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第1章 自己共役拡大の理論
1.1 閉作用素
1.1.1 閉作用素
一般に作用素 T の定義域を D(T ), 値域を R(T ) で表す. ヒルベルト空間H で定義された作用素 T が閉作用素 (closed operator) であるとは
un ∈ D(T ), un → u, Tun → f in H =⇒ u ∈ D(T ), Tu = f
が成り立つこと.
問題 有界作用素は閉作用素
補題 1.1 (1) T が閉作用素, A が有界作用素 =⇒ T +A は閉作用素
(2) T が閉作用素かつ 1 対 1 =⇒ T−1 も閉作用素
証明. (1) を示す. un ∈ D(T + A) = D(T ), un → u, (T + A)un → f とす
る. A は有界だから Aun → Au. よって Tun = (T +A)un −Aun → f −Au.T は閉作用素だから u ∈ D(T ) = D(T + A) かつ Tu = f − Au. すなわち(T +A)u = f .
(2) を示す. fn ∈ D(T−1), fn → f, T−1fn → u とする. T−1fn = un とお
くと un ∈ D(T ), un → u, Tun = fn → f だから T が閉作用素であること
より u ∈ D(T ), Tu = f . よって f ∈ R(T ) = D(T−1), T−1f = u.
作用素 B が作用素 A の拡大 (extension) であるとは
D(A) ⊂ D(B), Au = Bu ∀u ∈ D(A)
が成り立つこと. このとき A ⊂ B と書く. 作用素 B が作用素 A の閉拡大
(closed extension) であるとは B が閉作用素で A の拡大であること. 一般に作用素の閉拡大は存在するとは限らない. 閉拡大が存在するような作用素を可閉 (closable) という.
補題 1.2 A が可閉 ⇐⇒ un ∈ D(A), un → 0, Aun → f in H なら f = 0.
証明. =⇒ A の閉拡大を B とする. un ∈ D(B), un → 0, Bun → f で B は
閉だから 0 ∈ D(B) かつ B0 = f . よって f = 0.
2 第 1章 自己共役拡大の理論
⇐= 作用素 B を次のように定義する.
u ∈ D(B), Bu = f ⇐⇒ ∃un ∈ D(A) s. t. un → u, Aun → f
これは well-defined である. 実際 un, u′n ∈ D(A) で un → u, u′n → u か
つ Aun → f , Au′n → f ′ となるものがあったならば vn = un − u′n とおくとvn → 0 かつ Avn → f − f ′. A は可閉であるから f − f ′ = 0. よって f = f ′
だから Bu の値は u に近づく un ∈ D(A) の取り方によらず定まる. B が閉作用素であることを示す. wn ∈ D(B), wn → w, Bw → f とする. B の定義より ∃un ∈ D(A) s.t. ‖un − wn‖ < 1/n, ‖Aun −Bwn‖ < 1/n. このとき
‖un − w‖ ≤ ‖un − wn‖ + ‖wn − w‖ < 1/n+ ‖wn − w‖ → 0
‖Aun − f‖ ≤ ‖Aun −Bwn‖ + ‖Bwn − f‖ < 1/n+ ‖Bwn − f‖ → 0
であるから w ∈ D(B) かつ Bw = f .
A が可閉のとき A の最少の閉拡大を A の閉包 (closure) という.
補題 1.3 A が可閉のとき A の閉包は存在する.
証明. A の閉拡大すべての共通部分をとればよい.
例 H = L2(0, 1), D(A) = C([0, 1]), Au(x) = xu(1) で定義される作用素 A
は可閉でない. A が可閉なら un ∈ D(A) が un → 0 かつ Aun = xun(1) → f
なら f = 0 となるはずである. ところが un ∈ C([0, 1]) を
un(x) =
{0 (0 ≤ x ≤ 1 − 1/n),
nx+ 1 − n (1 − 1/n < x ≤ 1)
とおけば un → 0 in L2(0, 1) かつ xnn(1) = x である.
1.1.2 グラフ
作用素 T のグラフ G(T ) は
G(T ) = {(u, Tu) ; u ∈ D(T )}
で定義される.
問題 (1) T が閉作用素 ⇐⇒ G(T ) が H × H で closed (2) 補題 1.2 の証明中で定義された B は A の閉包
1.2. 共役作用素 3
1.2 共役作用素
補題 2.1 定義域が稠密である作用素 T と v ∈ H に対して
(Tu, v) = (u,w), ∀u ∈ D(T )
をみたす w が存在するならば, それは一意的である.
証明. 2つあったとしてそれを w1, w2 とすると
(u,w1) = (u,w2), ∀u ∈ D(T ).
D(T ) は稠密だから w1 = w2.
補題 2.1 にいう w が存在するとき T ∗v = w として作用素 T ∗ を定義しT の共役作用素 (adjoint operator) という. T ∗ が定義されるためには T が
densely defined であることが常に要求されることに注意せよ.
補題 2.2 (1) T ∗ は線形の閉作用素.(2) S ⊂ T =⇒ S∗ ⊃ T ∗.(3) T が可閉なら (T )∗ = T ∗.(4) D(T ∗) が稠密なら T ⊂ T ∗∗.
証明. (1) 線形であることは演習問題. vn ∈ D(T ∗), vn → v, T ∗vn → f と
する. u ∈ D(T ) に対して (Tu, vn) = (u, T ∗vn) だから n→ ∞ とすると
(Tu, v) = (u, f) ∀u ∈ D(T )
となり v ∈ D(T ∗), T ∗v = f だから T ∗ は閉作用素.(2) u ∈ D(S) ⊂ D(T ), v ∈ D(T ∗) に対して
(Su, v) = (Tu, v) = (u, T ∗v)
だから v ∈ D(S∗) かつ S∗v = T ∗v.(3) T ⊂ T より T ∗ ⊃ (T )∗. v ∈ D(T ∗) とする. ∀u ∈ D(T ) に対して un ∈
D(T ), un → u, Tun → Tuとなる un が存在する. (Tun, v) = (un, T∗v)にお
いて n→ ∞として (Tu, v) = (u, T ∗v). これより v ∈ D((T )∗), (T )∗v = T ∗v.(4) ∀u ∈ D(T ), ∀v ∈ D(T ∗) に対して (Tu, v) = (u, T ∗v). よって
(T ∗v, u) = (v, T ∗u) ∀v ∈ D(T ∗), ∀u ∈ D(T ).
これより u ∈ D(T ∗∗), T ∗∗u = Tu.
補題 2.3 N(T ∗) ⊥ R(T ). ただし N(T ∗) = {v ∈ D(T ∗) ; T ∗v = 0}.
4 第 1章 自己共役拡大の理論
証明. v ∈ N(T ∗), f ∈ R(T ) のとき Tu = f となる u ∈ D(T ) をとれば(v, f) = (v, Tu) = (T ∗v, u) = 0.
定理 2.4 D(T ), R(T ) がともに稠密で T が 1 対 1 のとき
(T ∗)−1 = (T−1)∗.
証明. T が 1 対 1 だから T−1 が存在し, かつ D(T−1) = R(T ) は稠密である. よって T ∗, (T−1)∗ が存在する. u ∈ D(T ), v ∈ D((T−1)∗) のとき
(u, v) = (T−1Tu, v) = (Tu, (T−1)∗v)
だから (T−1)∗v ∈ D(T ∗)かつ T ∗(T−1)∗v = v. また u ∈ D(T−1), v ∈ D(T ∗)のとき
(u, v) = (TT−1u, v) = (T−1u, T ∗v)
だから T ∗v ∈ D((T−1)∗), かつ (T−1)∗T ∗v = v.
作用素 T のグラフ G(T ), 逆グラフ G′(T ) とは
G(T ) = {(u, Tu);u ∈ D(T )},
G′(T ) = {(Tu, u);u ∈ D(T )}
である.
