の手すりが消失。

卒塔婆などが置かれて被災地の慰霊の地

になっている。

残った樹木(松)は復興のシンボルとなって

いる。

岩沼市※ 岩沼海浜緑地

北ブロック 人工 築山 約 22m

頂部四阿の床まで浸水跡があった。築山

に設けられた疑木階段は一部崩れ落ちて

いるが、スロープは損傷が少なく登坂可

能。

岩沼市※ 岩沼海浜緑地

南ブロック 人工 築山 約 15m

築山は海岸線と平行に地割れが起き、頂

上広場は亀裂ができていた。

※ 社団法人日本公園緑地協会「東日本大震災における公園緑地第1次現地調査報告(速報)」

(平成 23 年 5 月 16 日)

※※ 土田孝ら「事例報告東日本大震災地盤工学会中国支部調査団報告沿岸部の被災状況」

※※※ 仙台市宮城野区蒲生の日和山の標高に関しては、フリー百科事典ウィキペディア「日和山(仙台市)」

<http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E5%92%8C%E5%B1%B1_%28%E4%BB%99%E5%8F%B0%E5%B8%82%29>

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(3)現地の状況

1)陸前高田市(高田松原地区)

【調査日:2012 年 2 月 18 日】

○被害情報

・2011 年(平成 23 年)3月 11 日、マグニチュード 9.0 の東北地方太平洋沖地震が発生し、こ

の地震が引き起こした大津波によって市中心部は市庁舎もろとも壊滅し、市の全世帯中の 7

割以上が被害を受けた。

図1-84 写真該当箇所(出典:Google マップ)

○現地の被害・復旧状況

・市域にある JR 東日本の 5駅のうち 4駅(大船渡線の竹駒駅・陸前高田駅・脇ノ沢駅・小友

駅)は、周辺地域の多くの駅同様、駅舎などが流失し、線路も大きな被害を受けた。

・高田松原・古川沼等海岸部の地形が大きく改変され、地盤が沈下し、砂丘や古川沼は海と一

体となった。高田松原の松は、1本を残し消失してしまった。

①写真1-20 被災した高田松原 ②写真1-21 奇跡の一本松

③写真1-22 野球場 ④写真1-23 タピック45 ⑤写真1-24 海と貝のミュー

ジアム・

③④ ⑤

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2)石巻市(南浜地区)

【調査日:2012 年 3 月 8日】

○被害情報

・人的被害は、死者数 2,964 人、行方不明者数 2,770 人。

・建物の被害は、全壊住家数 28,000 棟。

・浸水被害は、総人口に占める浸水域人口の割合は 70%、可住地面積に域占める浸水範囲面

積の割合は 30%、浸水域にかかる医療施設の割合は 73%。

○現地の被害・復旧状況

・石巻市の日和山、南浜町および中瀬を中心に調査を行った。

・南浜町、中瀬の建築物の多くは撤去され、建物基礎が残されていた。

・南浜町は、地震による地盤沈下し、水溜りができていた。

・中瀬は、地震による地盤沈下により、低い土地は浸水していた。

①写真1-25

日和山鹿島御児神社の鳥居からの眺望

石巻港内港への軸線が通っている。

②写真1-26 日和山からの中瀬

石の森マンガ館や旧石巻ハリストス正教会堂等を残し、

壊滅している。また地盤が沈下している。

③写真1-27 日和山からの南浜地域の風景

ほとんどの家屋が被害にあった地区であり、私立病院などの一部の建物を残し、現在、撤去されている。

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図1-85 写真該当箇所(出典:Google マップ)

④写真1-28 南浜2丁目付近から東を望む

道路が沈下し、水がたまっている。

⑥写真1-31 被災した門脇小学校

背後に見えるのが日和山の斜面林。

⑤写真1-29 南浜2丁目付近から西を望む

道路が沈下し、水がたまっている。

⑦写真1-30 残された住宅の基礎

①~③

④~⑥

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3)仙台市(若林地区)

