平成16年度 - Minister of Economy, Trade and Industry...5 はじめに...

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平成17年3月 改訂版 平成16年度

Transcript of 平成16年度 - Minister of Economy, Trade and Industry...5 はじめに...

平成17年3月

改訂版

平成16年度

平成16年度経済産業省産業技術環境局リサイクル推進課委託事業 「循環ビジネス人材教育・循環ビジネスアドバイザー派遣事業」研修用テキスト

平成17年3月

  社団法人 産業環境管理協会

環 境 経 営 実 務 コ ー ス

Ⅱ 環境配慮型経営管理支援手法コース

ⅡA 環境マネジメントシステム/監査/パフォーマンス評価 改訂版

3

はじめに

我が国企業における環境経営の状況をみると、ISO 14001認証取得事業所の増加、環境報告書作成企業の拡大、自主的な環境目標の設定、環境パフォーマンス等の情報公開、環境に配慮した製品・サービスの提供など民間企業が独自に環境保全に係る取り組みを実施する例が多くなってきているものの、これらの取り組みは一部の企業にとどまっているのが現状である。特に、中小企業等は、昨今の国際競争激化による大きな打撃を受けている中で、社会・取引先・海外から環境問題への対応、環境経営の推進を求められているが、環境経営を担う人材の欠如や資金的問題から、具体的実施に至らないのが実状である。そこで、中小企業等の経営者層、管理者層及び実務者層を対象に、環境経営の理解促進を図り、その実践的展開に資するための情報提供の一環として、環境経営の実践に有効な環境管理手法等の研修を全国的に展開するものである。この研修は、環境経営の実践に有効な環境管理手法等の概要を、経営者及び管理者等に、講義形式で理解していただくための“環境経営概論コース”と、環境経営実務に有効な環境経営手法類を実務者に、講義形式及び演習形式(一部)で学んでいただくための“環境経営実務コース”から構成されている。本書は、これらの研修におけるテキストとして、さらには、事業活動に伴う環境経営上の問題の予防や解決に役立てていただくための参考書として活用できるように、実用性と分かりやすさに留意して執筆・編集した、以下の全10巻から成る報告書の一部である。(1)環境経営概論コース(全1巻)

(2)環境経営実務コース(全9巻)

①環境リスク管理コース

○有害化学物質管理 ○リサイクルシステムと法整備

○環境・廃棄物/リサイクル関連法規 ○環境リスク管理の実務

②環境配慮型経営管理支援手法コース

○環境マネジメントシステム/監査/パフォーマンス評価 ○環境管理会計

○環境報告書作成実務

③環境適合製品・サービス支援手法コース

○ライフサイクルアセスメント ○環境適合設計(DfE)/製品アセスメント

本書の作成にご協力いただいた監修者、執筆者、その他関係者の皆様に、さらに、ご指導ご支援を下さった経済産業省に深謝する次第である。本書をはじめとするこれらの各報告書が広く有効に活用され、中小企業等における環境経営の促進支援という所期の目的を果たせることを期待している。

平成17年3月

社団法人産業環境管理協会

会長 南 直哉

4

■英字略語

 略語 EA ECI EL EMP EMS EPE EPI

EVABAT

LCA MPI OPI PDCA

          英文 Environmental Audit Environmental Condition Indicators Environmental Label Environmental Management Programme Environmental Management System Environmental Performance Evaluation Environmental Performance Indicators Economically Viable Application of Best Available Techniques

Life Cycle Assessment Management Performance Indicators Operational Performance Indicators Plan, Do, Check, Act

       日本語 環境監査 環境状態指標 環境ラベル 環境マネジメントプログラム 環境マネジメントシステム 環境パフォーマンス評価 環境パフォーマンス指標

経済的に実施可能な最良利用可能技法

ライフサイクルアセスメント マネジメントパフォーマンス指標 操業パフォーマンス指標

■環境マネジメント関連JIS            (2005年3月現在)

発行年

2004 2004 2003 2002 1999 2000 2000 2000 2000

1997

1999

2002 2002 1998

     JIS番号 環境マネジメント:原則・要求事項 JIS Q 14001 JIS Q 14004 監査 JIS Q 19011 EASO JIS Q 14015 環境ラベル及び宣言 JIS Q 14020 JIS Q 14021 JIS Q 14024 TR Q 0003 環境パフォーマンス評価 JIS Q 14031 ライフサイクルアセスメント JIS Q 14040

JIS Q 14041

JIS Q 14042 JIS Q 14043 環境側面 JIS Q 0064

              タイトル

環境マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引 環境マネジメントシステム-原則、システム及び支援技法の一般指針 品質及び/又は環境マネジメントシステム監査のための指針 環境マネジメント-用地及び組織の環境アセスメント(EASO) 環境ラベル及び宣言-一般原則 環境ラベル及び宣言-自己宣言による環境主張(タイプII 環境ラベル表示) 環境ラベル及び宣言-タイプ I 環境ラベル表示-原則及び手続き 環境ラベル及び宣言-タイプ III 環境宣言 環境マネジメント-環境パフォーマンス評価-指針

環境マネジメント-ライフサイクルアセスメント-原則及び枠組み 環境マネジメント-ライフサイクルアセスメント-目的及び調査範囲の設定並びにインベントリ分析 環境マネジメント-ライフサイクルアセスメント-ライフサイクル影響評価 環境マネジメント-ライフサイクルアセスメント-ライフサイクル解釈 製品規格に環境側面を導入するための指針

《改訂の概要》環境マネジメントシステム規格のISO 14001は、2004年11月に改定されました。本テキスト

では、この改定を反映させるために、Chapter 1 の見直しを行いました。Chapter 2以降は、初版(平成16年1月発行)からの変更はありません。

5

はじめに

英字略語/環境マネジメント関連JIS

本書のあらまし

環境マネジメントシステム(EMS) 1

環境マネジメントシステムの概要 1

ISO 14000シリーズ発行の経緯と全体構成 1

(1)発行経緯 1

(2)全体構成 2

ISO 14001環境マネジメントシステムの概要 2

(1)環境マネジメントシステムのモデル図 2

(2)ISO 14001の特徴 3

(3)ISO 14001:2004の改訂概要 3

JIS Q 14001要求事項の解説及び環境マネジメントシステム構築・運用上のポイント 4

JIS Q 14001要求事項の概要 4

環境マネジメントシステムの要求事項の解説及び

EMS構築・運用上のポイント 5

環境マネジメントシステム構築の実際 41

文書体系とJIS Q 14001要求事項の概要 41

(1) 環境マネジメントマニュアル 42

(2) 規程・手順書 42

(3) 適用範囲 42

環境マネジメントマニュアルの例 43

(1) 目的 44

(2) 適用範囲 44

(3) 定義 44

(4) 環境マネジメントシステム要求事項 44

Chapter 1

1.1

1.1.1

1.1.2

1.2

1.2.1

1.2.2

1.3

1.3.1

1.3.2

Con

tent

s 目次環境経営実務コース:ⅠⅠA 環境マネジメントシステム/監査/パフォーマンス評価 改訂版

6

環境経営実務コース:ⅠⅠA 環境マネジメントシステム/監査/パフォーマンス評価 改訂版

環境マネジメントシステム監査 65

環境マネジメントシステム監査の目的と定義 65

(1)一般的定義 65

(2)環境マネジメントシステム(EMS)監査の定義 65

(3)監査の種類 65

監査の関係者 67

(1)監査依頼者の役割 67

(2)監査プログラム管理責任者の役割 67

(3)監査員の役割 67

(4)被監査者の役割 69

監査プログラムの管理 71

(1)プロセスフロー 71

(2)監査プログラム管理責任者 71

(3)監査プログラムの目的 72

(4)監査プログラムの範囲 73

(5)監査基準 73

(6)監査プログラムの手順 74

(7)監査プログラムの実施 74

(8)監査プログラムの記録 74

(9)監査プログラムの監視及びレビュー 75

監査活動 76

監査活動の概要 76

監査の開始 77

(1)監査チ-ムリーダーの指名 77

(2)目的、範囲及び基準の明確化 77

(3)監査の実施可能性の判定 77

(4)監査チームの選定 77

(5)被監査者との打ち合わせ 78

文書レビューの実施 78

(1)文書レビューの考慮事項 78

(2)情報の例 78

現地監査活動の準備 79

(1)監査計画の作成 79

Chapter 2

2.1

2.2

2.3

2.4

2.4.1

2.4.2

2.4.3

2.4.4

7

目 次

(2)監査計画の内容 79

(3)作業文書の作成 79

(4)チェックリスト 80

現地監査活動の実施 80

(1)初回会議の開催 80

(2)初回会議の内容 81

(3)情報の収集及び検証 81

(4)情報収集方法 81

(5)情報収集に当たっての注意点 82

(6)運用現場における情報収集 82

(7)面談における注意点 83

(8)面談技術 83

(9)現場観察における注意点 84

(10)文書監査における注意点 84

監査所見の作成 84

監査結論の作成 85

(1)監査チーム内打ち合わせ 85

(2)監査結論作成内容 85

最終会議の開催 85

(1)目的 85

(2)最終会議要領 86

監査報告書 86

(1)目的 86

(2)作成 86

(3)内容 86

(4)承認と監査の完了 87

監査のフォローアップ 87

(1)是正処置 87

(2)フォローアップ監査 87

監査員の力量 88

個人的特質 88

知識及び技能 88

(1)監査の原則、手順及び技法 88

(2)EMS及び基準文書 89

(3)組織の状況 89

(4)法律、規制及びその他の要求事項 89

(5)EMSの方法及び手法 89

2.4.5

2.4.6

2.4.7

2.4.8

2.4.9

2.4.10

2.5

2.5.1

2.5.2

8

(6)環境科学及び環境技術 90

(7)運用の技術的側面及び環境側面 90

(8)監査チームリーダーに必要な知識及び技能 90

環境パフォーマンス評価(EPE) 91

環境パフォーマンス評価の概要 91

環境パフォーマンス評価の定義 91

(1)EPEの定義:その1 91

(2)EPEの定義:その2 91

環境パフォーマンス評価の適用範囲 92

(1)EMSにおけるEPE 92

(2)EPEの対象 92

(3)EPEの手順 92

環境パフォーマンス評価のマネジメント用途 92

(1)望ましいEPE 92

(2)EPEの効用 93

環境パフォーマンス評価手法の概要 94

(1)EPEモデル 94

(2)EPE業務フロー 94

(3)各ステップの作業内容 95

(4)運用の留意点 95

環境パフォーマンス評価の運用 96

環境パフォーマンス評価の計画 96

(1)計画策定に当たって考慮すべき事項 96

(2)効果的に運用するためのポイント 96

(3)推進体制 97

(4)著しい環境側面の特定 97

(5)著しい環境側面の特定方法の例 98

(6)環境パフォーマンス基準 98

(7)環境パフォーマンス基準設定に当たっての情報源 98

(8)情報の処理 98

環境パフォーマンス評価指標 99

(1)EPE指標の目的 99

Chapter 3

3.1

3.1.1

3.1.2

3.1.3

3.1.4

3.2

3.2.1

3.2.2

環境経営実務コース:ⅠⅠA 環境マネジメントシステム/監査/パフォーマンス評価 改訂版

9

(2)EPE指標の種類 99

(3)ECI 99

(4)EPI 99

(5)MPIとOPIの相互関係 100

(6)EPE指標作成の考え方 100

(7)EPE指標選択における考慮事項 100

(8)EPE指標に用いるデータ特性の例 100

(9)EPE指標の例 101

(10)EPE指標の選択 101

(11)EPIの確定 112

(12)判定基準 113

データの収集と評価 115

(1)データ及び情報の使用手順 115

(2)データ収集の基本 115

(3)データ収集源 115

(4)データの解析 116

(5)情報の評価 116

(6)報告、コミュニケーション 117

見直し及び改善 118

(1)目的 118

(2)見直しの内容 118

(3)手順ごとの見直し内容 119

(4)EPEの改善例 121

索引 123

3.2.3

3.2.4

目 次

11

マネジメントレビュー

12

1

環境問題と解決の努力――歴史・現状・展望――

Part

1

1.1 環境マネジメントシステムの概要

環境マネジメントシステム(EMS)

Chapter

1

・「 ISO 9000シリーズ(品質管理及び品質保証規格)」が発行される。後に ISO 14000 シリーズと密接な関係を持つことになる。

・「地球環境憲章」(経団連)、「持続可能な開発のためのビジネス憲章」(国際商工会議所)が公 表される。 ・BCSD(持続的開発のための経済人会議)が ISOに環境マネジメントの規格化を要請。 ・ISO/IEC/SAGE(環境に関する戦略諮問グループ)設置される。

・「BS 7750」発表される(BS7750:ISO 14000シリーズの原典ともいわれるイギリス の環境管理規格)。 ・国内では「環境にやさしい企業行動指針(環境庁)」「環境に関するボランタリープラン(通産省)」 が公表される。 ・UNCED(国連環境開発会議)の開催(いわゆる“地球サミット”)  この会議で[アジェンダ21」が合意された。

・ISO/TC207の設置(ISO 14000シリーズ作りの実質的スタート)

・1993年に制定されたEMAS施行される(EMAS:ヨーロッパ環境管理・監査計画。EU加盟 国内でのみ適用される)。

・ISO 14001、14004、14010、14011、14012の合計五つの規格が ISO 14000シリ ーズの第1弾として発行される。 ・国内ではJIS Q 14000シリーズが制定される(ISO 14000シリーズのJIS化) ・ISO 14001認証制度が正式にスタートした(制度の仮運用が1995年2月から始まっていた)。

・TC207第6回総会がサンフランシスコで開催され、この時点で、ISO 14000シリーズ開  発はほぼ完了したとされている。

・環境ラベル、ライフサイクルアセスメント(LCA)、環境パフォーマンス評価など一連の ISO  14000シリーズが発行されるとともにJIS化される。 ・2000年12月 ISO 9000シリーズが、ISO 14001との両立性向上も含めて大幅改正される。

・ISO 19011(品質及び/又は環境マネジメントシステム監査のための指針)の発行 (2003年2月JIS化)

・ISO 14001、14004第2版の発行(2004年12月JIS化)

年 月 動  き

1987年3月

1991年4月

6月 7月

1992年4月

6月

1993年6月

1995年4月

1996年9~10月

 10月

1998年6月

1998年~     2002年春

2002年10月

2004年11月

(1)発行経緯ISO 14000シリーズの発行経緯を表1.1-1に示す。

■表1.1-1 ISO 14000シリーズをめぐる経緯

1.1.1 ISO 14000シリーズ発行の経緯と全体構成

2

1.1

(2)全体構成ISO 14000シリーズの全体構成を図1.1-1に示す

(1)環境マネジメントシステムのモデル図EMS:EnvironmentalManagementSystem

EPE:EnvironmentalPerformanceEvaluation

EA:EnvironmentalAudit

LCA:Life CycleAssessment

EL:EnvironmentalLabel

■図1.1-2 環境マネジメントシステムのモデル図

■図1.1-1 環境マネジメント規格のロードマップ

1.1.2 ISO 14001環境マネジメントシステムの概要

継続的改善

4.1 一般要求事項

4.2 環境方針

4.3 計画(P) ・環境側面 ・法的及びその他の  要求事項 ・目的、目標及び  実施計画

4.4 実施及び運用(D) ・資源、役割、責任及  び権限 ・力量、教育訓練及び  自覚 ・コミュニケーション ・文書類 ・文書管理 ・運用管理 ・緊急事態への準備及  び対応

4.5 点検(C) ・監視及び測定 ・順守評価 ・不適合並びに  是正処置及び  予防処置 ・記録の管理 ・内部監査

4.6 マネジメント   レビュー(A)

(注)4.1などと書かれた番号は ISO 14001及びJISQ14001の要求事項の番号

評価と監査の手法の 規格 支援

支援

支援 支援

支援

支援

支援 環境マネジメント システム(EMS) 製品中心の支援規格

環境パフォーマンス評価    (EPE)  14031 環境パフォー   マンス評価・指針

     環境監査(EA) 19011 品質及び/又は環境マネジメ     ントシステム監査のための指     針 14015 用地の環境アセスメント

14004 環境マネ ジメントシステム -原則、システム、 及び支援技法の一 般指針

ライフサイクルアセスメント (LCA) 14040 原則 14041 インベントリ分析 14042 影響評価 14043 解釈

14001 環境マネ ジメントシステム 要求事項及び利用 の手引

環境ラベル(EL) 14020 一般原則 14021 自己宣言(タイプⅠⅠ) 14024 環境ラベル表示(タイプⅠ) 14025 環境宣言(タイプⅠⅠⅠ   )

(注)14001~14043は ISOの規格番号

3

EVABAT:Economically ViableApplication of BestAvailableTechniques

環境マネジメントシステム(EMS)の概要を図1.1-2に示す。

(2)ISO 14001の特徴a.EMSの要求事項を扱った唯一の国際規格b.業種、規模、地域を問わずどのような組織にでも適用可能c.審査登録にも自己宣言にも、また規格の活用だけでも使用可能d.PDCAサイクルによりEMSのシステムモデルを構成e.大きな環境影響の原因である著しい環境側面を優先的に管理f .環境上の緊急事態・事故にあらかじめ備える仕組みづくりg.システムの成功に全員参加と共に、特にトップマネジメントの関与を重要視

h.適切で経済的に実施可能な、最良利用可能技法(EVABAT)の適用を推奨

(3)ISO 14001:2004の改訂概要改訂のコンセプトは、①要求事項の明確化、②ISO 9001との両立性向上の2点であり、大幅な変更を意図したものではない。しかし、これに伴い必然的に規格解釈の幅が狭まったり、強化された要求事項があるので注意が必要である。要求事項の明確化では、例えばEMSの対象とすべき環境側面について表現が変更されている。「4.3.1 環境側面」などで、1996年版の「組織が管理でき、かつ影響が生じると思われる、活動、製品又はサービスの環境側面」が「活動、製品及びサービスについて組織が管理できる環境側面、及び組織が影響を及ぼすことができる環境側面」と誤解を招かない表現に改められた。規格の意図に変化はない。ISO 9001との両立性向上では、規格全体で両立性の向上が図られているが、特に「4.4.4 文書類」、「4.4.5 文書管理」、「4.5.3 不適合並びに是正処置及び予防処置」、「4.5.4 記録の管理」、「4.5.5 内部監査」及び「4.6 マネジメントレビュー」で両立性がかなり向上した。

環境マネジメントシステムの概要Chapter

1環境マネジメントシステム

4

1.2

1.2.1 JIS Q 14001要求事項の概要

1.2 JIS Q 14001要求事項の解説及び環境マネジメントシステム構築・運用上のポイント

番 号

1 2 3 4  4.1  4.2  4.3   4.3.1   4.3.2   4.3.3  4.4   4.4.1   4.4.2   4.4.3   4.4.4   4.4.5   4.4.6   4.4.7  4.5   4.5.1   4.5.2   4.5.3   4.5.4   4.5.5  4.6 附属書A (参考) 附属書B (参考)

序文 適用範囲 引用規格 用語及び定義 環境マネジメントシステム要求事項 一般要求事項 環境方針 計画 環境側面 法的及びその他の要求事項 目的、目標及び実施計画 実施及び運用 資源、役割、責任及び権限 力量、教育訓練及び自覚 コミュニケーション 文書類 文書管理 運用管理 緊急事態への準備及び対応 点検 監視及び測定 順守評価 不適合並びに是正処置及び予防処置 記録の管理 内部監査 マネジメントレビュー この規格の利用手引 JIS Q 14001:2004とJIS Q 9001:2000との対応

項   目 要  求  事  項 

EMSの確立、文書化、実施、維持、継続的改善。EMSの適用範囲を定め、文書化 トップマネジメントが作成、文書化し、EMSの適用範囲内にいるすべての人に周知し、組織外へ公表 環境側面を特定し、著しい環境側面を決定する手順を確立。著しい環境側面をEMS全体で考慮に入れる 法的及びその他の要求事項を特定し、参照できる手順の確立 著しい環境側面、法的及びその他の要求事項を考慮に入れて目的・目標を設定。目的・目標を達成するための実施計画を策定 EMS上の役割・責任・権限を定め、文書化し、周知。トップは管理責任者を任命 重要な作業に携わる人には力量を持たせ、必要のある人に教育訓練を実施し、すべての人に自覚のための教育を実施 組織内外の環境に関するコミュニケーションの仕組みづくり EMSに必要な記録を含む文書を規定 必要な文書の適切な版が必要な部署で活用できる文書管理の手順を確立 著しい環境側面に伴う運用が方針・目的・目標から逸脱しないように運用を管理 定常時とは別に、潜在する緊急事態・事故に予め備える仕組みづくり 著しい環境側面に関連する運用を中心に監視・測定する手順を確立 法的及びその他の要求事項の順守を評価する手順を確立 顕在する不適合の修正、緩和、原因を除去する是正処置と、潜在する不適合の処置の必要性評価をし、発生を防ぐ予防処置をとる手順の確立 環境記録を管理する手順の確立 EMSの内部監査について監査プログラムと監査手順を確立 トップがEMSをレビューして必要な改善のための指示を実施

■表1.2-1 EMSの要求事項の概要

5

[4.1]一般要求事項(注1)

○JIS Q 14001は、「組織」(支店、工場や全社など独自の機能及び管理体制を持つ単位をいい、基本的には環境マネジメントシステム(EMS)を構築する範囲になる)が「継続的改善」を実行するために、EMS を確立し、文書化し、実施し、維持するという考え方が基本になっている。EMS を実施し、あるいは改善することによって、必ずしも環境への有害な影響を直ちに低減させることにはならないかもしれないが、結果的に環境パフォーマンスが改善されることを狙っている。○EMSは、システムの継続的改善を達成するために、「計画(Plan)、実施(Do)、点検(Check)、レビュー(Act)」(PDCA)の体系化された動的な循環プロセスである。継続的改善の程度と範囲は、経済的その他の状況に照らして、組織自身が決めればよい。○「文書化し」は、EMSの決め事をすべて文書化することを要求しているわけではない。規格が要求する文書と、加えて組織が必要と判断した文書があればよい。○規格の要求事項をどのように満たすかは組織が決めることである。4.2項以降の要求事項に従って、EMSが構築されていればよいが、特に組織の裁量にまかされている部分について、どの範囲を管理するのか決めることが重要である。例えば、「組織が影響を及ぼすことができる環境側面」の範囲や、「組織が同意するその他の要求事項」の範囲などである。

○EMSの適用範囲も、組織自身が決めて文書化すればよい。適用範囲は通常、敷地など物理的境界、組織機能の境界、人の範囲などで示される。そして、決められた適用範囲内にある活動、製品及びサービスの該当するすべてが適用対象となる。

2)組織は、その環境マネジメントシステムの適用範囲を定め、文

書化すること。

1)組織は、この規格の要求事項に従って、環境マネジメントシス

テムを確立し、文書化し、実施し、維持し、継続的に改善し、

どのようにしてこれらの要求事項を満たすかを決定すること。

(注1)本項の各見出しの番号は、JIS Q14001の見出しの番号を使用しています。

JIS Q 14001要求事項の解説及び環境マネジメントシステム構築・運用上のポイントChapter

1環境マネジメントシステム

1.2.2 環境マネジメントシステムの要求事項の解説及びEMS構築・運用上のポイント

6

1.2

○EMSの範囲を全社とするのか、支店や工場など事業所単位などとするのかは、組織の判断である。全社であれば、一つの環境方針の下で全社を統括できトップの意向が浸透しやすい、審査登録にかかる料金も安くなることが期待できる。一方、事業所単位であれば、事業所ごとに見合ったEMSを構築できる、教育訓練やコミュニケーションも事業所ごとの方が実施しやすいことが考えられる。いずれにせよ、無理のないシステムを構築することが肝要である。

[4.2]環境方針

○EMSとは、環境方針を達成するため、体系的に実行する仕組みのことである。環境方針は、初期環境レビュー(EMS構築前の現状調査)の結果を反映させて、組織の活動、製品、サービスによる環境パフォーマンス(環境実績)を改善するよう、トップマネジメント(組織のシステム構築範囲の経営層クラスの者が、複数で構成してもかまわない)が作成・宣言し、その達成状況や周囲及び社会的状況の変化に対応して見直していく。この環境方針においてトップマネジメントが誓約した事項を実現するためのEMSが構築されるはずである。環境方針は単なるスローガンではない。EMSでは、最も重要な条項の一つである。○環境方針は、この規格では唯一外部への公開を要求されている事項である。従業員を含めて多くの利害関係者が見る機会があるので、だれもが理解できるよう、明瞭な表現である事が望ましい。○環境方針は自組織の環境に対する姿勢を積極的に主張するものであるから、JIS Q 14001が要求している下記の事項について、より踏み込んだ内容・表現を工夫するとよい。○環境方針は、トップマネジメントが定めることを要求されているが、必ずしも作成された環境方針にトップマネジメントの署名を入れなければならないわけではない。文書管理の仕組みの中で、トップマネジメントが作成したことが明確になっていれば、それでもよい。○「確実にすること」は、下記に記載する内容が環境方針に関して確実に実行できる仕組みを要求している。

3)トップマネジメントは、組織の環境方針を定め、環境マネジメ

ントシステムの定められた適用範囲の中で、環境方針が次の事

項を満たすことを確実にすること。

7

JIS Q 14001要求事項の解説及び環境マネジメントシステム構築・運用上のポイントChapter

1環境マネジメントシステム

○環境方針が、本項に照らして適切に記述されていることを要求している。組織の事業内容や規模、及び現状調査において把握した環境影響(著しい環境側面)を考慮した内容の環境方針であることが必要である。従って、他組織とは違う、自組織らしい独自の環境方針でなければならない。また品質方針やその他の方針と矛盾しないように留意することが必要である。○背伸びをした内容や組織の管理実力に照らしてレベルの低すぎる内容(特に後述の目的・目標について)は、避ける方がよい。

○継続的改善と汚染の予防に取り組むというトップマネジメントによる誓約を環境方針に含むことを要求している。○EMSは繰り返し改善していくことが必要である。従って改善を継続する意志を明示しなければならない。ここで注意しなければならないことは、JIS Q 14001はシステム規格なので、継続的改善の直接の対象はシステムの改善をさし、これを通じて環境パフォーマンスの改善を達成しようということである。システムの向上を通じて、環境パフォーマンスの改善に反映されることを期待するというのが、JIS Q 14001の基本的な考え方である。○汚染の予防では、できるだけ作業の上工程、例えば設計段階や、原材料の選択・低減あるいは工程への供給段階などで汚染を少なくする方法を検討することが重要である。自社のみで問題を解決するのではなく、原材料などの供給先と相談して対策を検討すると、両者にとって利益の得られる場合がある。なお、JIS Q 14001でいう汚染の予防は、発生源を絶つような未然防止に加えて、リサイクルなど排出されたものの処置を含めた広い定義となっている。○下記の環境目的・目標の枠組みを記述することによっても、汚染の予防のコミットメントを含んだと解することもできる。

b.継続的改善及び汚染の予防に関するコミットメントを含む。

a.組織の活動、製品及びサービスの、性質、規模及び環境

影響に対して適切である。

8

○組織に適用される法的及びその他の要求事項をトップマネジメントが順守する誓約を環境方針に含むことを要求している。○法令や条例、自治体との協定あるいはその他の外部からの要求事項などが対象になる。法規制よりもさらにレベルの高い自主基準を自ら設定する場合には、これもその他の要求事項となる。