補題 2.5 G′(−T ∗) = G(T )⊥. これと同値だが G(T ∗) = G′(−T ).
証明. (f, g) ∈ G(T )⊥ ⇐⇒ (f, g) ⊥ (u, Tu) ∀u ∈ D(T ) ⇐⇒ (f, u)+(g, Tu) =0 ∀u ∈ D(T ) ⇐⇒ g ∈ D(T ∗), T ∗g = −f ⇐⇒ g ∈ D(−T ∗), −T ∗g = f
⇐⇒ (g, f) ∈ G(−T ∗) ⇐⇒ (f, g) ∈ G′(−T ∗)
定理 2.6 T が densely defined, closable なら, T ∗ は densely defined closed,かつ T ∗∗ = T .
証明. (G(T ))⊥⊥ = G(T ) = G(T ) であるから
G(T ) = G′(−T ∗)⊥
v ⊥ D(T ∗) とすると (0, v) ∈ G′(−T ∗)⊥ = G(T ). よって v = T0 = 0だから D(T ∗) は dense. 共役作用素は常に閉. G(T ∗) = G′(−T ∗∗)⊥ より G′(−T ∗∗) = G(T ∗)⊥ よって G′(T ∗∗) = G(−T ∗)⊥. 逆グラフを考えてG(T ∗∗) = G′(−T ∗)⊥. これは G(T ) に等しいから T ∗∗ = T .
1.3. 対称作用素・自己共役作用素 5
1.3 対称作用素・自己共役作用素
定義域 D(A) が稠密である作用素 A が対称 (symmetric) とは
A ⊂ A∗
であること, いいかえれば
(Au, v) = (u,Av), ∀u, v ∈ D(A)
であることである.
問題 上の2つが同値であることを示せ.
A が対称で D(A) = D(A∗) のとき, すなわち A = A∗ のとき A は自己共
役 (self-adjoint) であると呼ばれる. したがって自己共役作用素は閉作用素である.
定理 3.1 有界な対称作用素はその定義域をヒルベルト空間全体にして自己共役である.
問題 上の定理を示せ.
定理 3.2 A が自己共役で 1 対 1 なら A−1 も自己共役である.
証明. R(A) が稠密であることをまず示す. (Au, v) = 0, ∀u ∈ D(A), のとき v ∈ D(A∗) = D(A) かつ (u,Av) = 0, ∀u ∈ D(A) である. D(A) は稠密だから Av = 0. A は 1 to 1 だから v = 0 となる. 定理 2.4 により(A−1)∗ = (A∗)−1 = A−1 である.
例 3.3 H = L2(R1) とし A = −id/dx, D(A) = C∞0 (R) とする. A は対称
である. (これを示せ). A は自己共役ではない. それを示すのに
v(x) =
{0, (|x| ≥ 1),
1 − |x|, (|x| < 1)
を考えれば
f(x) =
{0, (|x| ≥ 1),
± 1, (0 < ∓x < 1)
とおくと
(Au, v) = (u, f), ∀u ∈ D(A)
であるから v ∈ D(A∗), しかし v �∈ D(A) であるから, A �= A∗.
6 第 1章 自己共役拡大の理論
A が対称なら (Au, u), u ∈ D(A), は実数である. 対称作用素 A が下に半
有界 (lower semi-bounded, bounded below) とは, 定数 γ ∈ R が存在し
(Au, u) ≥ γ‖u‖2, ∀u ∈ D(A)
となることである.(Au, u) ≥ 0, ∀u ∈ D(A)
が成り立つとき A は正値 (non-negative) であると呼ばれる.
A は定義域が稠密な閉作用素であるとする. λ ∈ C が A の resolvent setρ(A) に属すとは A− λ が 1 to 1, onto であること.
補題 3.4 Aが densely defined closed operotor で λ ∈ ρ(A)のとき (A−λ)−1
は有界作用素.
証明. 補題 1.1 より A − λ は閉作用素. A − λ は 1 to 1, onto だから(A − λ)−1 が存在するが, 補題 1.1 より (A − λ)−1 は閉作用素. 閉グラフ定理より (A− λ)−1 は有界.
定理 3.5 A が自己共役のとき C \ R ⊂ ρ(A).
証明. λ ∈ C \ R とする. u ∈ D(A) が Au = λu をみたせば
(λu, u) = (Au, u) = (u,Au) = (u, λu)
より (λ−λ)(u, u) = 0. λ �∈ R だから (u, u) = 0. よって u = 0 だから A−λ
は 1 to 1.R(A−λ) が dense であることを示す. R(A−λ) ⊥ f なら ((A−λ)u, f) =
0, ∀u ∈ D(A). これより f ∈ D(A∗) = D(A) で (u, (A − λ)f) = 0, ∀u ∈D(A). これより (A− λ)f = 0. よって f = 0.‖(A− λ)−1‖ ≤ 1/|Imλ| を示す. (A− λ)−1f = u とおくと
((A− λ)u, u) = (f, u).
(Au, u) は実数だから両辺の虚部をとると |Imλ|‖u‖2 = |Im (f, u)| ≤ ‖f‖‖u‖.これより ‖u‖ ≤ |Imλ|−1‖f‖. R(A − λ) は dense だから ∀g ∈ H に対して
∃fn ∈ R(A− λ) s.t. fn → g. fn = (A− λ)un となる un ∈ D(A) をとると
‖un − um‖ ≤ |Im λ|−1‖fn − fm‖
よって ∃u s.t. un → u. Aun → g だから A が閉作用素であることより
u ∈ D(A) かつ (A− λ)u = g. よって A− λ は onto.
1.4. Sobolev 空間 7
1.4 Sobolev 空間
1.4.1 絶対連続函数
I を R 内の開区間とする. f(x) が I 上絶対連続とは, ∀ε > 0 に対してδ > 0 が存在し, 開区間の列 (an, bn) ⊂ I が互いに交わらず
∑n(bn − an) < δ
をみたせば ∑n
|f(bn) − f(an)| < ε
となること
次の定理は Lebesgue 積分論の基本定理である.
定理 4.1 f(x) が I 上絶対連続であることの必要十分条件は
(1) f(x) が I 上ほとんどいたるところ微分可能で
(2) f ′(x) ∈ L1(I) であり(3) 任意の a, c ∈ I に対して
f(x) = f(c) +∫ x
c
f ′(y)dy.
補題 4.2 f, g が I = [a, b] 上絶対連続のとき∫ b
a
f ′(x)g(x)dx =[f(x)g(x)
]b
a−
∫ b
a
f(x)g′(x)dx.
定義 4.3 m ≥ 1 を自然数とする. Hm(I) とは u ∈ Cm−1(I) であり,u(m−1) が I 内の任意のコンパクト部分区間において絶対連続, さらに u(k) ∈L2(I), 0 ≤ k ≤ m が成り立つもの全体.
定理 4.4 Hm(I) は
(u, v)m =m∑
k=0
∫I
u(k)(x)v(k)(x)dx
を内積としてヒルベルト空間である. そのノルムを ‖ · ‖m と書く.
証明. 完備性を示す. {ui}∞i=1 を Hm(I) の Cauchy 列とする. 0 ≤ k ≤ m に
対して
‖u(k)i − u
(k)j ‖2
L2(I) ≤ ‖ui − uj‖2Hm(I)
であるから, u(k)i → ∃vk in L2(I) である. 部分列をとれば u
(k)i は vk にほと
んどいたるところ収束しているとしてよい. x, c ∈ I に対して
u(k)i (x) = u
(k)i (c) +
∫ x
c
u(k+1)i (y)dy
8 第 1章 自己共役拡大の理論
において i→ ∞ とすれば
vk(x) = vk(c) +∫ x
c
vk−1(y)dy
であるから vk(x)は I 内の任意のコンパクト部分区間において絶対連続である.v0(x) = u(x) であるから, 上の式より v′1(x) = u(x). v′′2 (x) = v′1(x) = u(x)e.t.c.