【調査日:2012 年 3 月 9日】

○被害情報

・人的被害は、死者数 680 人、行方不明者数 180 人。

・建物の被害は、全壊住家数 3,190 棟。

・浸水被害は、総人口に占める浸水域人口の割合は 5%、可住地面積に域占める浸水範囲面積

の割合は 0%、浸水域にかかる医療施設の割合は 0%。

○現地の被害・復旧状況

・海岸公園冒険広場を中心に調査を行った。

・冒険広場の上部にある施設や樹木は津波被害から逃れていた。

・周辺はガレキが積み上げられていた。

①写真1-32 海岸公園 冒険広場風 ②写真1-33 津波浸水ラインの表示板

トラロープで浸水範囲を示している。

③写真1-34 海岸公園周辺の様子

ガレキが積まれている

図1-86 写真該当箇所(出典:Google マップ)

④写真1-35

海岸公園内に積まれたガレキの山。

盛土がされていた。

①~②

③~④

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4)名取市(閖上地区)

【調査日:2012 年 3 月 9日】

○被害情報

・人的被害は、死者数 896 人、行方不明者数 156 人。

・浸水被害は、総人口に占める浸水域人口の割合は 17%、可住地面積に域占める浸水範囲面

積の割合は 38%、浸水域にかかる医療施設の割合は 11%。

○現地の被害・復旧状況

・名取市閖上地区は、壊滅的被害を被っており、被災した住宅等の建物の多くは撤去され、建

物基礎が残されていた。

・日和山は、のぼりや木製の慰霊碑等が立てられ、ときどき献花をする人が訪れていた。

①写真1-36 名取市閖上地区の日和山

明治時代につくられた人工の山。標高約 6.3m。

②写真1-37 日和山の頂上

③写真1-38 日和山からみた閖上地区の風景

住宅は撤去され、敷地境界のブロック塀の基礎が残

されている。

図1-87 写真該当箇所(出典:Google マップ)

①~③

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5)名取市・岩沼市(空港付近)

【調査日:2012 年 3 月 9日】

○被害情報

・前項④および後項⑥を参照。

○現地の被害・復旧状況

・空港付近は、被災した住宅等の建物の多くは撤去され、建物基礎が残されている。

・微高地にあった神社は、社寺林とともに残されていた。

・仙台空港近くの貞山堀は、残されているが所々堤防が破壊されていた。

・海岸防潮林の松は、海側の樹皮がはがれ、津波被害の跡がみられた。

③写真1-41 傷ついた松

海側に樹皮がはがれている箇所がみられる。

①写真1-39 微高地にある残された神社

⑤写真1-43 仙台空港近くの貞山堀

②写真1-40 残された建物基礎

④写真1-42 被災した防潮林と後背地の住宅跡

防潮林の密度は低くなっている。

図1-88 写真該当箇所(出典:Google マップ)

②③

④ ⑤

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6)岩沼市(貞山堀)

【調査日:2012 年 3 月 9日】

○被害情報

・人的被害は、死者数 178 人、行方不明者数 8人。

・浸水被害は、総人口に占める浸水域人口の割合は 18%、可住地面積に域占める浸水範囲面

積の割合は 62%、浸水域にかかる医療施設の割合は 7%。

○現地の被害・復旧状況

・貞山堀は比較的残されているが、松林は津波の影響で部分的に倒木・立枯の被害がみられた。

岩沼市岩沼海浜緑地南ブロック近くの浮き桟橋は津波による被災を受け、使用が困難な状況

である。

・海岸防災林内や貞山堀脇の草地では、沈下により水が溜り、湿地状のところがみられた。

・ガレキなどを処理するプラントが建設され、稼動していた。

・岩沼市岩沼海浜緑地南ブロックの日和山(人工築山。標高約 15m。)は残されていた。

①写真1-44 岩沼市の貞山堀 ②写真1-45 被災された桟橋(貞山堀)

