VOL.78 10...FabLab発祥の地ボストンで開催されたFabFesta 神奈川県出身。...

Post on 24-Jan-2021

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宮城教育大学 門田 和雄 准教授

す。今の3Dプリンターではまだセッティングが難しく、フリーで転がっているデータもありますが、自分で作りたいものを作るなら、3DCADが使えないと出来ないので。海外だと学校に3Dプリンターが入っているので、そういうのを見ると日本は遅れているなと感じます。 アメリカなどでは、STEM教育とよばれるサイエンス(Science)、テクノロジー(Technology)、エンジニアリング

(Engineering)、数学(Math)に重点をおいた教育が注目されています。コンピュータを活用したデザインやプログラムなどを通して、これらの科目を総合的に学ぼうとするものです。そこでは3Dプリンターを活用してロボットを作ったりもしています。日本でも学校外のスクールで少しずつ導入されていますが、お金がある人しか通えないことなどが懸念されるので、やはり義務教育の中でこのような活動ができる時間を定着させることが重要であると感じています。 3Dプリンター技術というのは、材料をいろいろ変えられるから幅広いんですよ。コンクリートで家を作るとか、木の粉を混ぜて木質のものを作るとか。私は昨年生徒たちと、白あんを使って和菓子を出力する3Dプリンターをものづくりの

展示会に出展しましたが、介護食などの研究を本格的にやっている人もいるんですよ。

今の中学校の技術の時間は、どのくらいなんですか?

 少ないです。週に1時間程度しかない。ただ指導要領の改訂で、このところ内容は割と充実してきています。PCが学校に入ってきてここ20年くらいで、何を教えるかということも変わってきています。「コンピュータのしくみを知ろう」や、プログラミングによる計測・制御などは入っていますが、3Dプリンターを活用したデジタルものづくりなどはまだ導入されていません。 アメリカでは「今の小学生のうち65%は、今の世の中に存在しない職業に就く。」と言われていますが、それは単純作業はロボットに置き換わって、クリエイティブなこと、人間にしか出来ない仕事しか残らないというような意味です。決められたことを丸暗記して吐き出すトレーニングをいくらしても、クリエイティブな能力は身につかないから、教育も変えていかなければならないというこ

とが言われています。そういう時にものづくりをやっ ている教科はもっと前に出て、その大切さをアピールしていくチャンスかなと思っています。日本は「ものづくり大国」

「技術立国」と言われていますが、大学や会社に入ってからではなく、もっと早くからやっておかないと製造業は成り立たなくなるし、ほかの国から遅れていくと思います。

「FabLabSENDAI FLAT」との関わりについて

 横浜にFabLab関内があって、私はそこの立ち上げメンバーです。 FabLabは国内に10ヶ所くらいあるんですが、みんなネットワークが繋がっているんです。FabLabSENDAI FLATは南町通りの雑居ビルの中にあるんですが、3Dプリンターやレーザーカッター、刺繍ミシンなどいろいろあって、そこで講習を受けて、それらを使ってものづくりをするコワーキングスペースのようなところです。ただ機材を貸し出すだけでなく、そこでコミュニティを作っていろいろやっているので、面白いことをやる人が集まってきていますよ。誰でも使うことが出来るので、小学生はまだあまりいませんけど、この夏休みに中学生が来てすごいものを作ったと聞きました。私もせっかく仙台 に 来 た ので、何かお手伝い出来ること が あ れ ばと、たまに顔を出しています。

ままぱれ読者にアドバイスをお願いします。

 ゲーム機を与えるだけでなく、親子でものづくりを楽しんでほしいですね。紙工作でも、ペットボトルで何かを作るでもいいと思うんですが、それによって立体的な感覚を養ったり、自分の作りたいものをデザインする力がつくと思うので。やっぱり2Dの画面でなく、形のあるものに触れて、失敗して、いろいろ苦労・工夫した経験は役に立つと思います。家で親御さんが何かやっている子は圧倒的に有利だと思うんです。「駄目だよ、触っちゃ。」ではなく、料理でも何でも作っている姿をちゃんと見せて手伝わせることが、絶対に成長に大きな影響を与えると思いますね。 年内に子ども向けの科学雑誌の絡みでねじの絵本も出ますし、大学のほうから、子どもたち向けの出張講座は出来ますかというお話しも来ているので、お声がかかれば私もお手伝い出来るかもしれないですね。

さっそくですが、先生はねじの専門家とのことですが…。

 研究しているわけではないんですが、工業高校にいたので工場見学などで金属加工の工場を回るうち、なぜかねじを作っている人と仲良くなり、詳しくなりました。ねじの研究というのは「締結」、つまりどうやったら外れないねじが出来るかというものなのですが、ねじとか歯車とかばねとか、そういう地味な部品の研究者が減ってきているんです。最初はロボットや機械工学の本を書いていたのですが、ねじに詳しくなってきたときに書いた本が予想以上に売れました。ねじの業界って、実は結構大きいんですよ。けれど大事でありながら、基本的なことが意外と知られていないので、本を出したことで輪が広がったり、業界のかたに声をかけていただいて、さらにいろいろ見せて貰ったりしました。

そうするとご専門は「ロボット」と「3Dプリンター」のほうですか。

 大学での研究は、ロボット教育や教育用の3Dプリンターについてやろうと思っています。その一つに水中ロ

ボットがあります。昨年までは毎年出場していたのですが、今回はスタッフとして8月末の大会のお手伝いをしました。ここに先週大会に出場した水中ロボットがあります。「15水中ロボコンin JAMSTEC(海洋研究開発機構)」という、全国の大学生や高校生が参加する大会なのですが、中学生・高校生はプールの底にある空き缶を回収するのが課題です。後方に2個と下に1個スクリューが付いていて、後方のスクリューで左右に動かし、下のスクリューを使って真下に沈むんです。ロボットの下に磁石を吊るして空き缶を拾う競争です。1日目にロボットを組み立てて、2日目に競技をやるんですが、何しろ防水が難し

い。これは有線バージョンですが、無線だと送信機・受信機だとか、筒の中にバッテリーが入っているので、防水加工に手間がかかります。 3Dプリンターのほうは、教育用に子どもたちが使いやすいようなものを設計して、自作して広めるなど、そういったことをやろうと思っていま

決められたことの丸暗記では、クリエイティブな能力は身につきません。

▲水中ロボコンはアイデアや技術の勝負だ

▲大会に出場した水中ロボット

▲FabLab発祥の地ボストンで開催されたFabFesta▲3Dプリンターでこんなものが作れる!

神奈川県出身。東京学芸大学教育学研究科技術教育専攻修士課程、東京工業大学大学院総合理工学研究科メカノマイクロ工学専攻博士課程修了。博士(工学)。約20年東京工業大学附属科学技術高等学校で教鞭をとりながら、幅広くものづくりや執筆に取り組んでいる。

主な著書に「トコトンやさしいねじの本」「基礎から学ぶ機械工作」など。12月に出版される予定のねじの絵本を監修。

▲3Dプリンター。このネコを作るのに約30分かかる

http://fablabsendai-flat.com/FabLab SENDAI FLAT

VOL.78

102015年

月号掲載

1413