1.4.2 超函数の初歩
I ⊂ R を開区間とする. I 上の超函数 (distribution) とは, C∞0 (I) 上の
線形汎函数 (linear functional) T で, 任意のコンパクト区間K ∈ I に対して
定数 C, k が存在し
|〈T, ϕ〉| ≤ C∑m≤k
sup |ϕ(m)|, ∀ϕ ∈ C∞0 (K)
が成り立つもの. I 上の distribution 全体を D′(I) と書く. distribution の重要な例として L1
loc-函数がある. I を R 内の区間とするとき f ∈ L1loc(I) と
は, 任意のコンパクト部分区間 K ⊂ I に対して∫K
|f(x)|dx <∞
となること. f ∈ L1loc(I) のとき, distribution Tf を
〈Tf , ϕ〉 =∫
I
f(x)ϕ(x)dx, ∀ϕ ∈ C|infty0 (I)
によって定義する.
補題 4.5 f(x) ∈ L1loc(I) が∫
I
f(x)ϕ(x)dx = 0, ∀ϕ ∈ C∞0 (I)
をみたせば f(x) = 0 a.e.
これはよく知られた事実である. 証明は略す.
補題 4.6 f, g ∈ L1loc(I) に対して
Tf = Tg as a distribution ⇐⇒ f(x) = g(x), a.e.
問題 上の補題を示せ.
T を distribution とするとき, その微分 T ′ は
〈T ′, ϕ〉 = −〈T, ϕ′〉, ∀ϕ ∈ C∞0 (I)
1.4. Sobolev 空間 9
で定義される.
補題 4.7 T ∈ D′(I) がある自然数 m に対して T (m) = 0 をみたせば,T = cm−1x
m−1 + cm−2xm−2 + · · · c0, (cj は定数).
証明. 仮定は〈T, ϕ(m)〉 = 0, ∀ϕ ∈ C∞
0 (I)
ということである.m = 1 の場合を示す. まず h(x) ∈ C∞
0 (I) が∫
Ih(x)dx = 0 をみたせ
ば 〈T, h〉 = 0 である. 実際 I = (a, b) として H(x) =∫ x
a h(y)dy とおけばH(x) ∈ C∞
0 (I) で H ′(x) = h(x) であるから 〈T, h〉 = 〈T,H ′〉 = 0.ψ0(x) ∈ C∞
0 (I)で∫
I ψ0(x)dx = 1 となるものを一つ固定する. ϕ ∈ C∞0 (I)
に対して
ϕ(x) =(ϕ(x) − cψ0(x)
)+ cψ0(x), c =
∫I
ϕ(x)dx
と分解すれば∫
I(ϕ(x) − cψ0(x))dx = 0 である. よって
〈T, ϕ〉 = c〈T, ψ0〉 = C
∫I
ϕ(x)dx, C = 〈T, ψ0〉
であるから
〈T − C,ϕ〉 = 0, ∀ϕ ∈ C∞0 (I).
これより T = C.m− 1 まで証明されたとして, m の場合を示す. (T ′)(m−1) = 0 だから, 帰納法の仮定より T ′ = cm−2x
m−2 + · · · + c0.
S = T −(cm−2
m− 1xm−1 + · · · + c0x
)とおけば S′ = T ′ − (cm−2x
m−2 + · · · + c0) = 0. よって S = 定数となり, mの場合も示された.
定義 4.8 g ∈ L1loc(I) が f ∈ L1
loc(I) の1階弱導函数 (超函数の意味の導函数) とは ∫
I
f(x)ϕ′(x)dx = −∫
I
g(x)ϕ(x)dx, ∀ϕ ∈ C∞0 (I)
がなりたつこと.
補題 4.9 f(x) ∈ L1loc(I) の1階弱導函数が 0 ならば, f(x) はある定数にほ
とんどいたるところ等しい.
10 第 1章 自己共役拡大の理論
定理 4.10 g ∈ L1loc(I) が f ∈ L1
loc(I) の1階弱導函数であるための必要十分条件は, f(x)が I 内の任意のコンパクト部分区間上で絶対連続で f ′(x) = g(x)となること.
証明. c ∈ I をとり
G(x) =∫ x
c
g(y)dy
とおけば, G(x) は絶対連続であり, G′(x) = g(x). よって補題 4.2 により∫I
g(x)ϕ(x)dx = −∫
I
G(x)ϕ′(x)dx
だから ∫I
(f(x) −G(x))ϕ(x)dx = 0, ∀ϕ(x) ∈ C∞0 (I).
これより f(x) −G(x) = 0. a.e. よって f(x) は絶対連続で f ′(x) = G′(x) =g(x).逆に f(x) が絶対連続なら補題 4.2 により∫
I
f(x)ϕ′(x)g(x)dx = −∫
I
f ′(x)ϕ(x) =∫
I
g(x)ϕ(x)dx, ∀ϕ ∈ C∞0 (I).
これより f ′(x) = g(x) a.e.
1.4.3 自己共役性への応用
問題 (1) f ∈ L1(R1), g ∈ Lp(R1), p ≥ 1 のとき(f ∗ g)(x) =
∫ ∞
−∞f(x− y)g(y)dy ∈ Lp(R).
補題 4.11 z ∈ C が Im√z > 0 をみたすとき(
R(z)f)(x) =
i
2√z
∫ ∞
−∞ei
√z|x−y|f(y)dy, f ∈ L2(R)
とおけば R(z)f ∈ H2(R),d
dxR(z)f ∈ L∞(R) で(
− d2
dz2− z
)R(z)f = f.
証明. 演習問題
定理 4.12 V (x)がR上有界な実数値関数のとき T = − d2
dx2+ V (x), D(T ) =
H2(R) は自己共役である.
証明. 部分積分により T は対称である. v, f ∈ L2(R) が
(v, Tu) = (f, u), ∀u ∈ D(T )
1.4. Sobolev 空間 11
を満たすとする. w = R(i)(f−(q+i)v)とおけば, w ∈ H2(R)で−w′′−iw =f − (q + i)v をみたす. よって
(w,−u′′) − (iw, u) = (f − (q + i)v, u), ∀u ∈ D(T )
だから
(v − w,−u′′) − (i(v − w), u) = 0, ∀u ∈ D(T ) = H2(R).
すなわち distribution の意味で −(v − w)′′ = i(v − w). そこで
g(x) = −∫ x
0
(x− y)i(v(y) − w(y))dy
とおくと, −g′′(x) = i(v(x) − w(x)). よって distribution の意味で (v − w −g)′′ = 0. 補題 4.7 により v − w − g(x) は x の1次式だから, 通常の函数の意味で v(x) = w(x) + g(x) + c1x + c0. これより v ∈ C1(R) ∩ L2(R) で v′
は R 上局所絶対連続. v′′ = qv − f ∈ L2(R) である. v′ ∈ L2(R) を示す.
v′ = w′ + g′ + c1
で w′ は有界であり
g′(x) = −i∫ x
0
(v(y) − w(y))dy
であるから
|g′(x)| ≤ C√|x|.
−v′′ + qv = f の両辺に v をかけて a から b まで積分すると
−[v′v]ba +∫ b
a
|v′(x)|2dx+∫ b
a
q(x)|v(x)|2dx =∫ b
a
f(x)v(x)dx.
ここで |v′(x)v(x)| ≤ C(1 +√|x|)|v(x)| であるが, v ∈ L2(R) であるから
lim inf|x|→∞
(1 +√|x|)|v(x)| = 0
である. そこで適当な点列に沿って a → −∞, b → ∞ とすると v′ ∈ L2(R)が分かる.
上の定理と同様にして次の定理が示される.