③写真1-46 海岸防災林にできた池

⑤写真1-48

岩沼市岩沼海浜緑地南ブロックの日和山

④写真1-47 ガレキなどを処理するプラント

図1-89 写真該当箇所(出典:Google マップ)

⑤ ②

①③

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7)亘理町(阿武隈川河口~海の鳥)

【調査日:2012 年 3 月 9日】

○被害情報

・人的被害は、死者数 250 人、行方不明者数 23 人。

・建物の被害は、全壊住家数 2,051 棟。

・浸水被害は、総人口に占める浸水域人口の割合は 40%、可住地面積に域占める浸水範囲面

積の割合は 57%、浸水域にかかる医療施設の割合は 13%。

○現地の被害・復旧状況

・海際は壊滅的被害を被っており、現在復旧作業が進められていた。

・津波によって破壊された堤防は、復旧作業は行われておらず、破壊された状況のままであった。

・海岸近くは、ガレキの集積場となっていた。

・住宅地は、被災した建物は撤去され、敷地境界のブロック塀の基礎が残されていた。

・堤防の法面は津波によって破壊され、現在復旧が進められていた。

③写真1-51 阿武隈川~鳥の海間の風景

住宅は撤去され、敷地境界の基礎が残されている。

②写真1-50 阿武隈川河口付近

堤防は津波によって破壊され復旧が進められている

①写真1-49 津波によって破壊された堤防

まだ復旧作業は進められていない。

図1-90 写真該当箇所(出典:Google マップ)

②③

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8)新地町

【調査日:2012 年 3 月 9日】

○被害情報

・人的被害は、死者数 92 人、行方不明者数 23 人。

・建物の被害は、全壊住家数 501 棟。

・浸水被害は、総人口に占める浸水域人口の割合は 57%、可住地面積に域占める浸水範囲面

積の割合は 38%、浸水域にかかる医療施設の割合は 50%。

○現地の被害・復旧状況

・新地町の沿岸部は、破壊された堤防や家屋が部分的に残されたままであった。

・管理されていないところは、雑草が入り込んでいた。

・道路は比較的残されていた。

・鉄道は軌道敷が確認できなかった。

②写真1-53 住宅跡

住宅は撤去され、敷地境界のブロック塀の基礎が残されてい

る。管理されていない場所は雑草などが入り込んでいる。

①写真1-52 周辺の状況①

堤防は津波によって破壊されている。

復旧は進められず、破壊されたままになっている。

③写真1-54 周辺の状況②

道路は比較的残されていた。また、部分的に建物が撤去さ

れずに残っているところもある。

①~③

図1-91 写真該当箇所(出典:Google マップ)

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I-1-140

9)相馬市(松川浦)

【調査日:2012 年 3 月 9日】

○被害情報

・人的被害は、死者数 414 人、行方不明者数 55 人。

・建物の被害は、全壊住家数 4棟。

・浸水被害は、総人口に占める浸水域人口の割合は 28%、可住地面積に域占める浸水範囲面

積の割合は 32%、浸水域にかかる医療施設の割合は 0%。

○現地の被害・復旧状況

・津波によって堤防は破壊され、現在復旧作業が進められていた。

・松川浦の海際にある道路及び松林は被災し、もとの美しい景観は破壊されていた。

・松川浦の沿岸地域は甚大な被害を受けているが、松川浦を挟んだ内陸側は比較的被害は小さい。

①写真1-55 復旧が進められている堤防① ②写真1-56 復旧が進められている堤防②

③写真-57 破壊された海岸沿いの道路及び松林

図1-92 写真該当箇所(出典:Google マップ)