○環境目的・目標を設定し、見直しをすることの枠組みを環境方針において与えることを要求している。○枠組みとは、具体的な環境目的・目標を定める基礎情報となる記述のことである。後述の具体的な環境目的・目標につながるようなある程度具体的な内容にすることが必要である。目的・目標の枠組みの例としては、環境負荷の少ない生産、歩留まりの向上、省資源・省エネルギーへの取り組み、廃棄物排出量の削減やリサイクル、環境負荷の少ない製品の開発などが挙げられる。また、枠組みを、環境方針を達成するうえで環境目的・目標を活用することの記述ととらえる解釈もある。○環境目的・目標は、「[4.3.3]目的、目標及び実施計画」の項で述べるように「環境方針と整合」していなければならない。例えば、環境方針に「産業廃棄物排出量の削減」に取り組むとあるのに、環境目的・目標にこれに関連する内容が全くないようでは整合しているとはいえない。

○この内容が確実に実行できる仕組みを要求している。環境方針に記載されている必要はないが、記載してもかまわない。○環境方針は文書化され、文書として「4.4.5 文書管理」の手順によって最新版管理されることになる。○環境方針はトップマネジメントによる誓約が含まれている。EMSは環

e.文書化され、実行され、維持される。

d.環境目的及び目標の設定及びレビューのための枠組みを

与える。

c.組織の環境側面に関係して適用可能な法的要求事項及び組

織が同意するその他の要求事項を順守するコミットメント

を含む。

1.2

9

境方針に書かれている内容が実行されるシステムとなっているはずである。○「維持する」という用語には、①同じ状態を保つ、②状況の変化に応じて更新してその働きを維持する、の2つの意味が含まれている。つまり、一度作成した環境方針を同じ状態で保つだけでなく、組織内の事情や社会状況に変更があったときには、環境方針に必要な手を加えて、最新のものとすることが必要である。

○環境方針を周知することが確実に実行できる仕組みを要求している。環境方針に記載されている必要はないが、記載してもかまわない。○働いている人は、EMS活動の基本である環境方針を理解していることが必要である。周知の対象はEMSの適用範囲内で働く「組織で働くすべての人」又は「組織のために働くすべての人」である。前者は、組織に所属して働く役員や従業員など、後者は、組織に所属して働く役員や従業員に加え、同じEMS内で働く協力会社の社員や派遣社員なども対象になる。例えば、工場内で構内外注としてある工程を協力会社にまかせているケースや、会社や研究所などで派遣社員が社員と一緒に働いているケースなどは、後者に該当する。ただし、EMSの適用範囲内で働く人が対象であるので、協力会社の社員すべてが対象になるわけではない。また、附属書A.1には「請負者への周知は、方針の声明そのものでなくとも、例えば規則、指令、手順などに代えることができ、方針の該当する部分だけを含む形でもよい」とあるように、周知の方法は従業員などと同じである必要はない。

○環境方針は一般の人が入手可能であることが確実に実行できる仕組みを要求している。環境方針に記載されている必要はないが、記載してもかまわない。○例えば、利害関係者から環境方針を入手したいと要求があったときに、組織内で定めた手順に従って、環境方針を公開することが必要である。

g.一般の人々が入手可能である。

f.組織で働く又は組織のために働くすべての人に周知される。

JIS Q 14001要求事項の解説及び環境マネジメントシステム構築・運用上のポイントChapter

1環境マネジメントシステム

10

[4.3]計画

[4.3.1]環境側面

○EMSの適用範囲内にある活動、製品及びサービスの該当するすべてについて、組織が何らかの管理ができる範囲内の環境側面を特定する。次にこれらの中から「著しい環境側面」を決定する。「著しい環境側面」を決定する手順を通常、環境影響評価という。環境影響評価では、環境側面が環境に及ぼす影響の大きさを判定し、環境影響の大きい側面から順位づけをする。その結果から、組織が定める一定の基準を用いて、「著しい環境側面」を決定する。○『「活動」「製品」「サービス」についての環境側面』については、JIS Q14001には「活動」「製品」「サービス」の用語の定義がないので、組織が自ら定義する。一つの考え方として、「活動の環境側面」は、事業活動(製品を作る活動、サービスを準備し、提供する活動など)を行っている際に環境影響が生じる原因としての環境側面、「製品の環境側面」は、組織が提供する製品が流通し、顧客が使用し、廃棄される際に環境影響が生じる原因としての環境側面、「サービスの環境側面」は、組織が提供するサービスが顧客に伝達され、使用され、完了する際に環境影響が生じる原因としての環境側面などと考えることもできる。○前述のEMSの適用範囲内にある活動、製品及びサービスの該当するすべてについて、組織が管理できる環境側面及び組織が影響を及ぼすことができる環境側面が対象となる。○「組織が管理できる環境側面」は、組織が行うと決めればできること、つまり100%管理下にあるものである。一方、「組織が影響を及ぼすことができる環境側面」は、組織の100%管理下にあるわけではないが、組織が客観的に見て何らかの影響を及ぼすことができると判断できる範囲のものを指す。とくに、組織が用いる物品(購入品)及びサービス(委託・外注作業)や組織が提供する製品及びサービスなどに多くある。例えば、部品を納入する委託業者のトラックが排出する排気ガスについ

4)組織は、次の事項にかかわる手順を確立し、実施し、維持する

こと。

a.環境マネジメントシステムの定められた適用範囲の中で、

活動、製品及びサービスについて組織が管理できる環境

側面及び組織が影響を及ぼすことができる環境側面を特

定する。その際には、計画された若しくは新規の開発、

又は新規の若しくは変更された活動、製品及びサービス

も考慮に入れる。

1.2

11

JIS Q 14001要求事項の解説及び環境マネジメントシステム構築・運用上のポイントChapter

1環境マネジメントシステム

て、製品の搬入時にアイドリングストップの励行を委託業者に依頼することで間接的に影響を及ぼす、購入品についてグリーン購入を通じて購入先の製品の選択について影響を及ぼす、設計段階で顧客が自動車を使用する段階を想定して、燃費のよいエンジンを開発して搭載することで、顧客が同一距離を走った場合でも排気ガスの量を減らすことについて影響を及ぼす、などである。○本社だけでEMSを構築する場合、本社のオフィスに関する「紙、ゴミ、電気」の環境側面だけが対象であることはまずない。本社としてEMS外となる支店や工場、また関連会社に環境に関係する指示や連絡をすることで影響を及ぼすことができる環境側面があるはずである。○ JIS Q 14001の環境影響は、有害なものに限らず有益なものも扱っている。そこで、環境影響の原因である環境側面にも、「有益な(プラスの)環境側面」がある。例えば、製品の長寿命化設計を実施する、環境負荷のより少ない物品を優先的に調達する、輸送効率の向上によりトラックの運行距離を削減する、省エネルギー効果の高い住宅販売に注力する、環境意識向上のための地元自治会向けイベントを開催する、などさまざまなものがあり得る。組織の本来業務の中で、これら種々の環境配慮をしながら業務を進めているものを顕在化させると、「有益な環境側面」が具体的に見えてくる。○環境影響評価においては、有益な環境側面と有害な環境側面を別の評価基準で評価する方がよい。方法は、合理的であればどのような方法でもかまわない。JIS Q 14031(環境マネジメント-環境パフォーマンス評価・指針)が参考になる。○組織の活動における環境側面を抽出する場合には、次の事項を考慮して行うとよい(JIS Q 14001-付属書A.3.1に記載)。a.大気への放出b.水への排出c.土地への排出d.原材料及び天然資源の使用e.エネルギーの使用f .放出エネルギー、例えば、熱、放射、振動g.廃棄物及び副産物h.物理的属性、例えば、大きさ、形、色、外観

○組織が影響を及ぼすことができる環境側面については、次の事項を考慮するとよい(JIS Q 14001-付属書A.3.1に記載)。設計及び開発製造プロセス

(注1)同法の2000年 6 月改正により、法律名が「資源の有効な利用の促進に関する法律」と変更されています。

12

包装及び輸送請負者及び供給者の、環境パフォーマンス及び業務慣行廃棄物管理原材料及び天然資源の採取及び運搬製品の、流通、使用及び使用後の処理野生生物及び生物多様性

○EMSの中核となる著しい環境側面を決定する要求事項である。「環境に著しい影響を与える可能性のある側面」とは、いま現在は環境影響を与えていないが、将来影響を与える可能性のあるものを言っている。通常の状態では発生しないが緊急事態に発生する可能性のあるもの、例えば油送管の亀裂による油漏れ、また、環境配慮設計などを通じて製品が顧客の手に渡った後に発生する可能性のあるもの、例えば電気製品に省エネ設計をすることで電力使用量の削減を図るなどである。○著しい環境側面を決定する手法を「環境影響評価」という。論理的で矛盾のない、また誰が評価を行っても同じような結果が出る一貫性のある手法であるように工夫する。代表的な手法に「リスク評価法(環境影響の結果の重大性に発生の可能性を掛け算することで、環境リスクの大きさを評価する)」、「アルゴリズム法(過去に事故・苦情のあった環境側面か、環境方針該当項目かなど、自組織にとって重要な環境要素に該当する環境側面かどうかで判断する)」や「会議体法(組織の有識者が集う会議体において検討して判断する)」などががある。○環境影響評価は次のような状態の環境側面について行う(JIS Q14001-付属書A.3.1 に記載)。a.通常の操業状態b.非通常操業、例えば操業の停止及び立ち上げ状態c.緊急事態(「[4.4.7]緊急事態への準備及び対応」において記述する緊急事態と同じ定義を用いるとよい)

b.環境に著しい影響を与える又は与える可能性のある側面

(すなわち著しい環境側面)を決定する。

1.2

13

JIS Q 14001要求事項の解説及び環境マネジメントシステム構築・運用上のポイントChapter

1環境マネジメントシステム

○環境側面及び著しい環境側面の情報は記録に残し、いつも最新の状態にしておく必要がある。組織の活動、製品、サービスに変化があれば、環境側面に追加、削除があることが多い。例えば、新しい事業、新製品、設備・工程変更などがあれば、環境側面に変化があるだろう。変化のあった環境側面は環境影響評価を行う。場合によっては、著しい環境側面にも変化があることもある。著しい環境側面は、EMSにおいて重点管理の対象となるので、いつも最新のものとしておく必要がある。

○著しい環境側面について、EMS全体で確実に考慮に入れる仕組みを求めている。JIS Q 14001の要求事項に従ってシステムを構築すれば、結果として著しい環境側面はすべてEMSのどこかで何らかの管理下に置かれることになる。例えば、環境目的の設定・レビュー時(4.3.3)、環境方針・目的・目標から逸脱するかもしれない状況に適用する文書化した手順の作成(4.4.6)、購入先・委託先へ影響を及ぼすことができる著しい環境側面を管理する手順の作成・伝達(4.4.6)、著しい環境影響を生じる可能性のある運用の鍵となる特性を監視・測定する手順の作成(4.5.1)、緊急事態・事故時の著しい環境側面を特定・対応する手順の作成(4.4.7)などを含め、EMS全体の各所に及ぶ。○これらの関係をまとめると図1.2-1に示すとおりである(「法的及びその他の要求事項」は重要項目であるが、この図では、煩雑を避けるため省略した)。

6)組織は、その環境マネジメントシステムを確立し、実施し、維

持するうえで、著しい環境側面を確実に考慮に入れること。

5)組織は、この情報を文書化し、常に最新のものにしておくこと。

14

(注1)2002年5月、経済団体連合会と日本経営者団体連盟が統合して、(社)日本経済団体連合会となっています。

[4.3.2]法的及びその他の要求事項

○法的及びその他の要求事項(以下、「法等」という)を特定し、参照する手順を定める。特定・参照すべき対象はいわゆる環境関連法規に限らないケースもある。「組織の環境側面に関連して」とあることから、特定・参照の対象は自組織の環境側面との関連でとらえる。例えば「屋外タンクからの重油の漏洩」という環境側面があれば、消防法の該当する部分が特定・参照の対象となるケースがある。○「特定する」は、自組織に関係するものを明らかにすること、「参照する」は、法を守らなければならない人が(明らかにされた)その内容を見ながら仕事ができる状態にあることである。○「法」には、狭義の法律だけでなく国が制定する法令(政令、省令などを含む)、また、広く法的な要素を持つ地方自治体が制定する条例なども含まれる。条例には、地域の環境問題に対応するために国が定める法令よりも厳しい規制内容が含まれるものがあるので注意が必要である。○その他の要求事項の例としては、次のようなものが挙げられる。a.業界の行動規範b.公的機関との同意事項

7)組織は、次の事項にかかわる手順を確立し、実施し、維持する

こと。

a.組織の環境側面に関係して適用可能な法的要求事項及び

組織が同意するその他の要求事項を特定し、参照する。

1.2

■図1.2-1 要求項目と「著しい環境側面」の関係

コミュニケーション 資源、役割、責任及び権限

緊急事態への準備及び対応 運用管理

監視及び測定 環境目標

現状調査 (環境影響評価等)

マネジメントレビュー 環境方針

内部監査 著しい環境側面 環境目的

実施計画

15

c.規制以外の指針○法令集などをすべて手元に置いておかなければならないとは規定していない。インターネットでアクセスできたり、図書館などの法令集にアクセスできればそれでもよい。ただし、組織内の必要な人が「特定し、参照」できることが必要である。○特定・参照する手順を確立する際、次の内容を含めて手順として定めておくとシステムの円滑な運用に役立つ。a.法等の制定、改廃動向の情報入手方法と責任者b.新しい法の入手方法と責任者c.従業員へ情報伝達する手順と責任者(この事項は、「[4.4.5]文書管理」や「[4.4.3]コミュニケーション」の項で定めてもよい)

○前述のa.の「要求事項を特定」を補足する内容である。つまり、単に法律などの名称がわかっていればよいのではなく、どの法令のどの内容が、組織のどの環境側面に適用されるのかを認識できるようにすることが求められる。組織内の必要な人が、守るべき内容を認識して仕事ができるようにすることである。例えば、法的及びその他の要求事項一覧表に対応する環境側面(例えば、該当する設備名)を記入するのも一つの方法であるが、規格はそこまで要求しているわけではない。

○法順守(コンプライアンス)は非常に重要である。EMS全体において、法的及びその他の要求事項を考慮に入れた仕組みづくりを求めている。JIS Q 14001はシステム規格であるため、法順守という環境パフォーマンスそのものを直接要求はしていないが、EMS全体で法順守を達成できる仕組みを求めている。例えば、トップマネジメントによる法順守のコミットメント(4.2)、環境目的・目標の設定・レビュー時に配慮に入れる(4.3.3)、法的及びその他の要求事項の順守を定期的に評価(4.5.2)、マネジメントレビューへのインプット(4.6)などが代表的な条項である。

8)組織は、その環境マネジメントシステムを確立し、実施し、維

持するうえで、これらの適用可能な法的要求事項及び組織が同

意するその他の要求事項を確実に考慮に入れること。

b.これらの要求事項を組織の環境側面にどのように適用す

るかを決定する。

JIS Q 14001要求事項の解説及び環境マネジメントシステム構築・運用上のポイントChapter

1環境マネジメントシステム

16

1.2

[4.3.3]目的、目標及び実施計画

○「環境目的」は中長期(3年から5年程度)で達成するもの、または取り組みのテーマとして設定し、「目標」は短期(単年度)で達成するものとして設定されることが多い。目的のテーマの例として、原材料の低減や環境配慮、省エネルギー、製品設計における環境配慮、環境汚染物質の排出量低減などが挙げられる。このような具体的な成果が得られる項目のほかに、環境教育、環境広報、コンサルティング、環境配慮型の融資・プロジェクトなども含めることができる。「目標」は目的をもとにして作られる詳細なパフォーマンスの要求事項である。○環境目的・目標は、組織の「関連する部門・階層」で設定されていればよい。すべての部門にわたって、また部門ごとに個別に設定せよとまでは言っていない。業務内容や環境側面に応じて、複数の部門で共有していてもかまわない。また、部・課・室といったすべての階層ごとに設定する必要もない。EMSに応じた管理しやすい階層で設定されていればよい。もちろん、すべての従業員に目的・目標を設定して全員がEMS活動に直接参画できるように、全部門にわたって目的・目標を設定してもかまわない。○目的・目標を設定し維持する手順には、次の項目を含めるとよい。目的・目標の「維持」とは、組織が置かれている状況や、その年度の達成度などに応じて、必要な更新をすることを含む。a.設定、レビュー手続き(作成・見直しの担当者、協力者、検討体制、決裁者)

b.周知方法(この事項は、「[4.4.5]文書管理」や「[4.4.3]コミュニケーション」の項で定めてもよい)

c.最新版の表示d.達成状況の監視担当者、報告者、決裁者(この事項は、「[4.5.1]監視及び測定」の項で定めてもよい)

e.スケジュールどおりに達成できないことが予想されるようになった時点での対処方法(この事項は、「12)実施計画」あるいは「[4.5.3]不適合並びに是正処置及び予防処置」の項で定めてもよい)

9)組織は、組織内の関連する部門及び階層で、文書化された環境

目的及び目標を設定し、実施し、維持すること。

17

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1環境マネジメントシステム

○目的・目標は、定量的・定性的であるかを問わず可能な限り測定可能な形で設定する。目的・目標は(「4.5.1 監視及び測定」において)監視・測定の対象となるため、達成度合いを判定できるように設定する。○目的は環境方針を達成するための具体的で、全般的な環境の到達点である。従って「環境方針と整合」していなければならない。例えば、環境方針に「産業廃棄物排出量の削減への取り組み」があるのに、環境目的・目標にこれに関連する内容が全くないと、これは整合しているとは言えない。また、「汚染の予防」、「法的及びその他の要求事項の順守」及び 「継続的改善」に関するコミットメントは、「これらを含む環境方針」という意味であり、格別の意味があるわけではない。

○目的・目標を設定し、見直しする際に2つの項目を考慮に入れ、また3つの項目を考慮することを要求している。「考慮に入れる」及び「考慮する」は、いずれも対処の方法をよく考えるという意味合いで、必ず実行することまでを求めているわけではない。しかし、「考慮に入れる」は「考慮する」よりも重みのある用語として用いられており、「できるだけ取り込むこと」くらいの意味がある。○「考慮に入れる」項目として、「著しい環境側面」と「法的及びその他の要求事項」が挙げられている。著しい環境側面や順守が難しい法的及びその他の要求事項は、目的・目標に展開して改善に取り組むことが基本である。○「考慮する」項目のうち、例えば「運用上・事業上の要求事項や利害関係者の見解」から、目的・目標を設定するケースもあるだろう。また、著しい環境側面を目的・目標に展開する際、財務上の観点から採用する技術を選択することもあるだろう。一方、著しい環境側面であっても、改善のための技術が財務上採用できないような場合は、目的・目標に展

11)その目的及び目標を設定し、レビューするにあたって、組織は、

法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項並びに著し

い環境側面を考慮に入れること。また、技術上の選択肢、財務

上、運用上及び事業上の要求事項、並びに利害関係者の見解も

考慮すること。

10)目的及び目標は、実施できる場合には測定可能であること。そ

して、汚染の予防、適用可能な法的要求事項及び組織が同意す

るその他の要求事項の順守並びに継続的改善に関するコミット

メントを含めて、環境方針に整合していること。

18

開しないという選択肢もあり得る。この場合、「運用管理」及び/又は「監視及び測定」の手順によって、著しい環境側面はEMSの中で管理下に置かれる(いわゆる「維持管理」)ことになる。○「利害関係者」とは、組織の環境パフォーマンスに関心を持つか又はその影響を受ける個人又はグループのことをいう。従って、非常に幅広い範囲となる。例を挙げれば、行政、近隣住民、外部団体、関連会社、取引先、融資元、従業員などである。「利害関係者の見解」には環境上の苦情も含まれる。

○目的・目標を設定しただけでは、これらを達成できる仕組みがあるとは言えない。そこで、これらを達成するための実施計画を策定することを要求している。「実施計画」の内容が、目的・目標を達成するのに十分である内容であることが重要である。○実施計画には、「責任・手段・日程」を含むことを要求している。「誰が責任を持ち」、「どのような方法で」、「どのようなタイムスケジュールで」進めるのかという、目的・目標という到達点に至るまでの根拠を実施計画に示すということである。○「実施計画を策定し、実施し、維持」する手順には、次の項目を含めるとよい。a.策定、見直し手続き(策定・見直しの担当者、協力者、検討体制、決裁者)

b.周知方法(この事項は、「[4.4.5]文書管理」や「[4.4.3]コミュニケーション」の項で定めてもよい)

c.最新版の表示d.達成状況の監視担当者、報告者、決裁者(この事項は、「目的及び目標」の項で記述した場合には不要である)

e.スケジュールどおりに達成できないことが予想されるようになった時点での対処方法(この事項は、「 9)目的及び目標」の項で記述した場合には不要。「[4.5.3]不適合並びに是正処置及び予防処置」の項で定めてもよい)

12)組織は、その目的及び目標を達成するための実施計画を策定し、

実施し、維持すること。

実施計画は次の事項を含むこと。

a.組織の関連する部門及び階層における、目的及び目標を

達成するための責任の明示

b.目的及び目標達成のための手段及び日程

1.2

19

○以上のように、実施計画とは、目的及び目標ごとに責任者、達成方法及びスケジュールを記載したものである。達成方法が実施計画策定時点で分からない場合には、達成方法の検討期間をスケジュールに入れておくとよい。○スケジュールは、できるだけ詳細に記載する。例えば、ある目標を1年間で達成しようとする場合、期あるいは月ごとに進捗状況が追跡できるように記述する。

[4.4]実施及び運用

[4.4.1]資源、役割、責任及び権限

○環境マネジメントに必要な経営資源の準備をし、確実に利用できるようにするのは経営層の役割である。「資源」とは通常、人、物、金をいうが、規格にはいくつかの例示がされている。すなわち、「人的資源、専門的技能、インフラストラクチャー、技術、資金」を含むものとしている。なお、インフラストラクチャーとは、建物、通信回線、地下タンク、排水施設などEMSに必要な基盤・施設のことである。

○環境マネジメントを効果的に実施するため、環境マネジメント上の役割・責任・権限を定め、文書化し、周知することを求めている。環境マニュアルや環境職務分掌規程などに記述し、教育や文書配付、社内LANなどを通じて知らせるなどの方法がよく取られている。○EMSの実施を成功させるためには、組織の全従業員の関与が必要である。従ってEMSにおいては、経営者、管理者、環境部門にのみ責任を持たせるのではなく、全員が責任を持って担当部門の目標達成に努めることが大切である。そのため、職位あるいは職務ごとに責任者を明確にし、役割、責任及び権限の範囲や内容を文書化して、必要な内容を従業員に伝達する必要がある。○環境委員会など会議体を設置する方法もある。この場合に注意しなけれ

14)効果的な環境マネジメントを実施するために、役割、責任及び

権限を定め、文書化し、かつ、周知すること。

13)経営層は、環境マネジメントシステムを確立し、実施し、維持

し、改善するために不可欠な資源を確実に利用できるようにす

ること。資源には、人的資源及び専門的な技能、組織のインフ

ラストラクチャー、技術、並びに資金を含む。

(注1)ステークホルダー:顧客、株主、投資家、金融機関、従業員、行政、地域住民、一般市民、報道機関など企業と直接的、間接的にかかわる利害関係者を指します。これら関係者は、組織・グループであったり個人であったり、また、その利害関係の程度には差があるので、ステークホルダーの態様は複雑多岐です。本書でいうステークホルダーは、企業の環境側面における利害関係者を指します。

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1環境マネジメントシステム

20

ばならないことは、会議体の権限に決定権を持たせるのか、単なる諮問会議なのか、討議事項の決定者(責任者)をだれにするのか、記録(議事録など)の作成・保管責任者の明確化などが必要である。

○管理責任者(management representative)は、いわば「トップの代理者」として、実質的なEMSの構築・実施を行う実務責任者である。そういう意味で、組織のトップマネジメントにアクセスでき、相当の知識を持って総合調整できる立場・能力を有する人をあてるのが望ましい。○EMSの中で、トップマネジメントに直接要求される役割は次のとおりである。a.環境方針の作成b.管理責任者の任命c.EMSのレビュー

○全体を管理する実務責任者だけではシステムの構築、運用、改善は困難な場合が多い。従って、部門ごとにも実行推進責任者を設置し、全員で推進していく体制を作ることが望ましい○複数の管理責任者を指名する場合には、役割、責任の分担を明確にすることが必要である。

○管理責任者の「役割、責任及び権限」は、「他の責任にかかわりなく」と記載されているように、他の業務と兼ねてもかまわない。ただし、兼務する責任とはかかわりなく、管理責任者として実施すべき業務を管理責任者の立場できちんと遂行することが必要である。○「環境マネジメントシステムのパフォーマンス」とは、例えば、EMSの実施度合いや環境目的・目標の達成状況、内部監査の結果などを含む、

16)その管理責任者は、次の事項に関する定められた役割、責任及

び権限を、他の責任にかかわりなく持つこと。

a.この規格の要求事項に従って、環境マネジメントシステ

ムが確立され、実施され、維持されることを確実にする。

b.改善のための提案を含め、レビューのために、トップマ

ネジメントに対し環境マネジメントシステムのパフォー

マンスを報告する。

15)組織のトップマネジメントは、特定の管理責任者(複数も可)

を任命すること。

1.2

21

包括的な実績をさす。マネジメントレビュー(4.6)において、改善方法をトップマネジメントがすべて考えるというのは現実的ではないことから、管理責任者がシステムのパフォーマンスと共に改善提案も提出することになる。

[4.4.2]力量、教育訓練及び自覚

○「著しい環境影響の原因となる可能性を持つ作業」に携わる人は、その作業を遂行するために教育、訓練、経験のいずれかに基づいて得られた力量を持つことができる仕組みづくりを要求している。「著しい環境影響の原因となる可能性を持つ作業」は、著しい環境側面に関連するような職務を基本として考えるのがよい。力量が不足していることで、作業の手違い、指示・判断の誤りなどから環境に著しい影響を与えてしまうような重要な職務である。EMSの範囲内で働く組織の従業員に加えて、協力会社社員や派遣社員などを含み、その作業に携わる人すべてが対象である。○力量を有することの裏づけとなる記録を残すことが必要である。○教育とは一般的に行われる教育を意味し、訓練は目的を持った教育訓練をさす。教育が座学で、訓練が汗を流すものというのは、日本語のニュアンスからくる誤解である。また、JIS Q 14001では、trainingを場所に応じて「訓練」又は「教育訓練」と表しており、訓練と教育訓練は同義である。

○環境側面とEMSに関して必要な教育訓練のニーズ、つまりどの業務を行う者はどのような教育訓練が必要かを明確にする。業務内容に応じて、その人に必要な教育訓練を提供することになる。教育訓練のニーズは、教育訓練計画などで示されることがある。○このニーズは、教育訓練によって、または例えばすでにニーズを満たし