定理 4.13 u ∈ L2(R) が distribution の意味で −u′′ = f ∈ L2(R) を満たせば, u ∈ H2(R).
一般の区間の場合にはどうなるであろうか? I を R の中の任意の開区間とし u ∈ H1(I) が distribution の意味で −u′′ = f ∈ L2(I) を満たしているとする. 即ち
−(u, ϕ′′) = (f, ϕ), ∀ϕ ∈ C∞0 (I).
12 第 1章 自己共役拡大の理論
χ ∈ C∞0 (I) を 任意にとり v = χu とおけば χϕ′′ = (χϕ)′′ − χ′′ϕ− 2χ′ϕ′ で
あるから
−(v, ϕ′′) = (χf − χ′′u− 2χ′u′, ϕ), ∀ϕ ∈ C∞0 (I)
となる. 定理 4.13 により χu ∈ H2(R) である. χ ∈ C∞0 は任意であるから次
の定理が示された.
定理 4.14 u ∈ H1(I) が distribution の意味で −u′′ = f ∈ L2(I) を満たしている時, I の中の任意のコンパクト区間 K に対して u ∈ H2(K) である.
1.5 Friedrichs 拡張
1.5.1 2 次形式
T を Hilbert空間Hで定義された対称作用素とし,その定義域D(T ) = D
は稠密とする.a(u, v) = (Tu, v), u, v ∈ D
とおけば, a(·, ·) は D ×D から C への写像であって
a(λu+ µv,w) = λa(u,w) + µa(v,w)
が任意の λ, µ ∈ C と u, v, w ∈ D に対して成り立ち, さらに
a(u, v) = a(v, u), u, v ∈ D
となることである. a(·, ·) を D を定義域とする 対称な 2 次形式 という. 対称 2 次形式 a(·, ·) が正定値 (positive definite) であるとは定数 C > 0 が存在し
a(u, u) ≥ C‖u‖2, u ∈ D
が成り立つことである. このとき a(·, ·) は D 上の内積となる. D がノルム‖u‖a =
√a(u, u) に関して完備であるとき a(·, ·) を閉形式 (closed form) と
いう. 正定値対称2次形式 a(·, ·) が可閉 (closable) とは
un ∈ D, ‖un‖ → 0, ‖un − um‖a → 0 =⇒ ‖un‖a → 0
が成り立つことである. a(·, ·) が可閉のとき部分空間 D を
u ∈ D ⇐⇒ ∃un ∈ D s.t.‖un − u‖ → 0, ‖un − um‖a → 0
によって定義する. u, v ∈ D に対して un, vn ∈ D を un → u, vn → v,‖un − um‖a → 0, ‖vn − vm‖a → 0 となるようなものとするとき
a(u, v) = limm,n→∞ a(um, vn)
1.5. Friedrichs 拡張 13
と定義すれば a(u, v) は点列 {un}, {vn} のとり方によらずに定義される. ノルム ‖ · ‖a を
√a(·, ·) によって定義する.
a(u, v) = limm→∞ a(um.v), u ∈ D, v ∈ D
となる. um ∈ D は上の条件をみたす列である. 実際, vm = v ととれば
a(un, v) = limm→∞ a(un, vm) だから
a(u, v) = limm,n→∞a(un, vm) = lim
n→∞ a(un, v).
さらに u ∈ D に対して un ∈ D を上のようなものとするとき
‖u− un‖a → 0
である. 実際
a(u− un, u− un) = a(u, u) − a(u, un) − a(un, u) + a(un, un)
で a(u, un) = limm→∞ a(um, un) だから
limn→∞ a(u, un) = lim
m,n→∞ a(um, un) = a(u, u)
となる.a は正定値である. a が closed であることを示そう. {un} ⊂ D が ‖um −
un‖a → 0 (m,n→ ∞) をみたすとする. a が正定値であることにより
‖um − un‖2a ≥ C‖um − un‖2.
よって ∃u ∈ H s.t. ‖un − u‖ → 0. また un ∈ D であるから ∃vn,j ∈ D s.t.
‖vn,j − un‖ → 0, ‖vn,j − vn,k‖a → 0.
上で示したことより ‖vn,j − un‖a → 0 (j → ∞)よって ∃j(n) s.t.
‖vn,j(n) − un‖ < 1/n, ‖vn,j(n) − un‖a < 1/n.
このとき
‖vn,j(n) − u‖ ≤ ‖vn,j(n) − un‖ + ‖un − u‖ → 0.
また
‖vn,j(n) − vm,j(m)‖a ≤ ‖vn,j(n) − un‖a + ‖un − um‖a + ‖um − vm,j(m)‖a → 0
である. この a(·, ·) を a(·, ·) の閉拡張とよぼう.
定理 5.1 a(·, ·) は D を定義域とする正定値対称 2 次閉形式とする. このときD(A) ⊂ D かつ
a(u, v) = (Au, v), u ∈ D(A), v ∈ D
14 第 1章 自己共役拡大の理論
をみたす自己共役作用素 A が唯一つ存在する.
証明. 一意性を示す. A,B をそのような作用素とすれば
(Au, v) = a(u, v) = (u,Bv), u ∈ D(A), v ∈ D(B)
である. これより A = B となる.作用素 A の存在を示そう. a(·, ·) は正定値閉形式であるから
(u, v)a = a(u, v) (5.8)
とおけば, D は内積 (·, ·)a をもつHilbert空間であり ‖u‖a ≥ √C‖u‖である.
|(u, v)| ≤ ‖u‖‖v‖ ≤ 1√C‖u‖a‖v‖
であるから u → (u, v) は D 上の連続な線形汎関数である. よって Riesz の定理によって
(u, v) = (u,Bv)a, u ∈ D, v ∈ H (5.9)
をみたす有界作用素 B ∈ B(H), R(B) ⊂ D, が存在する. B が H 上の非負
自己共役作用素であることを示そう.
(Bu, v) = (Bu,Bv)a = (Bv,Bu)a = (Bv, u) = (u,Bv)
より B は自己共役である.
(Bu, u) = (Bu,Bu)a ≥ 0
だから B は非負である.Bv = 0 なら (u, v) = 0 ∀u ∈ D だから v = 0. よって B は1対1である.R(B) が D で稠密であることを示そう. 実際 u ∈ D が R(B) に直交する
ならば (u, v) = (u,Bv)a = 0 ∀v ∈ H だから u = 0 となる.A = B−1 とおけば A は自己共役である. 何故なら u, v ∈ D(A) = R(B)
とし u = Bf, v = Bg とすれば
(Au, v) = (f,Bg) = (Bf, g) = (u,Av)
だから A は対称である. また v, w ∈ H が
(Au, v) = (u,w) ∀u ∈ D(A)
をみたせば
(f, v) = (Bf,w) ∀f ∈ H
だから v = Bw. よって v ∈ R(B) = D(A) であるから D(A∗) ⊂ D(A) である.
1.5. Friedrichs 拡張 15
u ∈ D(A), v ∈ D に対して
(Au, v) = (BAu, v)a = (u, v)a = a(u, v)
となるから, この A が求めるものである. ♦
D を定義域とする対称 2 次形式 a(·, ·) が下に半有界であるとは, ある定数C0 > 0 に対して
a(u, u) ≥ −C0‖u‖2 ∀u ∈ D
が成り立つことである. このとき
b(u, v) = a(u, v) + (C0 + 1)(u, v)
とおけば b(·, ·) は D を定義域とする正定値な 2 次形式である. a(·, ·) が可閉であるとは b(·, ·) が可閉であることとする. b(·, ·) を閉形式に拡張したものをb(·, ·) とする. 定理 5.1 よりD(B) ⊂ D かつ
b(u, v) = (Bu, v), u ∈ D(B), v ∈ D
をみたす自己共役作用素 B が唯一つ存在する.
a(u, v) = b(u, v) − (C0 + 1)(u, v),
A = B − (C0 + 1)
とおけば A は自己共役で D(A) = D(B) ⊂ D, かつ
a(u, v) = (Au, v), u ∈ D(A), v ∈ D
A ≥ −C0
が成立する. この A を 2 次形式 a(·, ·) に付随する自己共役作用素という.