①~③

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I-1-141

(4)東日本大震災に対する国際的な注目

1)海外各紙の内容別記事数と 1 日当たりの平均記事数の発災後 1 カ月間における推移

海外各紙の合計記事数をみると、はじめの一週目は記事数が多く、時間と共に減少することが

わかる。特に1日あたり記事数をみると、地震発生後1週間が最も多く、二週目から減少傾向に

あることがわかる。

記事の種類別にみると、地震・津波は、1週目は多いが2週目意向は減少していく。一方、原

子力発電所関連の記事は、4週目になってもその数はあまり減らずに推移することから、海外各

紙の注目度が高いことが伺える。

表1-28 海外各紙の内容別記事数と 1日当たりの平均記事数の発災後 1カ月間における推移

The New York Times(米国) 原子力発電所 地震・津波 その他 合計 記事数/日

3/12-3/18

3/19-3/25

3/26-4/1

4/2-4/11

38

37

19

19

35

21

7

6

11

9

4

0

84

67

30

25

12.0

9.6

4.3

2.5

合計 113 69 24 206 6.6

文匯報(中国) 原子力発電所 地震・津波 その他 合計 記事数/日

3/12-3/18

3/19-3/25

3/26-4/1

4/2-4/11

28

37

23

25

49

12

10

3

28

6

2

2

105

55

35

30

15.0

7.9

5.0

3.0

合計 113 74 38 225 7.3

The Times(英国) 原子力発電所 地震・津波 その他 合計 記事数/日

3/12-3/18

3/19-3/25

3/26-4/1

4/2-4/11

29

13

10

2

32

11

5

2

16

3

4

4

13

17

12

7

2.2

2.8

2.0

1.0

合計 54 50 27 49 2.0

Le Monde(仏国) 原子力発電所 地震・津波 その他 合計 記事数/日

3/12-3/18

3/19-3/25

3/26-4/1

4/2-4/11

30

24

23

15

19

14

8

3

8

4

3

4

57

42

34

22

8.1

6.0

4.9

2.2

合計 92 44 19 155 5.0

出典:阿部佐智、柴田偉斗子、南出将志、横内陳正、加藤浩徳「東日本大震災に関する海外四カ国の新聞報道の特

性:発生後 1 ヶ月間の記事を対象とした比較分析」(社会技術研究論文集 vol.9 に投稿中、2011 年 9 月

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I-1-142

2)各国の報道の特徴

表1-29 各国の報道の特徴

The New York Times(米国) 文匯報(中国) The Times(英国) Le Monde(仏国)

発災後一週間

・“Earthquake in Japan”という項

目が設定され、毎日、複数ページ

にわたり震災関連の報道がなされ

ている。地震や津波の被害状況に

関する記事が多い。津波の体験談

も複数掲載され、災害の生々しさ

が取り上げられている。

・「特別報道」と題される震災関連

の報道に特化したページが設けら

れた。

・連日一面にも震災に関する記事が

掲載された。

・震度や震源地、津波の被害の大き

さなど、震災の状況に関する記事

が多く見られた。

・発災後の数日間で、集中的に、上

海からの旅行客や研修生などの被

災状況が報道されている。

・日本に対する中国政府の支援につ

いての記事も多く見られた。

・日本の震災に関する記事が一面で

取り扱われている。“News Japan”

という特集ページが組まれ、日本

の震災に関する記事が掲載され

ている。

・発生時の状況描写や被災者の現

状、死者・行方不明者数など、事

実を詳細に伝えることに主眼が

置かれた報道がされている。

・震災関連の 1面記事では、常に表

題もしくは副題において福島第

一原子力発電所の事故に関して

触れる表現がある。

・発災時の人々の対応を伝え、日本

国民の災害に対する備えや国民

性を称賛するような記事も掲載

されている。

・東日本大震災の発生によって経済

面において世界にどのような変

化が起きるかについての記事が

複数掲載されている。

・“Seisme an Japan (日本での地

震)”というページが設けられる。

・1 日平均して、全紙面数の 3 分の 1

を東日本大震災の記事が占めてい

る。

・人やインフラの被害に関して、多

くの情報が提供されている。東日

本全体の大まかな被害状況を数値

で表す記事と、特定の地域に絞っ

て記述された記事とに分けられ

る。

・原子力発電所に関しては、福島原

子力発電所事故そのものに関する

記事と、事故の影響に関する記事

に大別される。それ以外にも、地

震や津波、原子力発電所の原理を

説明する記事も多い。

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I-1-143

発災後二~三週間

・依然として“Earthquake in Japan”