18)組織は、その環境側面及び環境マネジメントシステムに伴う教

育訓練のニーズを明確にすること。組織は、そのようなニーズ

を満たすために、教育訓練を提供するか、又はその他の処置を

とること。また、これに伴う記録を保持すること。

17)組織は、組織によって特定された著しい環境影響の原因となる

可能性を持つ作業を組織で実施する又は組織のために実施する

すべての人が、適切な教育、訓練又は経験に基づく力量を持つ

ことを確実にすること。また、これに伴う記録を保持すること。

JIS Q 14001要求事項の解説及び環境マネジメントシステム構築・運用上のポイントChapter

1環境マネジメントシステム

22

1.2

た人を新規採用したり、他部署から異動させる、また外注するなどによっても満たせる。関連する記録を残すことが必要である。○規格は手順を求めているわけではないが、「教育訓練のニーズを明確」にし、対象者に教育訓練を実施するするための手順を作っておくのが実際的であろう。その内容は、どの職場のだれに(対象者)、だれが(講師)、いつ、どこで、どのような目的、内容の教育訓練をするかというようなものである。計画表のような形式でもかまわない。

○上記規定の4項目を自覚させるための手順を要求している。その方法はどのようなものでもかまわない。内外の講習会・研修会などの訓練、通信教育、資料の配付・掲示、OJTなどが考えられる。○その対象者は、環境方針周知の対象者と同じであり、組織の役員や従業員に加え、EMSの適用範囲内で働く協力会社員や派遣社員なども含まれる。

[4.4.3]コミュニケーション

○コミュニケーションは双方向のやり取りであり、組織内部間のコミュニケーション、外部からの環境情報を扱うコミュニケーション、それに加えて内部から外部へ情報を発信して行うコミュニケーションの3とおりがある。○内部コミュニケーションの最小不可欠な対象項目は、EMS で実行して

20)組織は、環境側面及び環境マネジメントシステムに関して次の

事項にかかわる手順を確立し、実施し、維持すること。

a.組織の種々の階層及び部門間での内部コミュニケーション

19)組織は、組織で働く又は組織のために働く人々に次の事項を自

覚させるための手順を確立し、実施し、維持すること。

a.環境方針及び手順並びに環境マネジメントシステムの要

求事項に適合することの重要性

b.自分の仕事に伴う著しい環境側面及び関係する顕在又は

潜在の環境影響、並びに各人の作業改善による環境上の

利点

c.環境マネジメントシステムの要求事項との適合を達成す

るための役割及び責任

d.規定された手順から逸脱した際に予想される結果

23

いる事項である。例えば、環境方針、著しい環境側面、法的及びその他の要求事項などである。これらの内部コミュニケーション方法については、各要求項目の項において定めてもかまわない。

○外部の利害関係者からの関連するコミュニケーションについては、「文書化し」と規定されているので、受け付けた内容を記録することが必要である。この記録には対応結果も記載しておく。○外部からの環境情報はさまざまな内容があり得るが、環境上の苦情が代表的なものである。○手順には、次のような項目を含めておくとよい。a.情報の受付者b.情報入手方法c.情報入手手続きd.伝達する責任者e.伝達先f .伝達方法g.伝達内容、記録h.伝達内容の処理方法、決定者i .外部への対応手続き:文書の作成者・決定者・保管方法、対応窓口

○内部から外部への情報発信は、著しい環境側面に関連する情報が対象となる。組織が決定した著しい環境側面の事象について、外部コミュニケーションの対象とするのかどうかを決定し、その決定を記録する。外部コミュニケーションをすると決めた著しい環境側面は、そのための方法を決めて、実施することが求められる。○著しい環境側面すべてについて、外部コミュニケーション方法の確立・実施を求めているわけではない。ポイントは、「著しい環境側面それぞれについて、外部コミュニケーションを行うかどうかをあらかじめ決め、

21)組織は、著しい環境側面について外部コミュニケーションを行

うかどうかを決定し、その決定を文書化すること。外部コミュ

ニケーションを行うと決定した場合は、この外部コミュニケー

ションの方法を確立し、実施すること。

b.外部の利害関係者からの関連するコミュニケーションに

ついて受け付け、文書化し、対応する

Chapter

1環境マネジメントシステム

JIS Q 14001要求事項の解説及び環境マネジメントシステム構築・運用上のポイント

24

行うと決めた場合は誰に対して、どのような方法で、どのような内容を公開するのかを確立しておく」ことである。事故などの発生後にどのように対応するかを後から決定することを求めているわけではない。

[4.4.4]文書類

○EMSの文書に含むべきものとして、a.~e.項を掲げている。各項にある文書は、例えばa.にある「環境方針」はc.項にある「主要な要素」ともなるように、各項ごとに作成しなければならないわけではない。○本条項でいう「文書」は「記録を含む文書」とあるように、広義の文書を指している。○環境方針は「4.2 環境方針」で、目的及び目標は「4.4.3 目的、目標及び実施計画」において文書化が要求されている。

○EMSの適用範囲の記述は「4.1 一般要求事項」において文書化が要求されている。

○「主要な要素」とは、JIS Q 14001における4.2から4.6までの17条項の内容の主なもののことである。これらの要素についての相互関係を記述することが必要である。○「主要な要素」の相互関係の例としては、次の事項を挙げることができる。・環境方針と環境目的・目標等との関係・著しい環境側面と環境目的・目標、運用管理、監視及び測定などとの関係・法的及びその他の要求事項と環境目的・目標、運用管理、監視及び

c.環境マネジメントシステムの主要な要素、それらの相互

作用の記述、並びに関係する文書の参照

b.環境マネジメントシステムの適用範囲の記述

22)環境マネジメントシステムの文書には、次の事項を含めること。

a.環境方針、目的及び目標

1.2

25

測定、法順守の評価、マネジメントレビューなどとの関係○「関係する文書の参照」とは、EMSの狭義の文書同士で関連のあるものについて、例えば引用関係を示す(詳細は○○規程に定める)とか、関連文書を示すことをいう。文書体系(文書の関連図)、文書一覧表があればなおよい。

○JIS Q 14001が要求する狭義の文書に記録を加えた「広義の文書」が最低限必要である。どれを狭義の文書として扱い、どれを記録として扱うかは組織が決める。○JIS Q 14001では、決して膨大な文書を要求していない。できるだけ少ない文書量になるよう工夫して作ることが大切である。○EMS 文書は、品質マネジメントシステムなどの他のシステムで使用している文書と統合してもよい。特に文書管理や内部監査の文書には利用できるものがある。○文書作成でよく誤りが発生するのは、実際の作業と整合しない内容の文書を作成することである。内部環境監査を実施するときには、この点について十分点検することが必要である。

○著しい環境側面がEMSで確実に管理されるために組織が必要と決定した記録を含む文書である。著しい環境側面を決定する段階から、環境目的・目標・実施計画、運用管理、監視及び測定までの一連の流れ、また著しい環境側面に関連する力量、外部へのコミュニケーション、緊急事態・事故などが対象となる。これらの中から、規格の要求に加え、組織が必要と決定した記録を含む文書を文書化することが必要である。

e.著しい環境側面に関係するプロセスの効果的な計画、運

用及び管理を確実に実施するために、組織が必要と決定

した、記録を含む文書

d.この規格が要求する、記録を含む文書

JIS Q 14001要求事項の解説及び環境マネジメントシステム構築・運用上のポイントChapter

1環境マネジメントシステム

26

[4.4.5]文書管理

○文書管理の基本は「必要な文書の適切な版(通常は最新版)が必要な部署で活用できる」ことである。「4.4.4 文書類」で要求した広義の文書のうち、狭義の文書はこの「4.4.5 文書管理」によって、記録は後の「4.5.4 記録の管理」によって管理することを要求している。○EMSにおいて大切なことは、システムを効果的に運用し、その結果環境パフォーマンスが改善されることである。従って、複雑な文書管理システムにならないよう気をつける必要がある。

○狭義の文書についてa.~g.項について管理する手順を求めている○手順として定めておく項目としては、JIS Q 14001において直接要求されている項目以外に、次のようなことが挙げられる。a.文書管理責任者(承認者)b.文書保管責任者 c.作成者d.(場合によっては)審議者e.文書の様式f .文書番号g.配付先h.複写管理方法

○文書を発行する前に、文書が適切であるかどうかを確認して適切ならば承認することを求めている。

○発行した文書は、組織が決めた適切なタイミングでレビュー(見直し)し、必要があれば文書を改訂し、その適切性について再承認することを

b.文書をレビューする。また、必要に応じて更新し、再承

認する。

24)組織は、次の事項にかかわる手順を確立し、実施し、維持する

こと。

a.発行前に、適切かどうかの観点から文書を承認する。

23)環境マネジメントシステム及びこの規格で必要とされる文書は

管理すること。記録は文書の一種ではあるが、4.5.4に規定す

る要求事項に従って管理すること。

1.2

27

求めている。○レビューの周期は組織自身が決める。文書の内容が古くなっていないことが重要である。レビューの結果、改訂が不必要な場合でも、レビューを行ったことを証明できる記録を残すとよい。

○変更された文書について、現行の版が前の版と比べて変更された内容を確認できるようにし、また、現行の版が適切な版であるかを確認できるようにすることを求めている。例えば、改訂履歴の作成や文書管理台帳の管理などにより、これらを確実に実行できる仕組みを作る。

○この項が文書管理のポイントである。「適切な版」は最新版をさすことが多いが、法令や顧客の要求によって以前の版を使用する必要がある場合、その以前の版が適切な版となる。

○文書は文字が読みやすくて楽に判読できるように、また、どの文書であるのか(例えば、文書名、文書番号、版数、発行日などにより)、確実に識別できる文書管理の仕組みを求めている。

○組織が必要と判断したEMSに関する「外部文書」を明確にし、例えば文書管理台帳などにより配付が確実に管理できるような仕組みを要求している。「外部文書」の例として、顧客からの仕様書、法令、規格など

f.環境マネジメントシステムの計画及び運用のために組織

が必要と決定した外部からの文書を明確にし、その配付

が管理されていることを確実にする。

e.文書が読みやすく、容易に識別可能な状態であることを

確実にする。

d.該当する文書の適切な版が、必要なときに、必要なとこ

ろで使用可能な状態にあることを確実にする。

c.文書の変更の識別及び現在の改訂版の識別を確実にする。

JIS Q 14001要求事項の解説及び環境マネジメントシステム構築・運用上のポイントChapter

1環境マネジメントシステム

28

が挙げられる。

○廃止文書(通常は旧版だが、旧版でも廃止しない場合もある)は、例えば撤去したり廃棄するなどにより、廃止文書が間違って使用されないようにすることを求めている。廃止文書を保持する場合は、例えば表紙に赤インクで「廃止文書」と押印するなど識別をする。

[4.4.6]運用管理

○「運用管理」は、工場であれば操業管理、運転管理、生産管理、作業所では施工、搬出入などの管理、事務所では業務管理などがこれにあたる。○まず、組織が特定した著しい環境側面に関連してどのような運用があるのかを明確にする。著しい環境側面は、環境方針の内容に反映され、また環境目的・目標の設定時にも考慮に入れられていることから、これらは本来内容的に整合しているはずのものである。従って、著しい環境側面に関する運用を、環境方針や目的・目標と整合した「運用管理」とすることが規格の意図である。○前述の著しい環境側面に関連する運用に加え、トップマネジメントが環境方針で順守を誓約している法的及びその他の要求事項に関する運用も加えることがよい。○「個々の条件の下で」とは、ある与えられた条件の下でという意味であり、条件を特定する必要はない。また「計画すること」は、環境方針・目的・目標が当初の狙いどおりに達成できるようにa.b.c.項を実施してこの運用が確実に行われるようにすることで、「計画書」の作成を求めているわけではない。

a.文書化された手順がないと環境方針並びに目的及び目標

から逸脱するかもしれない状況を管理するために、文書

化された手順を確立し、実施し、維持する。

25)組織は、次に示すことによって、個々の条件の下で確実に運用

が行われるように、その環境方針、目的及び目標に整合して特

定された著しい環境側面に伴う運用を明確にし、計画すること。

g.廃止文書が誤って使用されないようにする。また、これら

を何らかの目的で保持する場合には、適切な識別をする。

1.2

29

○「文書化された手順がないと環境方針並びに目的及び目標から逸脱するかもしれない状況を管理するために、文書化された手順を確立する」は、前項で明確にした運用の中に、環境方針・目的・目標から逸脱する可能性のあるものがあれば、その運用について逸脱を防ぐための文書化した手順を作成することが要求されている。文書化した手順がなくても、当初の計画どおり運用が進むのであれば、わざわざ文書化した手順は作成しなくともよい。

○「運用基準」とは、その基準内で運用すれば環境方針・目的・目標をはずれないですむような(当初の計画どおり運用できるような)運用(管理)基準を含むことが必要である。例えば運転方法、保全方法、異常処理方法、管理ポイントなどである。この基準は、既存の作業標準書類あるいは設備操作手順書などに追加して記載してもよいし、新しく作成してもよい。

○「組織が用いる物品」は購入品、「組織が用いるサービス」は外注作業(委託作業)のことを言っている。組織が購入する原材料、部品、化学物質などの物品に関して、及び組織が外注する運搬、処理などの作業に関して(組織が影響を及ぼすことができる)著しい環境側面があれば、これを取り扱う手順を求めている。○請負者(著しい環境側面に関連する外注先)及び供給者(同じく購入先)に対して、著しい環境側面に関して守ってほしい手順や内容を伝達することを求めている。一方的な伝達だけでなく、先方から何らかの回答を得るようにしたほうがよい。どの程度のことまで伝えるかは、著しい環境側面の内容や、それに対して組織が及ぼせる影響の程度にもよるだろう。

c.組織が用いる物品及びサービスの特定された著しい環境

側面に関する手順を確立し、実施し、維持すること、並

びに請負者を含めて、供給者に適用可能な手順及び要求

事項を伝達する。

b.その手順には運用基準を明記する。

JIS Q 14001要求事項の解説及び環境マネジメントシステム構築・運用上のポイントChapter

1環境マネジメントシステム

30

[4.4.7]緊急事態への準備及び対応

○事前の準備として、大きな環境影響につながる可能性のある起こり得る緊急事態・事故を特定する手順、及び特定したものにどのように対応するのかの手順が求められている。○「可能性を特定」する方法として、「[4.3.1]環境側面」において述べた環境影響評価結果を用い、緊急時において環境影響が大きいものを取り上げる、あるいは過去に自組織で発生したことのある、また同業他社で発生した事例を取り上げるなどがある。○事故及び緊急事態を定義するときには、次のような事項を参考にするとよい。a.人為ミスによる事故及び緊急事態:誤操作、誤使用、不注意などによって発生する事故及び緊急事態

b.発生の可能性がある事故及び緊急事態:故障、破損、漏洩、停電、火災などによって発生する事態

c.異変に起因するあるいは偶発的に発生する事故及び緊急事態:地震、風水害、航空機墜落、近隣での爆発など組織が管理できない事態

○実際に起きてしまった緊急事態・事故に対応し、そこから生じる有害な環境影響を予防し、または緩和することを求めている。事前の準備として要求されている対応の手順に、特定した緊急事態・事故ごとにどのように予防、緩和をするのかを含めておけばよい。○「予防」とは、事故や緊急事態が発生したとき、環境影響を引き起こさないような対応策のことであり、「緩和」とは、事故や緊急事態の発生後に予防策を越えて環境影響が生じた場合に環境影響をできるだけ小さく抑える処置のことである。○手順は緊急事態対応のフロー図にしてもよい。緊急連絡体制も作成しておく。特に行政や近隣への連絡についても考慮が必要である。

27)組織は、顕在した緊急事態や事故に対応し、それらに伴う有害

な環境影響を予防又は緩和すること。

26)組織は、環境に影響を与える可能性のある潜在的な緊急事態及

び事故を特定するための、またそれらにどのようにして対応す

るかの手順を確立し、実施し、維持すること。

1.2

31

○上記の手順は、定期的な見直しのほか、緊急事態・事故の発生後には必ず見直しし、必要なら改訂を行うことを求めている。

○「定期的にテスト」をするのは、緊急事態に備えて確立された手順が有効であるかどうかをテストすることであり、模擬テストでもかまわない。テスト計画や実施した記録があると将来役立つ。○テストの結果、必要な場合には手順を改訂する。

[4.5]点検

[4.5.1]監視及び測定

○「環境に著しい影響を与える可能性がある運用」は、主として著しい環境側面に関連する運用や法的及びその他要求事項に関連する運用のことである。○「かぎとなる特性」は、監視及び測定項目のことであり、例えばエネルギー使用量、汚染物質の測定分析値、設備の運転条件、廃棄物発生量などが考えられ、組織自身が法規制、著しい環境側面、目的・目標に合わせて適切に設定する。○手順には、監視及び測定に関する体制(測定者、判定者、承認者など)、記録名、対象(作業)、特性名、方法、頻度(「定常的」であること)などを記述する。これらは運用管理手順書に記載してもよい。

30)組織は、著しい環境影響を与える可能性のある運用のかぎ(鍵)

となる特性を定常的に監視及び測定するための手順を確立し、

実施し、維持すること。

29)組織は、また、実施可能な場合には、そのような手順を定期的

にテストすること。

28)組織は、緊急事態への準備及び対応手順を、定期的に、また特

に事故又は緊急事態の発生の後には、レビューし、必要に応じ

て改訂すること。

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1環境マネジメントシステム

32

○「パフォーマンス」とは、EMS の実績のことである。これには法的及びその他要求事項に関連する運用実績を含んで考えるのがよい。○「適用可能な運用管理」とは、「[4.4.6]運用管理」において記述した運用基準のことで、この基準を実行した監視・測定結果を記録する。○「組織の環境目的及び目標との適合」は、文字どおり目的・目標が達成されたかどうかのことである。

○鍵となる特性を監視・測定する機器には、校正又は検証されたものを確実に使用することを要求している。つまり、校正は組織が自ら行ってもよいし、他組織が校正を行った結果を検証することでもかまわない。校正や検証に記録は、環境記録として残すことが必要である。○外部に測定を依頼する場合には、「計量証明書」を入手するとよい。

[4.5.2]順守評価

○組織のトップマネジメントは、「4.2 環境方針」において法的及びその他の要求事項を順守することを誓約している。また、「4.3.2 法的及びその他の要求事項」において、組織が守るべき法的及びその他の要求事項を特定し、参照する仕組みを求めている。その流れに沿って、4.3.2で特定した法的及びその他の要求事項が順守されているのか、いないのかを定期的に評価する手順を要求している。○法的要求事項の評価は定期的に行わなければならず、その記録を残すことを求めている。○手順には、順法に関する評価について記述しておかなければならない。評価の頻度は定期的とし、組織自身が決めるか、法規制に則って設定す

33)4.5.2.1 順守に対するコミットメントと整合して、組織は、適

用可能な法的要求事項の順守を定期的に評価するための手順を

確立し、実施し、維持すること。組織は、定期的な評価の結果

の記録を残すこと。

32)組織は、校正された又は検証された監視及び測定機器が使用さ

れ、維持されていることを確実にし、また、これに伴う記録を

保持すること。

31)この手順には、パフォーマンス、適用可能な運用管理、並びに

組織の環境目的及び目標との適合を監視するための情報の文書

化を含めること。

1.2

33

る。○「環境法規制」の内容には、施設や資格者の届出、記録の保管などもある。これらの事項に関する定期的評価は、監視・測定値の場合の順法性評価とは異なり、それほど短期間・高頻度に行う必要はないと思われる。例えば、内部環境監査の実施時に行うのも一つの方法である。

○組織が同意するその他の要求事項についても、評価を定期的に行い、その記録を残すことを求めている。前半には「定期的に」という表現が入っていないが、その後に「この定期的な評価の結果の記録を残すこと」とあることから、法的要求事項と同様に定期的な評価を求めていると考えられる。○この手順は、法的要求事項を評価する手順と一緒に作成してもよいし、別の手順として作成することでもよい。

[4.5.3]不適合並びに是正処置及び予防処置

○「不適合」は用語の定義において「要求事項を満たしていないこと」と定義されている。組織にとって「要求事項」とは何か、つまり何を不適合として扱うのかを明確にしておく。例えば、EMSに対する違反、利害関係者からの環境上の苦情や行政機関からの環境上の指導、法的及びその他の要求事項からの逸脱などが一般的である。環境目的・目標の未達成も重要な項目だが、「4.3.3 目的、目標及び実施計画」の中でPDCAが回る仕組みとなっていれば、それでもかまわない。○「顕在する不適合に対応するのが是正処置」、「潜在する不適合に対応するのが予防処置」である。つまり、是正処置は不適合発生後の再発防止策であり、予防処置は不適合発生前の事前の防止策である。「用語と定義」によれば、いずれも「原因の除去」を伴う。○是正処置及び予防処置をとるための手順の作成が必要であり、その手順には以下のa.~e.項の内容を定める。

35)組織は、顕在及び潜在の不適合に対応するための並びに是正処

置及び予防処置をとるための手順を確立し、実施し、維持する

こと。その手順では、次の事項に対する要求事項を定めること。

34)4.5.2.2 組織は、自らが同意するその他の要求事項の順守を評

価すること。組織は、この評価を4.5.2.1にある法的要求事項

の順守評価に組み込んでもよいし、別の手順を確立してもよい。

組織は、定期的な評価の結果の記録を残すこと。

JIS Q 14001要求事項の解説及び環境マネジメントシステム構築・運用上のポイントChapter

1環境マネジメントシステム

34

○まず、不適合として認識し、不適合を除去して元の状態に戻す「修正」を実施し、生じた環境影響がそれ以上に広がらないような緩和処置をとることが必要である。問題が生じたときに、是正処置をとる前にまず応急処置をとる必要があるという意図である。

○次に、不適合を調査し、なぜその不適合が生じたのかの原因を明らかにし、そして原因を除去する再発防止策を実施する。これが是正処置となる。不適合発生後には、必ず是正処置をとる必要がある。

○潜在する不適合についても、まず原因を調査した上でその処置をとる必要性を評価し、必要な場合には不適合が顕在化(発生)しないよう適切な処置を実施する。これが予防処置となる。潜在する不適合の場合は、予防処置の必要性を評価するステップが入る。○「潜在する不適合」を見つけ出す方法を考えておくとよい。例えば、不適合になる基準より厳しい基準を設定しそれを超過する場合、管理図によって傾向を把握する方法、内部環境監査の範囲に含める方法などが考えられる。

○とられた是正処置、予防処置について記録を残すことが必要である。

d.とられた是正処置及び予防処置の結果を記録する。

c.不適合を予防するための処置の必要性を評価し、発生を

防ぐために立案された適切な処置を実施する。

b.不適合を調査し、原因を特定し、再発を防ぐための処置

をとる。

a.不適合を特定し、修正し、それらの環境影響を緩和する

ための処置をとる。

1.2

35

○以上において実施した是正処置、予防処置において、原因が除去され再発(発生)防止が確かに図られ、有効な処置であったかどうかをレビューする。ある程度時間をおいて不適合が再発(発生)していないかをチェックするのもひとつの方法である。

○「問題の大きさ、及び生じた環境影響に見合った是正処置又は予防処置であること」は、適切な人、物、金、時間の投入が必要であることを言っている。一過性のものにまで過大な資源を投入する必要はないが、小手先の対応ではない「原因の除去」がポイントとなる。

○是正処置及び予防処置をとった結果、EMS文書に改訂が必要なときは、これがきちんと行われる仕組みが必要である。

[4.5.4]記録の管理

○規格の各条項でも個別に記録を要求しているものもあるが、ここでは包括的な表現で記録として作成、維持すべき3つの内容について規定している。①組織のEMSへの適合を実証するのに必要な記録、②JIS Q14001の要求事項への適合を実証するのに必要な記録、③EMSを運用して達成された結果を実証するのに必要な記録。○記録以外の方法で、これらを実証することができるのであれば、必ずしも記録は必要ない。ただし、記録によって実証するのが最もやりやすい

38)組織は、組織の環境マネジメントシステム及びこの規格の要求

事項への適合並びに達成した結果を実証するのに必要な記録を

作成し、維持すること。

37)組織は、いかなる必要な変更も環境マネジメントシステム文書

に確実に反映すること。

36)とられた処置は、問題の大きさ、及び生じた環境影響に見合っ

たものであること。

e.とられた是正処置及び予防処置の有効性をレビューする。

JIS Q 14001要求事項の解説及び環境マネジメントシステム構築・運用上のポイントChapter

1環境マネジメントシステム

36

方法であることは間違いないだろう。○「記録」とは、基本的にはEMSを運用した証拠を示すものであって、一度作成すると変更ができないもの(単純な誤記入を除く)である。○記録は、法的に必要なもの以外については、できるだけ少なくすることが望ましい。記録することによって、システムの維持、改善を図ることができるかを考えて作成する。

○記録の管理についての手順を求めている。この手順には、識別、保管、保護、検索、保管期間及び廃棄について含むことが必要である。保管期限を過ぎた記録は原則として廃棄する。

○記録は読みやすく、どの記録であるのかがわかるように、そしてどの活動、製品、サービスに対応する記録なのかがトレースできるようにしておくことを求めている。

[4.5.5]内部監査

○内部監査は「あらかじめ定められた間隔で」実施することが必要である。組織が適切と判断した間隔を定める。通常EMSは1年単位でPDCAが回っているので、少なくとも1年に1回以上の内部監査を行うことになるだろう。

41)組織は、次の事項を行うために、あらかじめ定められた間隔で

環境マネジメントシステムの内部監査を確実に実施すること。

a.組織の環境マネジメントシステムについて次の事項を決

定する。

1.この規格の要求事項を含めて、組織の環境マネジメ

ントのために計画された取り決め事項に適合してい

るかどうか。

2.適切に実施されており、維持されているかどうか。

40)記録は、読みやすく、識別可能で、追跡可能な状態を保つこと。

39)組織は、記録の識別、保管、保護、検索、保管期間及び廃棄に

ついての手順を確立し、実施し、維持すること。

1.2

○環境マネジメントシステムの内部監査は、次のために行うことを求めている。①組織のEMSが規格の要求事項に適合しているか、また組織のEMSが計画された取り決めに適合しているかを決定する。②組織のEMSが適切に実施、維持されているかを決定する。

○「監査の結果に関する情報」は、通常、記録としての環境監査報告書としてまとめられる。この報告書は経営層に報告され、マネジメントレビューへのインプット情報として扱われることになる。○内部監査の良否はシステムの優劣を左右する。内部監査員は、EMSを向上し、経営改善のために寄与するには、どこをどのように改善すればよいかを念頭に置いて監査する。文書の枝葉末節にとらわれることのないように留意しなければならない。○監査員には、環境法規や技術の知識以外に、経営管理のように組織全体をみる能力のある管理経験者が望ましい。監査員としての能力の水準はJIS Q 19011を参考にして設定するとよい。

○監査プログラムとは、「ある目的の達成に向けた、決められた期間内で実行するように計画された一連の監査」のことであり、年間計画などが該当する。○この監査プログラムは、監査対象部署・活動について環境上の重要性と前回までの監査結果に基づいて計画・策定・実施されなければならない。「環境上の重要性」とは、例えば著しい環境側面のある活動、環境上の苦情のあった部署、新工程が新たに導入された活動、新たな法規制の適用されるような活動などのことである。「前回までの監査結果」は、前回監査のフォローアップの必要性、前回監査で不適合のあった部署などが例で、これらを考慮に入れた監査プログラムとする。例えば、問題のある部署については他の部署よりも時間をかけた計画とするなどである。