1.5.2 Dirichlet 境界条件
I ⊂ R を開区間とし V (x) は I 上の実数値函数で
V (x) ≥ α, ∀x ∈ I
をみたすとする. 作用素 T を
Tu = −u′′ + V (x)u, D(T ) = C∞0 (I)
によって定義すれば
(Tu, u) = (u′, u′) + (V u, u) ≥ α‖u‖2, ∀u ∈ D(A)
16 第 1章 自己共役拡大の理論
であるから, (Tu, v) は正定値対称2次形式である. 定理 5.1 から定まる自己共役作用素 A を考える. まず
(Au, v) = a(u, v), u ∈ D(A), v ∈ D(T )
であるから, 特に v ∈ C∞0 (I) とすれば
(Au, v) = −(u, v′′ + V v), v ∈ C∞0 (I),
であるから定理 4.14 により I 内の任意のコンパクト区間 K に対して u ∈H2(K) である. そこで右辺において部分積分をすれば
Au = −u′′ + V u
となる. これより u ∈ H2(I) が分かる.次に作用素 A の定義域を考える. u ∈ D(T ) に対して
a(u, u) = −(u′′, u) + (V u, u) = (u′, u′) + (V u, u) ≥ ‖u′‖2 + α‖u‖2
である. よって a(·, ·) の閉拡張の定義域は C∞0 (I) の H1(I) ノルムによる閉
包である. これを H10 (I) と書く.
補題 5.2 I = (0, 1)のとき, u ∈ H10 (I)なら u ∈ C([0, 1])で u(0) = u(1) = 0.
証明. u ∈ H10 (I) のとき ∃ϕn ∈ C∞
0 (I) s.t.
‖u− ϕn‖2H1(I) = ‖u− ϕn‖2
L2(I) + ‖u′ − ϕ′n‖2
L2(I) → 0.
0 < y < x < 1 のとき
|u(y) − u(x)| ≤∫ x
y
|u′(t)|dt ≤ ‖u‖H1(I)
√x− y
だから u(x) は [0, 1] 上の連続函数に延長される.
ϕn(x) =∫ x
0
ϕ′n(t)dt
で t→ ∞ とすれば
u(x) =∫ x
0
u′(t)dt.
これより u(0) = 0 である.
したがって T = −(d/dx)2 + V (x), D(T ) = C∞0 ((0, 1)) の Friedrichs 拡張
は Dirichlet 境界条件をみたす. 以上のことを考慮して定理 5.1 の証明をこの具体的な場合に繰り返すことは大変よい演習問題である.
1.5. Friedrichs 拡張 17
1.5.3 他の境界条件
境界において u′(x) = σ(x)u(x) という形の境界条件を課す場合を考える.
補題 5.3 (1) ある定数 C0 > 0 が存在し, 任意の u ∈ H1((0, 1)) に対して
|u(0)| ≤ C0‖u‖H1((0,1)), ∀u ∈ H1((0, 1)).
(2) 任意の ε > 0 に対して定数 Cε > 0 が存在し, 任意の u, v ∈ H1((0, 1) に対して
|u(0)v(0)| ≤ ε(‖u‖2H1 + ‖v‖2
H1) + Cε(‖u‖2L2 + ‖v‖2
L2).
証明. 証明は同様だから (2) を示す. χ(x) ∈ C∞(R) を χ(x) = 1 (x < 1/2),χ(x) = 0 (x > 3/4) ととると
u(0)v(0) = −∫ 1
0
(χ(x)u(x)v(x))′dx
だから
|u(0)v(0)| ≤C∫ 1
0
(|uv| + |u′v| + |uv′|) dx ≤ C‖u‖H1
≤ε∫ 1
0
(|u′|2 + |v′| 2)dx+ Cε
∫ 1
0
(|u|2 + |v|2)dx.
σ0, σ1 ∈ R を与えられた定数とし,
u′(0) = σ0u(0), u′(1) = σ1u(1)
という境界条件をみたす作用素 T = −(d/dx)2 + V (x) を考えたい. V (x) は実数値有界関数とする. u, v が上の境界条件をみたす C2-函数とすれば
(Tu, v) = (u′, v′) + (V u, v) − σ1u(1)v(1) + σ0u(0)v(0)
である. そこで λ を定数として
a(u, v) = (u′, v′) + (V u, v) + λ(u, v) − σ1u(1)v(1) + σ0u(0)v(0)
という2次形式を考える. 定義域は D = H1((0, 1)) とする. 補題 5.3 によりλ を大きくとれば
a(u, u) ≥ ‖u‖2H1, ∀u ∈ D
である. 定理 5.1 により a(u, v) = (Au, v), u ∈ D(A) ⊂ D, v ∈ D と
なる自己共役作用素 A が存在する. Dirichelt 条件のときと同じ考察によりu ∈ H2(0, 1) が分かり,
Au = −u′′ + V (x)u+ λu, u ∈ H2((0, 1))
18 第 1章 自己共役拡大の理論
となる. u ∈ D(A) ∩H2((0, 1)), v ∈ D のとき
a(u, v) = (−u′′ + V u− λu, v) − (u′(1) − σ1u(1))v(1) + (u′(0) − σ1u(0))v(0)
であるから
−(u′(1) − σ1u(1))v(1) + (u′(0) − σ1u(0))v(0) = 0.
これより
u′(1) = σ1u(1), u′(0) = σ1u(0)
となり, のぞみの境界条件をみたしている.
1.6 Cayley 変換
定理 6.1 H を Hilbert 空間 H で定義された対称閉作用素とする. ただしD(H) は H で dense とする.(1) H + i は 1 to 1 である.(2) X := Ran (H + i) の上で定義された作用素 (H + i)−1 : X → H は有界
である.(3) UH = (H − i)(H + i)−1 は等長で (すなわち ‖UHf‖ = ‖f‖, ∀f ∈ X)
閉作用素である(すなわち fn ∈ X が fn → f in H, UHfn → g in H なら
f ∈ X で UHf = g である).(4) 1 − UH は 1 to 1 である.(5) Y := Ran (1−UH) とおくと Y = D(H) かつ H = i(1 +UH)(1−UH)−1
であり, Ran (1 − UH) は H で dense である.(6) D(UH), R(UH) は H の閉部分空間である.
証明. (1) H が対称だから, 任意の u ∈ D(H) に対して
(Hu, iu) = −i(Hu, u) = −i(u,Hu).
これより
‖(H ± i)u‖2 = ‖Hu‖2 ± (Hu, iu) ± (iu,Hu) + ‖u‖2 = ‖Hu‖2 + ‖u‖2.
よって (H ± i)u = 0 と x = 0 は同値であり (1) が成り立つ. H + i が 1 to1 でも R(H + i) は dense とは限らないから, X は H の中で dense とは限らない.(2) f = (H + i)u とおくと (1) の式より
‖f‖2 = ‖Hu‖2 + ‖(H + i)−1f‖2 ≥ ‖(H + i)−1f‖2.