という項目の特集ページが設けら

れている。

・地震、津波、原発事故の世界経済

への影響に関する記事が増加して

いることから、災害の影響の規模

が徐々に判明しつつあることが伺

える。

・福島原子力発電所の状況が悪化し

たことに伴い、アメリカの原子力

発電所やエネルギー政策に関する

記事の割合が 1番多い。

・震災の影響に関して、被害そのも

のではないさまざまな影響を取り

上げた記事も見受けられた。

・日本人の気質や自然災害に対する

姿勢を客観的に記述した記事も複

数掲載された。

・特別報道のページは。発災後 19 日

目にあたる3月 30日になくなって

いる。

・地震や津波の直接的な被害に関す

る記事は明らかに減っている。一

方で、放射性物質の飛来や経済面

など、間接的な被害に関する記事

が増えていく傾向が見られた。

・放射能の影響に関しては、中国に

おける放射性物質の観測結果だけ

でなく、放射能汚染によって引き

起こされる 2 次的な被害に関して

も懸念を示していることが伺え

る。

・地震、津波関連記事のページ数が

大幅に減少する。原子力発電所事

故関連の記事が主になる。

・冒頭から後半へと掲載されるペー

ジが移動し、主に“World”の中

の一部に、日本に関する記事が掲

載されるようになっている。

・日本経済が受けたダメージについ

て、株価などの動きから述べられ

ており、日本が今回の震災から復

興できるかどうかという議論が

されている。

・3 月 25 日には、初めて日本の震災

に関連する記事が一切紙面から

なくなっている。

・紙面数は大幅に減少するが、東日

本大震災の記事は 1 面に掲載され

続けている。

・徐々に読者に議論を促すような紙

面が登場し始めている。例えば、

震災の不条理さと今後いかに復興

していくかについて考えさせる記

事が掲載されている。

発災後一ヵ月

・“Earthquake in Japan”という項

目がある日と、“International”

の項目の一部として掲載されてい

る日が登場するようになった。

・4月 4 日は、震災関連の記事が無

くなった。

・記事数が減少し、1 面に震災関連の

記事が載ることも少なくなってい

る。その中でも放射性物質の観測

結果に関しては継続的に報道され

ている。

・東日本大震災に関する記事はほぼ

見られなくなる。

・発災後ちょうど 1 ヵ月ということ

で、日本の今後についての記事が

“Opinion”に掲載されている。

・関連する記事数は急激に減少して

いる。

・4月以降に掲載される記事は、そ

のほとんどが原子力発電所関連の

ものである。

出典:阿部佐智、柴田偉斗子、南出将志、横内陳正、加藤浩徳「東日本大震災に関する海外四カ国の新聞報道の特性:発生後 1ヶ月間の記事を対象とした比較分析」

(社会技術研究論文集 vol.9 に投稿中、2011 年 9 月)

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I-1-144

3)東日本大震災に関する海外の報道

単に東日本大震災の被害状況が注目されているだけでなく、東日本大震災からの「復興」につい

ても、国際的に注目されていることが、以下の報道等から伺える。

【英国】

◆「日本は“回復力”が豊富」 経済評論家ピーター・タスカー『フィイナンシャル・タイムズ』

(英国 経済紙)

2011 年 3 月 11 日

危機や災害はポジティブな変化を駆り立てる力になりうる。人を殺さないものは人をより強く

するというニーチェの名言がある。この災害は日本を殺さないだろうから、地震の余波への対処

をうまくやれば、日本は精神的にさらに強くなって立ち上がってくるだろう。

◆「非常に宿命的な民族」 日本研究家イアン・ブルマ『デイリー・メール』(英国 一般紙)