42)監査プログラムは、当該運用の環境上の重要性及び前回までの

監査の結果を考慮に入れて、組織によって計画され、策定され、

実施され、維持されること。

b.監査の結果に関する情報を経営層に提供する。

37

JIS Q 14001要求事項の解説及び環境マネジメントシステム構築・運用上のポイントChapter

1環境マネジメントシステム

○監査手順に含むべきものが規定されている。監査手順を定めた規格に、JIS Q 19011(品質及び/又は環境マネジメントシステム監査のための指針)があるが、JIS Q 14001にとってこれは指針(ガイド)であり、その適用を要求されているわけではない。しかし、監査手順を作成するときには、大変参考になる規格である。

○監査範囲は組織の経営者や管理責任者など、監査を指示する人(監査依頼者)が決める。しかし、PDCAサイクルの1巡ごとに、EMSの適用範囲すべてについて実施しておく必要がある。○規格は「内部監査チェックリスト」の作成を要求していないが、「内部監査チェックリスト」の見本(チェック項目を含めて)を作成しておくとよい。各監査員はこのチェックリストを参照して、自己の担当監査範囲についてのチェックリストを作成するようにする。

○監査員の選定と監査の実施に当たり、内部監査の客観性・公平性を担保できるシステムが要求されている。「客観性・公平性」とは、例えば内部監査の手順を決め、それを組織内部に明らかにし、それに沿って行うことで担保できるであろう。そして、この中に「自分で責任を持つ業務は自分で監査しない」という独立性も含めて考えるのがよい。○トップマネジメントは通常被監査者にはならない。一方、環境管理責任者はEMSにおける内部監査の位置付けが環境管理責任者の上にあるか下にあるかで、被監査者になるかどうかが決まる。いずれにせよ、直接インタビューの対象とするかどうかは別として、トップマネジメントや環境管理責任者に対する規格の要求事項も内部監査の対象である。○報告書は様式を定めるとともに、次のような項目の内容について記述するとよい。a.報告書作成者b.監査日

44)監査員の選定及び監査の実施においては、監査プロセスの客観

性及び公平性を確保すること。

43)次の事項に対処する監査手順を確立し、実施し、維持すること。

-監査の計画及び実施、結果の報告、並びにこれに伴う記録

の保持に関する責任及び要求事項

-監査基準、適用範囲、頻度及び方法の決定

38

1.2

c.監査員d.被監査部門e.監査目的f .監査範囲g.監査基準h.監査結果i .不適合事項j .改善推奨事項

[4.6]マネジメントレビュー

○トップマネジメントがEMSの見直しとしてマネジメントレビューを実施することを求めている。マネジメントレビューの目的は、EMSが継続して適切、妥当で有効であることの保証である。そのために、これらをチェックする仕組みを作り、トップマネジメントが環境方針で誓約している継続的改善に結びつけることが期待されている。この「適切」「妥当」「有効」は用語の定義にない普通の用語であり、特別に定義する必要はないと考えられる。

○マネジメントレビューは、環境方針、目的・目標やその他のEMSの要素について、いつ改善すべきであるのか、変更の必要があるのかないのかについて評価を行うことが必要である。○マネジメントレビューの記録を残すことが必要である。

46)レビューは、環境方針、並びに目的及び目標を含む環境マネジ

メントシステムの改善の機会及び変更の必要性の評価を含むこ

と。

マネジメントレビューの記録は、保持されること。

45)トップマネジメントは、組織の環境マネジメントシステムが、

引き続き適切で、妥当で、かつ、有効であることを確実にする

ために、あらかじめ定められた間隔で環境マネジメントシステ

ムをレビューすること。

39

JIS Q 14001要求事項の解説及び環境マネジメントシステム構築・運用上のポイントChapter

1環境マネジメントシステム

○マネジメントレビューへのインプット項目として8項目が定められている。もちろん、これ以外のものをインプット情報に含めるのは組織の判断である。○「変化している周囲の状況」としては、次のような事項が挙げられる。a.法的及びその他の要求事項b.製品、活動の変化c.科学技術の進歩d.事故の教訓e.社会の環境問題に関する受け止め方の変化f .環境報告書に対する反響g.利害関係者の関心事の変化

○マネジメントレビューのアウトプットは、環境方針、環境目的や目標、その他のEMSの要素の変更に関連する決定及び処置を含んでいる必要がある。この決定及び処置は、トップマネジメントが環境方針で誓約している継続的改善と首尾一貫して整合しているはずのものである。必要な場合は環境方針までさかのぼって改訂される。決定とは、レビューした結果、改善すべき点があれば何を改善するかを決めることである、処置とは、行うべき処置を指示することであると、考えてもよい。

48)マネジメントレビューからのアウトプットには、継続的改善へ

のコミットメントと首尾一貫させて、環境方針、目的、目標及

びその他の環境マネジメントシステムの要素へ加え得る変更に

関係する、あらゆる決定及び処置を含むこと。

47)マネジメントレビューへのインプットは、次の事項を含むこと。

a.内部監査の結果、法的要求事項及び組織が同意するその

他の要求事項の順守評価の結果

b.苦情を含む外部の利害関係者からのコミュニケーション

c.組織の環境パフォーマンス

d.目的及び目標が達成されている程度

e.是正処置及び予防処置の状況

f .前回までのマネジメントレビューの結果に対するフォロ

ーアップ

g.環境側面に関係した法的及びその他の要求事項の進展を

含む、変化している周囲の状況

h.改善のための提案

40

1.2

41

環境マネジメントシステム構築の実際Chapter

1環境マネジメントシステム

環境マネジメントシステム(EMS)を継続的に運用するために、JIS Q14001が要求する内容と、組織が必要と判断する内容を文書化する。ただし、文書の種類、量は多ければ多いほどよいというものでもない。必要不可欠なものについて、また表現方法も場合によりフローチャートなどを使ってわかりやすくするよう心がけたい。また、手順を文書化する際は、すでに組織内にある業務手順を十分考慮に入れ、自組織に合ったシステムを作り上げることが重要である。図1.3-1にEMS文書体系の例を示す。ここでは、環境マネジメントマニュアルはEMSの概要を記述する1次文書、部門共通の規程類を2次文書、部門内の手順書を3次文書としている。大組織では4次文書まであることもあるし、中小組織では2次文書までで十分なケースもあるだろう。また、環境方針や環境目的・目標などは、それぞれを規定した元文書のレベルに対応した環境関連文書と位置づけている。例えば、環境方針はマニュアルに、環境目的・目標は規程に対応した関連文書として考えることができる。

1.3 環境マネジメントシステム構築の実際

1.3.1 文書体系とJIS Q 14001要求事項の概要

環境 マネジメント マニュアル

部門共通標準書

(規程)

部門標準書

(手順書)

記  録

1次文書

2次文書

3次文書

外部文書

環境関連文書

■図1.3-1 環境マネジメントシステム文書体系の例

42

1.3

(1)環境マネジメントマニュアル環境マネジメントマニュアルにはEMSの概要を記述するに止め、手順などの詳細は下位文書(2次文書、3次文書)に示すのが一般的である。その場合、下位文書の参照、つまり引用関係をマニュアル上で示すことになる。また、マニュアルの付録として環境方針、環境目的・目標、EMS文書一覧、環境記録一覧などを添付する組織もある。なお、JIS Q 14001は環境マネジメントマニュアルの作成を要求しているわけではない。従って、組織によって環境マネジメントマニュアル、環境マニュアル、環境管理規程などさまざまな名称で呼ばれ、また、そこに含まれている内容もさまざまである。規格の要求事項では、主要な要素(4.2から4.6までの17条項の主要な内容)と、主要な要素間の相互関係、及びEMSの文書間の参照(文書間のつながりをたどれるように示す。例えば、引用関係を示す)を含めて、「4.4.4 文書類」で要求される内容がEMS文書全体でカバーされることを求めている。

(2)規程・手順書環境マネジメントマニュアルの下位文書として、EMSの概要を記述したマニュアルとつながりを持たせながら、具体的な手順について記述した文書である規程や手順書を作成する。マニュアルと同じレベルの表現を規程や手順書で繰り返す必要はない。環境マネジメントマニュアルに記述すると文章量が多くなり、その部分の詳細を知らなくてもよい者にとって読みにくくなると思われる内容については、規程や手順書に落とし込むとよい。例えば、次のような内容の文書が規程や手順書となる。a.環境側面特定及び著しい環境側面決定(環境影響評価)の手順b.運用管理(著しい環境側面に伴う運用を中心に、関連する運用。監視及び測定の手順を含んでもよい)の手順

c.内部監査の手順

(3)適用範囲文書の適用範囲は、EMSの適用範囲と一致するのが通常である。ただし、QMS(品質マネジメントシステム)など他の分野の文書と共用する場合はこの限りではない。この場合、該当する文書についてEMS内での位置付けを明確にしておく。

目次

(1)目的(2)適用範囲(3)定義(4)環境マネジメントシステム要求事項[4.1]一般要求事項(注1)

[4.2]環境方針[4.3]計画[4.3.1]環境側面[4.3.2]法的及びその他の要求事項[4.3.3]目的、目標及び実施計画[4.4]実施及び運用[4.4.1]資源、役割、責任及び権限[4.4.2]力量、教育訓練及び自覚[4.4.3]コミュニケーション[4.4.4]文書類[4.4.5]文書管理[4.4.6]運用管理[4.4.7]緊急事態への準備及び対応[4.5]点検[4.5.1]監視及び測定[4.5.2]順守評価[4.5.3]不適合並びに是正処置及び予防処置[4.5.4]記録の管理[4.5.5]内部監査[4.6]マネジメントレビュー

(5)付録付1.環境方針付2.レイアウト図(排水経路及び環境重要設備の配置を含む)付3.法的及びその他の要求事項一覧(概要編)付4.環境目的、目標一覧付5.環境マネジメントシステム文書一覧付6.環境記録一覧

43

環境マネジメントシステム構築の実際Chapter

1環境マネジメントシステム

1.3.2 環境マネジメントマニュアルの例

(注1)[ ]内の見出しの番号は、JIS Q14001と同様の番号を使用しています。

44

1.3

(1)目的この環境マネジメントマニュアルは、環境工業株式会社(以下、当社という)の環境マネジメントシステム(以下、EMSという)を JIS Q14001:2004の規格要求事項に基づいて確立し、実施し、維持し、環境保全活動を効果的に推進するために、EMSの概要を定める。

(2)適用範囲本マニュアルは、当社のEMSの適用範囲に適用する。なお、「EMSの適用範囲」は、本マニュアル[4.1 一般要求事項]に示す。

(3)定義本マニュアルにおいて使用する用語は、次のとおりである。以下に定めるものの他は、JIS Q 14001:2004にある「3.用語及び定義」による。a.トップマネジメント:EMSの最高責任者をいい、当社社長がこれにあたる。副社長は、社長がその任を果たせないとき、EMSに関する社長の役割、責任及び権限を代行する。

b.要員:当社のすべての役員、従業員、及びX社(構内協力会社)従業員の内、当社EMSの適用範囲内で働く者。

c.環境目的:環境方針と整合する中期の環境上の到達点であり、3年間で達成するために設定するもの。

d.環境目標:環境目的を達成するための短期の詳細なパフォーマンス要求事項で、単年度で達成するために設定するもの。

(4)環境マネジメントシステム要求事項[4.1]一般要求事項

(1)EMSの確立など当社は、JIS Q 14001の要求事項に従ってEMSを確立し、文書化し、実施し、維持し、継続的に改善する。当社がこの要求事項をどのように満たすかは、本マニュアルを含む当社EMS文書に示す。(2)EMSの適用範囲当社(K県Y市○○町1-1)が行う家電製品の金属部品及び外装品の設計、製造、販売に伴う事業活動、並びに当社役員及び従業員に加え、当社EMS適用範囲内で業務に従事するX社従業員を対象とする。

[4.2]環境方針

(1)策定、実行社長は、環境パフォーマンスに関する当社の全体的な意図及び方向付け

45

環境マネジメントシステム構築の実際Chapter

1環境マネジメントシステム

として、次の事項を反映した環境方針を文書化し、定め、実行を確実にする。1)当社の活動、製品及びサービスの内容、規模及び環境影響に対して適切に記述する。

2)継続的改善及び汚染の予防に関する誓約を含める。3)当工場の環境側面に関係して適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を順守する誓約を含める。

4)環境目的及び目標を設定及びレビューするための枠組みを与える。(2)見直し、改訂社長は、マネジメントレビュー(毎年3月)において環境方針の見直し及び必要な改訂を行う。ただし、当社の事業内容、著しい環境側面及び利害関係者の関心事などに変更が生じた場合、また社長が必要と判断した場合、環境方針の見直し及び必要な改訂を行う。(3)周知環境管理責任者は、環境方針カードの配布及び環境自覚教育の実施より、環境方針をすべての要員に周知する。(4)一般への開示一般の人々から環境方針開示の要求がある場合、総務部長は環境方針リーフレットを提供する。また、総務部長は、当社のホームページに環境方針を常時掲示する。

○関連文書・環境方針

[4.3]計画

[4.3.1]環境側面

(1)環境側面の特定各部門は、「環境影響評価規程」に基づき、当社のEMS適用範囲内に含まれる活動、製品及びサービスに関する管理できる環境側面及び影響を及ぼすことができる環境側面を対象に、自部門にかかわる環境側面を特定し、これを「部門環境側面特定表」にまとめる。環境側面の特定では、通常時、非通常時及び緊急時、また、プラスの環境側面を考慮に入れる。部門長はこれを承認する。(2)著しい環境側面の決定環境管理部は、「環境影響評価規程」に基づき、「部門環境側面特定表」にまとめた各部門の環境側面を「全社環境影響評価表」にとりまとめ、環境影響評価を実施して著しい環境側面を決定し、これを「著しい環境側面

46

1.3

一覧表」にまとめる。環境管理責任者はこれを承認する。「著しい環境側面一覧表」には、以下の項目を記入する。①著しい環境側面②該当する部門・活動(設備)名③対応する環境影響④通常時、非通常時、緊急時⑤プラスの環境側面

(3)情報の記録及び最新化部門は、部門の環境側面を年1回(2月)、並びに新規設備やプロセスの導入、新製品開発や改良、及び新規プロジェクトの開始、終了時に見直し、「部門環境側面特定表」の必要な最新化を行う。部門長はこれを承認する。環境管理部長は、この変更部分を含めすべての環境側面について環境影響評価結果を見直し、著しい環境側面変更の有無を確認する。この手順は(2)項に準じて実施する。環境管理部は、環境側面及び著しい環境側面に関する記録である「部門環境側面特定表」、「全社環境影響評価表」及び「著しい環境側面一覧表」を保管する。(4)著しい環境側面の管理著しい環境側面は、原則として環境目的及び目標に展開し、その環境影響を改善する(「環境目的、目標、実施計画管理規程」による)。また、財務上、技術上の理由などで環境目的及び目標に展開することが困難な場合、現状を維持するための管理を実施する。これらを含め、著しい環境側面はEMS全体の中で管理する。

○関連文書・環境影響評価規程○関連記録・部門環境側面特定表・全社環境影響評価表・著しい環境側面一覧表

[4.3.2]法的及びその他の要求事項

(1)法的及びその他の要求事項の特定1)環境管理部は、「環境関連法規制等管理規程」に基づき、当社の環境側面に関係して適用すべき法令、条例(法的要求事項)、及び協定、業界団体の指針、当社の自主基準など(その他の要求事項)を特定し、「環境関連法規制等一覧表」にまとめる。この一覧表においては、

47

環境マネジメントシステム構築の実際Chapter

1環境マネジメントシステム

要求事項が当社のどの環境側面(活動、設備など)に適用されるのかが明確になるよう記述する。環境管理部長はこれを承認する。

2)環境管理部は、毎年5月と11月及び必要に応じて、法的及びその他の要求事項を、インターネットのホームページ、業界の情報誌の調査及び自治体への問い合わせなどにより最新情報を入手し、「環境関連法規制等一覧表」を最新化する。環境管理部長はこれを承認する。

(2)法的及びその他の要求事項の参照環境管理部は、「環境関連法規制等一覧表」を社内イントラネットに掲載し、すべての要員が閲覧できるようにする。また、該当する部門長は必要な場合、この内容を反映させた手順書、もしくは要求事項の抜粋版を作成し、関連する要員に周知を行い、参照できるようにする。(3)法的及びその他の要求事項の管理法的及びその他の要求事項は、環境方針においてトップマネジメントが順守を誓約し、特定した要求事項が順守されているかどうかを定期的に評価し、また順守の評価結果をマネジメントレビューにインプットすることを含め、EMS全体の中で管理する。

○関連文書・環境関連法規制等管理規程○関連記録・環境関連法規制等一覧表

[4.3.3]目的、目標及び実施計画

(1)目的、目標の設定、見直し1)環境管理部は、「環境目的、目標、実施計画管理規程」に基づき、毎年4月、前年度の環境目標の達成度合い、マネジメントレビューの指示事項を考慮に入れ、関連部門と協議をし、当社全体の環境目的、目標を設定又は見直して「全社環境目的、目標、実施計画一覧」にまとめる。環境管理責任者はこれを承認する。

2)環境目的、目標の設定、見直し時には、以下の事項を反映させる。①環境目的、目標は、環境方針に整合させる。②原則として測定可能なものとする。③著しい環境側面、法的及びその他の要求事項を考慮に入れる。④技術上の選択肢、財務上、運用上及び事業上の要求事項、そして利害関係者の見解を考慮する。

(2)部門の環境目標の設定、見直し部門長は、毎年4月、全社環境目的、目標に基づき、また、前年度の部

48

1.3

門環境目標の達成度合いを考慮に入れ、部門の環境目標を設定又は見直して「部門環境目標、実施計画一覧」にまとめる。環境管理責任者は、各部門の環境目標が達成できた場合に当社全体の環境目的、目標が達成できるように必要な調整を行い、「部門環境目標、実施計画一覧」を承認する。(3)実施計画の策定、見直し1)環境管理部は、毎年4月、関連部門と協議をし、全社環境目的、目標を達成するための全社環境実施計画を策定し、「全社環境目的、目標、実施計画一覧」にまとめる。環境管理責任者はこれを承認する。

2)部門は、毎年4月、自部門の環境目標を達成するために部門環境実施計画を策定し、「部門環境目標、実施計画一覧」にまとめる。部門長はこれを承認する。

3)全社環境実施計画及び部門環境実施計画には、環境目的及び目標を達成するための責任、手段及び日程を明記する。

(4)実施計画の運用1)部門は、「環境目的、目標、実施計画管理規程」に従い、実施計画を運用する。

2)部門長は、四半期ごとに自部門の実施計画の実施状況及び環境目標の達成状況を「部門環境実施計画管理表」にまとめ、環境管理部に報告する。

3)環境管理部は、全社の実施計画の実施状況、及び環境目的、目標の達成状況を「全社環境実施計画管理表」にまとめ、「部門環境実施計画管理表」と共に環境管理責任者に報告する。

4)環境管理責任者は、全社及び部門の達成状況を確認し、必要な場合、環境目的又は実施計画の手段について見直しを行う。

○関連文書・環境目的、目標、実施計画管理規程・全社環境目的、目標、実施計画一覧・部門環境目標、実施計画一覧○関連記録・全社環境実施計画管理表・部門環境実施計画管理表

49

環境マネジメントシステム構築の実際Chapter

1環境マネジメントシステム

[4.4]実施及び運用

[4.4.1]資源、役割、責任及び権限

(1)資源の利用社長を含む経営層は、当社のEMSを実施及び管理するために必要な人的資源、専門的技能、技術、資金及び施設・設備などのインフラストラクチャーを用意し、確実に利用できるようにする。(2)環境管理責任者の任命1)社長は、環境管理責任者を任命する。2)社長は、環境管理責任者に、他の責任にかかわりなく、次の役割、責任及び権限を与える。①ISO 14001規格の要求事項に従って、EMSが確立され、実施され、維持されることを確実にすること。②マネジメントレビューのために、改善提案を含むEMSの実績を社長に報告すること。

(3)役割、責任及び権限の設定1)当社の環境マネジメントを効果的に実施するために役割、責任及び権限を以下に定める。部門への周知は本マニュアルの配布をもって行い、部門長が部内に周知する。

2)トップマネジメント(社長)①EMSの適用範囲の設定②環境方針の策定、見直し、改訂③EMSに必要な資源を利用できるようにする④環境管理責任者の任命⑤環境マネジメントマニュアルの承認⑥臨時内部監査実施の要否判断⑦マネジメントレビューの実施

3)環境管理責任者①ISO 14001規格に従ったEMSの確立、実施、維持を確実にする②トップマネジメントに、改善提案を含めてEMSの実績を報告③EMSに必要な資源を利用できるようにする④環境マネジメントマニュアルの作成、見直し、改訂⑤規程の承認⑥環境方針の要員への周知⑦「著しい環境側面一覧表」の承認⑧「全社環境目的、目標、実施計画一覧」の承認⑨「部門環境目標、実施計画一覧」の承認⑩全社及び部門の実施計画の達成状況確認と必要な見直し

50

1.3

⑪「年間教育訓練計画書」の承認⑫外部からの環境情報への外部対応決定及び指示⑬著しい環境側面に関する情報開示要否の決定及び記録⑭「緊急事態及び事故一覧表」の承認⑮臨時内部監査要否の判断⑯内部監査責任者としての業務(「内部監査年間計画書」の作成、内部監査員の指名、内部監査結果を社長に報告)⑰マネジメントレビューへの情報インプット、「マネジメントレビュー記録」の確認

4)環境管理部長①EMSに必要な資源を利用できるようにする②「環境関連法規制等一覧」の承認③外部からの環境情報の対応判断④環境情報管理規程の作成、見直し、改訂⑤緊急事態対応規程の作成、見直し、改訂⑥環境記録管理規程の作成、見直し、改訂

5)総務部長①環境方針の一般への開示

6)部門長①「部門環境側面特定表」の承認②関連する法的及びその他の要求事項の周知及び参照③部門環境目標の「部門環境目標、実施計画一覧」へのまとめ④部門環境実施計画の承認⑤「部門環境実施計画管理表」のまとめ、報告⑥EMSに関する役割、責任及び権限の周知⑦関連する著しい環境影響の原因となり得る業務への社内有資格者の割当て⑧教育訓練及び自覚訓練等の実施、記録の保管⑨内部環境情報の部門内への周知⑩部員からの環境上の提案への対応検討、決定⑪規程の作成、見直し、改訂⑫手順書の承認⑬順守評価の実施、記録の作成、環境管理責任者への報告⑭内部監査における不適合の是正処置実施

7)環境管理部①「全社環境影響評価表」のとりまとめ、最新化②「著しい環境側面一覧表」のまとめ、最新化

51

環境マネジメントシステム構築の実際Chapter

1環境マネジメントシステム

③環境側面及び著しい環境側面に関する記録の保管④「環境関連法規制等一覧表」のまとめ、最新化、社内イントラネットへ掲載⑤「全社環境目的、目標、実施計画一覧」のまとめ⑥「全社環境実施計画管理表」のまとめ、環境管理責任者への報告⑦著しい環境影響の原因となり得る業務の明確化⑧「社内有資格者リスト」及び力量に関する記録の保管⑨環境側面及びEMSに関する教育訓練の必要性の明確化⑩「年間教育訓練計画書」の作成⑪社内文書及び外部文書の配付管理、廃止文書(原本)の保管⑫著しい環境側面に伴う運用の明確化⑬「緊急事態及び事故一覧表」のまとめ⑭「監視及び測定項目一覧表」のまとめ⑮監視及び測定機器の「計測機器管理台帳」への登録、記録の保管⑯「マネジメントレビュー記録」の作成

8)各部門①「部門環境側面特定表」のまとめ、最新化②部門環境実施計画を策定し「部門環境目標、実施計画一覧」にまとめ③外部からの環境情報への必要な対応、処置及び記録④該当する著しい環境側面の情報開示の実施⑤手順書(運用管理の手順書を含む)の作成、見直し、改訂⑥社内文書及び社外文書の部内管理⑦著しい環境側面に関連する購入先及び外注先に関連要求事項を伝達⑧該当する緊急事態対応手順のテスト⑨主要な特性の監視及び測定の実施、記録

9)内部環境監査員(チームリーダー及びチームメンバー)①事前情報の収集②「内部監査実施計画書」の作成③「内部監査チェックリスト」の作成④内部監査の実施(不適合の指摘及び改善提案の実施を含む)⑤是正処置の妥当性評価⑥「内部監査報告書」の作成

52

1.3

○関連記録・環境管理責任者任命書

[4.4.2]力量、教育訓練及び自覚

(1)力量1)環境管理部は、著しい環境影響の原因となり得る業務を明確にする。著しい環境側面に関連する業務であって、かつ力量不足により作業の手違いや指示・判断の誤りが生じる結果、環境に著しい影響を与える可能性のある業務が対象となる。

2)該当する部門長は、この業務に対して、教育、教育訓練又は経験に基づいて力量があると認定された社内有資格者を割り当てる。

3)環境管理部は、「社内有資格者リスト」及びこれら有資格者が力量要件を満たすことを示す記録を保管する。

4)これらの詳細手順は、「環境教育訓練規程」に定める。(2)教育訓練1)環境管理部は、全社の業務について、環境側面及びEMSに関する教育訓練の必要性を「環境教育訓練規程」に明確にする。この中には、特に著しい環境側面に関連する(1)項の力量、(3)項の自覚のための環境自覚訓練の必要性も含む。

2)環境管理部は、毎年4月、教育訓練の必要性に基づき、「年間教育訓

トップマネジメント(社長)

環境管理責任者

内部環境監査チーム

環境管理部

製 造 部

開発設計部

購 買 部

営 業 部

総 務 部

■図1.3-2 環境マネジメント組織図

53

環境マネジメントシステム構築の実際Chapter

1環境マネジメントシステム

練計画書」を作成する。環境管理責任者はこれを承認する。3)部門長は、「年間教育訓練計画書」に基づき、自部門にかかわる教育訓練の実施、又は、教育訓練の必要性をすでに満たした適格者への業務の外注を行う。これらの記録を保管する。

(3)自覚部門長は、「年間教育訓練計画書」に基づき、以下の事項を自覚させるための自覚訓練を実施し、記録を保管する。①環境方針及び手順並びにEMSの要求事項に適合することの重要性②自らの業務に伴う著しい環境側面及びそこから現に発生している、又は今後発生する可能性のある環境影響、並びに各人の作業改善による環境上の利点③EMSの要求事項との適合を達成するための役割及び責任④規程された手順から逸脱した際に予想される結果

○関連文書・環境教育訓練規程○関連記録・社内有資格者リスト・年間教育訓練計画書・力量保有を実証する記録・教育訓練の記録・自覚教育の記録

[4.4.3]コミュニケーション

(1)内部コミュニケーション1)当社の環境目的・目標・実施計画、EMS関連情報などは、部門長会議又は社内イントラネットにより各部門へ周知する。部門長は、これらの内容及び自部門のEMSの運用状況について、部内会議又は朝礼によって部門内に周知する。

2)部門長は、「環境情報連絡票」に記入された部員からの環境上の提案について、これへの対応を決定し、「環境情報連絡表」に記入し対応を指示する。また、部門長は、提案が他部門にまたがる内容の場合、部門長会議で対応を検討する。

3)これらの詳細手順は「環境情報管理規程」に定める。(2)外部からの環境情報コミュニケーション1)外部の利害関係者からの環境上の苦情、要望、意見及びEMS関連情報は、その受付者が「環境情報連絡票」に記入し、環境管理部へ報