(3) h ∈ X に対して h = (H + i)v となる v ∈ D(H) がある. このときUHh = (H−i)vだから (1)の式より ‖h‖ = ‖(H+i)v‖ = ‖(H−i)v‖ = ‖UHh‖
1.6. Cayley 変換 19
であり UH は等長である. fn ∈ X が fn → f in H, UHfn → g in H をみた
すとする. un = (H+ i)−1fn ∈ D(H)とすると, (2)より {un}は Cauchy列.よって un → u ∈ H となる u がある. さらに (H− i)un = UHfn → g だから
H が閉作用素であることより u ∈ D(H), (H − i)u = g. また (H + i)un =fn → f , un → u だから H が閉作用素であることより (H + i)u = f . よってUHf = (H − i)u = g となり UH は閉作用素である.(4) X � f が (1−UH)f = 0 をみたすとする. u = (H + i)−1f ∈ D(H) とおくと f = UHf = (H − i)u. 一方 (H + i)u = f だから u = 0. よって f = 0となる.(5) f ∈ Y に対して u = (1 − UH)−1f とおくと (1 − UH)u = f を変形し
て 2i(H + i)−1u = f となる. これより Y ⊂ D(H) であり, (1 + UH)(1 −UH)−1f = (1+UH)u = u+(H−i)(H+i)−1u = u+(H−i)f/(2i) = 2u−f =Hf/i と計算して H ⊃ i(1 + UH)(1 − UH)−1 となる. また u ∈ D(H) に対して (H + i)u = f とおくと (H − i)u = UHf により 2iu = (1− UH)f であるから u ∈ Y である. よって D(H) ⊂ Y で H = i(1 + UH)(1 − UH)−1 で
ある. また Y = D(H) であるから H で dense である.(6) un ∈ D(UH) が un → u とすると UH(un − un) → 0 であるから UHun
もある f に収束する. UH は閉作用素だから u ∈ D(UH) で D(UH)は closedである. また fn ∈ R(UH) が fn → f とすると, UH = (H − i)(H + i)−1
だから fn = (H − i)vn, vn ∈ D(H), vn = (H + i)−1gn と書ける. fn =UHgn で UH は等長だから ‖fn − fm‖ = ‖gn − gm‖ よって gn → g である.(H+ i)vn = gn → g, (H − i)vn = fn → f より vn → (g− f)/(2i) = v. H はclosed だから v ∈ D(H) かつ (H − i)v = f . また (H + i)−1 は連続だから
v = (H + i)−1g. よって f = (H − i)(H + i)−1g = UHg だから f ∈ R(UH)となり R(UH) は closed.
上で定義された作用素 UH を H の Cayley 変換という. 従って対称閉作用素 H の Cayley 変換 UH = (H − i)(H + i)−1 は
(i) R((H + i)) 上で定義された等長閉作用素で(ii) 1 − UH は 1 to 1, dense range で H = i(1 + UH)(1 − UH)−1 である.
定理 6.2 U が等長閉作用素で R(1− U) が dense なら U = UH となる対
称閉作用素が唯一つ存在する.
証明. U = UH となったとすると前定理より H = i(1 + U)(1−U)−1 と書け
るから一意性は OK. 存在を示す.1 − U は 1 to 1 である. 実際, 任意の g ∈ D(U) に対して (f, (1 − U)g) =
(f, g) − (f, Ug) = (f, g) − (Uf, Ug) = 0. ただし U が等長であることより
(Uf, Ug) = (f, g) であることを使った. R(1 − U) は dense だから f = 0 である.H = i(1 +U)(1−U)−1, D(H) = R(1−U), とおく. f, g ∈ R(1−U) のと
20 第 1章 自己共役拡大の理論
き f = (1 − U)u, g = (1 − U)v とすれば
(Hf, g) = (i(1 + U)(1 − U)−1f, g)
= i((1 + U)u, (1 − U)v)
= i{(Uu, v)− (u, Uv)}.同様に ((Hg, f) = i{(Uv, u)− (v, Uu)} であるから (Hf, g) = (f,Hg) で H
は対称である.H が閉作用素であることを示す. fn ∈ D(H) が fn → f , Hfn → u をみ
たすとする. fn = (1 − U)un と書けるから Hfn = i(1 + U)un → f . よって fn = (1 − U)un → u と合せて un → (f − iu)/2. fn = (1 − U)un で
n→ ∞として f = (1−U)(f−iu)/2. これより f = R(1−U) = D(H). またf = (1−U)(f−iu)/2より (1+U)f = i(U−1)u. Hf = i(1+U)(1−U)−1f =i(1 + U)(f − iu)/2 = u となる.UH = U を示す. u ∈ D(U)に対して f = (1−U )uとおくとHf = i(1+U )u
であるから (H + i)f = 2iu, (H − i)f = 2iUu. u ∈ R(H + i) = D(UH) でUHu = (H − i)(H + i)−1u = (H − i)f/(2i) = Uu. よって U ⊂ UH .u ∈ D(UH) = R(H+i)とする. (H+i)f = uと書ける. f ∈ D(H)である.
UHu = (H−i)(H+i)−1u = (H−i)f = u−2if より (1−UH)u = 2if ∈ D(H).D(H) = R(1−U)であるから ∃v ∈ D(U) s.t. (1−UH)u = (1−U)v. U ⊂ UH
であるから (1 − U)v = (1 − UH)v. 前定理より 1 − UH は 1 to 1 だからu = v ∈ D(U) で D(UH) ⊂ D(U).
定理 6.3 H を対称閉作用素とし, UH をその Cayley 変換とする.
N± = N(H∗ ∓ i) = {f ∈ D(H∗); (H∗ ∓ i)f = 0}
とおく.(1) N+ = D(UH)⊥, N− = R(UH)⊥.(2) D(H∗) = D(H) +N+ +N− と直和分解され,
D(H∗) � f = f0 + f+ + f−, f0 ∈ D(H), f± ∈ N±
とすれば
H∗f = Hf0 + if+ − if−
である.
証明. (1) D(UH) = R(H + i) であるから f ∈ D(UH)⊥ ⇐⇒ ((H + i)g, f) =0, ∀g ∈ D(H) ⇐⇒ (Hg, f) = (−ig, f) = (g, if), ∀g ∈ D(H) ⇐⇒ f ∈D(H∗), H∗f = if . また UH = (H − i)(H + i)−1 より R(UH) = R(H − i).よって R(UH)⊥ = R(H − i)⊥. 上と同様にしてこれは N− に等しい.f ∈ D(H∗) を
(H∗ + i)f = g + h, g ∈ D(UH), h ∈ D(UH)⊥ = N(H∗ − i)
1.7. 不足指数 21
と直交分解する. g ∈ D(UH) = R(H + i) だから g = (H + i)f0, f0 ∈ D(H)と書ける. H∗h = ih だから f+ = h/(2i) とおくと (H∗ + i)f+ = h である.よって
(H∗ + i)f = (H∗ + i)f0 + (H∗ + i)f+
であり, (H∗+i)(f−f0−f+) = 0. f− = f−f0−f+ とおけば f− ∈ N(H∗+i).分解の一意性を示す.
f0 + f+ + f− = 0, f0 ∈ D(H), f± ∈ N(H∗ ∓ i)
とすると 0 = (H∗ + i)(f0 + f+ + f−) = (H + i)f0 + 2if+. また (H + i)f0 ∈R(H + i) = D(UH), f+ ∈ N+ = D(UH)∗ だから (H + i)f0 = 0, f+ = 0.H + i は 1 to 1 だから f0 = 0. よって f− = 0.
系 6.4 H を対称閉作用素とするとき, H が自己共役であることとその Cayley変換 UH がユニタリーであることは同値.
証明.
H = H∗ ⇐⇒ D(H) = D(H∗)
⇐⇒ D(UH)⊥ = R(UH)⊥ = 0
⇐⇒ UH is unitary.
1.7 不足指数
H を densely defined closed symmetric operator とする.
n± = dimN(H∗ ∓ i)
とおき (n+, n−)を不足指数 (deficiency index)という. UH = (H−i)(H+i)−1 を H の Cayley 変換とすれば
n+ = dimD(UH)⊥ n− = dimR(UH)⊥
である. D(UH), R(UH) は closed であるから
(n+, n−) = (0, 0) ⇐⇒ UH is unitary.
対称作用素 H が極大対称とは
H ⊂ H ′, H ′ is symmetric =⇒ H = H ′
となること.