2011 年 3 月 19 日

我々は日本が素早く復興すると希望せざるを得ない。自国民のために、そして他の国々のため

に。世界で 3番目の経済大国が長く低迷していることを見る余裕は、誰にもない。

◆ザ・タイムズ東京支局長リチャード・ロイド・バリー『ザ・タイムズ』(英国 一般紙)

2011 年 3 月 17 日

日本にとってこれ以上の苦痛があるだろうか。この 6日間、一連の災害に見舞われた。もしそ

れらが 10 年間にわたってばらばらに起こったとしても、充分重い負担になっただろう。まず、

観測史上、国内最大の地震があり、次にそれよりもはるかに破壊的な津波が襲った。それで 1万

人以上もの人が命を奪われたと思ったら、今度は原子炉の大事故だ。世界最悪の原発事故である

チェルノブイリの事故に匹敵するかどうかは、これからわかるだろう。そしてとどめを刺すよう

に被災地に雪が降り、凍てつくような寒さとなった。(中略)

日本は犯罪、若者の目的喪失感、教育水準の低下、中国の台頭、核保有国である北朝鮮の予測

不可能など、不安の真っただ中にいる。そして今回の打撃の影響はどうなるのか。この打撃は揺

らめく日本を屈服させるだろうか。あるいは、日本はいままでと同じように対応して、この暗黒

のときから団結して立ち直るのだろうか。この判断をするのは震災後 5日の時点ではまだ無理だ。

しかし、原発の危機に関する政府の対応がどうであれ、一般人が立ち直り、再びこの社会の強さ

を見せていることは明らかである。

目立った略奪もない。食糧や水やガソリンが不足しているにもかかわらず、誰も口論しないし、

クラクションも鳴らさない。日本人のもてなしの心はむしばまれていなかった。仙台では、市役

所がホームレスの旅行者のための宿泊所になっていた。日本が地震と津波から立ち直ることには

まったく疑いがないが、さらには世界を感嘆させるペースでそうするだろう。

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I-1-145

4)日本の復興に対する提言の事例

東日本大震災からの復興は国際的にも注目されているところであるが、海外の識者等からの復

興に対する提言等が見受けられる。

◇「gaman」notikara トム・リード(『ワシントン・ポスト』(米国)元東京支局局長)

打ちのめされた被災地の復興に成功することで、日本は、二重の効果を手に入れられると考え

る。震災の中心地は、日本の産業の中心である大都市の、活気に溢れた生活とは縁遠い場所にあ

る。長年にわたって、小さな農村や漁村が集まる田舎と見なされてきたこの地域に、大規模な再

建計画は新しい活力をもたらすかもしれない。近代化された海港、最新式の高速道路、新しい鉄

道や空港が、東日本の沿岸エリアをかつてないほどに日本の重要な地域にするかもしれないのだ。

それ以上に、効果的な復興は、自信や意欲をいくらか失くしてしまった、この国の打ちのめさ

れた心を活気づけていくだろう。20 年前のバブル経済の崩壊以来、日本は世界における自分た

ちのポジションを見つけられず、ときに絶望的で、前途に悲観的だと思われてきた。だが、新し

く生まれ変わり、光り輝く東日本の姿は、意気消沈した国の士気を回復させるに、うってつけの

効果をもたらすだろう。高い回復力を持つ日本の社会が、今回の甚大な被害に対して立ち直るた

めの活力、管理能力、そして資金を創出することができるかどうか。日本人は常に逆境にうまく

立ち向かってきた。私は、きっとできると考える。それは、日本の長い歴史が証明している。

(出典:小学館『日本の未来について話そう―日本再生への提言―』2011 年 7 月)

◇「もはや主流、日本も推進を」 アドナン・アミン(国際再生可能エネルギー機関(IRENA)

事務局長)