54

1.3

告する。2)環境管理部長は、情報の内容により内部対応で十分と判断した場合、対応・処置を関連部門に依頼する。また、環境管理部長は、情報の内容により外部対応が必要と判断した場合、環境管理責任者に報告する。環境管理責任者は、対応を決定し、関連する部門長に対応を指示する。いずれの場合も、関連部門は、対応・処置の結果を「環境情報連絡票」に記録する。

3)これらの詳細手順は「環境情報管理規程」に定める。(3)著しい環境側面に関する外部とのコミュニケーション1)環境管理責任者は、当社が特定した著しい環境側面のそれぞれについて、外部への連絡、情報開示を行うかどうかを決定し、決定を記録する。

2)環境管理部長は、連絡、情報開示を行うと決めた著しい環境側面について、その判断基準や手順を「環境情報管理規程」に文書化し、該当する部門はこれに従い実施する。

3)著しい環境側面に関する決定の概要は次のとおりである。

○関連文書・環境情報管理規程○関連記録・環境情報連絡票

[4.4.4]文書類

(1)当社は、EMS文書として以下の事項を含める。①環境方針②環境目的及び目標

著しい環境側面 情報公開の 要否決定 必要な場合の公開方法

電力の消費 必要 年間使用量を環境報告書で年1回公開

コピー用紙の消費 不要

産業廃棄物の排出 必要 年間排出量を環境報告書で年1回公開

化学物質の排水口からの 流出

必要 流出後速やかに市役所と地元自治会に連絡、 報告する

LPGの漏れ 必要 漏出後速やかに近隣工場、自治会、消防署、 市役所に連絡、報告する

■表1.3-1 著しい環境側面に関する決定の概要

55

環境マネジメントシステム構築の実際Chapter

1環境マネジメントシステム

③EMSの適用範囲の記述④EMSの主要な要素及び主要な要素間の相互作用の記述⑤EMSに関係する文書の参照⑥ISO 14001規格が要求する、記録を含む文書⑦著しい環境側面をEMSで確実に管理するために当社が必要と決定した、記録を含む文書

(2)当社のEMS文書の体系を次に示す。①EMSの概要を示した環境マネジメントマニュアルを1次文書とし、全社に共通する手順を定めた規程を2次文書、部門の手順を定めた手順書を3次文書として扱う。②外部文書は、ISO 14001(JIS Q 14001)規格書、環境法令集、環境関連協定書、業界の指針などを含む。③関連文書は、「環境方針」、「全社環境目的、目標、実施計画一覧」、「部門環境目標、実施計画一覧」など1次文書及び2次文書からのアウトプットをいう。

■図1.3-3 マネジメントシステム文書体系の例

環境 マネジメント マニュアル

文書体系図

規程

(部門共通)

手順書

(部門ごと)

記  録

1次文書

2次文書

3次文書

外部文書

環境関連文書

56

1.3

[4.4.5]文書管理

(1)管理対象とする文書本項で管理する文書は、本マニュアル「4.4.4 文書類」の文書体系に示したものの内、記録を除くものとする。文書管理の詳細は「環境文書管理規程」に定める。(2)文書の作成、発行、改訂及び識別1)「環境文書管理規程」に定められた作成者が文書を作成し、また定められた責任者がその適切性を承認する。

■表1.3-2 EMS文書一覧(外部文書及び記録を除く)

規格条項 1次文書 2次文書 3次文書 関連文書

EMS全体 環境マネジメントマニュアル 環境方針

4.1

4.2

4.3.1 環境影響評価規程

4.3.2 環境関連法規制等管理 規程

4.3.3 環境目的、目標、実施 計画管理規程

全社環境目的、目標、実 施計画一覧 部門環境目標、実施計画 一覧

4.4.1

4.4.2 環境教育訓練規程

4.4.3 環境情報管理規程

4.4.4

4.4.5 環境文書管理規程

4.4.6 省電力管理手順書 コピー用紙削減手順書 産業廃棄物管理手順書 調達先管理手順書 外注先管理手順書

環境影響評価規程 緊急事態対応規程

4.4.7

監視及び測定管理規程 4.5.1

環境関連法規制等管理 規程

4.5.2

不適合管理規程 文書管理規程

4.5.3

環境記録管理規程 4.5.4

内部監査規程 4.5.5

マネジメントレビュー実施 規程

4.6

2)作成者は随時文書を見直し、必要な場合は改訂する。また、責任者は、適切性を再承認する。

3)文書は読みやすく判読できるように、また、どの文書であるのか、文書名、文書番号により確認できるようにする。

(3)文書の配付管理1)環境管理部は、文書管理台帳により社内文書及び外部文書を配付管理し、該当する文書の適切な版が必要なところで使用できるようにする。

2)文書の改訂時、変更点を確認できるようにし、また、使用する文書が適切な版であることが発行日及び版数によって確認できるようにする。

3)文書の配付先は、最新版の受領時「文書管理票」に受領の押印をし、廃止文書は「文書管理票」と共に環境管理部に返却する。

4)環境管理部は、廃止文書の原本について表紙に「廃止文書」と赤字の押印をして識別できるようにし、内部文書は5年間、外部文書は10年間保管する。また、配付先から回収した廃止文書は廃棄する。

○関連文書・環境文書管理規程○関連記録・文書管理票

[4.4.6]運用管理

(1)著しい環境側面に伴う運用の明確化環境管理部は、著しい環境側面に伴う運用を明確にする。また、環境方針に沿った運用とするため、順守することが難しい法的及びその他の要求事項に伴う運用も明確にする。(2)著しい環境側面に伴う運用の管理1)前項で明確にした運用の中から、文書化された手順がないと環境方針、目的及び目標から逸脱するかもしれない運用について、該当する運用の責任部門は、これを管理するための手順書を作成する。

2)この手順書には、業務又は設備管理上順守すべき運用基準を明記する。運用基準は、基準内で運用すれば当初計画した環境方針、目的及び目標が達成できるように設定する。

(3)著しい環境側面に伴う供給者、請負者の管理1)著しい環境側面に関する購入品及び外注作業について、関連する部門はこれらを管理する手順書を作成する。

57

環境マネジメントシステム構築の実際Chapter

1環境マネジメントシステム

58

1.3

2)関連する部門は、これらの購入品及び外注作業に関係する供給者及び請負者に適用可能な手順及び要求事項を伝達し、先方の確認を得る。

○関連文書・省電力管理手順書・コピー用紙削減手順書・産業廃棄物管理手順書・調達先管理手順書・外注先管理手順書

[4.4.7]緊急事態への準備及び対応

(1)緊急事態及び事故の特定及び対応1)環境管理部は、「環境影響評価規程」により評価した緊急時の著しい環境側面にかかわる緊急事態及び事故、また同業他社で過去に発生した事例を参考に、当社で今後発生する可能性のある緊急事態及び事故を特定し、これらを「緊急事態及び事故一覧表」にまとめる。環境管理責任者は、これを承認する。

2)環境管理部長は、特定した緊急事態及び事故に対応する手順を「緊急事態対応規程」に定める。

3)緊急事態及び事故の発生後は、「緊急事態対応規程」に従い対応し、緊急事態及び事故に伴う有害な環境影響を予防又は緩和する。

(2)緊急事態への準備及び対応手順の見直し、テスト1)「緊急事態対応規程」にある対応手順について、緊急事態及び事故の責任部門は、毎年1月、手順が有効に機能するかどうかをテストする。

2)環境管理部長は、「緊急事態対応規程」を毎年2月、及び前項のテスト結果を踏まえて見直しを行い、必要に応じて改訂する。また、緊急事態及び事故の発生後にも見直しを行い、必要に応じて改訂する。

○関連文書・環境影響評価規程・緊急事態対応規程○関連記録・緊急事態及び事故一覧表

59

環境マネジメントシステム構築の実際Chapter

1環境マネジメントシステム

[4.5]点検

[4.5.1]監視及び測定

(1)監視及び測定1)環境管理部は、著しい環境影響を与える可能性のある運用の主要な特性を「監視及び測定項目一覧表」に明確にする。各部門は、「監視及び測定管理規程」に従い、項目ごとに定められた間隔で監視及び測定を実施し、記録する。

2)監視及び測定の対象とする主要な特性は、以下の項目を含む。①法的及びその他の要求事項の履行を示す項目②著しい環境側面に伴う運用基準の履行を示す項目③環境目的及び目標の適合を示す達成状況

(2)監視及び測定機器の校正管理環境管理部は、校正又検証された機器を監視及び測定に使用するため、

「監視及び測定管理規程」に従い、これらを「計測機器管理台帳」に登録し、関連する記録を保管する。

○関連文書・監視及び測定管理規程○関連記録・監視及び測定項目一覧表・計測機器管理台帳

[4.5.2]順守評価

部門長は、自部門の業務に関連する環境側面に適用すべき法的要求事項及び当社が順守すると決めたその他の要求事項について、「環境関連法規制等管理規程」に従い、監視及び測定結果を基に「環境関連法規制等一覧表」を用いて順守しているか否かを定期的に評価する。評価の結果は「順守評価記録」に記録し、環境管理責任者に報告する。

○関連文書・環境関連法規制等管理規程○関連記録・順守評価記録

[4.5.3]不適合並びに是正処置及び予防処置

(1)不適合以下の事項を不適合として取り扱う。なお、内部監査における不適合は

60

1.3

「内部環境監査規程」に定め、これに従い取り扱う。①ISO 14001規格要求事項及び当社EMS手順からの逸脱②当社に責任のある利害関係者からの環境上の苦情及び行政からの指摘③法的及びその他要求事項からの逸脱

(2)是正処置及び予防処置顕在する不適合に対応するために是正処置を、及び潜在する不適合に対応するために予防処置を、以下について定めた「不適合管理規程」に従い実施し、「不適合報告書」に記録する。1)顕在する不適合を認識し、不適合を除去する修正をし、そこから生じる環境影響を緩和する処置をとる。

2)顕在する不適合を調査し、不適合の原因を特定して、その原因を除去する再発防止策としての是正処置をとる。

3)潜在する不適合の発生を予防する処置の必要性を評価し、その発生の原因を除去する発生防止策としての予防処置をとる。

4)とられた是正処置及び予防処置について、原因が除去された再発防止、発生防止が確かにされたかどうかの確認を行う。

なお、是正処置及び予防処置は、問題の大きさ、及び生じた環境影響に見合ったものとする。(3)規程類の改訂是正処置及び予防処置の実施に伴い、EMS文書を改訂する必要がある場合、担当部門は「文書管理規程」に従い、必要な改訂を行う。

○関連文書・不適合管理規程・文書管理規程○関連記録・不適合報告書

61

Chapter

1環境マネジメントシステム

[4.5.4]記録の管理

(1)環境記録の対象ISO 14001規格要求事項への適合を実証するのに必要な記録、当社のEMSへの適合を実証するのに必要な記録、及びEMSを運用して達成された結果を実証するのに必要な記録について、「環境記録管理規程」に一覧表を示し、管理する。(2)環境記録の管理環境管理部長は、環境記録の識別、保管、保護、検索、保管期間及び廃棄に関する手順を「環境記録管理規程」に定める。環境記録は、読みやすく、記録の名称、日付、作成者が明記されて識別、また追跡可能であるようにする。

○関連文書・環境記録管理規程

[4.5.5]内部監査

(1)内部監査の目的内部監査の実施によって、以下の事項を確認する。①EMSがISO 14001規格要求事項に適合しているか②EMSが当社の環境基本方針及び環境方針に適合しているか

環境マネジメントシステム構築の実際

■図1.3-4 是正処置及び予防処置へのフロー

是正処置

不適合の特定

修正・緩和処置

原因の特定

再発防止策

有効性レビュー

予防処置

潜在的可能性調査

原因の特定

予防対策

有効性レビュー

62

1.3

③EMSが適切に実施されており、必要な改訂がされているか④設定した環境目的及び目標を達成しつつあるか⑤法的及びその他の要求事項を順守しているか

(2)内部監査の実施1)内部監査は、「内部監査規程」に従い、EMS適用範囲内の全部門について年2回(8月、2月)定期監査を実施する。社長又は内部監査責任者が必要と判断する時は、随時臨時監査を実施する。

2)内部監査責任者は、毎年4月、「内部監査年間計画書」を作成する。これには、著しい環境側面に関連する活動や環境上の苦情のあった活動など環境上の重要性、及び前回までの監査結果を反映させる。

3)内部監査責任者は、「内部監査員登録簿」の中から被監査部門に対して独立し、公平性及び客観性を確保できるように監査チームリーダー及び監査チームメンバーを指名し、「内部監査年間計画書」に示す。

4)監査チームリーダーは、事前に収集した情報を反映して「内部監査実施計画書」及び「内部監査チェックリスト」を作成する。

5)内部監査では、監査チームリーダーは発見した不適合について「不適合報告書・回答書」にて、是正処置を要求する。被監査部門長は、不適合について問題の大きさに対応して原因を除去する是正処置を実施し、「不適合報告書・回答書」にて回答し、監査チームリーダーに報告する。監査チームリーダーは、是正処置の妥当性を評価する。

6)監査チームリーダーは、内部監査の最終結果を「内部監査報告書」に記述し、「不適合報告書・回答書」を添付して、内部監査責任者に提出する。内部監査責任者は、「内部監査報告書」に必要な内容を記入し、社長に報告する。

○関連文書・内部監査規程○関連記録・内部監査年間計画書・内部監査員登録簿・内部監査実施計画書・内部監査チェックリスト・不適合報告書・回答書

[4.6]マネジメントレビュー

(1)マネジメントレビューの目的当社のEMSが、引き続き適切で、妥当でかつ、有効であることを確実

63

環境マネジメントシステム構築の実際Chapter

1環境マネジメントシステム

にするために実施する。(2)マネジメントレビューの実施1)社長は、毎年3月、「マネジメントレビュー実施規程」に従い、マネジメントレビューを実施する。ただし、社長が必要と判断した時は随時マネジメントレビューを実施する。

2)環境管理責任者は、レビューのために以下の項目をインプットする。①内部監査及び外部審査の結果②法的及びその他の要求事項の順守評価の結果③利害関係者からの環境上の苦情、意見、要望④環境目的及び目標の達成状況⑤環境目的及び目標に展開されない著しい環境側面の維持管理状況⑥是正処置及び予防処置の状況⑦前回までのレビュー結果が実施され、効果的であるかのフォローアップ⑧関連法規制など制定・改正を含む変化している周囲の状況⑨改善のための提案

3)社長は、前項のインプット情報を基礎として、自らが環境方針において誓約した継続的改善を考慮に入れて、環境方針、目的、目標及びその他のEMSの要素についてレビューを実施し、必要な変更を指示する。これには、改善の機会及び変更の必要性についての評価を含める。

4)マネジメントレビューの結果は、環境管理部が「マネジメントレビュー記録」を作成し、環境管理責任者が確認する。

○関連文書・マネジメントレビュー実施規程○関連記録・マネジメントレビュー記録

(付表)

環境方針

当社は、家電製品の金属部品及び外装品の設計、製造、販売に伴う事業活動を行っていることを踏まえ、「宇宙船地球号」の一員として環境問題への対応を最重要課題の一つと認識し、環境との調和に配慮した事業活動

64

1.3

を推進することに努めます。当工場は、本環境方針を達成するために、著しい環境影響を生じる環境側面を中心に環境目的・目標を設定し、環境負荷の低減が図れるよう、以下の環境マネジメント活動を実施します。

(1)環境マネジメントシステムの継続的改善を推進し、汚染の予防に取り組む。

(2)関連する環境法規制・条例・協定等を順守し、また自主管理基準を設定して環境保全に取り組む。

(3)産業廃棄物排出の最少化を目指し、リサイクル化を促進する。(4)エネルギーの有効利用、及び二酸化炭素排出量の削減を図る。(5)有害化学物質使用量の削減を推進する。(6)環境保全に係わる社会活動に積極的に参画し、地域社会との共生に

努める。(7)本環境方針は当社役員、従業員及び構内常駐の協力会社従業員に周

知する。また、利害関係者から要求ある場合は公開する。

2005年3月11日

環境工業株式会社代表取締役社長 地球 太郎

(付2以降は略)

65

2.1 環境マネジメントシステム監査の目的と定義

環境マネジメントシステム監査

Chapter

2

(1)一般的定義(規格(注1)3.1)監査基準が満たされている程度を判定するために、監査証拠を収集し、

それを客観的に評価するための、体系的かつ独立し、文書化されたプロセス。

(2)環境マネジメントシステム(EMS)監査の定義(JIS Q 14001-3.6)組織のEMSが、その組織によって設定されたEMS監査基準に適合する

か否かを決定するための証拠を、客観的に取得及び評価する体系的かつ文書化されたプロセス、並びにこのプロセスの結果についての経営層とのコミュニケーション。

(3)監査の種類(規格3.1)a.内部監査は、第一者監査と呼ばれることもあり、マネジメントレビュー及びその他の内部目的のために、その組織自体又は代理人によって行われ、その組織の適合を自己宣言するための基礎としてもよい。多くの場合、特に中小規模の組織の場合は、監査の対象となる活動に関する責任を負っていないことで、その独立性を実証するこ とができる。

b.外部監査には、一般的に第二者監査及び第三者監査と呼ばれるものが含まれる。第二者監査は、顧客など、その組織の利害関係者又はその代理人によって行われる。第三者監査は、JIS Q 14001の要求事 

【目的】

○経営方針及び管理業務を支援する

○パフォーマンス改善のための情報の提供

(注1)Chapter2でいう「規格」はJISQ 19011のことを指します。

66

2.1

項への適合性を審査登録又は認証する機関のような、外部の独立した監査機関によって行われる。

c.品質マネジメントシステム及びEMSを一緒に監査する場合、これを複合監査という。

d.一つの被監査者を複数の監査する組織が協力して監査する場合、これを合同監査という。

監査の関係者を図2.2-1に示す。

(1)監査依頼者の役割a.監査の必要性を決定し、監査の目的、監査範囲を明確にする。b.監査基準を承認する。c.監査を実施するに当たって適切な権限と資源を提供する。d.監査組織(監査員の人選、監査チーム)の発足を指示し、その構成を承認する。

e.監査計画を承認する。f.被監査部門と連絡し、十分な協力をするよう要請する。g.監査報告書を受領し、その配付を決定する。h.監査結果により改善を進める。

(2)監査プログラム管理責任者の役割a.監査プログラムの目的及び範囲を設定する。b.責任及び手順を確立し、並びに資源が確実に提供されるようにする。c.監査プログラムが確実に実施されるようにする。d.適切な監査プログラムの記録が確実に維持されるようにする。e.監査プログラムを監視し、レビューし、改善する。

(3)監査員の役割1) 監査員の立場(JIS Q 14001-A 4.5.4)

監査は、組織内部からの要員又は組織が選んだ外部の者が実施してもよい。いずれの場合にも、監査を実施する者は、公平かつ客観的な立場にあ

67

監査の関係者Chapter

2環境マネジメントシステム監査

2.2 監査の関係者

監査依頼者

監査プログラム 管理責任者

監査員 (監査チーム) 被監査者

■図2.2-1 監査の関係者

68

2.2

ることが望ましい。

2) 監査の原則(規格4.)

①倫理的行動(職業専門家であることの基礎)信用があり、誠実であり、機密を保持し、分別があることは、監査に とって本質的な要素である。

②公正な報告(ありのままに、かつ、正確に報告する義務)監査所見、監査結論及び監査報告は、ありのままに、かつ、正確に監 査活動を反映する。監査中に遭遇した顕著な障害、及び監査チームと被 監査者との間で解決に至らない意見の食い違いについても報告する。

③職業専門家としての正当な注意(監査の際の広範な注意及び判断)監査員は、自らが行っている業務の重要性、並びに監査依頼者及びそ の他の利害関係者が監査員に対して抱いている信頼に見合う注意を払う必要がある。必要な力量を持つことは、一つの重要な要素である。

④独立性(監査の公平性及び監査結論の客観性の基礎)監査員は、監査の対象の活動から独立した立場にあり、偏り及び利害 の衝突がない者である。監査員は、監査所見及び監査結論が監査証拠だ けに基づくことを確実にするために、監査プロセス中、終始一貫して客観的な心理状態を維持する。

⑤証拠に基づくアプローチ(体系的な監査プロセスにおいて、信頼性及 び再現性のある監査結論に到達するための合理的な方法)監査証拠は、検証可能なものである。監査は限られた時間及び資源で行われるので、監査証拠は、入手可能な情報からのサンプルに基づく。サンプリングを適切に活用しているか否かは、監査結論にどれだけの信頼を置けるかということと密接に関係してくる。

3)監査チーム

①チームリーダー

a.監査の目的、監査範囲、監査基準について監査依頼者と協議する。b.監査対象に関する基礎情報を入手する:例えば被監査部門の事業 内容、以前の監査結果など。

c.監査要求事項の判断・監査の対象事項について十分な情報があるか。

69

監査の関係者Chapter

2環境マネジメントシステム監査

・監査を支援する資源が準備されているか。・被監査部門からの監査協力はあるか。

d.監査チームの編成・チームの構成についての監査依頼者との合意・監査チームへの活動指示

e.監査計画の作成・監査計画を監査チームメンバーと協議して作成する。・監査依頼者、被監査部門の同意を得る必要がある。

f.作業文書と詳細な手順の作成g.初回及び最終会議の運営h.監査実施において発生するすべての問題の解決:監査の目的が達 成不可能になる場合には、その理由を監査依頼者と被監査部門に報告する。

i.不適合の指摘:被監査部門に対し、重大な不適合の監査結果につ いて遅滞なく報告する。

j.監査結果の報告・監査依頼者には、監査計画で合意した監査結果を明確かつ結論的に、期間内に報告する。・監査範囲に含まれている場合は、EMSの改善点を推奨する。

②チームメンバー

a.チームリーダーの指示に従い、チームリーダーを支援する。b.チームリーダーの指示に従って作業文書、監査手順等を作成する。c.担当業務を客観的、効率的かつ能率的に、監査範囲内で計画し実 施する。

d.関連する十分な事実を収集し、解析し監査結果を決定し、監査の結論を出す。

e.個々の監査結果を文書化する。f.監査に関する文書を保管し、被監査部門から要求された場合は、それらの文書を返却する。

g.監査報告書の執筆を支援する。

(4)被監査者の役割a.従業員への周知:被監査部門の長は必要に応じて、監査目的や監査範囲、監査のメリット、監査に対して協力する事項などの情報を従業員に通知し周知する。

b.必要設備等の準備:効果的かつ効率的で安全な監査を実行できるよ

70

2.2

う、監査チームが必要とする設備(例えば会議室)、器具(複写機、安全帽など)を提供する。

c.監査チームの案内・先導(監査チームの諸事全般対応)(規格6.5.3):被監査部門の業務全般を把握しているスタッフメンバーを選任し、監査員に同伴し、現場への誘導案内者となり、また監査員の健康、安全及びその他の必要な処する。・面談のための相手方及び時間を設定する。・現場又は組織の特定の部署への訪問を手配する。・現場の安全及びセキュリティに関する規則について、監査チーム メンバーへの周知及び遵守を確実にする。

・被監査者のために監査に立ち会う。・情報収集において不明な点を明らかにし、又は情報収集の手助けをする。

d.監査に対する協力:監査範囲内において、監査員が要求する設備、要員、関連する情報及び記録に接することができるようにし、監査目的を達成させるよう、監査員に協力する。

e.監査報告書の受領:監査報告書の写しを受領する。ただし、監査依頼者によって特に許可されない場合は除く。

71

監査プログラムの管理Chapter

2環境マネジメントシステム監査

(1)プロセスフロー(規格図1)監査プログラム管理のためのプロセスフローを図2.3-1に示す。

(2)監査プログラム管理責任者1)監査プログラム管理責任者の能力(規格5.2.2)

理解しておくべき事項は、次のとおりである。a.監査の原則b.監査員の力量c.監査技法の適用d.組織の業務内容

2.3 監査プログラムの管理

監査プログラムの実施(5.4、5.5) ・監査スケジュールの作成 ・監査員の評価 ・監査チームの選定 ・監査活動の指示 ・記録の維持

Act

監査プログラムのための権限(5.1)

監査プログラムの策定(5.2、 5.3) ・目的及び範囲 ・責任 ・資源 ・手順

監査プログラムの監視及びレビュー (5.6) ・監視及びレビュー ・是正及び予防処置の必要性の特定 ・改善の機会の特定

監査員の力量 及び評価(7.)

監査活動(6.)