定理 7.1 H が極大対称 =⇒ H は closed で H = H∗∗.
22 第 1章 自己共役拡大の理論
証明. D(H) ⊂ D(H∗) より D(H∗) は dense. よって H∗∗ = (H∗)∗ が定義される. H ⊂ H∗∗ ⊂ H∗ であるから(これは次のようにして示される. H ⊂ H∗
より H∗ ⊃ H∗∗. u ∈ D(H) のとき (Hu, v) = (u,H∗v) ∀v ∈ D(H∗) だからu ∈ D(H∗∗) かつ H∗∗u = Hu. すなわち H ⊂ H∗∗) D(H∗∗) は dense. よって H∗∗∗ = (H∗∗)∗ が定義される. H∗∗ ⊂ H∗ より H∗∗∗ ⊃ H∗∗. よって H∗∗
は対称. また closed でもある(補題 2.2 (1)). H ⊂ H∗∗ で H が極大対称だ
から H = H∗∗. これより H は closed.
系 7.2 H ⊂ H ′, H が対称, H ′ が極大対称 =⇒ H∗∗ ⊂ H ′.
証明. H ⊂ H ′ より H∗ ⊃ (H ′)∗, H∗∗ ⊂ (H ′)∗∗. 定理 7.1 より H ′ = (H ′)∗∗.よって H∗∗ ⊂ H ′.
定理 7.3 自己共役作用素は極大対称.
証明. H ⊂ H ′ で H が自己共役, H ′ が対称とすると, H ⊂ H ′ ⊂ (H ′)∗ だから H = H∗ ⊃ (H ′)∗ ⊃ (H ′)∗∗. また (H ′)∗∗ ⊃ H ′ ⊃ H だから H = H ′.
系 7.4 H が対称, H∗ が自己共役 (H∗ = H∗∗), H ′ が H の極大対称な拡張
=⇒ H ′ = H∗.
証明. H が対称だから H∗ は H の拡大で, 定理 7.3 により極大対称. H ′ がH の極大対称な拡張なら系 7.3 より H ′ ⊃ H∗∗ = H∗. H∗ は自己共役だから極大対称. よって H ′ = H∗.
定義 7.5 H が対称で H∗ が自己共役のとき, H を本質的に自己共役であるという.
本質的に自己共役のとき, H の自己共役拡大は唯一である. 実際 H の自己
共役拡大を H ′ とすると H ′ は極大対称だから上の系より H ′ = H∗.
定理 7.6 H が対称閉作用素で不足指数が (m,n) とする.
m = m′ + p, n = n′ + p, m′, n′ ≥ 0, p > 0
とすれば H ⊂ H ′ で不足指数 (m′, n′) を持つ対称閉作用素 H ′ が存在する.証明. D(UH)⊥ = N(H∗ − i), R(UH)⊥ = N(H∗ + i) の完全正規直交系を
{ϕ1, · · · , ϕp, ϕp+1, · · · , ϕp+m′}, {ψ1, · · · , ψp, ψp+1, · · · , ψp+n′} とする. 作用素 V を ⎧⎪⎪⎨⎪⎪⎩
V x = UHx, x ∈ D(UH),
V (p∑
i=1
ciϕi) =p∑
i=1
ciψi
1.7. 不足指数 23
によって定義すると V は UH の拡張で等長. さらに R(1−V ) ⊃ R(1−UH).R(1 − UH) は dense だから R(1 − V ) も dense. このとき対称閉作用素 H ′
でその Cayley 変換が V になるものがただ一つ存在する. dimD(V )⊥ = m′,dimR(V )⊥ = n′ であるから, H ′ の不足指数は (m′, n′).
系 7.7 H が可分ヒルベルト空間上で定義された対称閉作用素で不足指数
(m,n) をもつとする. このとき
H が自己共役拡張をもつ⇐⇒ m = n.
証明. ⇐= は上の定理を用いて不足指数 (0, 0) の拡張を作ればそれが自己共役. =⇒ は H の自己共役拡張を H ′ とし H ′ の Cayley 変換を V とすれば
V はユニタリー. V は UH の拡大であるから, D(UH) を R(UH) にうつし,D(UH)⊥ を R(UH)⊥ に写す. よってそれらの次元は等しいから m = n.
系 7.8 対称閉作用素 H の不足指数が (m,n) のとき
H が極大対称⇐⇒ m = 0または n = 0
証明. =⇒ m,n 共に 0 でなければ定理 7.6 より H の真の対称拡大が存在
する. ⇐= m = 0 のとき D(UH) は全体だから H の対称拡大 H ′ に対してUH = UH′ . よって
H ′ = i(1 + UH′ )1 − UH′)−1 = i(1 + UH)(1 − UH)−1 = H.
n = 0 のときも同様.
定理 7.9 H が densely defined symmetric のとき, 以下は同値.(1) (H)∗ = H, i.e. H が自己共役 (2) H∗ ⊂ H∗∗, i.e. H∗ が対称(3) H∗∗ = H∗, i.e. H∗ が自己共役(4) H∗∗∗ = H∗∗, i.e. H∗∗ が自己共役
証明. (3) =⇒ (2) は OK.(2) =⇒ (3) を示す. H ⊂ H ⊂ H∗ だから H∗ ⊃ (H)∗ ⊃ H∗∗. (2) とあわせて H∗ = H∗∗. よって (2) と (3) は同値.
(3) =⇒ (4) を示す. H∗ = H∗∗ より H∗∗ = H∗∗∗ だから OK.(4) =⇒ (1) は定理 2.6. より.
よって本質的自己共役性の定義として上のどれをとってもよい. このときH の自己共役拡大はただ一つである.逆に対称作用 H の自己共役拡大が存在し, ただ一つなら, H の自己共役拡大は H である. 実際 H の自己共役拡大が存在するからには系 7.7 より不足指数は (n, n). n ≥ 1なら定理 7.6より自己共役拡大は一意でないから n = 0.このとき系 6.4 より H は自己共役
24 第 1章 自己共役拡大の理論
1.8 1階微分作用素
この節では微分作用素 −id/dx に境界条件を課したものの自己共役性を調べる.
1.8.1 有界区間のとき
I = (0, 2π) とし作用素 L はその定義域が
D(L) = {u ∈ H1(I);u(0) = u(2π) = 0}
であり, u ∈ D(L) に対して Lu = −iu′ として定義されるものとする.
補題 8.1 u, f ∈ L2(I) が (u, ϕ′) = −(f, ϕ), ∀ϕ ∈ C∞0 (I), を満たせば
u ∈ H1(I) で u′ = f .
証明. ε > 0 を十分小さくとり Iε = (ε, 2π − ε) とする. ρ(t) ∈ C∞0 (R) を∫ ∞
−∞ ρ(t)dt = 1, ρ(t) = 0, (|t| > 1), ととり ρε(t) = ρ(t/ε)/ε とおく. x ∈ I2ε
のとき y の函数とみて ρε(x− y) ∈ C∞0 (I) である.
d
dx
∫ 2π
0
u(y)ρε(x−y)dy = −∫ 2π
0
u(y)d
dyρε(x−y)dy =
∫ 2π
0
f(y)ρε(x−y)dy
となる. u(y), f(y) は y �= I のとき 0 として R 全体に延長しておけば, これは uε = ρε ∗ u とおくとき u′ε = −fε が Iε において成り立つことを意味す
る. δ > 0 を小さくとって固定する. uε → u in L2(I) であるから, ある点列 ε1 > ε2 > · · · → 0 に対して uεn → u a.e. on Iδ. また uεn → f in L2(Iδ)である. x0 ∈ Iδ を {uεn(x0)} が収束するように選び,
uεn(x) = uεn(x0) +∫ x
x0
u′εn(y)dy
において εn → 0 とすれば
u(x) = u(x0) +∫ x
x0
f(y)dy, x ∈ Iδ
となる. これより u(x) は区間 Iδ 上絶対連続で u′(x) = f(x). δ は任意に
小さくとれるから u(x) は I 上絶対連続で u′(x) = f(x) ∈ L2(I). よってu ∈ H1(I) である.