日本は増え続けるエネルギー需要を満たし、化石燃料への依存度を減らすために、野心的な原

子力政策を取ってきた。同時に再生可能エネルギー政策も何十年も前から持っていたが、普及策

が控えめだったため、他国より出遅れてしまった。

あらゆる再生可能エネルギーを今後、急速に普及させると、短期的には費用がかかるようにみ

えるかもしれない。しかし、エネルギー安全保障を高め、CO2削減目標を達成し、新たな経済活

動を生み出すことに大きく貢献する。国民の幅広い支持が、全量固定価格買い取り制度のような

強力な政策につながることを期待したい。日本は再生可能エネルギーの先進的な技術力を駆使し

て、震災の被災地を復興させることができるはずだ。クリーンエネルギーの新たな可能性を世界

に対して示すことになるだろう。私たちは日本の取り組みを積極的にサポートしていきたい。

(出典:朝日新聞社『3.11 後ニッポンの論点』2011 年 9 月)

Page 55: 1-3.被災状況 - mlit.go.jp · 島までの三陸リアス式海岸の南部(大槌町、陸前高田市、気仙沼市等)の被害も甚大だった。ま た、仙台湾から南相馬市までの地域の被害が大きかった。

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◇「災害に備えた都市設計が必要だ」 『ウォール・ストリート・ジャーナル』(米国)

都市化によって、人々が物理的に避難できない可能性もある。数百万の人々を避難させようと

しても交通システムが機能せず、命が失われるケースも考えられる。この結果、政策立案者や設

計に携わる人々は災害時や災害後、いかに人々に避難所を提供し、どのように建造物の設計に取

り入れるかという問題に直面している。(中略)

都市部のコミュニティは被害を想定してリスクに備え、地方自治体や政府と協力し合って災害

対策に関わる必要がある。それには自然災害に対処できるよう、住民を訓練しておかねばならな

い。構造専門家やプランナー、社会学者は公園や空き地など、適切な避難所の計画に早急に取り

掛かるべきだ。適切な設計で効率のよい避難所をつくるには、研究を強化する必要がある。いま

日本で起きていることを慎重に分析することで、こうした長期的な取り組みに役立てられる可能

性がある。

(出典:講談社『クーリエ・ジャポン』2011 年 5 月号)

5)震災1年後の海外の特集

◇『Nature』(2012 年 3 月 8日)

東日本大震災から約 1年後の 2012 年 3 月 8日に発刊された『Nature』では、震災後の日本に

関わる特集が組まれている。表紙には、津波からは残ったが塩害を受けて衰弱した陸前高田の「希

望の松」の写真(2012 年元旦撮影)が掲載されている。

「今週の特集」の紹介ページでは、冒頭で「三重災害からの教訓」と題して、過去最大級の地

震・津波、そしてそれにより引き起こされた原発事故という三重災害の教訓を、次の大災害の備

えに生かさなくてはならないと強調し、災害時の政府や専門家の対応、地震・津波予測システム、

一般市民の避難行動、原子力発電所における関係者の一連の危機対応、リスク管理等について総

合的な視点から評価している。

「津波から 1年」の特集では、日本が、自然災害と原子力災害の両方から非常に大きな被害を

受けた地域社会の立て直しにどのように取り組んできたかを検証している。まず、沿岸部再建の

取り組みについて、津波により甚大な被害を受けた東北沿岸域の各地の事例を取り上げながら詳

細に説明している。特に、巨大な規模の地震・津波への主要な対応策として、①防潮堤・防波堤

等の構造物の強化、②海岸林の再生、③今回の浸水域を基準とした土地利用計画の再検討、④人々

の危機認知と防災意識の向上の 4つの視点から論じられている。他に、科学者による津波予報改

善への取り組みも紹介されている。さらに、福島の経験から、原子力の経済学や地震・津波の早

期警報システムについて日本及び他の国々で大幅な見直しが行われるようになったことが報じ

られている。