Plan

Check

監査プログラムの 改善 (5.6)

Do

■図2.3-1 監査プログラムの管理のためのプロセスフロー

(注)図2.3-1及び以下のすべての図において表示されている数字は、規格の箇条番号を示す。

72

2.3

e.組織の業務に関連する技術

2)監査プログラム管理責任者の業務(規格5.3.1)

a.監査プログラムの目的及び範囲を設定する。b.責任及び手順を確立し、並びに資源が確実に提供されるようにする。c.監査プログラムが確実に実施されるようにする。d.適切な監査プログラムの記録が確実に維持されるようにする。e.監査プログラムを監視し、レビューし、改善する。

3)監査プログラムの資源(規格5.3.2)

監査プログラムの資源を準備する場合の考慮事項は次のとおりである。a.監査活動を計画し、実施し、管理し、改善するために必要な財源b.監査技法c.監査員の力量を確保及び維持するプロセス、並びに監査員のパフォーマンスを改善するプロセス

d.特定の監査プログラムの目的にふさわしい力量を備えた監査員及び 技術専門家の利用可能性

e.監査プログラムの範囲f..移動時間、宿泊施設及びその他監査に必要な事項

(3)監査プログラムの目的(規格5.2.1)1)考慮事項

監査プログラムの目的を設定する場合には、次の事項を考慮して設定する。a.経営上の優先事項b.商取引上の意図c.EMSの要求事項d.法令、規制及び契約上の要求事項e.供給者を評価することの必要性f.顧客要求事項g.その他の利害関係者のニーズh.組織に対するリスク

2)監査プログラムの目的の例(規格6.2.2)

a.被監査者のEMS又はその一部の、監査基準への適合の程度の判定b.法令、規則及び契約上の要求事項への適合を確実にするためのEMSの能力の評価

c.特定の目的を満たす上での、EMSの有効性の評価d.EMSの改善が可能な領域の特定e.EMSが適切に実施され、維持されてきたかどうかの判定f.EMSが今後も引き続き妥当であるかどうかの評価

(4)監査プログラムの範囲(規格5.2.2、6.2.2)監査範囲とは、監査すべき場所、組織単位、活動、プロセス、監査対象期間等の監査の及ぶ領域及び境界である。

1)考慮事項

a.実施するそれぞれの監査の範囲、目的及び期間b.実施する監査の頻度c.監査を受ける活動の数、重要性、複雑さ、類似性及び場所d.規格、法令、規制及び契約上の要求事項、並びにその他の監査基準e.認定又は審査登録の必要性f.これまでの監査結論、又は前回の監査プログラムのレビュー結果g.言語、文化及び社会上の問題h.利害関係者の関心事項i.組織又はその運営の顕著な変更

2)監査範囲の例

a.監査の種類:特にシステムの監査かパフォーマンスの監査か、あるいは両方を含むのかを明確にしておくとよい。

b.物理的な監査範囲:どの事業所にするか、事業所の外の作業も含めるか(例えば産業廃棄物の処分など)、どの工程にするかなど。

c.組織的な監査範囲:技術管理、工程管理、総務、業務など。d.推奨事項:改善のための推奨を含めるか否か。e.監査報告書:内容、期限、配付先など。f.フォローアップ:監査チームに担当させるのかどうか。

(5)監査基準監査基準とは、「一連の方針、手順又は要求事項」(規格3.2)と定義さ

れている。〈例〉(規格6.2.2)a.JIS Q 14001に規定している方針、手続き、手順などの要求事項b.法規制上の要求事項c.自治体との協定、行政指導、業界等のガイドライン

73

監査プログラムの管理Chapter

2環境マネジメントシステム監査

74

2.3

d.契約に定められた必要事項e.社内の自主基準、環境目的・目標、手順など

(6)監査プログラムの手順(規格5.3.3)a.監査を計画し、スケジュールを作成する。b.監査及び監査チームリーダーの力量を保証する。c.適切な監査チームを選定し、役割及び責任を割り当てる。d.監査を行う。e.該当する場合は、監査のフォローアップを行う。f. 監査プログラムの記録を維持する。g.監査プログラムのパフォーマンス及び有効性を監視する。h.監査プログラムの全体の達成状況をトップマネジメントに報告する。

(7)監査プログラムの実施(規格5.4)a.関係者に監査プログラムを連絡する。b.監査プログラムに関連する監査及びその他の活動について、調整及びスケジュールの作成をする。

c.監査員の評価及び監査員の専門能力の継続的開発のためのプロセスを、それぞれ規格7.6及び7.5に従って確立し、維持する。

d.監査チームの選定を確実に行う。e.必要な資源を監査チームに提供する。f. 監査プログラムに従って監査の実施を確実に行う。g.監査活動の記録の管理を確実に行う。h.監査報告書のレビュー及び承認を確実に行い、監査報告書を監査依頼者及びその他の定められた関係者に確実に配付する。

i. 該当する場合は、監査のフォローアップを確実に行う。

(8)監査プログラムの記録(規格5.5)a.個別の監査に関係する次のような記録・監査計画・監査報告書・不適合報告書・是正処置及び予防処置報告書・該当する場合は、監査のフォローアップ報告書

b.監査プログラムのレビュー結果c.次の例を含む監査要員に関係する記録・監査員の力量の評価及びパフォーマンスの評価

75

監査プログラムの管理Chapter

2環境マネジメントシステム監査

・監査チームの選定・力量の維持及び向上

(9)監査プログラムの監視及びレビュー(規格5.6)①目的

次の項目をトップマネジメントに報告する。a.監査プログラムの目的を達成したか。b.改善の機会があるか。

②監視項目

a.監査計画を実施するための監査チームの能力b.監査プログラム及びスケジュールとの整合c.監査依頼者、被監査者及び監査員からのフィードバック

③レビュー項目

レビューの結果は、監査プログラムの是正処置及び予防処置、並びに 改善につなげる。a.監視の結果及びその傾向b.手順との適合c.利害関係者から新たに出てきたニーズ及び期待d.監査プログラムの記録e.代わりの又は新規の監査方法f.類似した状況下での監査チーム間でのパフォーマンスの一貫性

76

2.4

監査活動のフロー図を図2.4-1に示す。

2.4 監査活動

2.4.1 監査活動の概要(規格6.1)

(注)点線は、監査のフォローアップ処置があっても、通常、監査の一部とはみなさないことを示す。

監査の開始(6.2) ・監査チームリーダーの指名 ・監査の目的、範囲及び基準の明確化 ・監査の実施可能性の判定 ・監査チームの選定 ・被監査者との最初の連絡

文書レビューの実施(6.3)

・記録を含む関連するEMS文書のレビュー、  及び監査基準に照らした妥当性の判定

現地監査活動の準備(6.4)

・監査計画の作成 ・監査チームへの作業の割り当て ・作業文書の作成

現地監査活動の実施(6.5)

・初回会議の開催 ・監査中の連絡 ・案内役及びオブザーバーの役割及び責任 ・情報の収集及び検証 ・監査所見の作成 ・監査結論の作成 ・最終会議の開催

監査報告書の作成、承認及び配付(6.6)

・監査報告書の作成 ・監査報告書の承認及び配付

監査の完了(6.7)

監査のフォローアップの実施(6.8)

■図2.4-1 典型的な監査活動の概要

77

監査活動Chapter

2環境マネジメントシステム監査

(1)監査チームリーダーの指名(規格6.2.1)監査プログラム管理責任者が指名する。

(2)目的、範囲及び基準の明確化(規格6.2.2)a.監査プログラムの全体的な枠内で文書化する。b.目的は監査依頼者が明確にする。c.範囲及び基準は、監査依頼者と監査チームリーダーの協議によって定する。

d.変更については関係者間で合意する。

(3)監査の実施可能性の判定(規格6.2.3)次の事項を考慮する。監査が不可能な場合、被監査者と協議し、監査依頼者に代替案を提示する。a.監査の計画を策定するために、十分かつ適切な情報-特に必要な文書の内容が適切か

b.被監査者の十分な協力c.十分な時間及び資源

(4)監査チームの選定(規格6.2.4)監査チームの規模及び構成を決めるに当たっての考慮事項は、下記のとおりである。a.監査の目的、範囲、基準及び予測される期間b.監査が複合監査又は合同監査であるかどうかc.監査の目的を達成するために必要な監査チーム全体としての力量(専門知識のバランス)d.法令、規制、契約及び認定/審査登録の要求事項e.監査チームの独立性及び、利害の衝突を回避する必要性f.被監査者と効果的に意見を交わし、共同で作業をするための監査チームメンバーの能力

g.監査で使う言語及び被監査者に特有の社会的及び文化的特徴の理解。これらの事項には、監査員自身の技能によって対応してもよく、技術専門家による支援を介して対応してもよい。

監査チーム全体としての力量を保証するプロセスには、次のステップを含むことが望ましい。a.監査の目的を達成するために必要な知識及び技能の特定

2.4.2 監査の開始

78

2.4

b.これらの必要な知識及び技能のすべてが監査チームに備わっているような監査チームメンバーの選定

(5)被監査者との打ち合わせ(規格6.2.5)監査プログラム管理責任者又は監査チームリーダーが連絡する。打ち合わせ事項の内容は、次のとおりである。a.被監査者の代表者との連絡窓口を決める。b.監査の実施上の権限を確認する。c.予定監査日程及び監査チームの構成に関する情報を与える。d.記録を含む関連する文書の閲覧を要請する。e.適用される現地の安全規則を決める。f.監査のための手配をする。g.オブザーバーの参加及び監査チームのための案内役の必要性について合意する。

現地監査に先立って、必要な情報を入手、文書が監査基準に適合しているかどうかを判定する。

(1)文書レビューの考慮事項a.組織の規模、性質、複雑さb.監査目的c.監査範囲

(2)情報の例a.被監査部門の歴史b.地理的条件c.環境立地条件d.関連法規、条例、協定、外部からの要求事項、自主基準、環境方針:これらは監査基準を決定する際に既に分かっている項目かもしれない。

e.組織図:特にEMSに関する直接の責任者f.標準文書類:環境マネジメントマニュアル、手順書類などg.レイアウト:メイン施設などh.工程フロー図

2.4.3 文書レビューの実施(規格6.3)

i.環境記録(分析記録など)j.環境側面一覧表と著しい環境側面k.環境影響評価表l.前回の監査報告書

(1)監査計画の作成(規格6.4.1)a.監査チームリーダーが作成b.監査依頼者が承諾c.被監査者に提示後、異論、改訂があれば調整

(2)監査計画の内容(規格6.4.1、6.4.2)a.監査の目的b.監査基準及び関連の基準文書c.監査を受ける組織単位、部門単位及びプロセスの特定を含む監査範囲

d.現地監査を行う日時及び場所e.被監査者の管理者層との会議及び監査チーム内の会議を含む、現地監査活動の予定の時刻及び所要時間

f.監査チームメンバー及び同行者の役割と責任g.監査の重要な領域への適切な資源の割り当てh.監査に対する被監査者の代表者の特定i.監査報告書の記載項目及び期限j.監査の後方支援に関する手配事項(移動、現地の施設案内など)k.機密保持に関係する事項l.監査のフォローアップ処置

(3)作業文書の作成(規格6.4.3)作業文書の種類は、次のとおりである。a.チェックリストb.監査サンプリング計画c.証拠、監査所見、会議議事録等の情報を記録するための書式(チェックリストを利用してもよい)

79

監査活動Chapter

2環境マネジメントシステム監査

2.4.4 現地監査活動の準備

80

2.4

(4)チェックリスト①目的と利点

a.チェックリストの作成主目的:体系的で効率的な監査の実施及び、監査項目の抜けの防止

b.利点・監査項目の明確化・監査直前まで情報を適宜追加できる。・監査の道筋、例えば質問の順番などは当日の状況に応じて組み 替えることができる。・監査記録として使える。・記憶に頼らず質問できる。・監査員の共通資料として監査作業分担を決めるときに役に立つ。

②チェックリスト項目の例

a.チェック項目:大分類~小分類にすることを推奨b.優先順位:監査依頼者からの情報、被監査部門からの情報などにより決定

c.監査基準:必ず記載欄を設けるd.監査チーム情報:監査員名、同行専門家名などe.被監査部門情報:対象部門名、その窓口責任者、主な操業内容などf.前回の監査結果g.今回の評価結果h.コメントi.監査実施日付

(1)初回会議の開催(規格6.5.1)a.出席者:監査チームリーダー(議長)、監査員及び責任者を含む被監査者

b.目的:監査員と被監査者との間で、監査全般について共通の認識を持つために開催・監査計画を確認する。・監査活動をどのように実施するかの要点を紹介する。・連絡窓口を確認する。・被監査者が質問をする機会を提供する。

2.4.5 現地監査活動の実施

81

監査活動Chapter

2環境マネジメントシステム監査

(2)初回会議の内容(規格6.5.1)a.参加者及びその役割の概要の紹介b.監査の目的、範囲及び基準の確認c.監査の時間割及び被監査者とのその他の関連する取り決め事項の確 認。例えば、最終会議の日時、監査チームと被監査者の管理者との 中間会議、及び計画通知後に生じた変更の確認

d.監査実施の方法及び手順(これには、監査証拠は入手可能な情報のサンプルだけに基づくであろうこと、及びそのため監査には不確実性の要素があることを被監査者に説明することも含む)

e.監査チームと被監査者との正式な連絡窓口の確認f.監査中に使用する言語の確認g.監査中は、監査の進捗状況を被監査者に常に知らせることの確認h.監査チームが必要とする資源及び施設が利用可能であることの確認i.機密保持に関係する事項の確認j.監査チームのための作業安全、緊急時・セキュリティの手順の確認k.案内役の手配状況、その役割及び氏名の確認l.不適合の等級付けを含む、報告の方法m.監査を打ち切る条件に関する情報n.監査の実施又は結論に関する異議申し立ての仕組みについての情報

(3)情報の収集及び検証(規格6.5.4、6.5.2)a.監査の目的、範囲及び基準に関連する情報を評価できる程度に十分な量を収集し、検証する。

b.監査証拠(監査証拠とは監査基準に関連し、かつ検証できる記録、事実の記述又はその他の情報:規格3.3)は記録する。

c.監査中に、監査範囲外も含めて、緊急かつ重大なリスクが発見された場合には、被監査者及び監査依頼者に遅滞なく連絡する。

d.監査の目的が達成できない事態が発生した場合には、監査チームリーダーは監査依頼者及び被監査者に連絡し、適切な処置を行う。

(4)情報収集方法(規格6.5.4)a.面談b.活動、周囲の作業環境及び作業条件の観察c.文書の調査:方針、目的、計画、手順、法律、指示、許認可、仕様、図面、契約及びその他要求事項、パフォーマンス指標など

d.記録の調査:検査、議事録、監査報告書、監視及び測定結果、デー タの要約、コミュニケーション記録など

82

2.4

(5)情報収集に当たっての注意点a.あらかじめ作成された監査実施計画書やチェックリストにより進める。・実施計画にない項目など突発的な方法で監査を進めない。・チェックリストは絶対ではないことも念頭に置く。

b.監査の主導権は常に監査員側にあるということを念頭に置く。<悪い例>・被監査部門が用意したものしか見ない。・遠慮して強く資料の提示を求めない。・被監査部門に監査の時間配分の主導権をとられる。

c.事実の把握は、サンプリング方式で実施されているということを常に念頭に置く。・監査対象をすべて見るのは時間的にみて不可能であり、見落としもあり得る。・多くの監査対象からサンプリングされた情報のみが監査事実として採用される。常にこのことを念頭に置いて適切で効果的なサンプリングを行うよう心がける必要がある。

d.必ずメモをとる:そのときは何でもないメモが、後で役に立つことが多い。

e.集まった情報が正しいことを証明(確認)する。・監査基準を満たしていることを検証するのに十分となるまで証拠 の収集を続けなければならない。例えば『この書類は後で出します』といわれたときは書類名をメモし、後で必ず出してもらう。・面談によって収集された情報の検証は、裏づけ情報、例えば所見・記録や既存の測定結果を取得することによって行う。・測定分析の場合には、手順どおり実際のサンプリング及び測定分析がなされているかどうかなどを確かめる。

f.異なる、複数の情報源から情報を得ることも重要。g.直ちに検証するのが不可能な陳述や観察所見はその旨記録しておき、その監査日程内で再度検証を試みる。

h.上位文書に不適合を見つけたら、その不適合箇所に対応する下位文書、手順、パフォーマンスなども確認する。

(6)運用現場における情報収集運用現場における面談(インタビュー)等では、迅速な情報収集が必要。主要点は次のとおりである。a.著しい環境側面として登録されている作業現場がどこであるかを認

識しているか。b.環境方針、目的・目標を理解しているか。c.EMSに対する教育訓練を受けているか。d.運用手順書どおり作業し、記録しているか。

(7)面談における注意点(規格6.5.4)a.面談は、監査の範囲内で、活動又は業務を遂行している適切な階層及び部門の人に対して行う。

b.面談は、通常の就業時間中に、差し支えなければ被面談者の普段の職場で行う。

c.面談を始める前及び面談中に、被面談者の緊張を解くためにあらゆる努力を試みる。

d.面談を行う理由、及びメモをとるのであれば、その理由を説明する。e.被面談者の仕事について説明を求めることによって面談を始めることができる。

f.回答をゆがめるような質問、すなわち誘導尋問は避ける。g.面談の結果をまとめて、その内容を被面談者に確認する。h.面談への参加及び協力に対して、被面談者に謝意を表する。

(8)面談技術a.質問内容は相手の職務、レベルに合わせることが大切である。面談を受ける相手の仕事内容に応じ質問内容や質問レベルを決める。

b.「はい、いいえ」で答えられる質問は、完結型質問といわれ、短時間に事実が確認できる。しかし情報の広がりはないので、時間等の問題がない限りなるべく避けた方がよい。<例>(質問)環境方針はありますか。

(回答)はい。ここにあります。c.「はい、いいえ」では答えられない質問をすることによって多くの情報が得られる。これは5W2H形式の質問といわれている。<例>(質問)この内部監査はいつ実施しましたか。

(回答)監査規定により、社内の内部監査員が本年5月に年度計画どおり実施しました。

d.事実が基準に対して適合しているかどうかを問い、根拠があって正しいかどうかを相互確認するとよい。

e.反復質問を利用するとよい:形を変えて質問し、事実を確認する。f.想定質問を利用するとよい:ある事実を想定し、実際にそうなったらどうするかの質問をする。

83

監査活動Chapter

2環境マネジメントシステム監査

84

2.4

g.同じ内容の質問を複数の人にするとよい:システムの理解度や周知 度を確認できるし、また検証もできる。

h.質問をした相手から必ず回答してもらう:その場に質問相手の上司などが同席している場合、その上司が代わって回答するケースがあるので注意が必要。i.質問は短く一つのみとする:1回の話の区切りの中でいくつもの質 問をすると、現場監査時は、周りの騒音や相手の緊張などにより、正確な回答が返ってこないことがある。

(9)現場観察における注意点a.できるだけ広い監査範囲を観察する(自分の専門分野や、興味のある箇所にとどまらないこと)。

b.通常の作業の流れを最初から最後まで追う。c.作業及び施設などの有害性、危険性を見分ける。d.目にとまりにくい汚染源を特に注意して観察する。e.ビデオ、写真を撮る。f.観察は定常時以外にも重要な活動に合わせて行う。

(10)文書監査における注意点a.指示が明確に記述されているか(文章に主語があるか)。b.指示が安全性(危険性、有害性の回避)を考慮してなされているか。c.すべての階層で考え方と意味が理解され、文書間に整合性があるか。d.指示が実行され、必要な記録があるか。e.正しく配布されているか。f.常に最新情報による定期的な改正が行われているか。

a.監査基準に照らして監査証拠を評価する。b.監査基準に対して適合又は不適合を示す。c.監査目的に設定されている場合には、改善の機会を特定する:よい 点についても特定する。

d.監査所見をレビューするために、監査チームは必要に応じて打ち合わせをする。

e.監査結果は場所、部門又はプロセスが分かるように要約する。f.必要な場合には、適合している監査結果を証拠とともに記録する。

2.4.6 監査所見の作成(規格6.5.5)

g.不適合となる監査証拠は記録する。h.不適合は等級付けをしてもよい。i.不適合は被監査者と確認すること:できるだけ不適合を発見した現場において確認する。

j.監査証拠、監査所見に関して、監査員と被監査者の間で意見の相違がある場合には、十分に協議することが必要。合意できない点については記録する。

(1)監査チーム内打ち合わせ監査チームは最終会議に先立って、チーム内打ち合わせを行い、次の事項について検討する。a.監査結果を監査目的に照らしてレビューする。・十分な証拠があるかどうかを確認する。・現場責任者に意見を聞く機会を設ける。

b.サンプリング等による監査プロセスに内在する不確実性を考慮して監査結論について合意する:水平展開をする。

c.監査の目的で規定している場合は、推奨事項を作成する:システム及びパフォーマンスのよい点についても言及する。

d.監査計画に含まれる場合は、監査のフォローアップについて協議する。

(2)監査結論作成内容a.EMSの監査基準への適合の程度b.EMSの効果的実施、維持及び改善c.マネジメントレビュープロセスの能力:システムが適切、妥当、有効であり、継続的改善ができるか。

(1)目的次の事項について、監査員と被監査者の間で合意する。a.監査所見及び監査結論b.該当する場合には、是正処置及び予防処置の計画

85

監査活動Chapter

2環境マネジメントシステム監査

2.4.8 最終会議の開催(規格6.5.7)

2.4.7 監査結論の作成(規格6.5.6)

86

2.4

c.監査目的で規定している場合には、監査員による改善の提案

(2)最終会議要領a.議長:監査チームリーダーb.出席者:被監査者(監査依頼者、その他関係者を含めてもよい)c.討議内容:議事録の作成・監査結果・監査中に遭遇した問題点・監査結果の水平展開・是正処置の計画・結果に合意できない場合、すべての意見の議事録への記録・監査チームからの全般的なコメントとよい点についての説明・監査報告書の発行期限

(1)目的a.被監査者に改善の機会を与え、環境問題についての意識を高めること

b.監査の記録

(2)作成(規格6.6.1)a.監査チームリーダーの責任の下で作成:論旨の一貫性が必要b.正確、簡潔かつ明確な内容であること

(3)内容(規格6.6.1)a.監査の目的b.監査範囲、特に監査を受けた組織単位及び部門単位又はプロセスの特定、並びに監査の対象とした期間

c.監査依頼者の名称d.監査チームリーダー及びメンバーの特定e.現地監査活動を行った日時及び場所f.監査基準g.監査所見h.監査結論監査報告書には適宜、以下の事項を含めてもよく、又はその事項の参照

2.4.9 監査報告書

先を示してもよい。i.監査計画j.被監査者の代表者の一覧表k.監査プロセスの要約(これには、不確実性及び/又は監査結論の信 頼性を低下させる可能性のある、監査中に遭遇した障害を含む)

l.監査計画に従って、監査範囲内で監査の目的を達成したことの確認m.監査範囲内で監査しなかった領域n.監査チームと被監査者との間で解決に至らなかった意見の食い違いo.監査の目的に規定されている場合は、改善のための提言p.合意したフォーローアップ処置の計画q.内容の機密性に関する記述r.監査報告書の配付先一覧表

(4)承認(規格6.6.2)と監査の完了(規格6.7)a.監査報告書の発行期限に遅延の生ずる場合には、監査依頼者の同意が必要である。

b.監査報告書には、日付を付し、レビュー及び承認を受ける。c.監査依頼者が監査報告書を必要な箇所に配付した段階で監査は完了する。

(1)是正処置a.被監査者は、是正処置、予防処置又は改善処置について、処置計画を作成し、合意した期間内に実施する。監査依頼者は、監査報告書によって指摘された不適合又は改善推奨事項について、必要な資源を準備する。

b.被監査者は、これらの処置の状況を監査依頼者に報告する(例:不適合是正報告書)。

(2)フォローアップ監査監査プログラムに規定されている場合には、監査チームは是正処置の完了及び有効性について検証し、結果を監査依頼者に報告する。

87

Chapter

2環境マネジメントシステム監査

監査活動

2.4.10 監査のフォローアップ(規格6.8)

88

2.5

a.倫理的である。すなわち、公正である、信用できる、誠実である、正直である、そして分別がある。

b.心が広い。すなわち、別の考え方又は視点を進んで考慮する。思考 が柔軟である。

c.外交的である。すなわち、目的を達成するように人と上手に接する。d.観察力がある。すなわち、物理的な周囲の状況及び活動を積極的に意識する。

e.知覚が鋭い。すなわち、状況を直感的に認知し、理解できる。f.適応性がある。すなわち、異なる状況に容易に合わせる。g.粘り強い。すなわち、根気があり、目的の達成に集中する。h.決断力がある。すなわち、論理的な思考及び分析に基づいて、時宜を得た結論に到達する。

i.自立的である。すなわち、他人と効果的なやりとりをしながらも独立して行動し、役割を果たす。

j.表現能力がある。すなわち、話術・文書による明確な表現ができる。

監査員に必要な知識及び技能は、次のとおりである(規格7.3.1、7.3.2、7.3.4)。

(1)監査の原則、手順及び技法a.監査の原則、手順及び技法を適用する。b.効果的に作業を計画し、必要な手配をする。c.合意した日程内で監査を行う。d.重要事項を優先し、重点的に取り組む。e.効果的な面談、聞き取り、観察、並びに文書、記録及びデータの調査によって、情報を収集する。

f.監査のために、サンプリング技法を使用することの適切性及びそれ

2.5 監査員の力量

2.5.1 個人的特質(規格7.2)

2.5.2 知識及び技能(規格7.3)

による結果を理解する。g.収集した情報の正確さを検証する。h.監査所見及び検査結論の根拠とするために、監査証拠が十分かつ適 切であることを確認する。

i.監査所見及び監査結論の信頼性に影響し得る要因を評価する。j.監査活動を記録するために作業文書を使う。k.監査報告書を作成する。l.情報の機密及びセキュリティを維持する。m.自分の語学力で、又は通訳を介して、効果的に意思の疎通を図る。

(2)EMS及び基準文書a.さまざまな組織へのEMSの適用b.EMSの構成要素間の相互作用c.監査基準として用いるEMS規格、適用される手順、又はその他のEMS文書

d.基準文書間の相違、及び基準文書の優先順位の認識e.さまざまな監査状況への基準文書の適用f.文書・データ・記録の承認・セキュリティ及び配布・管理のための情報システム・情報技術

(3)組織の状況a.組織の規模、構造、機能及び相互関係b.一般的な業務プロセス及び関連用語c.被監査者の文化的及び社会的習慣

(4)法律、規制及びその他の要求事項a.地方・地域・国家の基準・法律・規制b.契約及び協定c.国際条約及び国際協定d.組織が同意しているその他の要求事項

(5)EMSの方法及び手法a.環境用語b.環境マネジメントの原則及びその適用c.環境マネジメントツール(例えば、環境側面/環境影響の評価、ライフサイクルアセスメント、環境パフォーマンス評価など)

89

監査員の力量Chapter

2環境マネジメントシステム監査

90

2.5

(6)環境科学及び環境技術a.環境に対する人間の活動の影響b.生態系の相互作用c.環境媒体(例えば、大気、水、土地)d.天然資源の管理(例えば、化石燃料、水、動植物相)e.環境保全の一般的方法

(7)運用の技術的側面及び環境側面a.業界特有の用語b.環境側面及び環境影響c.環境側面の著しさを評価する方法d.運用プロセス、製品及びサービスの重要な特性e.監視及び測定の技法f.汚染の予防技術

(8)監査チームリーダーに必要な知識及び技能a.監査の計画を策定し、監査中に資源を効果的に活用する。b.監査依頼者及び被監査者との連絡では監査チームを代表する。c.監査チームメンバーをとりまとめ、指揮する。d.訓練中の監査員を指揮及び指導する。e.監査チームを統率して、監査結論を導き出す。f.種々の衝突を防ぎ、解決する。g.監査報告書を作成し、完成する。

91

○本Chapterでは、環境パフォーマンス評価(EPE)の概要と、そ 

の運用について述べる。

○記述に当たってはJIS Q 14031:2000(以下、「EPEガイド」

という)を引用してまとめている。

○「EPEガイド」のことわりがない箇所は、「解説:環境パフォー

マンス評価-ガイドライン-」[(社)産業環境管理協会発行]を

引用。以下、引用のことわりは省略する。ただし「EPEガイド」

と区別する必要のある場合は、「解説」と記載する。

(1)EPEの定義:その1(EPEガイド2.9)EPEとは、環境指標を選定、データを収集及び分析、環境パフォーマ

ンス基準に対する情報の評価、報告及びコミュニケーションを図ること、並びにそのプロセスの定期的なレビュー及び改善することによる組織の環境パフォーマンスに関して、経営判断をしやすくするプロセスである。

(2)EPEの定義:その2(EPEガイド3.1.1)a.EPEは、組織の環境パフォーマンス基準に対して、組織の過去及び現在の環境パフォーマンスを比較した情報を提供する指標を使用する、内部マネジメントのプロセスである。

b.計画-実施-チェック-行動のマネジメントモデルに従う。

3.1.1 環境パフォーマンス評価の定義

Chapter

3

EPE:EnvironmentalPerformanceEvaluation

3.1 環境パフォーマンス評価の概要

環境パフォーマンス評価(EPE)

92

3.1

(1)EMSにおけるEPE(図3.1-1)

(2)EPEの対象a.企業又は事業所単位、あるいは個人、グループ、組織単位であり、その活動すなわち環境側面が環境に与える影響の度合いを評価する。

b.評価は、自主的に設けた評価基準(環境方針、目的、目標、その他の環境パフォーマンス基準)との比較で行う。

(3)EPEの手順(EPEガイド序文)a.環境側面を特定する。b. どれを著しい環境側面として扱うかを決める。c.環境パフォーマンスの基準を設定する。d. この基準に対して環境パフォーマンスを評価する。