補題 8.2 (1) L は対称閉作用素.(2) D(L∗) = H1(I)(3) L の不足指数は (1, 1)
証明. (1) を示す. u, v ∈ D(L) のとき
−i∫ 2π
0
u′(x)v(x)dx = −i[u(x)v(x)]2π
0+ i
∫ 2π
0
u(x)v′(x)dx
1.8. 1階微分作用素 25
であるから (Lu, v) = (u, Lv) となり L は対称である. D(L) � un → u,Lun → f とする. ϕ ∈ C∞
0 (I) に対して (Lun, ϕ) = −i(u′n, ϕ) = i(un, ϕ′) に
おいて n → ∞ として (f, ϕ) = i(u, ϕ′). よって前補題より u ∈ H1(I) かつu′ = if . ϕ ∈ C1([0, 2π]) のとき
(u, ϕ′) =[u(x), ϕ(x)
]2π
0−
∫ 2π
0
u′(x)ϕ(x)dx
(2) で示すとおり D(L∗) = H1(I) であるから, 左辺 = i(u, L∗ϕ) = (Lu, ϕ).また右辺第2項 = i(Lu, ϕ). よって
[u(x), ϕ(x)
]2π
0= 0. ϕ(0), ϕ(1) を任意に
選んで u(0) = u(1) = 0. よって u ∈ D(L) となり, L は閉作用素.(2) を示す. v ∈ H1(I) のとき上と同様にして (Lu, v) = (u,−iv′), ∀u ∈
D(L), であるから v ∈ D(L∗) かつ Lv = −iv′ である. v ∈ D(L∗) のときL∗v = wとおくと, (Lu, v) = (u,w), ∀v ∈ D(L). これより特に ϕ ∈ C∞
0 (I)に対して −i(ϕ, v) = (ϕ,w). 補題 8.1 より v ∈ H1(I) であり, −iv′ = w = L∗vである.
(3) を示す. (L∗ − i)u = 0 のとき, u ∈ H1(I), u′ = −u. よって u = Ce−x.これより dimN(L∗ − i) = 1. 同様に dimN(L∗ + i) = 1
L の対称な拡大を決定しよう. ζ ∈ C, |ζ| = 1, に対し, 作用素 Lζ を
Lζu = −iu′, D(Lζ) = {u ∈ H1(I);u(2π) = ζu(0)}
と定義する. L ⊂ Lζ である.
補題 8.3 Lζ は自己共役である.
証明. u, v ∈ D(Lζ) のとき
−i∫ 2π
0
u′vdx = −i[u(x)v(x)]2π0 + i
∫ 2π
0
uvdx
で u(2π)v(2π) = ζu(0)ζv(0) = u(0)v(0) であるから (Lζu, v) = (u, Lζv) である.L ⊂ Lζ だから L∗
ζ ⊂ L∗ = H1(I). そこで v ∈ D(L∗ζ) のとき u ∈ D(Lζ)
に対して
−i∫ 2π
0
u′vdx = −i[u(x)v(x)]2π0 + i
∫ 2π
0
uv′dx
L∗ζv = L∗v = −iv′ だから
(Lζu, v) = −i[u(x)v(x)]2π0 + (u, L∗
ζv)
よって ζu(0)v(2π) − u(0)v(0) = 0. これが任意の u ∈ Lζ に対して成り立つ
から v(2π) = ζv(0) となり v ∈ D(Lζ) だから Lζ は自己共役.
定理 8.4 L の任意の対称な拡大 M で L �= M であるものは Lζ , |ζ| = 1, のどれかである.
26 第 1章 自己共役拡大の理論
証明. L ⊂ M より M ⊂ M∗ ⊂ L∗ だから D(M) ⊂ D(M∗) ⊂ D(L∗) =H1(I). よって u, v ∈ D(M) に対して
−i∫ 2π
0
u′vdx = −i[u(x)v(x)]2π0 + i
∫ 2π
0
uv′dx
(Mu, v) = (u,Mv) だから u(2π)v(2π) − u(0)v(0) = 0. D(L) �= D(M) だから ∃ψ ∈ D(M) \ D(L) s.t. ψ(0) �= 0 or ψ(2π) �= 0. u = v = ψ とと
れば |ψ(2π)|2 = |ψ(0)|2 �= 0 が分かる. ζ = ψ(0)/ψ(2π), v = ψ とれば
u(2π) = ζu(0) となり, D(M) ⊂ D(Lζ) である.u ∈ D(Lζ) とする. 定数 α を u(0) − αψ(0) = 0 ととって w(x) = u(x) −
αψ(x) とおくと w ∈ H1(I), w(0) = 0, かつ w(2π) = ζ(u(0) − αψ(0)) = 0だから w ∈ D(L) ⊂ D(M). よって u − αψ ∈ D(M) で ψ ∈ D(M) だからu ∈ D(M).
1.8.2 半無限区間のとき
I = (0,∞) とし, 作用素 L は
D(L) = {u ∈ H1(I);u(0) = 0}, Lu = −iu′
とする.
補題 8.5 (1) L は対称閉作用素.(2) D(L∗) = H1(I).(3) L の不足指数は (1, 0).
証明. D(L) � u, v をとれば
−i∫ X
0
u′vdx = −i[u(x)v(x)]X0 + i
∫ X
0
uv′dx
u(x)v(x) ∈ L1((0,∞)) だから lim infX→∞
|u(X)v(X)| = 0. よって適当な部分列
X1 < X2 < · · · → ∞ に対して u(Xn)v(Xn) → 0. これより
(Lu, v) = iu(0)v(0) + (u, Lv)
u(0) = 0 だから (Lu, v) = (u, Lv) となり, L は対称.補題 8.1 は I = (0,∞) でも成り立つ. これより D(L∗) ⊂ H1(I). 逆に
v ∈ H1(I) のとき u ∈ D(L) に対して
(Lu, v) = iu(0)v(0) + (u,−iv′) = (u,−iv′)
だから v ∈ D(L∗). よって D(L∗) = H1(I).L が閉作用素であることは補題 8.2 と同様.
1.8. 1階微分作用素 27
u ∈ D(L∗) が (L∗ − i)u = 0 を満たせば u′ + u = 0. よって u = Ce−x と
なり, dimN(L∗ − i) = 1. (L∗ + i)u = 0 を満たせば u′ = u より u = Cex で
u ∈ L2((0,∞)) だから u = 0. よって dimN(L∗ + i) = 0.よって L は極大対称で自己共役拡大をもたない.
1.8.3 直線全体のとき
D(L) = H1(R), Lu = −iu′
と定義する.
定理 8.6 L は自己共役.
証明. Exercise
29
関連図書
[AkhGr65] アヒエゼール・グラーズマン, ヒルベルト空間論, 共立出版
[Is04a] 磯崎 洋, 多体シュレーディンガー方程式, シュプリンガー現代数学シリーズ, シュプリンガー東京 (2004).
[Kaw75] 河田 龍夫, Fourier 解析, 産業図書 (1975).
[KoMa98] 小谷眞一, 俣野博, 微分方程式と固有関数展開, 岩波講座現代数学の基礎, 岩波書店 (1998).
[Kur80] 黒田成俊, 函数解析, 共立出版 (1980).
[Mi65] 溝畑 茂, 偏微分方程式論, 岩波書店 (1965).
[Yo66] K. Yosida, Functional Analysis, Springer-Verlag, Berlin (1966).
[Yo77] 吉田耕作, 積分方程式論 第2版, 岩波全書, 岩波書店 (1977).