沿岸海洋学...

沿岸海洋学エクマン理論・エクマン湧昇

１．表層海流の成因強い海流は西岸に形成される（西岸境界流）。例えば黒潮やガル

フストリームなどがある。これらの流れは、1000m ぐらいまで

の鉛直構造を持ち、莫大な熱・塩を輸送している。このような流

れは、コリオリ力と圧力傾度力が釣り合った地衡流の状態になっ

ている。亜熱帯循環や亜寒帯循環は、風成循環と呼ばれ、その成

因の鍵は風応力とそれに伴うエクマン吹送流である。

海上風と風応力

海流の分布

（海流ができる流れ）

「エクマン吹送流が水圧の差をつくり、水圧の差が海流を作る。」


☆エクマン理論ここでは粘性流体について考える。密度一様で無限に広く，深い

海を仮定する。対象とする現象は水平方向に一様で，y方向に一様な風が吹き続け，定常状態に達したとするシステムを考える。

−𝑓𝑣 = 𝐾𝑧 !!!!!! ---① 𝑓𝑢 = 𝐾𝑧 !

!!!!! ---②

※右辺の Kzは鉛直渦動粘性係数

（境界条件）海面（z=0）において，

𝐾𝑧 !!!"= !

! ---③ 𝐾𝑧 !!

!"= 0 ---④

※右辺のτは海面での風応力また無限深（z → ∞）で風応力の影響は消滅するとして， 𝑢 = 𝑣 = 0 ---⑤ ここで、V = u + ivを定義して①+②×iをとると、 !!

!!!− !

!"𝑖 𝑉 = 𝐷! − !

!"𝑖 𝑉 ∵ 𝐷! = !!

!!! ---⑥

解は V=AeλZ の形になると推測できるので，境界条件から解いてみ

る。この場合，⑥式は !!!!!!

− 𝑖𝜆!𝑉 = 0 ∵ 𝜆! = !!" ---⑥’

となるであろう。まず予備知識として√iに関する以下の式を念頭におき，⑥’を変形する。


𝑖 = 𝑒!!!=𝑒!

!! = ± !

!1 + 𝑖

!!!!!!

− 𝑖𝜆!𝑉 = !!!!!!

− !!!!

! !"!

𝑉 = 0

ここで𝛿 = !!"!として，上式を書き直すと，

!!!!!!

− 1 + 𝑖 !

𝛿! 𝑉 = 0

となる。この式において，Vの一般解は，定数 Cを使って，

𝑉 = 𝐶𝑒!!!! ! ---⑦

となる。ここで Cを求めたい。V=u+ivとしているので，④+③ ×i をとると

𝐾𝑧∂u𝜕𝑧+ 𝐾𝑧

∂v𝜕𝑧𝑖 = 0 +

𝜏𝜌

!"!"= !"

!"# ---⑧

また⑦式を zで微分すると， !"!"= 𝐶 !!!

!𝑒!!!! !

海面では !"!"= 𝐶 !!!

! ---⑨


⑧式と⑨式より，

𝐶 !!!!

= !"!"#

→𝐶 = !"!(!!!)!"#

ここで𝑖 = !!! !

!なので

𝐶 = (!!!)!!!!"#

---⑩

⑩を⑦に代入して変形すると

𝑉 = 𝐶𝑒!!!! ! = !!! !!

!!"#𝑒!!!! ! = !

!!!!"#

𝑒!!𝑒

!!!! ! = !

!!!!"#

𝑒!!𝑒!

!!!

!! =

!!!!!"#

𝑒!!𝑒!!

!!!

!! = !

!!!!"#

𝑒!! −𝑠𝑖𝑛 !

!− !

!+ 𝑖𝑐𝑜𝑠 !

!− !

!---⑪

（問い） ★ ⑪式から，流速の構造はどうなるか？ ★ ①,②式 z=−∞から z=0まで積分して，エクマン流の鉛直積分が次のページにある式に一致するか確認すること。

（エクマン吹送流の大きさ）エクマン吹送流は


V =𝜏!𝜌𝑓

=0.1 𝑁 𝑚!

1000 × 10!!

= 1 (𝑚!/𝑠)

エクマン層の厚さが 10mだとすると平均 0.1m/sほどになる。 ☆エクマン湧昇エクマン湧昇は海洋生態系にとって極めて重要である。

☆エクマン湧昇の導出

風応力𝜏 = 𝜏! + 𝜏! のときのエクマン輸送 → U! =!!!", V! = − !!

!"

エクマン層下端での湧昇流をWeとして，

連続の式 !!!"+ !"

!"+ !!

!"= 0 をエクマン層内，つまり z=−∞から z=0

まで積分する。海面では w=0であるから


𝑤 0 − 𝑤 −∞ = − !"!"+ !"

!"!!! 𝑑𝑧 = − !!!

!"+ !!!

!"= − !

!"!!!"

−

!!"

!!!"

= !!"

!!!"

+ !!!"!"

!!!"

− !!"

!!!"

= 𝐶𝑢𝑟𝑙!!!"

+ !!

!!!"

= We

エクマン湧昇の大きさはだいたい 10-6~10-7m/sのオーダー。一日で cm, 一年で m？

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