(1)望ましいEPEa.組織の規模、所在地(地方条例の内容、周囲状況等の考慮)、種類、必要性、優先度に適合していること

b.経済的であることc.組織の通常の事業機能、活動の一部であること

■図3.1-1 企業・事業所単位の環境マネジメント手法の関係

3.1.2 環境パフォーマンス評価の適用範囲

3.1.3 環境パフォーマンス評価のマネジメント用途(EPEガイド3.1.3)

環境パフォーマンスの改善

環境報告書

EPE LCA

EMS

(2)EPEの効用①評価基準達成への支援

基準を達成するため、何が必要で何を行えばよいかを判断できるデー タを提供する。

②著しい環境側面の特定

組織の環境側面を把握し、その中から著しい環境側面を特定する方法 を与える。

③環境パフォーマンスの改善

環境マネジメントの改善対象を明確にすることが可能。そのことによ って効率的な運営、対策の有効性が向上。

④経営戦略への反映

a.有益な環境側面を把握することによって利益獲得機会の方向をつ かむ。

b.種々の環境側面を把握することによって社会責任を達成する。

⑤各人の責任の遂行

内部コミュニケーションを図ることによって、従業員がそれぞれの責任を遂行する情報になる。

⑥外部コミュニケーションの促進

環境パフォーマンスの改善による企業イメージのアップと利害関係者との間での信頼性の向上。

93

環境パフォーマンス評価の概要Chapter

3環境パフォーマンス評価

94

3.1

(1)EPEモデル(図3.1-2、EPEガイド3.1.1)

(2)EPE業務フロー(図3.1-3、解説第3部1)

■図3.1-2 EPEモデル

■図3.1-3 EPE業務フロー

計画 [3.2]EPEの計画

[3.2.2]EPE指標の選択

実施 [3.3]データ及び情報の使用(実施)

[3.3.2]データの収集

データ

[3.3.3] データの分析及び変換

情報

[3.3.4]情報の評価

結果

[3.3.5]報告及び     コミュニケーション

チェック及び行動 [3.4]EPEのレビュー及び改善

計画(Plan) EPEの準備

実施体制の整備

EPEの計画

環境状態指標項目の設定 運用パフォーマンス指標項目の設定 マネジメントパフォーマンス指標項目の設定

EPE指標の確定及び基準の設定

実施(Do) データの収集

データの解析及び解析結果の評価

点検及び行動(Check & Act)

見直し

3.1.4 環境パフォーマンス評価手法の概要

(3)各ステップの作業内容(表3.1-1、解説第3部1)

(4)運用の留意点(解説第3部2)a.利害関係者とその関係者の関心事を明確にすることb.EPEのための重要な配慮事項を明確にすること。例えば、・企業のすべての活動、製品、サービスにわたっていること・企業の理念や環境方針に合致したものであること・法律その他の要求事項を満足させたものであること・対応ができること(=企業としての意思が反映できること)

c.この手法を確実に運営するための体制を整えること・全社活動として関係部門の総力を挙げ得る体制とすること

d.管理のための的確な指標を設定すること・コストを含む情報ができるだけ定量的、継続的に把握できること・対応の結果が予測できること

e.活動結果の報告対象者及びその内容や伝達方法を明確にすること・情報を必要としているであろう人(=利害関係者)の視点と内容が合致していること・情報提供の手段が明確であること

95

環境パフォーマンス評価の概要Chapter

3環境パフォーマンス評価

■表3.1-1 各ステップの作業内容

ステップ名

計画 (Plan)

実施 (Do)

点検 及び行動

(Check & Action)

内 容

Step1 EPEの準備 利害関係者とその関係者の関心事項の整理、報告対象者と 報告事項・方法の検討やEPE実施体制の整備を行う。

Step3 EPEの計画 環境側面の特定、情報の入手先や経路・方法の確認、報告の 頻度などを含めたEPEの計画を行う。

Step2 実施体制の整理 EPEの対象範囲及び管理実行体制の検討を行う。

Step4 環境状態指標項目 の設定

法律や条例等の規制、各種要求事項あるいは自社活動を考 慮した環境側面をもとに、環境状態指標項目を抽出する。

Step7 EPE指標の確定 及び基準の設定

Step4,5,6の成果をもとに、環境状態指標、操業パフォー マンス指標、マネジメントパフォーマンス指標を確定する。

Step8 データの収集 環境パフォーマンスの定量的な評価に関するデータを収集 する。

Step9 データの解析及び 解析結果の評価

収集したデータを解析し、その解析結果に対して評価を行 う。

Step10 見直し 組織の環境パフォーマンスを合理的に改善するための見 直しを行う。

事業活動にかかわる生産フローから、インプット、アウトプッ ト情報を整理し、操業パフォーマンス指標事項を抽出する。

Step5 操業パフォーマン ス指標項目の設定

Step6 マネジメントパフ ォーマンス指標項 目の設定

事業活動に関するマネジメントパフォーマンス指標項目を 抽出する。

96

3.2

3.2.1 環境パフォーマンス評価の計画(EPEガイド3.2)

環境パフォーマンス評価の運用3.2

(1)計画策定に当たって考慮すべき事項(EPEガイド3.2.1)a.著しい環境側面b.EPE基準c.利害関係者の見解(EPEガイドA.2、解説第3部2)d.すべての範囲の活動、製品、サービスe.組織体制f.包括的事業戦略g.環境方針h.法的及びその他の要求事項を満たすために必要な情報i.関連する国際的な環境協定j .環境コスト、便益k.環境パフォーマンスに関する毎年の一貫した情報の必要性l.局地的、地域的、国家的、地球規模の環境状態についての情報m.文化的・社会的要因

(2)効果的に運用するためのポイント(EPEガイド3.2.1)a.財務的・物的・人的資源の準備b.初期のEPE適用範囲は、組織の能力、資源に応じて経営層が最優先とする活動、製品、サービスなどの要素に限定し、その後、適用範囲を拡大する。

97

環境パフォーマンス評価の運用Chapter

3環境パフォーマンス評価

(3)推進体制(図3.2-1、解説第3部3)

(4)著しい環境側面の特定(EPEガイド3.2.1、解説第3部3、4)a.対象サイトの設定b.環境状態指標(ECI、p.99参照)の抽出:法的及びその他の要求事 項の整理

c.操業パフォーマンス指標(OPI、p.99参照)の整理・インプット:材料、エネルギーの使用量、種類

社長

総務部

経理部

製造工場

エネルギー 工場

設備部

協力会社

職制名 環境管理関連業務(例)

総務課 経営方針策定、法・社外・株主総会対応窓口等

労働人 事課

社員の給与管理、要員計画、教育計画、安全衛生 計画等

環境管理課 環境方針・管理計画策定、環境目的・目標 設定、統計処理、行政処理、対外報告等

経理課 資金計画・環境投資計画策定、環境対策の製品 コスト算定等

財務課 環境対策設備資産管理、財務管理、税対応等

加工課 部品在庫管理、部品洗浄(洗浄管理)、原材料加 工等

組立課 作業管理、組立作業資材手配等

検査課 品質管理方式の検討、品質管理方式の改善、生 産歩留まり解析等

運転課 エネルギー関連設備の運転、最適運転管理、実 績データの把握等

管理課 エネルギー需給計画策定、エネルギー使用実績 管理、設備運転計画策定等

技術課 生産設備の新設・更新計画策定、運転基準作成、 生産と環境対策の整合性検討等

整備課 生産設備の日常点検・整備、生産設備機能診断、 整備計画策定、老朽更新計画等

技術課 自社設備の操業・管理基準の企画、実態管理、用 役使用計画策定、処理実績把握等

運転課 自社設備の運転、設備運転管理、各種用役類使 用実績把握等

整備課 自社設備の日常点検・整備、設備機能診断、整備 計画策定等

■図3.2-1 EPEに係る社内関連組織と業務(例)

98

3.2

・アウトプット:放出、リスク、発生事象の可能性d.マネジメントパフォーマンス指標(MPI、p.99参照)の整理e.評価基準の設定と点数化

(5)著しい環境側面の特定方法の例(EPEガイド3.2.1 実践の手引き#1)a.種々の環境側面の抽出と相対的重要性の特定b.著しい環境側面にかかわる潜在的影響の特定c.環境側面に関する環境状態についての情報の収集d.材料、エネルギーの入力、排出、廃棄物、放出に関する組織の既存データの分析並びにこれらのデータのリスク面での評価

e.利害関係者の見解を確認し、著しい環境側面の特定への使用f.法的及びその他の要求事項に従っている組織活動の特定g.製品に関する設計・開発・製造・物流・サービス・使用・再使用、リサイクル、処分の環境影響の検討

h.環境コスト、便益を伴う組織活動の特定

(6)環境パフォーマンス基準a.環境パフォーマンス基準とは、経営層が設定し、EPEのために用いる環境目的・目標、その他意図する環境パフォーマンスの達成目標レベル(EPEガイド2.8)

b.環境パフォーマンス基準はEPE指標を設定する場合に必要

(7)環境パフォーマンス基準設定に当たっての情報源(EPEガイド3.2.1)

a.現在、過去のパフォーマンスb.法的及びその他の要求事項c.規範、規格、最善の実例d.既存のパフォーマンスデータ、情報e.経営層による見直し、環境監査結果f.利害関係者の見解g.科学的な研究結果

(8)情報の処理(解説第3部3)a.情報入手元の整理b.情報伝達先の整理c.情報伝達手段の整理:印刷物、電子媒体d.報告:手段、頻度

(1)EPE指標の目的(EPEガイド3.2.2)EPE指標とは、組織の環境パフォーマンス、操業の環境パフォーマン

ス、環境状態に影響を与えるマネジメント努力について、関連データを簡便な情報に変換することを助けるものである。

(2)EPE指標の種類(EPEガイド3.1.2、3.2.2)a.環境状態指標(ECI)b.環境パフォーマンス指標(EPI)・操業パフォーマンス指標(OPI)・マネジメントパフォーマンス指標(MPI)

(3)ECI(EPEガイド3.1.2、3.2.2)a.環境側面の影響(実在、潜在とも)すなわち局地的、地域的、国家的、地球規模での環境状態についての情報

b.政府、行政、研究機関等の環境に関する公表データ(解説)

(4)EPI(EPEガイド3.1.2、3.2.2)①OPI

設備、機械等の操業に関する環境パフォーマンスについての情報。

②MPI

操業の環境パフォーマンスに影響を与えるマネジメント(マネジメント事項に対する管理能力、取り組み)に関する情報。環境パフォーマン スを向上させるための経営層の取り組み・決定・処置の評価を助ける。

99

環境パフォーマンス評価の運用Chapter

3環境パフォーマンス評価

3.2.2 環境パフォーマンス評価指標

ECI:EnvironmentalCondition Indicators

EPI:EnvironmentalPerformanceIndicators

OPI:OperationalPerformanceIndicators

MPI:ManagementPerformanceIndicators

100

3.2

■図3.2-2 環境状態に関する組織のマネジメント及び操業の相互関係

環境状態及び その他情報源

入力

供給

組織のパフォーマンス (EPI)

組織のマネジメント (MPI)

組織の操業(OPI)

設備 及び装置

利害関係者

出力

引き渡し

凡例(程度):     情報の流れ            組織の操業に関する入力及び出力の流れ            決定の流れ     

(5)MPIとOPIの相互関係(図3.2-2、EPEガイド3.1.2)

(6)EPE指標作成の考え方(EPEガイド3.2.2)a.指標は、操業の特徴と規模を反映した十分な個数を選択する。b.指標は、情報の性質、使用意図に合わせて合算したり、重み付けをしてもよい。

c.重み付けは、検証能力、整合性、比較可能性、理解容易性を保証できるように行う。

(7)EPE指標選択における考慮事項(EPEガイドA.3.1)a.環境方針と整合しているか。b マネジメントへの取り組み、操業パフォーマンス、環境状態に対して適切か。

c.環境パフォーマンス基準に対してのパフォーマンスの測定に役立つか。

d.利害関係者に関連し、理解できるものであるか。e.費用対効果がよく、タイムリーな方法で入手できるか。f.データのタイプ、品質、量に基づいて、意図した用い方に使用するのに適しているか。

g.組織のパフォーマンスを代表するものであるか。h.組織の環境パフォーマンスの変化に敏感で感度がよいか。i.現在、将来の環境パフォーマンス動向について情報を提供できるか。

(8)EPE指標に用いるデータ特性の例(EPEガイド3.2.2 実践の手引き#2)

a.直接の測定値、計算値:基本データ・情報

101

環境パフォーマンス評価の運用Chapter

3環境パフォーマンス評価

(例)汚染物質排出量b.相対測定値、計算値:別のパラメータと対比、関連づけたデータ 情報(例)生産量、時間、場所、バックグラウンドの状態

(9)EPE指標の例(EPEガイド3.2.2 実践の手引き#3)

a.汚染物質の年間排出量(想定される対象者:地域社会)b.汚染物質濃度(想定される対象者:法規制当局)c.製品当たりの汚染物質排出量(想定される対象者:管理者、消費者)d.環境改善投資に対する汚染物質の年間排出量の変化(想定される対象者:経営層、投資家)

(10)EPE指標の選択(EPEガイド3.2.2)1)ECI

q目的(解説第1部3.3)

a.組織の周囲では現在何が大きな問題になっているのか。b.過去及び現在においてどのような問題があったのか、あるいはあり得るのか。

c.将来どのような問題があり得るのか。

w用途

a.著しい環境側面の特定及びマネジメントの支援b.環境パフォーマンス基準の適切性評価c.EPI(MPI、OPI)の選択d.変化を測定する際の基準の確立e.環境プログラムの進展に伴う環境変化の確定f.環境状態と組織の活動、製品、サービスとの関係調査g.活動必要性の決定

eECIの例(EPEガイドA4.4.2)

地域的、国家又は地球規模のECI

e-1 大気

a.選定された場所における大気の特定汚染物質の濃度b.組織の施設からある特定距離における周辺温度c.組織の施設の風上及び風下における視界の透明度d.所定の地域内における光化学スモッグの発生頻度

102

3.2

e.組織の施設からのある特定距離で測定した臭気

e-2 水域

a.地下水又は地表水における特定の汚染物の濃度b.排水放流地点の上下流であって、施設近傍の流れの中で測定された濁度

c.受け入れた水の溶存酸素d.組織の施設近隣の地表水の水温e.地下水レベルの変化f.水1L当たりの大腸菌群数

e-3 土地

a.組織の施設の周辺での選定された場所における表層土に含まれる特定汚染物質の濃度

b.組織の施設近隣の土壌に含まれる選定された養分の濃度c.所定の局地的範囲における・修復された面積・廃棄物埋立地、湿地又は観光地の面積・舗装地及び非肥沃地の面積・保護面積・表土浸食度

e-4 植物

a.局地的又は地域的に見つかる特定植物種の組織中の特定汚染物質 濃度

b.周辺地区の作物収穫率推移c.組織の施設から所定距離内での特定植物種の個体数d.所定の局地的範囲における全植物種の数、作物種の数、多様性e.局地的範囲における特定種の生息地の質についての特定値f.所定の局地的範囲における植物の発育量の特定値

e-5 動物

a.局地的又は地域的に見つかる特定動物種の組織中の特定汚染物質の濃度

b.その組織の施設からのある所定距離内での特定動物種の個体数c.局地的範囲における特定種の、生息地の質についての特定値d.所定の局地的範囲における全動物種の総数

103

環境パフォーマンス評価の運用Chapter

3環境パフォーマンス評価

e-6 人間

a.特定の人口に対する寿命データb.局地的又は地域における、・疫学調査からの、特に感受性が強い集団の中の特定の疾患率・人口増加率・人口密度・局地における人口の血液中の鉛レベル

e-7 景観、遺跡及び文化

a.傷つきやすい構造物の状態計測値b.組織の施設の周辺における神聖と考えられる場所の状態計測値c.地区における歴史的建造物の表面保全性の計測値

rECIの具体例(表3.2-1、表3.2-2、解説)

ECIカテゴリー

大気汚染

悪臭

騒音・振動

水質汚濁

土壌

化学物質

ECIの例

環境中の二酸化硫黄濃度(ppm) 環境中の一酸化炭素濃度(ppm) 環境中の浮遊粒子状物質濃度(mg/m3) 環境中の二酸化窒素濃度(ppm) 環境中の光化学オキシダント濃度(ppm) 環境中のベンゼン濃度(mg/m3) 環境中のトリクロロエチレン濃度(mg/m3) 環境中のテトラクロロエチレン濃度(mg/m3) 環境中の特定粉じん(石綿)濃度(本/L) オゾン層の保護に関する特定物質濃度(ppm)(CFC11など89物質)

環境中の特定悪臭物質濃度(ppm)、臭気指数(アンモニアなど22物質)

騒音・振動レベル(dB)

人の健康の保護に関する環境基準項目濃度(mg/L)(カドミウムなど23項目) 生活環境の保全に関する環境基準項目濃度(mg/L)(水素イオン濃度など9項目) 指針値の設定された要監視項目濃度(mg/L)(クロロホルムなど25項目)

環境基準項目濃度(mg/検液L)(カドミウムなど25項目)

環境中の第1種化学物質濃度(ppm)(ポリ塩化ビフェニルなど9項目) 環境中の第2種化学物質濃度(ppm)(トリクロロエチレンなど5項目) 環境中の指定化学物質濃度(ppm)(クロロホルムなど257項目)

■表3.2-1 国内の法令類に定められた環境基準を目安としたECIの例

104

3.2

■表3.2-2 地球環境を視野に含めたECIの例

雨水pH   硫酸イオン濃度、硝酸イオン濃度(μg/m3)

ECIカテゴリー ECIの例

地球温暖化

オゾン層の破壊

酸性雨

海洋汚染の防止

有害廃棄物の越境移動

森林の保全

生物多様性の保全

砂漠化の防止

オゾンホール(オゾン全量m atm-cm) 有害紫外線の地上照射量

有害物質濃度(mg/L)    油膜発見場所(数) DDT、PCB濃度(ng/L) 海上漂流物数

特定有害廃棄物の越境移動量(t)

熱帯林減少量(ha) 森林率(%)あるいは一人当たり森林面積(ha/人)

絶滅のおそれのある野生生物の種の数

砂漠化の影響を受けている地域面積(ha)

大気中の二酸化炭素濃度(ppm) 年平均気温(変化)(℃)

入力 材料

・処理済み、リサイクル、  再使用、又は生の原材料 ・天然の原材料

エネルギー

・使用エネルギーの量又は  種類

組織の操業を支援して いるサービス

・清掃、雑役、グラウンド整備 ・保守、輸送、配達 ・情報とコミュニケーション ・整備 ・食料    ・廃棄物処分   ・その他サービス

供給

施設及び装置 ・設計   ・設置   ・操業   ・保全   ・土地使用

出力 製品

・主製品   ・副産物   ・リサイクル及び  再使用の原材料

組織によって用意され たサービス

廃棄物

・固体、液体    ・有害、無害   ・リサイクル可能、再使用  可能

排出物

・大気への排出 ・水域又は土壌への排出 ・騒音、熱、振動、光及び  放射性物質、微粒子

引き渡し

■図3.2-3 組織の操業

2)OPI

①プロセスフロー(図3.2-3、EPEガイド図A.1)

②OPIの例(EPEガイドA.4.3.2)

w-1 材料

a.製品単位当たりの使用材料の量b.処理済材料、リサイクル材料又は再使用材料の量c.製品単位当たりの、廃棄物又は再使用した包装材料の量d.リサイクル又は再使用した補助材料の量e.生産工程で再使用した原材料の量f.単位製品当たりの水の使用量g.再使用した水の量h.生産工程で使用する有害物質の量

w-2 エネルギー

a.年当たり又は製品単位当たりのエネルギーの使用量b.単位サービス又は単位顧客当たりのエネルギー使用量c.エネルギーの種類及びその使用量d.工程で発生する、又は副産物から得られるエネルギー量e.エネルギー保全プログラムによって節約できたエネルギー原単位

w-3 組織の操業を支えるサービス

a.サービス提供の契約者が使用する有害物質の量b.サービス提供の契約者が使用する清掃剤の量c.サービス提供の契約者が使用する、リサイクル及び再使用可能な材料の量

d.サービス提供の契約者が排出する、廃棄物の種類及び量

w-4 施設及び装置

a.容易に解体、リサイクル及び再使用できるよう設計された部品を含む装置の量

b.特定装置の年間操業時間c.緊急事態(例:爆発)又は非定常時操業(例:緊急停止)の年間の回数

d.製造のために使用される土地の総面積e.単位エネルギー量を発生するのに使用される土地の面積f.輸送車両の平均燃料消費量g.環境対策を施した輸送車両台数h.装置の予防保全に要する年間時間

105

(注1)2002年5月、経済団体連合会と日本経営者団体連盟が統合して、(社)日本経済団体連合会となっています。

環境パフォーマンス評価の運用Chapter

3環境パフォーマンス評価

106

3.2

w-5 大気排出物

a.年間の特定排出物の量b.単位製品当たりの特定排出物の量c.大気に放出される廃熱の量d.オゾン層破壊特性のある大気排出物の量e.地球の気候変動に影響する可能性を持つ大気への排出物の量

w-6 土壌・水域排出物

a.年間の特定物質の排出物の量b.単位製品当たりの、水域に排出される特定物質の量c.水域へ放出される廃熱の量d.単位製品当たりの埋立処分量e.単位サービス又は単位顧客当たりの排水量

w-7 廃棄物

a.年当たり又は製品当たりの廃棄物の量b.有害、リサイクル可能又は再使用可能な廃棄物の年間量c.処分に回される廃棄物の量d.サイトに貯蔵される廃棄物の量e.許可証で管理される廃棄物の量f.再使用可能材料に変換された有害廃棄物の量g.材料の代替化によって削減された有害廃棄物の量

w-8 供給と引き渡し

a.車両輸送の平均燃料消費量b.1日当たり、輸送方式ごとの貨物便数c.汚染抑制技術を施した車両の台数d.他のコミュニケーション手段によって、節減された業務出張回数e.輸送方式ごとの業務出張回数

w-9 製品

a.有害物特性を減らして市場に導入した新製品の数b.再使用又はリサイクルのできる製品の数c.製品中の、再使用又はリサイクル材料の含有百分率d.欠陥製品率e.単位製品当たり発生する副産物の量f.製品使用時に消費されるエネルギー原単位量

107

環境パフォーマンス評価の運用Chapter

3環境パフォーマンス評価

g.製品の使用寿命h.環境的に安全な使用及び廃棄について指示を記載した製品の数

w-10 組織によって供給されるサービス

a.1m2当たりに使われる清掃剤の数(清掃サービスを行う組織が使用)b.燃料消費量(輸送を伴うサービスを行う組織が使用)c.改善プロセスのために、売れたライセンス量(技術ライセンスを取り扱う組織が使用)

d.環境に関連する信用貸しのリスク事故又は支払不能の数(金融サービスを行う組織が使用)

eOPIの具体例(図3.2-4~図3.2-6、解説第2部2.3)

【原材料】  ①加工材料   ・部品    ・処理剤   ・はんだ   ・成形品    ・フラックス ・包装材    ・洗浄剤      ・化学物質   (酸、アルカリ、溶剤)  ②リサイクル材料  ③再使用材料  ④素材  ⑤天然素材  ⑥水   ・用水 【エネルギー】   ・燃料(重油,軽油等)   ・電気     ・ガス     ・新エネルギー 【サービス】

事業活動

【製品】  ①主製品   ・製品    ②副製品   ・副生成物 【サービス】 【廃棄物】  ①固体状、液体状   ・金属、木、紙、プラスチック   ・廃油、廃溶剤      ・廃酸、廃アルカリ     ・汚泥  ②有害、不活性等  ③リサイクル可能、再使用可能 【排出物】  ①液体状、気体状、粒子状   ・排ガス(二酸化炭素、ダスト等)   ・排水  ②騒音、振動   ・騒音  ③放射性物質    ④熱

原材料/  部品調達

梱包解体

部品製造、 組み立て

部品組み立て

製品梱包

流通

■図3.2-4 電機・電子製造業のOPI

108

3.2

事業活動 【原材料】  ①加工材料   ・原材料     ・剥離材     ・ワックス     ・洗剤     ・ポリ袋、トレイ等   ・商品包装材     ・物流包装材  ②リサイクル材料   ・牛乳パック     ・ペットボトル     ・缶     ・ポリ袋    ・トレイ  ③再使用材料     ④素材  ⑤天然資源     ⑥水   ・水道   【エネルギー】   ・電気     ・ガス     ・燃料 【サービス】

【製品】  ①主製品     ・商品  ②副製品 【サービス】   ・情報(チラシ、DM等)     ・情報(チラシ、パンフレット等)   ・商品包装      ・販売包装 【廃棄物】  ①固体状、液体状、   ・廃棄物  ②有害、不活性等  ③リサイクル可能、再使用可能 【排出物】  ①液体状、気体状、粒子状   ・排水     ・排ガス     ・臭気  ②騒音、振動   ・騒音     ・振動  ③放射性物質    ④熱

PB*1メーカー   生鮮・惣菜   加工場

NB*2メーカー  ・問屋    ・産地 

物流車両

本部

物流センター    ・電気機器    ・ボイラー    ・倉庫    ・冷蔵庫

店舗    ・空調機    ・什器    ・電気機器  ・商品陳列    ・生鮮加工    ・惣菜調理   加工    ・清掃

■図3.2-6 チェーンストアのOPI

事業活動 【原材料】  ①加工材料   金属系・セメント系・アスファルト   系・木質系・土質系材料・混和剤、   塗料系・ガラス系・陶磁器系材料、   石材、ボード材、プラスチック類  ②リサイクル材料    ③再使用材料    ④素材   ⑤天然資源     ・樹木の伐採     ・周辺地盤の変形  ⑥水     ・水  【エネルギー】   ・電力      ・ガス類     ・燃料油 【サービス】   ・設計図書     ・見積図書     ・施工基準     ・技術基準

準備工事

地下工事

地上工事

仕上工事

外構工事

設備工事

【製品】  ①主製品     ・建築物  ②副製品   ・建設副産物中の建設発生土   ・建設副産物中の有価物 【サービス】 【廃棄物】  ①固体状、液体状   ・建設廃棄物    ・廃石綿     ・引火性廃油     ・洗浄水   ・排出地下水     ・泥水  ②有害、不活性  ③リサイクル可能、再使用可能 【排出物】  ①液体状、気体状、粒子状   ・SOX、NOX、粉じん  ②騒音、振動   ・発生音   ・振動  ③放射性物質      ④熱

■図3.2-5 建設作業のOPI

(注)*1 PB:Private Brand、大手卸・大手小売チェーンが独自に開発した商品*2 NB:National Brand、有名メーカーのよく知れわたった商標、又は商品

109

環境パフォーマンス評価の運用Chapter

3環境パフォーマンス評価

3)MPI

①用途、目的

a.種々のマネジメントプログラムの実施、有効性を判断b.操業の環境パフォーマンス、環境状態に影響する経営層の処置の 適切性判断

c.EMSを成功させるために、特に重要な取り組みの選別d.環境マネジメント能力の評価:状況変化に対応する柔軟性、目的達成能力、有効な調整能力、問題解決能力

e.法的及びその他の要求事項に対する適合性f.財務上のコスト、利益g.パフォーマンスの変化の予測h.環境パフォーマンス基準未達成の原因の特定i.予防活動の機会の特定

②MPIの例(EPEガイドA.4.2.2)

②-1 方針及びプログラムの実施

a.達成された目的及び目標の数b.環境目的及び目標を達成する組織単位の数c.マネジメント遵守規定又は操業遵守規定の実施の度合いd.実施された汚染防止行動提案の数e.環境について特定の責任権限を持つ責任者層の数f.職務規定の中に環境要求事項が入っている従業員数g.環境プログラムに参加している従業員数(例えば、提案、リサイクル、クリーンアップ提案発議など)

h.環境プログラムに参加している総従業員数に対して、褒賞及び表彰を受けた従業員の数(例えば、提案、リサイクル、クリーンアップ提案発議など)

i.環境教育訓練を必要とする人数と、教育訓練済みの人数比率j.請負業者中の教育訓練を受けた人数k.教育訓練参加者の得点l.従業員からの環境改善提案の数m.組織の環境問題の知識について、従業員調査の結果n.環境問題について質問した納入業者及び請負業者の数o.請負でのサービス提供業者で、EMS導入又は認証を受けている人数

p.明示的な“製品スチュワードシップ”計画を持つ製品数q.解体、リサイクル、又は再使用に配慮した設計がされた製品数

110

3.2

r.環境的に安全な使用及び廃棄についての説明書を持つ製品の数

②-2 適合性

a.規制遵守の程度b.組織の委託契約に示されている要求及び期待に対する、サービス供給者の適合程度

c.環境事故への対応又は是正までの時間d.解決済み又は未解決の確認された是正処置の数e.罰金又は科料の回数、又は付随費用f.特定の活動の数と限度(例えば、監査)g.監査の計画に対し完了した数h.期間当たりの監査所見の数i.操業手順の見直し頻度j.実施された緊急訓練の回数k.計画的な準備であることを実証する、緊急対策及び対応訓練の比率

②-3 財務的パフォーマンス

a.製品又はプロセスの環境側面に関するコスト(操業コスト及び資本コスト)

b.環境改善プロジェクトの投資に対する収益c.資源使用の削減、汚染防止、又は廃棄物リサイクルを通じて達成された節約額

d.環境パフォーマンス又は企画目的を満たすよう設計された、新製品又は副産物の売上収入

e.環境意義を持つプロジェクトに充当した研究開発資金f.組織の財務上の地位に、重大な影響を及ぼし得る環境債務

②-4 地域社会関係

a.環境関連問題についての質問又はコメントの数b.組織の環境パフォーマンスに関する新聞報道の数c.地域社会に提供された環境教育のプログラム及び資料の数d.地域社会の環境プログラムの支援に当てられた経営資源e.環境報告書を持つサイトの数f.野生生物プログラムを持つサイトの数g.地域改善活動の進展h.支援を受けた自主的な地域の浄化又はリサイクル活動の実施数i.地域社会調査からの好意的支持率

111

環境パフォーマンス評価の運用Chapter

3環境パフォーマンス評価

③MPIの具体例(表3.2-3)

1. 体制

2. 環境方針

3. 環境側面

4. 法規制及び  遵守事項

5. 目的及び目標

6. 環境計画

7. 投資計画

1. 体制と運営

2. 日常管理

3. 監視・計測

共 通 事 項

管理(年間の会議の開催計画数)、管理規定(管理規定数、管理規定の名称) 周知徹底(徹底方法と計画徹底回数、頻度、徹底対象者数・組織数) 発生源特定(発生源の工程・設備名、工程・設備仕様)、地域特性の把握(周辺居住者数、周辺企業数、用途地域名称等)、周知徹底(徹底方法と計画徹底回数、頻度、徹底対象者数・組織数)、利害関係者(利害関係者ごとに対応させた環境側面、利害関係者ごとの視点)、環境モニター(モニター数、モニター会議計画開催数) 遵守法令(遵守すべき法令のリスト、遵守すべき法令の数、事業運営にかかわる関連法令集、自主管理にかかわる指針等の件数)、周知徹底(徹底方法と計画徹底回数、頻度、徹底対象者数・組織数) 達成すべき目標(件数、対象項目別の目的及び件数、目標等の達成に取り組んでいる組織数、周知徹底(徹底方法と計画徹底回数、頻度、徹底対象者 数・組織数)、文書化(文書数)、協力会社等の支援(協力会社別の目的等の項目、項目数) 目的・対象別の達成目標値(大気排出量、排水量、投棄廃棄物量、排出汚染物質ごとの対前期比削減率、資源のリサイクル率等)、目的・対象別の達成目標スケジュール、周知徹底(徹底方法と計画徹底回数、頻度、徹底対象者数・組織数) 計画予算と実績(計画・実施件数、計画・実行予算額)、環境対策投資効果(計画値・実績値)、省資源や廃棄物のリサイクル等による削減コスト(計画値、実績値)、環境適合製品販売に伴う利益(計画値、実績値)、資源別分配計画(人員計画・資材計画・資金計画にかかわる計画値)、研究開発(計画件数・費用、実施件数・費用) 資源分別計画(人員計画・資材計画・資金計画にかかわる実績値)、マネジメントや操業にかかわる規定類の実施の度合い 管理対象設備数、設備別管理基準値、汚染物質排出実体(排出量・排出濃度)、環境影響が想定される契約者数、EMSを有する供給者の契約数、環境適合商品(商品の種類、生産量)、罰金等(支払い回数、支払い金額) 監視・計測実体(監視・計測マニュアル数、監視・計測箇所数、監視・計測箇所配置図、監視・計測実績値、公共データ等採用点数、公共データ等の地域実績値、バックグラウンド値)、基準適合性の程度、契約事業者の基準適合性の程度 リスク特定マニュアル(マニュアル数)、周知徹底(周知マアル 周知説明会の回数 説明対象者数) リスク対応

情報提供先

経営者

全従業員

管理者

担当部門

関係者全員

担当部門

外部

計画

実行

■表3.2-3 MPIの具体例

112

3.2

4. リスク

5. 緊急事態へ   の対応

6. 是正予防処   置

7. 従業員教育

8. 外部とのコ  ミュニケー  ション

9. 社会貢献

10. 情報管理

共 通 事 項

リスク特定マニュアル(マニュアル数)、周知徹底(周知マニュアル、周知説明会の回数、説明対象者数)、リスク対応(リスク管理に基づく対応リスクの種類・件数、リスク管理に基づく対応が必要な組織数、対応実績回数) 緊急処置基準(基準類の数、改定件数)、緊急処置訓練基準(基準値の数、計画訓練回数・訓練参加予定者数、訓練実績回数・実訓練参加者数、関連の評価)、環境事故対応実績回数、訓練の成果(対応実績)、遵守性の程度、トラブル対応実態(対応回数、対応時間、対応人数、対応コスト、対応結果及びその程度) 是正予防処置実績(改定回数、改定件数)、解決済み又は未解決件数、是正予防処置の見直し履歴、見直し結果の周知徹底(徹底方法と計画徹底回数、頻度、徹底対象者数・組織数)、文書化(文書数) 教育(資格別教育内容、資格別教育項目数、教育計画・実施回数、教育計画・実施人数、教育実施率)、教育終了時試験の成績、従業員からの改善提案件数、表彰者数・表彰金額、環境教育の必要な契約者数及びその従業員数と教育実施者数 対応実態(計画対応回数・対応実績、緊急対応実績回数、相手の人数、対応コスト、マスコミ対応回数、マスコミ報道回数、コミュニケーションに対する相手方の満足度)、地域社会への対応(計画活動回数・実施活動回数、教育プログラム数、地域支援のプログラム数)、地域からの評価(苦情件数、対応に対する評価の程度)、社外モニター(モニター数、モニター会議開催計画数・実施回数、会議参加者数、開催費用) 社会貢献活動(計画活動項目数・費用、実施回数・費用、スポンサーとなったあるいは自ら実施した地域清掃活動の回数、リサイクル活動回数、参加者数、支援団体数・支援費用)、貢献団体数、貢献にかかったコスト、技術移転実績(見学者数、見学団体数、特許提携数、特許料の収入実績)                      情報提供実態(情報提供回数、情報提供相手数、情報提供に対する相手方の満足度) 監査(監査対象の組織数、計画監査回数・スケジュール、監査実施回数、監査計画現場の数・実施現場の数、計画費用、実施費用、問題点指摘箇所数) 担当部門(体制表)、文書化(文書マニュアル)、改善処置マニュアル(改善件数)、周知徹底(周知マニュアル)

マネジメント レビュー

情報提供先

経営者

全従業員

管理者

担当部門

関係者全員

担当部門

外部

実行

監査

(11)EPIの確定次の事項を点検して、EPIを確定する。a.環境方針や環境目的などと整合性がとれているか。b.組織のマネジメントへの取り組み、操業パフォーマンス、又は環境 状態に対して適切か。

113

Chapter

3環境パフォーマンス評価

c.環境パフォーマンスの変化が的確に反映され、過去、現在及び将来の動向についての情報を提供できるものであるか。

d.内外の利害関係者に関連があり、かつ理解できるものであるか。e.効果的な費用で、タイムリーに収集が可能なデータを使用しているか。

f.使用用途に適したデータの型・質であり、適切なデータ量を確保できるデータを使用しているか。

g.組織の環境パフォーマンスを代表するものであるか。h.環境パフォーマンスに適した測定可能な単位であるか。i.組織の環境パフォーマンスの変化を適切に反映しているか。j.組織の環境パフォーマンス動向についての情報を提供できるものであるか。

(12)判定基準前述の(10)及び(11)で確定した指標の実績値を下記の基準と対照させ

て、各指標に対して点数を付与する。

1)ECIの例

①法規制

1点 法規制の面からは特に管理対象とする必要がないもの2点 業界の自主的な約束事や自社の活動実態などから自主的に管理 

が必要なもの3点 近い将来、何らかの法規制の対象として遵守義務が生じるおそ

れのあるもの4点 環境関連の法規制などが存在し、遵守義務があるもの

②関連性

1点 事業活動とのかかわりが小さいもの2点 日常的に(使用)しているわけではないが、事業活動とのかか

わりがあるもの3点 日常的に排出(使用)しており、事業活動と密接にかかわって

いるもの

③影響度

1点 ほとんど問題になっていないもの2点 地域・地球環境への影響の可能性が考えられるもの3点 地域・地球環境への影響が大きく問題となっているもの

環境パフォーマンス評価の運用

114

3.2

2)OPIの例

①法規制

1点 法規制の面からは特に管理対象とする必要がないもの2点 業界の自主的な約束事や自社の活動実態などから自主的な管理

が必要なもの3点 近い将来、何らかの法規制の対象として遵守義務が生じるおそ

れのあるもの4点 環境関連の法規制などが存在し、遵守義務があるもの

②緊急度

1点 特に対処する必要のないもの2点 特に住民や行政などからの要請はないが、自社の活動実態など

から何らかの対応が必要と考えられるもの3点 住民や行政などからの要請により早急に対応が必要なもの

③コスト

1点 コスト面からは管理対象とする必要性のないもの2点 それなりのウェイトを占めているもの3点 事業活動に伴うコスト(購入費や対策費など)が企業の負担に

なっているもの

④影響度

1点 ほとんど問題になっていないもの2点 地域・地球環境への影響の可能性が考えられるもの3点 地域・地球環境への影響が大きく問題となっているもの

3)MPIの例

①法規

1点 法規制の面からは、特に管理対象とする必要がないもの2点 業界の自主的な約束事や自社の活動実態などから自主的な管理

が必要なもの3点 近い将来、何らかの法規制の対象として遵守義務が生じるおそ

れのあるもの4点 環境関連の法規制などが存在し、遵守義務があるもの

②コスト

1点 コスト面からは管理対象とする必要性のないもの

115

環境パフォーマンス評価の運用Chapter

3環境パフォーマンス評価

2点 それなりのウエイトを占めているもの3点 事業活動に伴うコスト(購入費や対策費など)が企業の負担に

なっているもの

(1)データ及び情報の使用手順(図3.2-7、EPEガイド3.3.1)

(2)データ収集の基本(EPEガイド3.3.2、3.3.3)a.EPE指標の計算入力に当たって、適切なデータ源から、体系的、網羅的かつ定期的に(EPE計画と一致する頻度で)データを収集する。

b.データの使用可能性、妥当性、科学的、統計的な正当性と検証可能性などを確保するため、データの信頼性が必要である。

c.データの品質を保証するためには、品質管理、品質保証の裏づけが必要である。

d.データ・情報について、識別、ファイリング、保管、検索、処分の手順を決めておく。

(3)データ収集源(EPEガイド3.3.2)a.監視及び測定(方法、頻度を含む)b.面談及び観察

3.2.3 データの収集と評価(EPEガイド3.3)

入力 出力

データ源

データの分析における 考慮事項と技法

比較のための環境 パフォ-マンス基準

3.3.2 データ収集

3.3.3 データの分析     及び変換

情 報

データ

3.3.4 情報の評価

結 果

3.3.5 報告及び     コミュニケ-ション

内部(従業員及び契約者) 外部(利害関係者)

■図3.2-7 データ及び情報の使用(実施)

(注)3.3.2~3.3.5はEPEガイドの項目番号

116

3.2

c.規制に関する報告書d.在庫及び生産記録e.財務及び経理記録f.購入記録g.環境レビュー、監査、アセスメント報告書h.環境教育訓練記録i.科学的な報告書及び研究結果j.政府機関、学術機関及び非政府組織k.納入業者及び下請契約者l.顧客、消費者、利害関係者m.業界団体

(4)データの解析(EPEガイド3.3.3)a.収集されたデータをEPE指標に変換する。b.計算、予測、統計的手法、グラフ化、索引化、集計、重み付けなどを用いて解析する。

c.グラフの種類(解説第3部10)・棒グラフ・折れ線グラフ・円グラフ・積み重ねグラフ:例えば、円グラフに時系列の変化を合わせて描く。・レーダーグラフ:例えば、複数要素の達成率などを時系列変化で描く。・散布図・株価グラフ:ある事象の変動幅と全体的変化を合わせて描く。・対数グラフ

(5)情報の評価(EPEガイド3.3.4)a.環境パフォーマンスの改善の必要性と問題点を明らかにするため、環境パフォーマンス基準と比較する。

b.評価結果は経営層に報告する。c.解析結果の評価例(図3.2-8)(解説第3部10)d.評価結果の整理(解説第3部10)・目標値の達成手段は適切であったか。・活動途中の各種条件変更が関係者に的確に伝わっていたか。・情報が一方向の流れになっていなかったか。・PDCAがきちんと回っていたか。

117

環境パフォーマンス評価の運用Chapter

3環境パフォーマンス評価

(6)報告、コミュニケーション(EPEガイド3.3.5)①報告、コミュニケーションの便益

a.環境パフォーマンス基準達成への支援b.環境方針、環境パフォーマンス基準、関連する達成事項の自覚の向上と対話の増加

c.環境パフォーマンス改善に対する組織の約束、取り組みの実証d.組織の環境側面への関心、疑問に応える仕組みの提供

②内部コミュニケーションの必要性

従業員、契約者、その他の関係者がその責務及び環境パフォーマンス 基準を果たすため、適切で必要な環境パフォーマンス情報についてタイムリーに内部コミュニケーションを行う。

③内部報告内容

a.環境パフォーマンスの傾向(例:廃棄物の削減)b.法的及びその他の要求事項に対する遵守状況c.コスト削減、他の財務上の結果d.環境パフォーマンスを改善する余地、推奨事項

④外部コミュニケーションにおける留意事項

a.組織として確信できる環境パフォーマンスの表現であること。b.環境パフォーマンスに関する情報は、実質的で、意図する対象者の技術知識レベルを考慮した表現であること。

c.コミュニケーション方法は、組織と利害関係者との対話を促進させるものであること。

■図3.2-8 環境配慮型活動の実績推移(電力消費量)

260

250

240

230

  0 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000

(千kWh/年)

(年)

118

3.2

3.2.4 見直し及び改善(EPEガイド3.4)

⑤外部コミュニケーション情報の例(EPEガイド3.3.5 実践の手引き#5)

a.EPEへの組織の誓約の声明b.組織の活動、サービスの記述c.著しい環境側面、関係するEPE指標の声明d.環境パフォーマンス基準に対するパフォーマンス情報e.EPEから導かれた改善f.組織の包括的な成果に対する環境マネジメント及びEPEの寄与度

(1)目的定期的にレビューすることによって、a.組織のマネジメントと操業のパフォーマンスを改善するための経営層の判断に寄与する。

b.環境状態の改善につながる。

(2)見直しの内容(EPEガイド3.4 実践の手引き#6)

a.組織の環境パフォーマンスの変化をみるために、適切な情報を提供しているか。EPE指標は適切か。

b.経営層に適切で有用な情報を提供しているか。c.計画に従って実施されているか。d.データ源、データ収集方法・頻度、データ品質は適切であるか。e.収集したデータを効果的に分析及び評価しているか。f.適切な経営資源によって支援されているか。g.組織の環境パフォーマンス基準は適切であるか。達成度はどうか。h.EPE情報の報告及びコミュニケーションのための情報を提供しているか。

i.適切な場合は、利害関係者からの入力を検討又は要請しているか。j.組織にとって付加価値があるか:費用効果、便益k.組織及びその周囲状態の変化に対応しているか。l.新たな環境問題に対応しているか。m.パフォーマンスについて組織が受け入れたほかの尺度とよく整合しているか。

119

環境パフォーマンス評価の運用Chapter

3環境パフォーマンス評価

(3)手順ごとの見直し内容(解説第3部11)1)体制

①EPEの対象

a.活動事業分野の変更に伴う見直しb.地域社会の変化に伴う見直しc.各種規制値、自主基準の変化に伴う見直しd.利害関係者の意見などに伴う見直し

②EPEの実行体制整理

a.管理項目の追加、削除などに伴う見直しb.業務処理ルールなどの変更に伴う見直しc.組織規定、職制変更などに伴う実行体制の見直し

2)環境側面の特定

a.活動事業分野の変更に伴う見直しb.地域社会の変化に伴う見直しc.各種規制値や自主規制の変化に伴う見直しd.利害関係者の意見の変化に伴う見直し

3)環境パフォーマンス基準の設定

a.現在及び過去のパフォーマンスb.法的要求事項c.一般的に認められている基準や社会的要請d.経営層による見直し及び監査e.利害関係者の見解f.科学的な研究

4)情報の処理

a.情報の入手元の整理・業務遂行にかかわる関連部門の見直し・利害関係者などの意識変化に対応させた見直し

b.情報の伝達先の整理c.情報伝達手段の整理:情報の入手元及び伝達先の変更に伴う見直しd.情報の提供頻度:情報の利用目的に合わせた情報の提供頻度の見直し

120

3.2

5)ECIの設定

a.環境規制項目の整理:法、条例の改廃に伴う見直しb.環境にかかわる自主的規制項目の整理・法や条例の改廃にかかわる自主管理事項の見直しに伴う見直し・世界的動向を先取りした業界などの自主的規制の変更に伴う見直し

・利害関係者からの意見などに伴う見直し

6)OPIの設定

①インプット項目の整理

a.生産活動の変更に伴う入手原材料の見直しb.資源やエネルギー事情の変化に伴う見直しc.業種の変更に伴う見直しd.製造品種の変更などに伴う見直しe.原材料入手方法の変更(内製・外製化、荷姿など)に伴う見直しf.製造工程の改善など(省資源、省エネルギーなど)に伴う見直し

②アウトプット項目の整理

a.業種の変更に伴う見直し:業種や生産品種の変化によるアウトプットとしての製品

b.事業活動の変更(製造品種の変更など)などに伴う見直しc.製品輸送方法などの変更に伴う見直しd.法、条例の改廃に伴う見直しe.製造工程の改善(省資源、省エネルギーなど)に伴う見直し

7)MPIの設定

a.MPIの変更に伴うMPIの見直しb.環境関連業務の運営要領の変更に伴う見直しc.環境関連設備の変更などに伴う見直し

8)EPE指標及び環境パフォーマンス基準の確定

a.EPE指標の確定:EPE指標の見直しb.環境パフォーマンス基準の確定:環境パフォーマンス基準の見直し

9)データの収集

①データ収集先や頻度の設定

a.収集データ項目の変更などに伴う見直し

121

環境パフォーマンス評価の運用Chapter

3環境パフォーマンス評価

b.環境関連業務担当の変更に伴う見直しc.データ解析頻度の変更などに伴う見直しd.各種情報の報告頻度、報告時期の変更などに伴う見直しe.データ収集手段の変更による見直し

②収集するデータの形の設定

a.業務運営要領の変更(情報の電子通信化など)に伴う見直しb.データ解析要領の変更に伴う見直し

10)データの解析

a.問題のありかがより明確になる解析方法を採用しているか。b.活動目標が的確に把握できているか。c.活動目標に対する進捗状況、経過が的確に把握できているか。d.EPEの結果を関連する利害関係者に的確に伝えることができるか。e.EPEの解析結果が、利害関係者に誤解を招くおそれはないか。

(4)EPEの改善例(EPEガイド3.4ー実践の手引き#7)a.データ品質、信頼性、利便性の改善b.分析、評価能力の改善c.EPEの新しい、又はより有益な指標の開発、特定d.EPE範囲の変更

123

【A~Z】

5W2H形式の質問 ……………83

ECI(環境状態指標)

…………99,101,113,120

EMS(環境マネジメント

システム) ……………………2

EMSの要求事項 ………………4

EMS文書………………………56

EPE(環境パフォーマンス評価)

………………………………91

EPE(環境パフォーマンス評価)

指標 …………………………99

EPE業務フロー ………………94

EPEモデル ……………………94

EPI(環境パフォーマンス指標)

………………………………99

EPI(環境パフォーマンス指標)

の確定 ……………………112

EVABAT(最善の利用可能な

技術) …………………………3

ISO 14000シリーズ……………1

MPI(マネジメントパフォー

マンス指標) …101,109,114

OPI (操業パフォーマンス指標)

…………………99,104,114

PDCA……………………………5

【あ】

遺跡 …………………………103

著しい環境側面 …………7,10

一般要求事項 ……………5,44

運用管理 …………………28,57

運用基準 ………………………29

エネルギー …………………105

汚染の予防………………………7

【か】

改善 …………………………118

外部監査 ………………………65

外部コミュニケーション

……………………23,53,117

環境影響評価 ………10,11,12

環境管理部長 …………………54

環境管理責任者 ………………54

環境状態指標(ECI)

…………………99,101,113

環境側面 …………………10,45

環境側面表 ……………………45

環境パフォーマンス基準 ……98

環境パフォーマンス指標

(EPI)…………………………99

環境パフォーマンス指標

(EPI)の確定 ……………112

環境パフォーマンス評価

(EPE) ………………………91

環境パフォーマンス評価

(EPE)指標 …………………99

環境方針 …………………6,44

環境マネジメントシステム

(EMS) ………………………2

環境マネジメントシステム

監査 …………………………65

環境マネジメントシステム

文書 …………………………41

索 引

Index

索 引

124

環境マネジメントシステム

要求事項 ……………………44

環境マネジメントマニュアル

………………………………42

完結型質問 ……………………83

監査依頼者 ……………………67

監査員 ……………………37,67

監査員の力量 …………………88

監査活動 ………………………76

監査基準 ………………………73

監査計画 …………………69,79

監査結果 ………………………69

監査結論 ………………………85

監査証拠 ………………………81

監査所見 ………………………84

監査チーム ……………………68

監査チームの選定 ……………77

監査のフォローアップ ………87

監査範囲 ………………………38

監査プログラム ………………37

監査プログラム管理責任者

…………………………67,71

監査プログラムの監視及び

レビュー ……………………75

監査プログラムの記録 ………74

監査プログラムの実施 ………74

監査プログラムの手順 ………74

監査プログラムの範囲 ………73

監査プログラムの目的 ………72

監査報告書 ……………………86

監査要求事項 …………………68

監視及び測定 ……………31,59

管理責任者 ……………………20

緩和 ……………………………30

基礎情報 ………………………68

教育 ……………………………21

供給 …………………………106

記録 ………………………35,61

緊急事態 ………………………58

訓練 ………………………21,52

計画 ………………………10,45

景観 …………………………103

継続的改善 ……………5,7,40

現地監査活動 …………………79

公正な報告 ……………………68

合同監査 ………………………66

コミュニケーション

……………………22,53,117

【さ】

サービス ………………105,107

最終会議 ………………………85

最良利用可能技法(EVABAT)

…………………………………3

財務的パフォーマンス ……110

材料 …………………………105

作業文書 ………………………79

サンプリング方式 ……………82

施設 …………………………105

実施及び運用 ……………19,49

従業員 …………………………19

周知………………………………9

情報収集方法 …………………81

情報の収集及び検証 …………81

情報の評価 …………………116

初期環境レビュー………………6

植物 …………………………102

水域 …………………………102

製品 …………………………106

製品の環境側面 ………………10

責任 ……………………………19

操業パフォーマンス指標

(OPI) ………99,104,114

相互確認 ………………………83

装置 …………………………105

想定質問 ………………………83

組織………………………………5

【た】

第一者監査 ……………………65

大気 …………………………101

大気排出物 …………………106

第三者監査 ……………………65

第二者監査 ……………………65

地域社会関係 ………………110

チームメンバー ………………69

チームリーダー ………………68

チェックリスト ………………80

追跡可能 ………………………36

定義 ……………………………44

データ ………………………115

データ収集源 ………………115

データの解析 ………………116

データの収集 ………………115

適合性 ………………………110

適用範囲 …………………42,44

手順 ……………………………23

手順書 …………………………42

点検及び是正処置 ……………59

索 引

動物 …………………………102

独立性 …………………………68

土壌・水域排出物 …………106

土地 …………………………102

【な】

内部監査 …………………36,65

内部コミュニケーション

……………………22,53,117

人間 …………………………103

【は】

廃棄物 ………………………106

パフォーマンス ………………32

判定基準 ……………………113

反復質問 ………………………83

被監査者 ………………………69

フォローアップ監査 …………87

複合監査 ………………………66

不適合 ……………………33,59

部門長 …………………………50

プログラム …………………109

文化 …………………………103

文書管理 …………………26,56

文書レビュー …………………78

報告 …………………………117

報告書 …………………………38

方針 …………………………109

法的及びその他の要求事項

…………………………14,46

保管期限 ………………………36

【ま】

マネジメントパフォーマンス

指標(MPI) …99,109,114

見直し ………………………118

メモ ……………………………82

面談 ……………………………83

目的・目標 …………16,43,47

【や】

有益な環境側面 ………………11

要求事項 ………………………43

予防 ……………………………30

【ら】

利害関係者 ……………………18

倫理的行動 ……………………68

レビュー ………………………26

【わ】

枠組み……………………………8

125

索 引

平成16年度経済産業省産業技術環境局リサイクル推進課委託事業「循環ビジネス人材教育・循環ビジネスアドバイザー派遣事業」研修用テキスト

環境経営実務コースⅠⅠ環境配慮型経営管理支援手法コースⅠⅠA 環境マネジメントシステム/監査/パフォーマンス評価

平成16年 1月30日 発行平成17年 3月 1 日  2 版

著 者  今井健之、園部浩一郎発行所  社団法人 産業環境管理協会

東京都千代田区鍛冶町2-2 -1電話 03(5209)7704

編集協力 スレッドプランニング

(非売品)禁無断転載 Printed in Japan(本テキストは古紙配合率100%の再生紙を使用しています)

著 者 今井健之社団法人産業環境管理協会環境管理センター研修部長

園部浩一郎株式会社テクノファ常務取締役

改訂版